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【テキスト】ルナとはじめてのグフ

 

2005.3.2

 

前回までのあらすじ。

シンとルナマリアさんの大活躍(2機撃墜)のおかげで、

ガルナハンローエングリンゲートを突破したミネルバ。

マハムール基地のみんなやコニタンに別れを告げ、

黒海沿岸都市「ディオキア」へとやって来ました。

 

ちなみにこの街の名前の由来は、

イザークとディアッカが旅行で立ち寄った際に、

朝なかなか起きないディアッカに対してイザークが、

「ディアッカ起きいや」と何度も呼びかけ続けていたのが、

「ディアッカオキイヤ」「ディオキイヤ」「ディオキア」

とだんだん変化し……やっぱりいいです。

 

(買い物!)

(買い物!)

 

入港を待ちわびるホーク姉妹。

前回訪れたマハムール基地には何もなく、

唯一あった物といえばコーヒーぐらいでした。

ですが、コーヒーだけで喜ぶ奴などいるはずがありません。

 

(誘ったら一緒に来てくれるかな……)

 

妙にそわそわした様子のルナマリアさん。

その時、髪の毛のアスラン探知アンテナが反応しました。

 

「あっ……♪」

 

アンテナの指し示す方向を見ると、

ちょうど部屋に入ってくるアスランを発見。

誰よりも早くアスランの元へと駆け寄ります。

 

「ほら、すごく反応してますよ」

「それ、切ったらどうなるんだ?」

「方向感覚がなくなります」

 

張られた予防線など無視して突き破ればいい。

今日も着実にフラグを立てていくルナマリアさん。

(アスランにとって攻略対象のキャラだった場合)

 

「あううぅぅぅぅ……」

 

気づかぬうちにルナマリアさんに先を越され、

この世の終わりのような表情になるメイリンちゃん。

憎しみに呼応しているのか、髪の毛が鬼の角のようになっています。

 

「ジーク・ピンク!ジーク・ピンク!」

 

一方、港では黄色い歓声を上げて出迎える兵士たちが。

ルナマリアさん人気もついにここまで来たのでしょうか。

 

イワンとジョンに引き連れられて現れたのは、

コンビニ弁当の漬け物のような毒々しいピンク色のザク。

こんな羞恥プレイのような機体に乗るのは一人しかいません。

 

「働けよ国民!ラクス・クラインで〜す!」

 

そう、国民的痴女ことラクス(ミーア)の登場です。

林家ペーと双璧をなすほどピンク好きの彼女、

ついにザクまでもピンクに塗りたくってしまいました。

 

「うひ〜っ!でけ〜!たまんね〜!」

「……………」

 

大興奮のヴィーノ。

不特定多数の人がいる場所で、

テレビに映るアイドル相手に奇声を上げるのは、

周りから白い目で見られるので避けた方が懸命です。

その点、ヨウランはまだ空気の読めるタイプのようです。

 

「うわ、すごい衣装……」

 

気後れするルナマリアさん。

やはり、アスランの気を引くためには、

自分もあんな衣装を着なければならないのか。

そもそも、あんな衣装、店で売っているのか。

 

「あれ、どうかしましたか?」

 

さっきからアスランが固まっています。

ピンクに染まったザクによほどショックを受けたのでしょうか。

 

「マンマミーア!」

 

「イメージが変わった」とは人伝に聞いていましたが、

まさかこれほどまで変わっていたとは思ってなかったアスラン。

今までのラクスのイメージを全く無視した姿で現れたミーアに、

思わず少女マンガのようなポーズをとってしまいました。

 

「黒海のキャビアが食べた〜い♪」

 

そして始まる慰問お笑いライブ。

ピンク色のザクの上でハイテンションな曲を歌う様は、

捉えようによっては前衛芸術とも言えるかもしれません。

しかし、今回はいつも以上に媚びた仕種が目立ちます。

これにはさすがの観客も疑問を抱くのではないでしょうか。

 

「捕ってきます!」

「オレも行きます!」

 

何の疑問も抱かず、熱狂する観客。

 

(なんだ、こいつら……)

 

その様子を冷めた目で見つめるアスラン。

彼は両手に美人姉妹を侍らせているうえに、

みんなが熱狂しているのは元婚約者(の偽者)と、

オスとして完全に優位な立場ゆえ、余裕があります。

 

「ご存じなかったんですか? おいでになること」

「ああ、まあ、いや……」

 

ルナマリアさんの質問に口篭るアスラン。

あそこにいるのは、ミーアであってラクスではないのですが、

それを言うわけにはいかないし、言っても信じえもらえないでしょう。

実物のラクスに会ったことのある人は、この場にはほとんどいません。

 

「ちゃんと連絡取り合える状況じゃなかったですもんね」

 

なぜか嬉しそうなルナマリアさん。

カガリはユウナと結婚したことになっているので、

あとはアスランがラクス(ミーア)と別れてくれれば、

自分とアスランの間の障壁も消え去ると思っています。

 

「その点、私ならいつも一緒にいられますね。

連絡も取り放題ですし。メールアドレス教えてください」

 

他の男相手には決して見せない必殺のスマイルで、

どうにかして連絡先を聞き出そうとするルナマリアさん。

 

「ああ、うん、今度ね……」

 

うっかりメールアドレスなんて教えてしまったら、

朝から晩まで引っ切り無しにメールが送られてくることは確実です。

 

「む〜」

 

アスランを独り占めするルナマリアさんに対して、

あからさまに不満の表情を浮かべるメイリンちゃん。

ここから逆襲のメイリンが始まります。

 

「うっ……」

 

ちょうどその時、後ろを通りかかった人が、

偶然メイリンちゃんの背中にぶつかりました。

これは千載一遇のチャンスとばかりに作戦開始。

 

「きゃうん!」

 

大げさに悲鳴を上げるメイリンちゃん。

古い施設などの取り壊し反対を訴える人で、

解体工事を進めようとする作業員が軽く触っただけで、

ものすごく吹っ飛ぶ人がいますが、アレと同じです。

 

「ううっ……よろよろ、よろれいほ〜」

 

かなりわざとらしくよろけるメイリンちゃん。

そのまま隣にいるアスランに寄りかかります。

お酒に酔った時などにも使われる古典的な戦法ですが、

C.E.73の現代においても、未だに使われているようです。

 

「あぁん、メガネ、メガネ……」

「あんたメガネかけてないでしょ!」

 

コツコツとアプローチを重ねるルナマリアさんと違い、

いきなりアスランの腕に自分の胸を押し付けるという、

直球ド真ん中の肉弾戦を仕掛けるメイリンちゃん。

 

「す、すみません、誰かにぶつかられて……」

「ちょっと、さっさと離れなさいよ……」

 

おもいっきりネコをかぶるメイリンちゃん。

己の魅力をフル活用したやり方でアスランを攻略します。

ですが、肝心のアスランは予想外に落ち着いた反応。

彼は女の子の胸が腕に押し付けられるのに慣れている(どんな奴だ)ので、

この程度の接触では、ドキドキすることはないのです。

 

「ここは危ないな、向こうに行こう。こいつら必死すぎる」

「は、はい……どこまでもお供します」

 

口を閉じることも忘れ、ライブ会場へ走る兵士たち。

みんな、戦場の何百倍も必死な顔をしています。

 

(この泥棒め……)

 

思わぬライバルの出現に闘志を燃やすルナマリアさん。

姉として妹にだけは負けるわけにはいきません。

 

「あ…頭が沸騰しそうですぅ……」

「コラ、待て〜!」

 

急いで2人を追いかけるルナマリアさん。

自分の知らぬ間に妹がこんな技術を習得していたとは。

アスランもメイリンちゃんの腰に手を回し満更でもない様子。

このまま医務室のベッドにでも運び込まれたら、とんでもないことになります。

 

「あれ〜? みんな見ないの〜?」

「お前は引っ込んでろ!」

 

 

「……ごめんなさい」

 

一人その場に取り残されるシン。

恋愛の前では友情など脆く儚いものです。

 

「そ〜れ、おっぱいおっぱい♪ ……あれ?」

「……………」

 

デュランダル議長の思惑が見え隠れするこのライブ。

熱狂する者と冷めた者、反応は人それぞれのようです。

 

「帰るか……」

「そうだな……」

 

そしてここにも、冷めた奴らが。

どんなルートを辿って来たのかわかりませんが、

偶然ディオキアの街に来ていて、ライブを見物していた3バカ。

スティングだけ妙に気合が入った格好をしていますが、

おそらくサマソニか何かと勘違いしたのでしょう。

 

(あのピンクのザク乗りたかった……)

 

新たな強奪計画を計るステラさん。

シートベルトを胸の谷間に挟んでいるところが、

演技をしているミーアと違って、本物の天然たる証明です。

 

「あっ……!」

 

何かを見つけたステラさん。

さっきまでの物憂げな表情から一転、満面の笑顔に。

 

「海だよ、うみ〜、スティングも見て見て〜!」

「いや、見たら事故るから」

 

海岸線沿いの道からは青く澄んだ海が一望でき、

ショッキングピンクのザクを見て痛んだ目の保養には最高です。

海が好きなステラさんもこれには大喜び。

彼女はライブより水族館にでも連れて行った方が喜びそうです。

 

「うみ〜うみ〜」

 

無邪気にはしゃぐステラさん。

こんなにカワイイ笑顔を浮かべることができるのは、

この世界中を探しても、ステラさんぐらいのものでしょう。

 

「元気そうだね、活躍は聞いているよ、レイ」

 

また、デュランダル議長もディオキアを訪れていました。

艦長と共に面会に訪れたレイに言葉をかけるデュランダル議長。

しかし、常に無表情な彼のことですから、当然冷めた反応です。

 

「ぎる〜ぎる〜」

 

かと思いきや、ステラさんに負けず劣らずカワイイ笑顔を浮かべるレイ。

一体、彼に何が起こったのでしょうか、お昼にワライタケでも食べたのか。

 

「ギル〜!」

 

そのままデュランダル議長に抱きつくレイ。

何やらレイの背後に残像が映っていますが、

これは過度の興奮によって高くなりすぎた体温を

強制廃熱するため、質量を持った残像が発生しているのです。

 

「ギルギルギルギルギル〜♪」

 

僕は毎回レビューを作成することによって、

自分の中で少しずつ各キャラの設定を構築するのですが、

ほとんど決まりかけていた「常にクールで無愛想」という、

レイのキャラ設定が音を立てて崩れていった瞬間です。

 

(……タヌキとキツネが抱き合っている)

 

あまりに異様な光景に固まる艦長。

ミネルバでまともな人間は艦長だけかもしれません。

 

「お取り込み中、失礼します」

 

初登場したものの、イマイチネタにしにくい西川さんに案内され、

ルナマリアさんたち他のパイロットも集合しました。

デュランダル議長が指示して彼らを呼び寄せたようです。

 

「久しぶりだね、アスラン」

「はい、議長もお元気そうで」

 

パイロット一人一人に言葉をかけていくデュランダル議長。

 

「え〜と、それから君は……」

 

ルナマリアさんの前で固まるデュランダル議長。

どうやらルナマリアさんに関しては記憶にないようです。

 

「ルナマリア・ホークであります!

先日は2機のMSを撃墜しました」

「ふ〜ん」

 

あっさり流されるルナマリアさん。

 

「ス、スン・アスカです!」

 

微妙に訛ってしまったシン。

デュランダル議長の前では、さすがのシンも緊張しているようです。

 

「このところは大活躍だそうじゃないか。

君には叙勲の申請も来ていたね」

「えっ……」

 

デュランダル議長が自分のことを覚えていてくれただけでも嬉しいのに、

それに加えて叙勲の申請まで。嬉しいこと続きでシンも驚きを隠せません。

 

「……なめてるやつで賞だ」

「ええっ、あの伝説の!」

 

密かに申請していたアスラン。

 

「あ、ありがとうございます!」

 

そうとは知らずに大喜びのシン。

何かで表彰されるなんて、生まれて初めてです。

 

「例のローエングリンゲートでも、

すばらしい活躍だったそうだね、君は」

 

そのまま議長と会談することに。

最近、目覚ましい活躍を見せているシンに、

デュランダル議長も注目している様子です。

 

「いえ、そんな、あれはザラ隊長の作戦がすごかったんです。

自分はただ、それに従っただけで……

 

あっさりと聞き捨てならないことを言うシン。

 

(……従っただけ?)

(従った……かな?)

 

前回のシンちゃん語録。

●「やれますよ、やる気になれば」(作戦を聞く前)

●「そいつの言うとおり、あんたがやればいいだろ!」

「何がお前ならできると思っただ、あの野郎!」

 

 

「この街が解放されたのも、

君たちがあそこを落としてくれたおかげだ。

本当によくやってくれた」

 

ミネルバの活躍を手放しで褒めるデュランダル議長。

議長に直接労われるのは、ザフトの軍人にとって大変な栄誉です。

 

「いえ、そんな、自分は……」

「ありがとうございます!」

 

謙遜するアスランに対し、

さも当然のように反応するルナマリアさん。

 

(……えっ?)

 

ルナマリアさんと同列に扱われることに疑問を感じるアスラン。

そもそも「君たち」の中にルナマリアさんは入っているのか。

まあ、何にせよ、最近のミネルバの活躍は期待以上の働きで、

議長としても、艦長とパイロットから話を聞きたかったのは確かのようです。

 

「でな、おっぱいがこう、ババーンと!」

「むむ、なるほど」

 

招待されなかった副艦長。

 

「戦いを終わらせるということは、

戦いを始めるより遥かに難しいのだよ」

 

その後も戦争と平和について延々と語るデュランダル議長。

 

「戦争は何故なくならないのか? 君は何故だと思う、シン」

 

軍人は何を思って戦っているのか、

現場の声を聞こうとするデュランダル議長ですが、

一番質問してはいけない人に質問してしまいました。

 

「むにゃむにゃ……」

 

長くて難しい話は苦手なシンちゃん。

案の定、既に睡魔との戦争に敗れ去っていました。

 

「……………」

 

 

「おい、シン!」

「シン、起きて!」

 

このままでは、ミネルバ南極基地送りの危機。

必死でシンを起こそうとする一同。

 

「は、はい! 自分はバカのせいで、すみません!」

 

慌てて返事をするシン。

意味不明な答えになってしまいました。

  

「それもある。

だがもっとどうしようもない、救いようのない一面もあるのだよ」

 

偶然言った答えが正解でした。

 

「例えば、あそこのグフイグナイテッドのように、

戦争では次々と新しい機体やミサイルが作られる。

その一機、一体の価格を考えてくれたまえ」

 

名前が長いので今後は「グフ」で統一します。

 

「ね、値段……?」

 

いきなり話題が世界まるごとハウマッチに。

無駄弾を使いまくっているルナマリアさんには耳の痛い話です。

 

(アレを作るのに何億、何十億も……)

 

確かに、高い一発ギャグです。

 

「そう、そこには、戦争を産業として考え、

作ってきた者たち『ロゴス』の存在があるのだよ」

 

ブルーコスモスの母体となっている「ロゴス」

彼らが自分たちの利益のためだけに戦争作り出し、

その結果、次々と新しい機体やミサイルが作られ、

バンダイの静岡工場もフル稼働しているのです。

 

「そ、そんな……」

 

自分の想像を越えた内容に絶句するシン。

ただ単純に悪い奴らを倒せば戦争は終わる、

そう信じてこれまでずっと戦ってきたのですが、

実際、悪い奴らというのは戦場には現れず、陰で暗躍するもの。

一介のパイロット風情がどうにかできる相手ではありません。

 

会談の後、高級ホテルへと招待されたルナマリアさんたち。

デュランダル議長の厚意で今夜はここに宿泊させてもらうことに。

思いがけず訪れたチャンスに期待で胸を膨らませるルナマリアさん。

邪魔なメイリンちゃんもいないし、今夜は最上階のバーで、

アスランと二人きりで夜景を見ながら、一気に関係を進展させよう。

全てはこのときのために、今までコツコツと積み上げてきたのです。

 

「アスラ〜ン!」

 

しかし、そんなルナマリアさんの野望を打ち砕くべく、

高級ホテル内を例の衣装(普段着)で爆走してくるミーア。

 

「急いで戻ってまいりましたのよ、あのザクに乗って!」

「ふぐっ!」

 

ルナマリアさんを吹き飛ばし、そのままアスランへ突撃。

 

「今日のステージ、見てくださいました?」

「えっ、いや、その……」

 

ステージというと、あのお笑いライブのことでしょうか。

「良かった」と言えばいいのか「面白かった」と言えばいいのか、

どう答えていいのかわからず、言葉に詰まるアスラン。

 

(見てないわよ、私と一緒にいたんだもん)

 

勝ち誇った態度のルナマリアさん。

自分たちはアイドルと遊んでいるほど暇じゃない。

ここはアスランがビシッと「見ていない」と言ってくれるでしょう。

 

「ああ、うん、よかったよ、個性的で……」

「次のライブはアスランも一緒に歌いましょう!」

 

女性相手にはどうしても甘くなってしまうアスラン。

曖昧な返事をしてしまい、ミーアの勢いを止められません。

 

(……もう、さっさと帰ってよ!)

 

いつものルナマリアさんなら強引に割り込んでいるところですが、

相手がラクス(ミーア)では、さすがのルナマリアさんでも無理です。

エリート相手に恋をするということは、その周りが偉い人揃いなので、

あくまで一般兵のルナマリアさんには、なかなかに難儀なことのようです。

 

「どうぞ、久しぶりにお二人で食事でもなさってください」

 

そこに、デュランダル議長がとどめの一言。

 

「へ……?」

 

突然現れたピンク色の女にアスランを奪われ、

ルナマリアさんの夢、はかなくもやぶれたりです。

 

「嬉しいですわ!フレンチ? イタリアン? 和食? 中華?」

「ちゅ…中華」

 

一人で盛り上がるミーアにアスランも断りきれず。

カガリと再会するまで、彼の女難はしばらく続きそうです。

 

「マユの携帯忘れた……」

 

アレがないと眠れないシン。

ステラさんと再開するまで、彼の女難は始まりそうにありません。

 

 

続く。