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【テキスト】とどめさされそうなボクら

 

2005.4.22

 


前回までのあらすじ

ダーダネルス海峡を舞台に繰り広げられる、

ミネルバと地球連合・オーブの連合軍の戦い。

ユウナのすっとこどっこいな作戦にオーブ軍が混乱する中、

ミネルバのタンホイザーがユウナの乗るタケミカズチへと放たれる。

これでついにユウナの命運も尽きてしまうのか。

ガルマの葬式の写真をユウナに張り替えて作ろうと思った瞬間、

上空より降り注いだ一筋の光線が発射直前のタンホイザーを直撃。

 

「誰かは知らないけど、助かった……」

 

黒煙を上げ炎上するミネルバを目前に、

何が起こったのかさっぱり理解できないユウナ。

しかし、彼を救ったのは意外な人物でした。

 

「ありがとう……って、あれは!」

 

そこにいたのは、結婚式でカガリを誘拐した、

トラウマの機体こと、フリーダムとアークエンジェル。

キラと愉快な仲間たちが再びやって来たのです。

 

「みなさん注目していますわ♪」

 

狙い通りの反応に嬉しそうなラクス。

最近、偽者の方ばかりが注目されていたので、

久しぶりに沢山の人の視線を浴びて、ご満悦のようです。

 

「私は、オーブ連合首長国代表、カガリ・ユラ・アスハ!」

 

そして、駄目押しとばかりに現れたストライクルージュ。

その左肩にオーブの紋章を輝かせながら、

この場にいる全員に向けて、カガリが呼びかけます。

 

「カガリ!?」

 

ピンク色のMSには苦い思い出があるアスランですが、

それに乗っているのがカガリとなれば話は別です。

よもやカガリまで歌いだすことはないでしょう。

 

「オーブ軍、ただちに戦闘を中止せよ。軍を退け!」

 

強い口調でオーブ軍に撤退を求めるカガリ。

予想外の人物の登場に両軍の動きが停止します。

しかし、今まで海の底で閉じこもっていた彼らが、

どうして今頃になってオーブ軍の前に現れたのでしょうか。

 

 

 

―――数時間前

 

「オーブがスエズに軍を派遣?」

「仕方なかろう、同盟を結ぶとはそういうことだ」

 

オーブがスエズに派遣軍を出したことは、

テレビのニュースでも大々的に報じられており、

その情報はアークエンジェルにも伝わっていました。

予期せぬ事態にカガリも動揺しています。

 

「そして、それを認めちゃったのはカガリでしょう」

 

今日も平気な顔で人の傷をえぐるキラ。

腕組みをしたまま、抑揚のない声でカガリをなじります。

 

「こうなるとは思ってなかったの?」

「わ、私は!」

 

キラの言葉に顔を真っ赤にさせて反論するカガリ。

熱くなりやすいカガリは、キラにとって絶好のオモチャです。

 

「でも、私たちだって強引にカガリさんを連れてきちゃたし、

彼女がオーブにいたら、こんなことにはならなかったかもね」

 

意地悪なキラをなだめるマリューさん。

前回、アスランも同様のことをシンに言っていたし、

そもそもの原因はカガリを誘拐したキラにあるはずです。

 

「いえ、同じ事だったと思いますよ」

 

しかし、キラはあくまで否定。

カガリをひたすら罵倒し続けます。

 

「こ、この……言わせておけば!」

 

一国の首長がどれだけ大変なのかも知らずに、

無職のキラに言われ放題のカガリは怒り心頭です。

その喉を潰して強引に声変わりさせてやろうかこの野郎。

 

「で、でも、今のカガリさんなら大丈夫ですわ!」

 

口の悪いキラを慌ててフォローするラクス。

誘拐しておいて何が大丈夫なのかわかりませんが、

今のカガリなら冷静な判断が出来るということらしいです。

 

「キラ、発進してくれ」

 

その言葉を真に受けたカガリ。

キラにフリーダムを発進するよう命じます。

 

「えっ?」

「私が戦闘を止めに行く!」

 

オーブの首長として国を正しい方向へ導く。

強く決心したカガリに、もはや迷いはありません。

思い立ったらすぐ行動するのは、この姉弟の血筋のようです。

 

「戦いはダメだ!平和が一番!」

 

そんなこんなで現在に至ります。

国際舞台でのオーブの立場も考えず、

この場からのオーブ軍の撤退を訴え続けるカガリ。

純粋に平和を望む気持ちは他の誰よりも強いです。

産業のために戦争を起こしているロゴスの存在など、

おそらく彼女は知る由もないでしょう。

 

「……ユウナ君、これはどういうことかな?」

 

カガリが演説を続ける最中、ユウナへ通信を繋げるネオ。

ここでオーブ軍に撤退されてしまうと作戦は失敗。

それどころか逆にミネルバにやられかねません。

 

「いや、あの、これは……」

「これは、きっちり答えて頂かないと……」

 

ネオの厳しい追求に当惑するユウナ。

ユウナにとっても、これは全く予想外の事態です。

 

「聞くも涙、語るも涙の深い訳が……」

 

ユウナの脳裏にフラッシュバックする悲劇。

前回は有無を言わさず誘拐しておいて、

今回は突然現れたと思ったら「軍を退け」だと。

自分の人権を無視してやりたい放題のキラたちに対して、

ユウナの出した結論は、

 

「ありゃ偽者じゃ〜!」

 

あのカガリはオーブを混乱させる偽者。

顔も本宮ひろ志風になっているところから、

ユウナも覚悟を決めたようです。

 

「……よくできました」

 

元気な返事に満足そうなネオ。

カガリを無視して戦闘は続行です。

 

「あれはどう見てもカガリ様です!」

「うるさい!うるさい!うるさい!」

 

あんなにそっくりな偽者などいるはずがない。

トダカ一佐が慌ててユウナへ詰め寄りますが、

興奮しているユウナは聞く耳を持ちません。

 

「僕がカガリを一番上手く使えるんだ!」

 

ユウナにとってカガリは扱いやすい女。

自分に不都合になるようなことはしません。

それに、このままオーブに引き返してしまっては、

今後、オーブの立場がどうなってしまうかわかりません。

カガリよりもオーブ(というか自分の立場)を優先させます。

 

「……ミサイル照準、アンノウンMS」

「ほ、本気ですか!?」

 

総司令官の命令には逆らえない。

覚悟を決め攻撃命令を出すトダカ一佐。

フリーダムがカガリを守ってくれるという望みを託して。

 

「撃て〜!」

 

首長であるカガリの乗るストライクルージュへ向け、

オーブ艦隊が一斉にミサイルを発射します。

 

「えぇっ!?」

「ちょ、ちょっと待て!」

 

思いもよらぬ展開に悲鳴を上げる2人。

予定では最後にオーブ国歌をみんなで歌って、

仲良くオーブへ帰還する計画だったのですが。

 

「大丈夫、想定の範囲内です」

 

そんな中、一人冷静なキラ。

放たれたミサイルにロックオン完了。

 

刹那、フリーダムの五つの砲口から一斉に放たれる炎。

全てのミサイルが一瞬のうちに花火のように空に弾けます。

こんなに景気よくミサイルを破壊してくれるのなら、

産業として戦争を起こしたくなるのもわかる気がします。

 

「いや、あれは反則だろ……」

「ふぅ……」

 

フリーダムの圧倒的な力を目の当たりにして、

愕然とするユウナと安堵するトダカ一佐。

 

「オーブ軍、何をする!? 私だ!カガリだ!美少女首長の!」

 

構わず攻撃を仕掛けてきたオーブ軍に動揺するカガリ。

そんなに自分は知名度低かったのか。

やっぱりみんなの前で歌ったりしなきゃダメなのか。

 

「オーブとか何とか言ってるぜ」

「オレたちには関係ないね」

 

カガリの制止の声も彼らには関係ありません。

頃合とばかりに、ミネルバへ向けて発進するアビスとカオス。

ちなみに今回も海上での戦闘なので、

泳げないステラさんとガイアは陸でお留守番です。

 

「西川貴教、グフ、行くぜ!」

 

負けじと西川さんのグフも発進。

続いてルナマリアさんとレイのザクも発進。

 

「左舷弾幕薄いぞ!何やってんの!」

「だ、弾幕?」

 

ユウナも撤退する気配はありません。

攻撃目標をミネルバとアークエンジェルの

両陣営に変更して戦闘を再開させます。

 

「ええい、静まれ〜!静まれ〜!」

 

印籠を見せても反応のなかった水戸黄門状態のカガリ。

なおも必死に呼びかけますが、その言葉に耳を貸す者はいません。

 

「カガリ、もうダメだ……」

「キラ……じゃあ、どうすれば?」

 

言葉による制止は無理と判断したキラ。

彼が次に考える戦闘を止める方法とは?

 

「もう、どうしようもない」

 

あきらめよう。

長い人生、何事もあきらめが肝心です。

 

「……あきらめるの早すぎるだろ!」

 

こんな時までもクールなキラに絶望するカガリ。

この姉弟、感情の遺伝子は全てカガリに行ってしまったようです。

 

「下がって、後は僕が何とかする」

 

決意した面持ちでフリーダムの操縦桿を握るキラ。

 

「何とかってお前、何を……?」

 

妙にやる気のキラに言い知れぬ不安を抱くカガリ。

この状況で一体何をしようというのでしょう。

 

「カガリ様の名を語る偽者め!」

 

ユウナの命令に従い攻撃を開始するオーブ軍。

しかし、フリーダム相手に数の論理は通用しません。

 

「もう、鬱陶しいなあ……」

 

ザコがいくら来ても無駄なのに、

ザコはそれがわかっていないから困る。

キラもいい加減うんざりしています。

 

「気合、必中、魂、努力、幸運……」

 

精神を集中させるキラ。

再びMAP攻撃の準備に入ります。

 

「ぐああああ!」「ぎゃあああ!」

 

再びロックオンからの一斉射撃。

次々と撃墜されていくオーブ軍のMS。

 

「ああ……」

 

その様子をただ呆然と見つめるカガリ。

ついにこちらから攻撃を仕掛けてしまった。

これで停戦の道は完全に断たれてしまいました。

 

「よし、これで大分すっきりしたね」

「すっきりってお前、大惨事だぞ……」

 

アークエンジェル周囲のオーブ軍、全滅です。

 

「虎さん、カガリとアークエンジェルを頼みます!」

 

一人で盛り上がってきたキラ。

カガリとアークエンジェルの護衛を虎に任せ、

自分はチャンバラごっこを興じに行きます。

 

「じゃあ、行ってくる」

「コーヒー入れて待ってますね」

 

椅子に座っているだけで、特にやることがなかった虎。

キラからお呼びがかかったので、彼も出撃します。

 

「あっ、パイロットスーツはロッカーの中です」

「よっしゃあ!」

 

虎が喜ぶパイロットスーツとは?

その正体は90秒後明らかになります。

 

「と、遠い……」

 

泳げないガイアとステラさんは、

陸からミネルバを攻撃しようと試みますが、

小石を投げるような攻撃しかできません。

 

「がんじがらめに縛りたい YOUR HEART!」

 

そんなステラさんに西川さんのグフが迫る。

上空から勢いよく振り下ろされたヒートロッドが、

蛇のようにうねりながら、ガイアへと襲い掛かります。

 

「な、何?」

 

触手のように絡みつくヒートロッド。

必死に振り解こうとするステラさんですが、

もがけばもがくほど複雑に絡みついていきます。

 

「ほ〜れ、スイッチオン!」

「きゃああ〜!」

 

絡みついたヒートロッドが放電。

コックピットのステラさんにも電流が流れます。

  

「あ、あっ、あっ、にゃあ!」

「ほれほれ〜」

「んあ、や、やめ、やぁ……」

「ええか〜、ええのんか〜」

 

ヒートロッドによるマニアックなプレイ。

S.M.Revolutionです。

 

「……いい加減にしろ!」

 

騒いだ割にはあまり効いていません。

殺傷能力よりは、リアクション重視のようです。

 

「こいつ…違う、ザクなんかと、装甲もパワーも、消費電力も」

「ククク、待っていたぜ、その反応!」

 

ミネルバにこんな奴はいなかったはず、

初めて見る機体とパイロットに戸惑うステラさん。

それに対して邪悪な笑みを浮かべる西川さん。

 

「ザクとは違うのだよ、ザクとは!」

 

グフに乗ったら一度は言ってみたいセリフ、

25年連続ナンバーワンの例のセリフを吐く西川さん。

今まで言いたくてウズウズしていたのか、とても満足げです。

 

「ザフトはみんな同じって言ってたのに……」

「同じザクでも、ファントムとウォーリアでは全然違う!」

 

ショックを受けるザクのパイロット2名。

先人があんな言葉を残してしまったせいで、

グフのパイロットの間でのザク差別は未だに根強いようです。

 

「言ってやった!言ってやった!」

「違う……」

 

すっかり勝ち誇っている西川さんに対して、

打ち震えながら怒りの炎を瞳に宿すステラさん。

 

「グフはそんな色してないもん!」

 

するどい突っ込みを入れるステラさん。

ザクとは違いますが、グフとも微妙に違います。

 

「な、何だと!?」

 

痛いところを突かれた西川さん。

グフと言ったら青。オレンジなど邪道です。

 

「進路クリア。虎さん、ムラサメ発進、よろしいですわ」

 

西川さんとステラさんの漫才が続く中、

ついに伝説のお笑い芸人が再びその牙を剥きます。

 

「僕はタイガ〜♪ しかも強くて〜♪」

 

特注のかぶりものパイロットスーツに身を包み、

自分仕様に改造したムラサメに乗ってルンルン気分の虎。

誰も突っこまないのがアークエンジェルクルーたちの優しさです。

(虎が出撃した後にみんな笑い転げていたけど)

 

「撃てないのなら戻れ、カガリ!

ここでお前が墜ちたら、それこそオーブはどうなる!」

 

茫然自失のカガリを叱咤する虎。

 

「言うことを聞け、カガリ!」

 

こんな服を着た人に説教されても困ります。

 

(ど、どうすればいいんだ……?)

 

すっかり気が動転しているカガリ。

「自分が戦闘を止める!」と決心して出てきたのに、

このまま何も出来ずに引き下がることなどできません。

 

(お父様……)

 

カガリの脳裏に浮かぶのは、尊敬する父・ウズミ。

「他国を侵略せず(以下略)」というオーブの理念を

最後まで守り続けた偉大なるオーブの代表です。

 

「続きまして、おもろうてやがてダメージ作戦!」

 

しかし、現在、オーブ軍を指揮しているのは、

外見から性格まで全てが気持ち悪い婚約者。

 

「オーブなんて大嫌いだ〜!」

 

眼前でオーブのMSを次々と破壊しているのは、

自分を殺人犯呼ばわりする生意気なオーブ出身の子供。

 

「やってられるか!」

 

込み上げる感情を押さえきれず、

ついに声を上げ泣き出してしまったカガリ。

オーブの首長から、普通の少女に戻ってしまいました。

 

「遊びの時間は終わりだね……」

 

カガリの泣き声に反応したキラ。

早く戻ってカガリを泣き止ませなければなりません。

 

「キラ!何を!?」

 

フリーダムの変化を感じ取ったアスラン。

キラは一体何をする気なのか?

 

「戦いを……終わらせる!」

 

自分より目立っているMSは全て倒す。

巨大な翼を広げた死神による裁きの時間の始まりです。

 

「な、何だ、こいつ?」

 

最初の標的に選ばれたのはインパルス。

ついに前作の主人公と今作の主人公が、

戦場で互いに刃を交わす時がやってきました。

シンは家族の仇を討つことができるのでしょうか。

 

「一機……」

「!?」

 

反撃の体勢を取ろうとした瞬間、

シンの眼前を一筋の光が駆け抜けます。

反応する暇もなく、右腕を持っていかれました。

 

「な、何だ?」

 

一瞬で決まった勝負は敗北感すら与えません。

何が起こったのかわからず、ただ呆気に取られるシン。

 

「二機……」

 

インパルスの方を振り返ることなく、

次なる標的の駆逐へ向かうフリーダム。

海中へ向けて腰部レールガン一射。

 

「ぐはぁ!」

 

放たれた一撃は海中のアビスを直撃。

 

「えっ? な、何だよ、おい!?」

 

全く状況が理解できていないアウル。

海中では無敵の強さを誇っていたアビスですが、

フリーダムによって、アリを踏み潰すが如くやられました。

 

「お前は何だ!?」

 

フリーダムによる粛清は続きます。

次の被害者はステラさん。

 

「私はステ」

「三機……」

 

襲い掛かるガイアを軽く薙ぎ払うフリーダム。

ボケる間も与えずにガイアの両手を一刀両断。

 

「キラ、やめろ!何でお前が!」

 

必死に呼びかけるアスラン。

しかしその声は届きません。

 

「手当たり次第かよ!この野郎、生意気な!」

 

激昂する西川さん。

たった一機のMSに好き勝手やられては、

多くの兵をまとめてきた隊長としてのプライドが許せません。

 

「このぉ!墜ちろ!」

 

怒りに任せて右腕のガトリングを掃射する西川さん。

しかし、フリーダムはそれを楽々とかわして接近します。

 

「四機……」

「な、何ぃ!」

 

超高速での斬撃。

インパルス同様に右腕を奪われるグフ。

西川さんもフリーダムの速さに全く反応できません。

 

「そ、そのMSの性能のおかげだということを忘れるな!」

 

グフでやられたとき用のセリフを吐く西川さん。

ザフトの最新鋭の機体であるグフでさえ、

フリーダムとキラの前では、まるで歯が立ちません。

 

「次は……」

「キ、キラ!?」

 

断罪の天使と化しているキラ。

その無機質な瞳がセイバーへと向けられます。

 

「あいつ……!」

 

機体を破壊するのではなく、あくまで武装だけを破壊し、

相手の武力と戦意を喪失させていくキラ。

 

「あたしを……よくも!」

 

その完全に上から見下ろすような戦い方が、

負けず嫌いなステラさんの闘争本能に火を点けました。

 

「このおおおおお!」

 

両腕以外にも武装はある。

両翼のビームブレイドを大きく広げて、

上空のフリーダムへ再度襲い掛かるガイア。

 

まるで相手にされてない、痛みがまた刺激だよ!

 

同時に西川さんのグフもフリーダム再び攻撃を仕掛けます。

背後から迫るガイアには気付いていないようです。

 

「やまだ〜!」

 

ステラさんは止まらない。

 

「がっ……!」

 

背後からの気配に西川さんが振り返った瞬間、

ガイアの高熱の刃がグフの強固な装甲を抉り、

西川さんの身体諸共、グフのコックピットを切裂きます。

 

「……………」

 

思う以上のダメージに三半規管イカレてくる。

用意していた断末魔を上げる間もなく、

西川さんの肉体は熱に熔けていきます。

 

轟く爆音。

炎を上げながら木っ端微塵に飛び散るグフ。

 

「西川ぁ!」

 

ニコルに続いて眼前で起こった惨劇。

その光景はアスランの脳裏に強く焼き付きました。

西川さん、回想シーンに出演決定です。

 

「やめてよね……」

「きゃあ!」

 

西川さんを巻き添えにしてしまったキラですが、

それに動揺することもなく、襲い掛かるガイアを一蹴。

接近戦に特化されたガイアを完全に子供扱いです。

 

「うう……」

 

圧倒的な実力の差を前にして、

ステラさんの闘志もついに消え失せました。

記憶操作によって戦闘に不都合な記憶を消され、

完全な戦闘マシーンとなったステラさんですが、

キラの力はそれすらも軽く凌駕しています。

 

「何なんだよ!? あいつは!」

 

やりようのない怒りに震えるスティング。

キラの乱入によって退却を余儀なくされ、

ミネルバを沈める絶好の機会が失われました。

 

「キラ……!」

 

やりようのない怒りに震えるアスラン。

キラが直接手を下したのではないにせよ、

キラが原因で西川さんが戦死してしまいました。

 

「被害状況は!?」

 

やりようのない怒りに震える艦長。

派遣されてきたばかりの西川さんを失い、

ミネルバも甚大な被害を被りました。

 

「あ、あの野郎!」

 

やりようのない怒りに震えるシン。

ようやく主人公らしくなってきたのに、

キラのせいでヤムチャ扱いされました。

激闘の末に敗れてしまうとかならまだしも、

これほど実力差があっては、ライバルにもなれません。

 

「ふぅ、疲れた。ラクス、僕にもコーヒーね」

「はい♪」

 

みんなの怒りと憎悪に満ち溢れた目に見送られながら、

一仕事を終えて引き上げる、フリーダムとアークエンジェル。

死者も出たけど、彼らには「戦闘を止めたいだけ」という正義がある。

「確信犯」の元来の意味を忘れたときは、彼らのことを思い出してください。

 

 

続く。