■TOPに戻る■ ■ルナマリアTOPへ■

 

【テキスト】どうしようもない僕に電波が溺れてた

 

2005.4.10

 

前回までのあらすじ

ホテルでミーアと一緒に食事をしたアスラン。

食後、そのまま部屋まで来ようするミーアに、

アスランが貞操の危険を感じたその時、種が弾けた。

脱兎の如く走り出し、ミーアからの逃走に成功。

疲れたアスランはそのままベッドでぐっすり。

 

「……ん?」

 

翌朝、目を覚ましたアスランが手を横に伸ばすと、

「むにゅ」という慣れ親しんだ女の子の柔らかい肌の感触が。

 

「……………」

 

隣を見ると、そこには正体不明の膨らみが。

そのままの姿勢でしばらく固まるアスラン。

若さゆえの過ちをやってしまったのでしょうか。

そっとシーツをめくると、そこにいたのは、

 

「すやすや……」

 

無防備に肌をさらけ出し、

やすらかに寝息を立てるミーア。

どうやらやってしまったようです。

 

「うげええ!」

 

まるでゴキブリでも発見したかのように、

仰け反り悲鳴を上げるアスラン。

 

「うおお!」

 

そのままベッドから落下。

80年代のギャグマンガを体現するアスラン。

 

「ふぁ……あふらん……おはようございまふ」

 

寝ぼけたまま、あられもない姿で起き上がるミーア。

昨夜、この2人の間でどのような事があったのかはわかりませんが、

誰がどう見ても、導きだされる結論は一つしかないこの状況。

いくら婚約者同士とはいえ、ホテルの部屋に女性を連れ込むのは、

軍の規律として問題なので、他の人に見つかってはいけません。

特にルナマリアさんには。

 

「ランランラン♪ アスランラン♪」

 

そんなことは知る由もなく、

アスランの部屋に向かうルナマリアさん。

修学旅行で女子の部屋に向かう男子のようにゴキゲンです。

 

「おはようございます、隊長。

あの、よろしかったら、一緒に朝食行きませんか?」

 

女の子らしくドアを優しくノックし、

アスランを朝食に誘うルナマリアさん。

今まで散々アスランにアプローチしてきましたが、

直接部屋まで訪ねて誘うのは今回が初めて。

ルナマリアさんも勝負に出たようです。

 

「バイキングですから、何でも食べ放題ですよ〜」

 

廊下のルナマリアさんの明るい声とは対照的に、

室内は氷河期のような寒さに包み込まれています。

なんて間が悪いところに来るんでしょうか、この娘は。

 

「あ、いや、その、ルームサービスを頼んじゃったから……」

「えっ、朝からルームサービスですか?」

 

絶体絶命のアスラン、顔面蒼白です。

ていうか、本当にアスランなのかも不明です。

 

       ↑

ルームサービス

 

 

「き、着替えるから、ちょっと待ってくれ!」

 

そこでアスランが考えたのは、

ルナマリアさんがミーアに気付かないうちに、

ミーアを部屋に残してダッシュでこの場から逃げる。

通称「やり逃げ」と言われる方法です。

 

「……………」

「ちょ、ミーア何を? 痛っ!」

 

そんなアスランの目論見を察したのか、

無言のまま入り口のドアへと近づくミーア。

ズボンのチャックを慌てて閉めたため、

何かを挟んでしまったアスラン。

 

「パジャマ姿の隊長も見たいな〜」

 

何も知らずにノックを続けるルナマリアさん。

この後で起こる悲劇も知らずに女の子モードです。

 

「なんちゃって……」

 

そして開かれる運命の扉。

 

「……失礼ですけど、お取り込み中ですわ」

 

そこにいたのは、勝ち誇った顔で仁王立ちするミーア。

氷のように冷たい視線がルナマリアさんに突き刺さります。

その後ろでアスランは小刻みに震えているだけでした。

 

「えっ……えっ……えぇ〜!?

 

目の前に広がる思いもよらぬ光景に、

全く事態を飲み込めないルナマリアさん。

きょとんと目をまん丸にさせて、ただうろたえるばかりです。

 

「それではごきげんよう!」

「あうっ!」

 

動揺するルナマリアさんを無視し、勢いよく閉められるドア。

一人廊下に取り残されるルナマリアさん。

 

「さあ、アスラン、お目覚めのキス……」

「うわっ、やめろ!ギャ〜!」

「た、隊長!?」

 

直後に室内から聞こえてくる謎の悲鳴。

アスランは遠くの世界に旅立ってしまったようです。

 

「あはは……ピンク……ピンク……」

 

あまりに衝撃的な出来事に、

精神崩壊を起こしたルナマリアさん。

何やら意味不明な言葉を呟きながら、

フラフラとした足取りで部屋を後にします。

 

「ミーア!」

「えっ……朝からするの……?」

 

これでルナマリアさんから完全に誤解されてしまった。

乱暴にミーアの腕につかみかかるアスラン。

 

「へへへ、騒いでも誰も来ないぜ」

「キャ〜、アスランがケダモノに!」

 

 

「……って、するか!」

「えっ? しないの?」

「どうしてオレの周りには、変な女ばかり集まるんだ!」

 

何が悲しくて、早朝からボケツッコミをしなければならないのか。

段々と自分が壊れていくのを感じるアスラン。

 

(結局、こいつと一緒か……)

「バ〜イキング、バ〜イキング♪」

 

精神崩壊から早くも立ち直ったルナマリアさん。

暇そうにしていたシンをヤケ食いに連れ出します。

 

「なあなあ、ちょっと聞いてくれよルナ。

昨日、部屋の冷蔵庫の500円もするコーラ飲んじゃった。

すごくない? これでオレもブルジョワの仲間入りだよ」

「シンは呑気でいいわね……」

 

傷心のルナマリアさんに気付くはずもなく、

シンは初めて泊まった高級ホテルにルンルン気分です。

 

「あの〜、アスランは?」

 

2人に存在を気付いてもらえない西川さん。

自分から話し掛けて存在をアピールします。

 

「あ、隊長ならお部屋で、お部屋で、その……」

 

まさか「ラクス様と乳繰り合っておられました」

などと言うわけにもいかず、返答に窮するルナマリアさん。

 

「アスランすきすき〜」

「ミ……ラクスすきすき〜」

 

ルナマリアさんが説明に困っていると、

怪訝な表情の兵士たちに見守られながら、

アスランとミーアが仲良く腕を組みながら登場。

誰が見ても「バカップル」という言葉が浮かんできます。

 

「あの人もキャラ変わったよな……」

「全部あの女のせいだわ……」

 

シンからも軽蔑の眼差しを向けられるアスラン。

ミーアが現れてからというもの、アスランの株が急降下しています。

 

「オレもミネルバに配属されることになった」

「アスラン的にもオールOKです」

 

昨日から何をしたいのか不明だった西川さんですが、

なんと、彼もミネルバへ配属されることになったそうです。

最新鋭の機体であるグフを駆り、フェイスでもある西川さん。

ミネルバに心強い仲間が加わりました。

 

「インパルス、ザク、セイバーか」

 

各自が乗っているMSを確認する西川さん。

「ザク」と言う時だけ、何故か優越感を漂わせています。

 

「それでは、アスラン、ごきげんよう」

 

次のライブ会場へと向かうミーア。

大好きなアスランと別れるのは辛いですが、

プラントのために今日も彼女は歌い続けます。

今日もどこかでピンクザクです。

 

「では、お別れのキスを……」

 

最後までアスランにちょっかいを出すミーア。

大勢が見ている前でアスランの唇を奪おうとします。

 

「はいはい、乗った乗った」

「え〜っ、アスランのケチ!」

 

徹底的に冷めた態度で接するという、

ミーアの対処法を編み出したアスラン。

不満顔のミーアを強引にヘリに押し込みます。

 

(イライライライラ……)

 

苦虫を噛み潰したような顔で待つルナマリアさん。

今にもヘリを撃ち落さんとばかりの勢いです。(当たらないけど)

 

「お別れのキスだって、バッカじゃない。

アスランさんがそんなことするわけないでしょ」

 

ミーアのバカさ加減にはルナマリアさんもうんざりです。

お別れのキスだなんて、映画やドラマじゃあるまいし。

 

してました。

 

 

「さあて、どうしよっかな〜、今日はこれから。

街に出たい気もするけど、一人じゃつまんないしね。

誰か一緒に来てくれる人はいないかしら」

 

ようやく邪魔者が去り、大きな声で独り言を言うルナマリアさん。

その声は明らかに、彼女の後ろを歩くアスランに向けられています。

ルナマリアさん本日2度目のアプローチにアスランの反応は?

 

「シンと行けばいいじゃないか」

「えっ、オレっすか?」

(……な、何でそうなるのよ!?)

 

どうしてそこでそんな発想が出てくるのか、

ルナマリアさんの期待はまたも裏切られました。

 

「……………」

(……何だ、この殺気は?)

 

アスランの無神経な発言に顔を歪めるルナマリアさん。

もはや溜まりに溜まった不満が爆発してもおかしくはない状況。

これ以上は余計な言葉をかけない方が懸命です。

 

「せっかくの休暇だ、のんびりしてくればいい。

艦にはオレが戻るから、気にしなくていいぞ。

シンと一緒に好きなだけ楽しんでくるといい」

 

なおも地雷原を爆走するアスラン。

そもそも、アスランが女性の気持ちを理解していたら、

これほどまでに女性問題で苦労していません。

 

(なによ……)

 

いくらルナマリアさんの一方的な片思いとはいっても、

ここまで気持ちを無視されれば、女として我慢の限界です。

 

「そっか、隊長はもういいですもんね!」

 

吐き捨てるように言うルナマリアさん。

ついに恐れていた事態が起こってしまいました。

 

「……昨晩はラクス様とお楽しみだったようですし」

 

次の瞬間、ルナマリアさんの表情が一変。

裏のルナマリアさん(裏マリアさん)が姿を現しました。

いつもの明るい彼女とは似ても似つかないような、

冷たい声に氷のような微笑を浮かべながら、

蔑むかのような瞳でアスランを睨みつけます。

 

(……こ、この女!)

(……フンだ!)

(……ゲームでもしたのかな?)

 

恐怖に背筋を震わせるアスラン。

エレベーターの中は一転、緊迫した空気に包まれます。

シンだけは状況がよく理解できていないようですが。

 

「筋肉痛で動けないでしょうしね!」

「おい、ルナマリア!」

 

なおもジェラシーを爆発させるルナマリアさん。

アスランとルナマリアさんは付き合っているわけでもないので、

別にアスランが何をしようと勝手なのですが、

それでも言ってやらなければ彼女の気が済みません。

 

(DDRか!)

 

未だに状況がわかっていないシン。

「オレも混ぜてくださいよ」とか言い出しそうな雰囲気です。

 

(人の気も知らないで……)

 

言いたい放題のルナマリアさんですが、

片思いが抱くジェラシーほど惨めなものはありません。

いつまで経っても自分の方を向いてくれないアスランと、

上手に想いを伝えられない自分に苛立ちを感じているようです。

 

「ちょっと待て、ルナマリア」

 

一方的に言われっぱなしのアスラン。

このままでは今後の作戦にも影響するので、

ルナマリアさんに今朝の出来事について説明します。

 

「……誤解?」

 

アスランが言うには、今朝のことは全てルナマリアさんの誤解。

実際はアスランが部屋で一人寝ていたところに、

ラクス(ミーア)が勝手に上がりこんできただけで、

ルナマリアさんが想像しているようなことは何もないとのこと。

 

「そう、誤解、誤解だよ」

 

高級ホテルのスウィートルームで、

久しぶりに会った婚約者と一晩中2人きりで、

男は盛りのついた18歳、且つ普段は禁欲が強いられる軍人で、

女は国民的巨乳アイドルで、着衣に乱れがあったけど誤解です。

 

「へぇ〜、ふ〜ん、ほぉ〜、そっかぁ、誤解でしたか〜」

(あ、全然信用していない……)

 

アスランの苦しい弁解に対して、

ものすごく冷めた反応のルナマリアさん。

これほどまでに決定的な証拠が揃っているのに、

「誤解」の一言で片付けられたら、世の中、浮気し放題です。

 

「5回も楽しまれたのなら、さぞ満足でしょうね!」

「ち、違う!1回もしていない!……たぶん」

「たぶん!?」

 

お互いに引かない両者。口論は次第に泥沼に。

 

「隊長も、結局は巨乳が好きなんですね……」

「いや、別に貧乳でも……」

「貧乳じゃないもん!」

 

ついに耐え切れなくなったのか、

泣きながら走り去って行くルナマリアさん。

彼女の恋はこんな形で終わってしまうのでしょうか。

 

「メイド服着て玄関で出迎えれば、隊長もイチコロだぜ」

「ネコ耳は個人で好き嫌いがあるから気をつけろ」

「ふむふむ、なるほど」

 

姉が恋に破れたのも知らず、

妹のメイリンちゃんと技術部コンビは、

街のメイドカフェにて、アスラン攻略会議中。

アスランがメイリンちゃんとくっついてくれれば、

ラクス(ミーア)がフリーになるので、2人とも無駄に必死です。

 

「……そもそも、見せなきゃ意味なかったのよ」

 

何やらブツブツと呟く黒い下着の女性。

部屋で一人、反省会を開くルナマリアさんです。

 

「まだよ、まだ終わらないわ!」

 

アスランには大変残念なお知らせですが、

この程度のことで諦めるルナマリアさんではありません。

「下手な鉄砲も数撃ちゃ当たる」戦闘も恋愛も同じです。

いや、戦闘でそれは困るんですけど。

 

「胸がダメなら、お尻で……」

 

勝手に尻フェチにされているアスラン。

今まではルナマリアさんの抜群のスタイルが、

あの四次元スカートのせいでよくわかりませんでした。

今回のようなピチピチのパンツルックの方が、

その整ったヒップをアスランにアピールできます。

しかし、世の中には、あえてスカート越しのお尻の方を愛でる男性もいます。

はたしてアスランはどっち派なのでしょうか。何の話だ。

 

(……オレは何でこんな所に?)

 

その頃、シンは一人バイクを飛ばして、

自殺の名所として名高い、黒海沿岸の断崖絶壁へ。

 

「お兄ちゃ〜ん、こっちだよ〜!」

(マユが呼んでいる……)

 

崖の方から聞こえてくる、天国の妹からの声。

その声にフラフラと吸い寄せられていくシン。

このままマユちゃんの元へと旅立ってしまうのか。

その時、シンを現実に引き戻す声が聞こえてきました。

 

「ふぅ、お昼にぶたどん食べたから、ステラ、お腹いっぱいだよ〜」

 

そこにいたのは、ステラさん。

アウルは構ってくれないし、スティングは仕事中なので、

一人暇な彼女は街をお散歩していたようです。

 

「でも、おやつも食べたいから、お腹が空くまで踊ろうっと♪」

 

大回転魔球でも投げようとしているのか、

その場でくるくると回り始めるステラさん。

 

(……がんばれよ!)

 

そんなステラさんを温かい目で見守るシン。

アスランが自分に優しい理由が何となくわかってきました。

ちなみに第1話でステラさんの胸を鷲掴みにしたこと、

(俗に言う「ラッキースケベ事件」)は、すっかり忘却の彼方のようです。

 

「とんで、とんで、とんで、とんで♪」

 

 

「まわって、まわって、まわって♪」

 

 

「お〜ち〜る〜ぅ〜♪」

 

不吉な替え歌を口ずさみながら、踊り続けるステラさん。

どうしてこんな危険な場所で踊るのかわかりませんが、

ステラさんの行動に意味を求めてはいけません。

あえて言えば「そこに崖があるから」です。

 

(オレもまだまだ大丈夫だな……)

 

自分よりも数段バカな人物を目撃し、

シンもすっかり自信を回復させたようです。

 

「あぁ、目がまわ……」「バシャーン!」

「は……?」

 

ふと、シンが視線を外した瞬間、

崖の方から、聞こえてはいけない音が聞こえてきました。

 

「……………」

 

そして訪れる静寂。

誰もいない崖の風景がこんなに怖いものだとは、

シンはこの時に始めて知ることになりました。

 

「あはは……ま、まさかね……」

 

たぶん、幽霊か何かだったんだろう。

そうだ、そうに違いない。ていうか、そうであって欲しい。

強く願いながら、シンがステラさんの立っていた場所から、

確認のため、恐る恐る崖下を覗き込むと、

 

「ううっ、ぼく、どざえもん……」

 

幽霊の方がまだマシでした。

そこにはもがき苦しむステラさんの姿が。

ガイアと同様に彼女も泳げないようです。

 

「ウッソ〜!?」

 

最近、簡単に自殺する若者が増えているとは聞いていたものの、

まさか踊りながら身投げするなんて話は聞いていなかったシン。

ありえない展開にアスランが仕掛けたドッキリではないかと疑います。

 

「ちくしょおおお!」

 

ドッキリの看板を持ったアスランが来るのを待ちますが、

シンがいつまで待っても、一向に来る気配がありません。

覚悟を決めたシン、上着を脱ぎ捨て海に飛びこみます。

 

「ぶぶごぼ!」(苦しい!)

 

露出は多いくせに、妙に表面積の広い服のせいで、

どんどん海の底へと沈んでいくステラさん。

ネオが趣味で着せた服が、こんなところで逆効果に。

 

「安心しろ、オレはザフトのズゴックと言われた男だ」

 

泳ぎは得意なシン。

急いでステラさんの救助に向かいます。

それまで彼女は無事でいてくれるのでしょうか。

 

「ぶごぶぼごごぶがごご!」(ズゴックよりゴッグがいい!)

 

まだ若干の余裕を見せるステラさん。

 

「どっちでもいいだろ、そんなの!」

「げぶげぶびがぶぼ!」(全然違うの!)

 

暴れるステラさんを後ろから強引に抱き寄せるシン。

胸に触りまくりですが、状況が状況なので仕方ありません。

 

「よし!」

「ぷは〜!」

 

何とか救助に成功。

あとは陸まで彼女を連れて泳ぐだけです。

 

「にゃ!」

「うわっ!」

 

と思ったら、いきなり顔を思いっきり引っ掻かれるシン。

黒海を血に染めます。

 

「ぜえ…ぜえ……はあ…はあ……」

「ううっ……ぐすっ……ひっく……」

 

その後も暴れ回るステラさんに振り回されたシン。

ようやく陸にたどり着いた時には2人ともクタクタ。

ステラさんとの戦いは常に総力戦です。

 

「死ぬきか、このバカ!」

 

開口一番、ステラさんを怒鳴りつけるシン。

踊りながら海に転落する時点でありえないのに、

自分が飛び込んで助けようと思ったら、いきなり暴れ出して、

頬に未来の猫型ロボットのヒゲみたいな傷まで付けられた。

いくら女の子が相手とはいえ、一言言ってやらなければ気が済みません。

 

「死ぬ……バカ……」

 

「死ぬ」「バカ」はステラさんにとって最大のタブー。

誰でも本当のことを指摘されるのはとても傷つくもの、

ステラさんの表情が見る見るうちに青ざめていきます。

 

「うえ〜ん!」

 

そのまま号泣するステラさん。

彼女は痛みへの反応は薄いですが、

言葉で攻められるとすぐに泣いてしまいます。

 

「死ぬのはいや……バカは死ななきゃ治らない……」

「いや、どっちだよ!」

 

ステラさんの暴走はまだまだ続きます。

「死ぬのはいや」と言いながら、入水自殺を図るステラさん。

常にボケだったシンがツッコミに徹しているという事態から、

いかに緊迫した状況なのかが察知できます。

 

「いや!」

「ふごっ!」

 

何とか陸に引き戻そうとするシンに、

ステラさんのエルボーがいい角度で炸裂。

 

「ぐはぁ!」

 

ステラさんに触れるたび顔面に傷を作っていくシン。

このままでは、ステラさんの前にシンが死んでしまいます。

 

「死ぬのは怖い……牛は小岩井……」

「おいっ!待てってば!」

 

まだ泣き止まないステラさんですが、

むしろ、泣きたいのはシンの方です。

 

「大丈夫だ、君は死なない」

 

ステラさんを強引に抱き寄せるシン。

両手を押さえてしまえば反撃にもあわないし。

 

「ほんと?」

「そもそも、バカは死んでも治らない」

 

入水自殺しようとする少女を抱きしめる。

世界の中心で愛をさけびそうなシーンですが、

両者とも唇を紫色にしながら、ガクガク震えています。

 

「オレがちゃんと守るから!」

 

自分は無害と訴えるようにステラさんの頭を撫でるシン。

その仕種にネオの面影を感じ取ったのか、

ようやくステラさんも暴れるのをやめ、大人しくなりました、

 

「名前は?」

「ステラ」

「捨てられたのか……」

 

ずぶ濡れになった衣服を焚火で乾かす2人。

背中合わせの会話の中、ステラさんの境遇を聞き、

自分で勝手に解釈して同情するシン。

 

「あ、オレ、シン。シン・アスカっていうの、わかる?」

「……シン?」

「そう、シン。覚えられる?」

 

まるで幼児に教えるかのような口調のシン。

すっかり保父さん気分です。

 

「……ちん」

シンね」

 

お宅訪問する人ではありません。

 

「シンありがと、ステラを助けてくれて」

「別にいいよ、お礼なんて」

 

次第に打ち解けていく2人。

すると突然、ステラさんが立ち上がり、

股座からゴソゴソと何かを取り出しています。

 

「……ステラの大切なものあげる」

「うわわっ!」

 

精神の幼さと不釣合いに成熟した胸を露にさせ、

下着をずり下げ、潤んだ瞳でシンを見つめるステラさん。

何も知らない子供だと思っていた女の子が、

いきなり見せた大胆な一面に思わずたじろぐシン。

 

「あの、その、そういうのは、もっとこう、段階を踏んでですね」

 

なぜか敬語になるシン。

彼は女の子が苦手なわけではありませんが、

女の子に泣かれたり、裸の女の子を目の前にしたりすると、

異性として意識してしまい、どうしていいのかわからなくなるのです。

つまり、普段のルナマリアさんやメイリンちゃんは、

異性としては全くの興味対象外という訳です。失礼な。

 

「はい」

「……えっ?」

 

シンが勝手に妄想を膨らませていると、

ふいにステラさんが何かを差し出してきました。

 

「オレに?」

 

つられてステラさんの方を向くシン。

 

「あっ……」

 

さっきまで両手で胸を隠していたステラさんですが、

こうして右手を差し出しているということは、当然、胸元は無防備に。

シンの視線が、ステラさんの身体のとある一点に集中します。

 

「う、うわっ、ごめんなさい!」

(都合により、おっぱいプリンの映像をご覧頂いております)

 

 

「くれるの?」

「うん」

 

ステラさんがくれたものとは?

 

「かまぼこフィギュア……」

(……どうすりゃいいんだ、コレ?)

 

よくわからない物でした。

 

「……ありがとう」

 

とりあえずお礼を言っておくシン。

「こんなものいらないよ」などと言ってしまったら、

また泣いて暴れ出す可能性が大。

さすがに半裸で暴れだされたら放送できません。 

 

「ステラだと思って、大切にしてね」

「感情移入しにくいけど、がんばるよ」

 

満足そうに笑みを浮かべるステラさん。

アウルもスティングももらってくれなかったので、

シンがもらってくれたことがとても嬉しいようです。

 

「どうしたの?」

「な、なんでもない!」

 

ステラさんもすっかり安心しきったようで、

今度は背中合わせではなく、シンのすぐ隣に座ります。

救助が来るまでの間、前かがみになりながら、

半裸の女の子の隣で煩悩に耐え続けるという、

シンにとって拷問とも言える時が過ぎていきました。

 

「ったく、なんでこんな所で遭難するんだ?」

 

数時間後、救難信号に駆けつけたアスラン。

休日にもトラブルを起こすシンに呆れ果てた様子です。

 

「……だぁれ?」

「大丈夫、捕って食ったりしないよ」

 

女性キャラを片っ端から食い漁るアスランに、

強化人間の感からか、警戒心を抱くステラさん。

 

「カガリ!?」

 

衝撃の浮気現場を目撃か。(違います)

まさかシンが女の子と一緒にいるとは思わなかったアスラン。

自分もミーアとのことがあったため、強く叱る事はしませんでした。

 

「あ〜!スティング!アウル!」

 

そのままステラさんを車に乗せて走っていると、

前から来た車にステラさんが反応しました。

どうやら2バカ(語呂悪い)を発見したようです。

 

「ステラ?」

「あれ、ザフトのジープじゃんか」

 

男2人でオープンカーという羞恥プレイに耐えながら、

ずっとステラさんを探し回っていた2人。

 

「どうしたんだ、お前、一体?」

「あのね、えっとね、うみでね、どぼ〜ん!」

「何言ってるんだか、さっぱりわかんねえよ」

 

どうしてザフトのジープに?

まさかザフトに捕まってしまったのか?

心配する2人をよそにマイペースなステラさん。

 

「『海に落ちた』と言っています」

 

すでにステラさんの言葉を通訳できるまでに成長したシン。

すかさず2人にこれまでの経緯を説明します。

 

「この人のこと、色々わかんなくて、どうしようかと……」

「それは……とんだご迷惑をおかけしました……」

「オレたちですら、わかってないもんな……」

 

シンの苦労話を聞き、思わずため息を漏らす2人。

苦労を共有する彼らの間に妙な連帯感が生まれます。

 

「シン、行っちゃうの?」

「うん、お兄さんたちも来たし、もう大丈夫だろ?」

 

迷子を無事、兄弟の元へ送り届け、

シンの長かった一日もようやく終わりを告げます。

 

「じゃあ、ステラ、お別れのダンス踊る……」

「おっ、2時間にも及ぶあの大作がついに!」

 

別れを惜しむステラさん。

すっかりシンのことが気に入ったようです。

 

「また会えるから、その時にね!」

 

シンもステラさんと別れるのは名残惜しいですが、

これ以上付き合っていると夜が明けてしまいます。

 

「シン……行っちゃった……」

「ザフトにもいい人はいるんだな」

「ああいう人とは戦いたくないもんだね」

 

次第に離れていく車。

だんだん小さくなるシンを見て、

脳裏にドナドナをリフレインさせるステラさん。

 

「シン……ステラを守るって……」

 

やがて姿が見えなくなっても、

シンを見送ることをやめないステラさん。

「オレが守る」と言ってくれたシンの言葉が、

ステラさんのピュアな心に深く刻み込まれたようです。

 

(上着、崖の上に脱ぎっぱなしだった……)

 

あまり考えずに「守る」なんて言ってしまったシン。

ステラさんが自分の運命を変える存在になるとは、

この時の彼は微塵も感じてはいませんでした。

いや、まだこの先どうなるかわからないですけど。

 

 

続く。

 

 


ホームページ制作