■TOPに戻る■ ■ルナマリアTOPへ■

 

【テキスト】D.Great‐man

 

2005.6.9

 

前回までのあらすじ

ついに始まったインターハイ予選。

アウル率いるアビス高校の初戦、相手は古豪カオス高校。

試合開始早々から、チームの点取り屋であるアウルには、

ディフェンスに定評のあるスティングがマッチアップ。

だが、謎の仮面コーチによって鍛えられたアウルの敵ではない。

必殺のバク宙ダンクがスティングの脳天に炸裂する!

 

「……いつからバスケアニメになったのかね?」

「いや、誠に申し訳ない」

 

怒られるネオ。

ステラさんとガイアを同時に失ったのに、

バスケなどやっている場合ではありません。

 

「とにかく言われた通りにやってくれ。

でないと、こちらの計画もみな狂う」

 

今日もネチネチと嫌味を言うジブリール。

彼が見つめるモニターの右上に映るのは、

「計画」を実行するために開発中の新たな兵器。

そのためには、ミネルバの存在がどうしても邪魔です。

 

「そのためのお前たちだと言うことを忘れるな」

「ええ……肝に銘じて」

 

うんざりしたように答えるネオ。

これ以上嫌味を言われないためにも、

次こそは絶対にミネルバを堕とさねばなりません。

 

「指示されたものです。

ご報告が遅れて、申し訳ありませんでした」

「いいのよ。騒ぎばかりあって、

私も、とてもそんな状況じゃなかったもの」

 

――ミネルバの艦長室。

艦長に先日の偵察任務の報告をするルナマリアさん。

 

「悪かったわね、スパイみたいな真似をさせて」

「いえ、とっても楽しかったです」

「……楽しかった?」

 

とっても満足げなルナマリアさん。

明日からでも探偵事務所を開けるぐらい、

パーフェクトな仕事振りでありました。

 

「でも、あの……できましたら少し、

質問をお許しいただけますでしょうか?」

 

しかし、任務を終えて気になったことも少々。

やや緊張した面持ちでルナマリアさんが訊きます。

何事もはっきりさせないと気が済まない性格なのです。

 

「当然の思いよね、いいわよ。

答えられるものには答えましょう」

 

却下されるのではないかと不安でしたが、

艦長は快くルナマリアさんの質問に応じます。

やはり持つべきものは物分かりのいい上司です。

 

「ありがとうございます、それでは……」

 

安堵の笑みを浮かべるルナマリアさん。

こほん、と息を整えて質問を始めます。

 

「アスラン・ザラが先の戦争終盤ではザフトを脱走し、

やはり地球軍を脱走したアークエンジェルと共に、

両軍と戦ったというのは、既に知られている話です」

「ええ、そうね、本人もそのことを隠そうとはしないわ」

 

「少し」の割には、よく喋るルナマリアさん。

ちょっと前までは知らなかったアスランの経歴を

さも常識であるかのように語りだします。

 

「しかし、そのことも承知の上で、

デュランダル議長自らが復隊を認め、

フェイスとされたということも聞いています」

「ええ」

 

さらに言葉を続けるルナマリアさん。

最新の情報に関しては、検索してもわからなかったため、

言葉の結びも「聞いています」とやや自信なさげです。

 

「ですが、今回のことは、あの……そんな彼に、

未だ何かの嫌疑がある、ということなのでしょうか?」

 

いよいよ話が本題へ入り、

ルナマリアさんの表情も曇ります。

アスランを監視したその真意は何なのか――

 

「私たちはフェイスであること、

また、議長からも信任されている方ということで、

その指示にも従っています。……シン以外は」

 

パチーンといい音がしました。

 

「ですが、それがもし……」

「そういうことではないわ、ルナマリア」

 

いよいよ核心に触れようとした時、

ルナマリアさんが言いたいことを察して、

これまで静かに聞いていた艦長が口を挟みます。

 

「えっ?」

「あなたがそう思ってしまうのも無理はないけど、

今回に関しては、目的はおそらくアークエンジェルのことだけよ」

 

生真面目な彼女のことだから、

きっと一人で考え込んでいたのだろう。

ルナマリアさんの憂慮を解消するため、

艦長はアスランを監視した目的について説明します。

 

「彼が実に真面目で、正義感溢れる良い人間だということは、

私も疑ってないわ。スパイであるとか、裏切るとか、

そういうことはないでしょう。そんな風には誰も思ってないわ」

 

今までミネルバの危機を幾度となく救い、

またユニウスセブンの破砕作業においても、

自らの危険を省みず最後まで残って作業を続けた。

艦長もアスランの能力と人間性を高く評価しているようです。

 

「裏切られたけど……」

「えっ?」

 

思わず口を挟むルナマリアさん。

女性関係に関してはやや不真面目です。

 

「でも、今のあの、アークエンジェルの方はどうかしらね」

 

ルナマリアさんの方を見やる艦長。

穏やかだった口調が、厳しいものに変わります。

ミネルバにおけるアスランには疑念を抱く余地はない。

しかし、そこにアークエンジェルが絡むと話は違います。

 

「確かに、前の大戦の時には、ラクスクラインと共に

暴走する両軍と戦って、戦争を止めた艦だけど……。

でも、今は? オーブが連合の陣営に入ろうとしたら、

突然現れて国家元首をさらい、そして、先日のあれでしょう。

何を考えて何をしようとしているのか、全くわからない。

どうしたって、今知りたいのはそれでしょう」

「な、長っ……」

 

アークエンジェルへの不満を熱く語る艦長。

女性艦長ということで、ただでさえ周囲の目が厳しいのに、

フリーダムのせいで、ミネルバに甚大な被害を被りました。

修理するのに、どれだけのお金が掛かると思っているのか。

 

「アスランもそう言って艦を離れたのだけど、

でも彼はまだ、あの艦のクルーのことを信じているわ。

オーブのことも、本当は戦いたくはないんでしょう」

 

いい人なんだけど、変な宗教にハマっている。

艦長から見たアスランはそんな感じの人物です。

 

「まったく最近の若い子は……」

(……いつまで続くのかしら?)

 

すっかり聞き役のルナマリアさん。

そろそろ貧血で倒れそうです。

 

「だから、そういうことだと

思っててもらいたいのだけど、いい?」

「あっ……はい!」

 

結論として、アークエンジェルが絡まない限り、

ミネルバにおける彼は信頼できる人間とのこと。

今後もアスランと一緒にいられることがわかり、

ルナマリアさんの顔も綻びます。

 

「でしたら、私も、あの、これからはもっと仲良く……」

「とにかく、ご苦労様」

 

それではとアスランへの想いを語ろうとしますが、

艦長にあっさりと流されて話は終了します。

 

「この件はこれで終了よ。モニターしていた内容も、

この部屋を出たら、忘れてしまって頂戴」

 

最後に艦長はルナマリアさんに、

この件に関して他言しないことを命じます。

 

「えっ……?」

 

艦長の指示に戸惑うルナマリアさん。

特に秘密にするような内容はなかったはずなのに、

「忘れろ」ということは、何か都合の悪いことでもあるのか――

 

「じゃあ、あのラクス・クラインは何?」

 

ルナマリアさんの脳裏に浮かんでくるのは、

アスランと会話をしていたフリーダムのパイロット。

彼が言うには、現在のラクス・クラインは偽者であり、

本物のラクス・クラインは暗殺されそうになった。

そして、それを指示したのがデュランダル議長。

結局、この件に関しては言い出せないままです。

 

(何か変なのが出てきた……)

「ルナマリア?」

 

ある特定の事柄に関して考えた途端、

頭の中で鮮明に浮かび上がる映像と音声。

アスランが長年苦しんでいるこの病気に、

どうやらルナマリアさんもかかってしまったようです。

 

「何て顔してるの?」

「いえ、何でもありません!」

 

怪訝そうに見つめる艦長。

他人には頭の中の映像は見えないので、

端から見たら、ただの危ない人のように見えます。

 

「ご指示通りに致します、すみませんでした」

 

気を取り直すように敬礼するルナマリアさん。

決して他言しないことを約束して部屋を出ます。

 

「忘れる……忘れる……」

 

ルナマリアさんは艦長の部屋から出ると、

すぐに忘れようと自らに暗示をかけます。

 

「……忘れられる訳ないわよね」

 

困った顔になるルナマリアさん。

鶏じゃあるまいし、三歩歩いて忘れるなんて不可能です。

これから先ずっと、誰にも言えない秘密を抱えていくのは、

正直者の彼女にとって厳しいものになりそうです。

記憶を消すことなんて不可能なのですから。

 

「はぁ……はぁ……」

 

――ミネルバの医務室。

苦痛に顔を歪ませる記憶を消されたステラさん。

 

「ぷ〜ぷ〜」

「ステラ!吐くんじゃなくて吸うの!」

 

病状は悪化の一途を辿っています。

 

「どうしたんですか!一体!?」

「どうもこうも、私にだってわからんよ」

 

今朝は元気だったのにどうして――?

シンは怒鳴るように軍医に詰め寄りますが、

軍医も困惑したように言葉を返すだけです。

 

「ぷ〜ぷ〜」

「薬で様々な影響を受けていて、まるでわからん体だと言ったろう。

一定期間内に何か特別な措置を施さないと、

身体機能を維持できないようでもある」

 

エクステンデッドに関しての研究は、

プラントより地球の方が遥かに進んでおり、

どうすれば治るのか皆目見当もつきません。

まるで宇宙人を治療するようなものです。

 

「それが何なのか、何故急にこうなるのか、現状ではまるでわからんさ」

「そんな……」

 

治療の手段が見つからない――

記憶が戻って安心したのも束の間、

シンは再び絶望の底に突き落とされます。

 

「ひん……」

「ステラ……」

 

不安そうな表情を浮かべるステラさん。

マスク越しに消え入りそうな声でシンの名を呼びます。

 

「しむのはこはい……ひん……まもふ」

 

ステラさんが呟くのは、あの日の約束――

周囲が絶望する中、苦しむステラさん本人は、

未だにシンが自分を守ってくれると信じています。

 

「ジムを箱買い……シン……頼む?」

「ちはう……」

 

大切な人を守る力を手に入れたシン。

しかし、それは戦いの中でしか発揮できぬ力。

苦しむステラさんを、今はただ見守ることしか出来ません。

 

「というように、策としては非常にシンプルです」

(う〜ん、難しいなあ……)

 

ラクス暗殺部隊隊長がニンテンドッグスで飼っている

犬の名前と同じことでお馴染みのタケミカズチでは、

ネオとユウナがミネルバを沈めるべく作戦会議中です。

ユウナの考えた作戦(タルタルソースのなんたら)が失敗したため、

今度はネオが提案する作戦を合同で行うことになりました。

 

「しかし、それで本当に上手くいきますか?

そもそも、その情報の信頼度はどれくらいなのです?

網を張るのは良いのですが、ミネルバがもしも……」

 

ネオの提案する作戦とは、ジブラルタルへ向かうミネルバを、

クレタ島付近で待ち構えて、両軍の総攻撃により一気に叩くというもの。

宇宙でもミネルバ相手に行った、ネオお得意の待ち伏せ戦術です。

しかし失敗した時のリスクもあり、トダカ一佐は難色を示します。

 

「おいおい、今更そんなことを言われても困るなあ。

あてずっぽうで軍を動かすような真似を誰がするか、

ミネルバは間違いなく、このルートでジブラルタルへ向かうさ」

 

トダカ一佐の懸念を一笑に付すユウナ。

成功を確信しているのか、とても爽やかな笑顔です。

 

(お前が言うな!)

(お前が言うな!)

(僕はユウナちゃん!)

 

空いた口が塞がらない2人。

ユウナがあてずっぽうで軍を動かしたから、

作戦が失敗したことを本人は全く自覚していません。

 

「いやあ、ユウナ様は的確ですなあ、決断もお早い。

オーブはこのような指導者を持たれて、いや実に幸いだ」

「いえいえ、天才ですから」

 

トダカ一佐がどんなに反対しようが、

決定権があるのは総司令官であるユウナ。

ネオは化粧品を売るセールスマンのような口調で、

ユウナの智謀を褒め称え、自らの作戦に賛同させます。

 

「いや〜、本当におめでたいですな!はっはっは!」

(こ、この仮面……他人事だと思って……!)

 

ネオの皮肉に顔を顰めるトダカ一佐。

こっちも好きでこんな奴を代表にした訳ではありません。

 

「厳しい作戦ではありますが、だが、やらねばならない!」

「そして、我がオーブ軍ならできる!」

「そう、ユウナ様なら楽勝です!」

「僕の辞書に不可能の文字はない!」

 

ネオの話術に単純なユウナは完全に乗せられています。

おそらくユウナの部屋には、アブトロニックやら、

ブルワーカーやらが、たくさん詰まれてあることでしょう。

 

「しかし、これでは我が軍は!」

 

今度はアマギ一尉がユウナに訴えます。

後方で待機する地球連合はいいかもしれないが、

前線のオーブ艦にみすみす囮になれというのか――

 

「これでミネルバを討てれば、

我が国の力もしっかりと世界中に示せるだろうねえ。

そうなれば、総司令官の僕は、一躍世界のヒーロー。

ドラマ化、アニメ化、ゲーム化、ソーセージ化……」

 

自らの野望を楽しそうに語るユウナ。

その実現のためには、少々の犠牲など、

まるで気にする様子はありません。

 

「ユウナを殺して、僕も死ぬ!」

「お、落ち着いてください!トダカ一佐」

 

ウズミやカガリが守り抜いてきた、

オーブの理念がこんな奴のせいでぶち壊しに。

トダカ一佐は激しい憤りに襲われますが、

生粋の軍人である彼は命令に逆らうことができません。

(シンならおもいっきりぶん殴っているでしょうが)

 

「今度は、あの奇妙な艦は現れないと思いますが……」

 

艦内を緊迫した空気が流れる中、

ネオはアークエンジェルへの対処について、

ユウナに今一度確認をします。

 

「はぴょ!?」

「万が一そのようなことになっても、大丈夫ですね。

あれは敵だと、あの代表と名乗る人物も、

偽者とおっしゃいましたな。ユウナ様は」

 

思わず奇声を上げるユウナ。

確認するネオの口調は穏やかながらも、

決して拒否させないような重圧を孕んでいます。

 

「ぷんすかぷん!」

 

アークエンジェルのことを思い出した途端、

ユウナの体が怒りでプルプルと震え出します。

自らの完璧な経歴(自分ではそう思っている)に

刻み込まれた唯一の汚点。結婚式を台無しされ、

国民の前で大恥をかかされた。あいつらだけは許せない。

 

「そうだい!あんなものまで担ぎ出し、

我が軍を混乱させようとする艦など、

我らにとって敵でしかない!」

 

自らの正当性を叫ぶユウナ。

部下の冷たい視線にも気付かず、

怒りと恐怖の混ざり合った感情に震えます。

 

「そうだな、トダカ一佐!だから貴様も撃った!」

(す、すごい顔だ……)

 

必死の形相で詰め寄るユウナ。

トダカ一佐も笑いを堪えるので精一杯です。

 

「……はい」

「トダカ一佐!」

「では、そういうことで……」

「フンだ!」

 

もはやユウナを説得することは不可能。

オーブ軍は地球連合と共にクレハへと進軍します。

 

「うわぁ〜、久しぶり〜」

 

「あの奇妙な艦」こと、アークエンジェルに帰艦するフリーダム。

キラの隣には、歓声を上げるミリアリアの姿がありました。

ラクスが抜けたことで空いた女の子枠を補充するため、

ラクスたちを見送った帰り道にキラが連れてきました。

戦場で傷ついた戦士の心を癒すには、女の子が必要なのです。

カガリとマリューさんだけではピチピチ感が足りません。

 

「マードックさぁ〜ん!」

「よう、嬢ちゃん!」

 

出迎えるマードックさんら整備班の面々。

ミリアリアも久しぶりの再会に喜びの声を上げます。

 

「何だ何だ、こんなとこ来てちゃ、

嫁の貰い手がなくなっちまうぞ〜」

「何よぅ、失礼ね〜!」

 

中年親父(といっても33だけど)のセクハラ発言に、

ミリアリアは突っぱねながらも、どこか嬉しそうです。

これがマリューさんだったら、シャレになりませんが。

 

「いいのよ、あたしのやることに、ああだこうだ

言う男なんて、こっちからフッてやるんだから!」

 

恐ろしいことをさらり言ってのけるミリアリア。

ああだこうだ言う男とは、一体誰のことなのか。

 

「未だに緑服など論外ね」

「うっひ〜」

「あの……ミリアリアさん?」

 

えっへん、とポーズを取るミリアリア。

この2年の間にどんな男性遍歴があったのか。

すっかり大人になった彼女に、キラも戸惑いを隠せません。

 

「世界中の男はあたしに絶対服従しろ〜♪」

「お、おお〜っ!」

 

高らかに宣言するミリアリア。

新たなる女王様がアークエンジェルに降臨しました。

 

(トール……ミリアリアは元気でやっているよ)

 

天国のトールに報告するキラ。

戦争で多くのものを失い塞ぎこんでいた彼女も、

この2年間ですっかり逞しく成長したようです。

ちょっと逞しくなり過ぎた感もありますが。

 

「オーブ軍がクレタに展開!?」

 

この2年間で全く成長しなかったカガリ。

オーブ軍の進軍を聞いて慌てふためきます。

 

「何があったんです?」

「うわぁ、全然変わってないなぁ」

 

騒然とした空気に気を止めることもせず、

ブリッジの様子を懐かしそうに見回すミリアリア。

久しぶりに母校を訪れた卒業生気分です。

 

「ミリアリアさん!」

 

卒業生の訪問に元担任の先生も大喜び。

先生は未だに結婚もせず、艦長をやっていました。

 

「お久しぶりです」

「元気? エルスマンとは?」

 

しかし、歓迎ムードに沸く中、

チャンドラが余計な一言を言ってしまいます。

 

「……………」

 

刹那、ブリッジを包み込む冷たい沈黙。

ミリアリアの表情も一瞬にして沈み込みます。

浜崎あ○みのユリ・サカザキ。窪塚○介のサギ山。

誰にでもなかったことにしたい黒歴史があります。

 

「ふっちゃった♪」

 

自らの黒歴史を笑い飛ばすミリアリア。

今になって恥ずかしい過去を後悔しても仕方がない。

誰にでも若さゆえの過ちがあるのですから。

 

「ははははは!」「うふふふふ……」

「彼、元気かしらね?」「……誰でしたっけ?」

 

爆笑に包まれる艦内。

 

「あわわ……」

「あら、どうしたの?」

 

そんなくだらないことを話しているうちにも、

新たな戦いへのカウントダウンは始まっています。

 

「暗号電文です。ミネルバはマルマラ海を発進、南下」

「わ、私の仕事……」

 

2年のブランクを感じさせない手つきで、

すぐさま暗号電文を解読してみせるミリアリア。

あっさりとカガリの仕事を奪い去ります。

 

「……………」

 

ジブラルタルへ向かうミネルバ。

アスランは食堂で一人寂しく食事中。

料理には手をつけず、何やら考え込んでいます。

柱の陰からコックさんも不安そうに見つめています。

 

「ごはん、ごはん……」

 

そこにやって来たルナマリアさん。

艦長の長話に付き合わされ、お腹ペコペコです。

 

「あっ……」

 

アスランに気付き、立ち止まるルナマリアさん。

以前の彼女なら強引にでも隣に座るところですが、

ストーカー行為の後遺症は未だに抜けきれておらず、

今日も、うしろに立つ少女です。

 

「さあて、始まるぞ!」

 

既に食事を取り終えたネオ。

あとはミネルバが網に掛かるのを待つのみです。

 

「コンディションレッド発令、コンディションレッド発令、

パイロットは搭乗機にて待機せよ」

 

ミネルバもオーブ艦を捕捉。

メイリンちゃんがアカデミーのオペレーター課で、

毎日のように練習したお馴染みのフレーズを艦内に流します。

 

「……行くか」

(ま、まずい!)

 

妹のタイミングの悪いアナウンスに、

心の中で悲鳴を上げるルナマリアさん。

 

(……に、逃げなきゃ!)

 

ストーカーの犯行現場を目撃されたら、

アスランに嫌われてしまう。ていうか訴えられる。

出口に向かって後退りをするルナマリアさん。

しかし、緊張で思うように体が動きません。

 

「ん?」

「はう!」

 

見つかった!

その場で固まるルナマリアさん。

万引きが見つかった小学生状態です。

頼むから警察には言わないで。

 

「どうした、ルナマリア?」

「あの……えと……その……」

 

自分に何か用があるのか?

アスランはルナマリアさんの言葉を待ちますが、

見つめられたルナマリアさんは、あたふたするばかり。

まさか「ストーカーしていました」とは言えません。

 

「ご、ごめんなさいっ!」

 

よもやストーカーされていたとも知らず、

何の疑いもなく自分を見つめるアスランに、

余計に後ろめたさを感じたルナマリアさん。

脱兎の如く駆け出し、この場から逃走します。

 

「オレの分も食べたかったのかな?」

 

訳がわからずきょとんとなるアスラン。

ルナマリアさん、食いしん坊キャラに認定されました。

 

「圧式弾のシャワーをたっぷりお見舞いしてやれ!」

 

時間がなくて片目しかアイプチできなかったユウナ。

先制攻撃とばかりに、ミネルバへ向かってミサイルを発射させます。

 

「回避しつつ、迎撃!」

 

すぐさまミネルバも迎撃します。

しかし、破壊したミサイルの正体は自己鍛造弾。

爆発したエネルギーで新たな弾丸を作り出します。

(詳しくは各自で調べてください=Google 検索:自己鍛造弾

 

「や〜い、引っかかってやんの!バ〜カ、バ〜カ!」

「む……むかつくわ!」

 

ミネルバに降り注ぐ自己鍛造弾のシャワー。

ユウナの策略にまんまと嵌ってしまいました。

艦長にとって、これ以上ない屈辱です。

 

「くっ……!」

「きゃあ!」

「ひでぶ!」

 

無数の弾丸がミネルバに被弾。

その衝撃でブリッジも激しく揺れ、

アーサーのむち打ちもますます悪化します。

 

「みんな、大丈夫か?」

「フン、当然ですよ」

「はい」

「あいたたたた……」

 

衝撃に耐える待機中のパイロットたち。

ルナマリアさんは早くもいっぱいいっぱいです。

 

「九時の方向に、更にオーブ艦、数3!」

「えっ!?」

「なんだとぅ!?」

 

今の攻撃を合図にするかのように、

待ち伏せていたオーブ艦が続々と出現。

アーサーも思わず尾玉なみえ風になります。

 

「二時方向上空に、オーブ軍ムラサメ、数9!」

「シンとアスランを出して!」

 

前回のバラバラだった攻撃がウソのように、

統率の取れた攻撃を仕掛けるオーブ軍。

メイリンちゃんは早くも泣きそうな顔になります。

 

「弔い合戦……にもならんがな、ステラ……」

 

今はなきステラさんに誓うネオ。

その無機的な仮面の下に隠された感情は、

彼女を失ったことへの復讐か、せめてもの償いか。

 

「だが、今日こそは、あの艦を討つ!」

「ねお……」

 

ミネルバにはステラさんが乗っているのですが、

当然のことながら、ネオが気付くはずもありません。

 

「うおおおお!」

 

久々登場のブラストインパルス。

ミネルバと地球連合・オーブ合同軍との

激しい戦いの火蓋が再び切って落とされました。

 

「……………」

 

再び戦闘が始まってしまった――

自らの無力さに落ち込むカガリ。

ブリッジはお通夜のような空気に包まれます。

 

君がしなきゃいけなかったことは、そんなことじゃないだろ!

 

カガリの脳裏に浮かぶ、先日のアスランの言葉。

あれだけオーブに戻るように言われたのに、

自分は何もせずに部屋でぐったりとしていただけ。

 

「なら泣くしかないじゃないか!」

 

また泣いた。

 

「先生、お願いします」

「うん」

 

重苦しい空気に耐えられなくなったミリアリア。

隣に立つカガリ泣き止ませ名人に相談します。

 

「行きましょう!」

 

泣いている暇があったら今からでも止めにいこう。

キラはクレハへ向かうことを提案します。

まるで二次会にでも行くかのように簡単に言います。

 

「えっ?」「はぁ?」「どこへ?」

 

当然のことながら、周囲は唖然とします。

何の考えもなしに行っても、前回と同じように攻撃されるだけ。

しかし、キラは思いついた勢いのままに言葉を続けます。

 

「ラクスも言っていただろう、まず決める」

「お前……聞いていたのか」

 

天使湯でのラクスの発言を引用するキラ。

女湯の会話を持ち出すのは気持ち悪いので、

身内以外に言うのは避けた方が懸命です。

 

「ほらほら、どいて」

「あうう……」

 

ミリアリア(キラ派)もその意見に賛同。

カガリを強引にオペレーター席から追いやります。

 

「あなたには他にやることがあるでしょう」

「やること……?」

「ここには、あたしが座る」

 

カガリを優しく諭すミリアリア。

オペレーターの仕事は自分に任せて、

カガリにはもっと大切なことをしてもらいたい。

それがオーブに暮らす者として首長に望むことです。

みんなが平和に暮らせる国にして欲しい。もっと税金を安くして欲しい。

 

「よいしょっと♪」

「あなたがそこに座ってくれるのは心強いけど、

……でもいいの? せっかく……」

 

マリューさんはちょっと困った様子。

せっかく平穏な生活を取り戻した彼女を、

再び戦場に向かわせる訳にはいきません。

 

「ええ、世界もみんなも好きだから、

写真を撮りたいと思ったんだけど、

今は、それが全部危ないんだもの」

 

しかし、マリューさんの心配をよそに、

ミリアリアはいつもと変わらぬ明るい声で答えます。

 

「だから守るの、あたしも!」

 

そう言って、微笑むミリアリア。

以前はなりゆきで乗ることになったこの艦に、

彼女は再び乗り込みます。今度は自らの意志で――

先の戦争で最強を誇った不沈艦アークエンジェル。

最強のメンバーがまた1人仲間に加わりました。

今は以前のような正規軍ではなく、テロリストに近いのですが、

そんな細かいことを気にする彼女ではありません。

 

「アークエンジェル、発進!」

 

平和を願うミリアリアの熱い想いが、

海の底で引き篭もっていたクルーの心を揺り動かしました。

アークエンジェルは急いで戦場のクレタへと向かいます。

 

「カガリ・ユラ・アスハ、ストライクルージュ出るぞ!」

 

アスハの名を高らかに宣言し、

カガリは再びストライクルージュに乗り込みます。

その左肩に輝くオーブの紋章に平和への願いを込め、

今度こそ戦いを止めるために――

 

「よし、今日も頑張るぞ!」

「お前は来るな!」

 

同時にフリーダムも出撃。

停戦への道は非常に険しくなりました。

 

 

続く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【小ネタ】イザーク・ディアッカのおまけコーナー

 

2005.6.9

 

「女ってのは、難しい生き物だよな……」

 

 

「貴様、戦闘中に何を言っている!」

「だって、『ふっちゃった♪』って……」

「いいか、彼女の言葉を思い出せ!」

 

 

「世界もみんなも好きだから……」

 

 

「『みんな』の中に、お前も入ってるんだよ!」

 

 

「な、なるほど!」

 

 

「さあ、彼女を迎えに行ってやれ!」

 

 

「グゥレイト!」

 

 

「お前ら甘いよ、女なんて残酷だぜ」

「誰だお前は!?」

「誰だお前は!?」

 

 

続きません。