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【テキスト】限界離脱領域

 

2007.11.6

 

「アレルヤ祭り、始まるよ〜!」

 

「ガンダムOO」を見ているみんな、ハレルヤ〜(こんにちはの挨拶。流行らそうね)

ガンダムマイスターの地味担当こと、アレルヤ・ハプティズムだよ。

毎週番組を見ているみんなはもちろん、僕たち4人をフルネームで言えるよね?

僕の名前、アレルヤはともかく、ハプティズムって姓は覚えにくいと思うけど、

パプテマス・シロッコがバカリズムのメンバーに加わった絵を想像すれば分かりやすいよ。

今までは僕の出番が少なくて、ファンのみんなをやきもきさせていたけど、今回の話は僕が大活躍!

「30分で逆シャアを超えた」と各板のスレッドに僕が自作自演して回るぐらいの内容だよ。お楽しみに。

そして、ファンのみんなにもう一つ大ニュース。そんな僕の活躍が早くも漫画になったよ。

僕がソレに入る前のバイオリニスト時代を描いた作品なんだ。今流行のスピンオフってやつだね。

ますます高まる「ガンダムOO」と、アレルヤ・ハプティズムの人気に今後も目が離せないよ。

各アニメ雑誌の人気投票でも僕に組織票よろしくね。4人中最下位だけは絶対に避けたいんだ。

 

「いいこと沙慈、しっかり勉強してくるのよ?

奨学金で行ける研修旅行でも、旅費は私が出してるんだから」

「ごめんね、ルイスがどうしても個室がいいって言うから……」

「はぁ、お金持ちのお嬢様って……」

 

人革の軌道エレベーター「リニアトレイン」の発着ロビー。

今日から沙慈はルイスと共に、研修旅行で宇宙に上がります。

研修旅行なので、旅費にお金をかける必要はないのですが、

ルイスのワガママで、わざわざ高い個室を取ることになり、

見送りに来た絹絵も、やれやれと溜め息をつきます。

 

「私がどうかしましたか?」

「げえっ、ルイス」

 

ご自慢の巨乳をゆさゆさ揺らしながら現れたルイス。

お金持ちなのに毎回同じ服なのはどういうことかと思われそうですが、

これは同じ服を何着も持っているからで、着替えていない訳ではないのです。

いや、着替えていない方が興奮するか。よし、着替えていないという設定にしよう。

 

「羽目を外し過ぎないようにね。ルイスに変なことしちゃダメよ」

「な、何言うんだよ姉さん!」

「あはは、大丈夫ですよお姉様。

沙慈君にそんな甲斐性ありませんから〜」

 

研修とはいえ、彼女と二人で初めての旅行。

18時台のアニメに相応しい行動を取るように釘を刺す絹江。

旅行から帰って来たら、二人が三人になっていたでは、

保護者として双方の両親に合わせる顔がありません。

しかし、ルイスはそんな絹江の心配を一笑に付します。

どうやらこの二人、まだ何もやっていないようです。

 

「ぶっちゃけ、この娘はあんたに合わないと思うんだけど……」

「聞こえてますよ、お姉様」

 

何もやっていないなら、尚更話は早い。

本当にルイスが自分の彼女として相応しいのか、

沙慈にもう一度考え直すように絹江は忠告します。

そんなに胸が好きか。あんたにとって性格<胸なのか。

思春期の欲望で一生を棒に振ってしまうのは危険です。

 

「ふうっ……」

 

今週のグラハム専用サービスシーン。

待機中の自室で筋力トレーニングに勤しむ刹那。

黒のタンクトップ一枚という色々な筋の方を刺激する格好。

刹那本人には、そっちの気は全然ないつもりですが、

グラハムに植え付けられた種は徐々に芽を出しているようです。

 

「見えてるよ」

「見せてんの」

 

そんな訳で軌道エレベーターに乗り込んだルイスたち。

室内が無重力になった途端、ルイスはシートベルトを解いて、

宇宙遊泳と洒落込みます。(二人抱き合ってクルクルとは回りませんでした)

彼女が個室を要求したのは、こうやって遊びたかったからのようです。

 

「……………」

「……………」

 

同じ便に人革のセルゲイ中佐とソーマも搭乗していました。

親子ほど年の離れた二人では、会話が盛り上がるはずもなく、

無重力のはずの室内は、地上よりも重苦しい空気に包まれます。

彼女に気を使ってわざわざ個室を取ったことを、中佐は今更になって後悔します。

 

(……この角度から映す意味は?)

 

とはいえ、会話の材料がないのも無理はありません。

彼女は超兵計画のために生み出されたデザインベイビー。

宇宙環境に適応するため、体内にナノマシン埋め込まれるなど、

完全に兵器としての運用目的で、この世に生み出された存在なのです。

中年男性を喜ばせるためのトークなど、身に付けているはずありません。

 

「こちらです。中佐」

「この機体か……」

 

セルゲイ中佐がソーマを連れてやって来たのは、

軌道エレベーター上にある人革の軍事施設でした。

これが人革の対ガンダムの切り札「ティエレン・タオ・ツー」

人革の量産型モビルスーツであるティエレンを改良し、

超兵であるソーマの反応速度に対応させた機体です。

 

「……こ、これに乗るでありますか?」

「うむ、可愛いだろう」

 

無骨なデザインに似合わぬ派手なピンクのカラーリング。

どちらかというとサクラ大戦に出てきそうな機体に、

いつも無表情なソーマも、さすがに表情を曇らせます。

本来はダークグレーの渋めなカラーになる予定でしたが、

「少尉は女の子なんだから、ピンクの方がいいだろう」という、

セルゲイ中佐の粋な計らいで、急遽ピンクに塗りなおされました。

兵器として育てられた少女に対する中佐の生暖かい愛情。

今後も中年男性特有の美的センスで、ソーマを困らせることでしょう。

 

「食後のお飲み物、何かお持ちしましょうか?」

「あっ、梅こぶ茶を……」

 

二日後、人革のモビルスーツ性能実験を監視するために、

キュリオスと共に軌道エレベーターで宇宙に上がるアレルヤ。

アテンダントの女性相手に一目惚れをし、気取った態度を見せますが、

直後に彼女がソレを批判したことで、その恋はわずか5秒で終了しました。

 

「お嬢様、そろそろ時間です」

「ええ、わかっているアル」

「ルイス、そろそろ時間だよ」

「うん、わかってるって」

 

宇宙での実習を終えて、重力ブロックに戻った沙慈たち。

その向こうからは、どこにでも現れる中華一行が歩いてきます。

ついに番組タイトルでもあるダブルオーが初接近です。

 

「あらあら、可愛いカップルアル」

 

すれ違い様、沙慈に微笑みかける留美。

ルイスの尻に敷かれている沙慈の様子から、

紅龍と同じ、忠実な犬の空気を感じたようです。

 

「これは……」

 

同様にニュータイプの沙慈も留美に反応。

コートの上からでも、一目で彼女の大きさを見抜きました。

ルイスのように誰の目にも大きさが分かるようなのもいいが、

服で大きさを隠すことにより、脱がせた時の喜びが倍増する。

なるほど趣深い。さすが四千四百年の歴史は伊達じゃないな。

 

「最大加速に到達」

「うむ、これが超兵の力か……」

 

宇宙では、人革のモビルスーツの性能実験が開始され、

ソーマは超兵使用のティエレン・タオ・ツーを見事に操ってみせます。

その高い能力には、セルゲイ中佐も感服するしかありません。

強化人間特有の精神の不安定さも感じられませんし、

これはガンダムにとって、大きな脅威になるかもしれません。

 

「何? この感じ……」

 

機体が軌道エレベーターに近づいた途端、

ソーマの頭の中を例えようのない妙な感覚が襲います。

シリーズお馴染みの例の高音さえ鳴らなかったものの、

これは紛れもなくニュータイプ同士の共鳴です。

一体相手は誰なのでしょうか?

 

「何かが、私の頭を刺激して……」

「あっ、トイレ行きたい……」

 

その相手とは――よりにもよってアレルヤでした。

 

「ううっ、頭が痛い……お腹も痛い……」

 

直後、猛烈な頭痛と腹痛に襲われ、その場にうずくまるアレルヤ。

宇宙に上がった途端、復帰時の桑田みたいなポーズで地面にうずくまる男。

「宇宙に来れたのがそんなに嬉しいのか?」と人々は遠巻きに見つめます。

 

「くそ! どこのどいつだ! 勝手にオレの中に入ってくるのは!」

 

顔を上げたアレルヤですが、何やら様子がおかしいです。

いつもの何を考えているのかわからない表情から一変、

凶悪な顔つきになり、言葉遣いも乱暴なものになっています。

今まで何の説明がありませんでしたが、どうやら二重人格だったようです。

いや、もしこれで二重人格じゃなかったら、本当に放送できない人ですので。

 

「あなたは誰?」

 

突如、自分の脳内に響く乱暴な男の声。

刺激しないように恐る恐るアレルヤに尋ねるソーマ。

知らない男の人と頭の中の携帯電話で会話が出来る。

乙一の短編にあるような素敵なシチュエーションですが、

繋がったのがアレルヤでは、一気に暗黒ホラーになります。

 

「てめえ、殺すぞ!」

 

一刻も早くトイレに行きたいところをソーマに邪魔され、

まるでクリリンを殺されたかのように怒り出すアレルヤ。

うずくまったかと思ったら、急に叫びだす半袖ぴっちり肌着の男。

二人の会話が聞こえない周囲の人から見たら、完全に危ない人です。

 

「アレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレアレ

「いやあああああああ!」

 

脳内にリフレインするアレルヤの言葉。

今までヒーリング音楽しか聞いたことがない人が、

デスメタルを最大音量で聞かされるようなもので、

変態に免疫のないソーマの精神は即座に崩壊します。

 

「いやあっ! 髪型が生理的にいやああぁっ!」

「やめろ! やめるんだ少尉!」

 

暴走したソーマは原因であるアレルヤを消そうと、

軌道エレベーターに向かってライフルを乱射します。

 

「もう! なんなのよ〜!」

 

二人の電波のケンカに巻き込まれた沙慈たち。

攻撃を受けた彼らの乗っている重力ブロックは、

軌道エレベーター本体から切り離され、

そのまま宇宙を漂流します。

 

「オレを殺せ、アル!」

「兄さん!」

 

その光景を見たアレルヤの脳裏に、過去の記憶が浮かび上がります。

漂流する宇宙船、幼い二人の兄弟、自分を殺せと告げる兄。

詳しい内容はわかりませんが、どうやらアレルヤには兄がおり、

過去の出来事をきっかけに、彼の中の別人格となった模様。

今まで名前にかけて「ハレルヤ」と言っていると思われていましたが、

それは自分の中の別人格である兄に呼びかけていたようです。

 

「兄さ〜ん!」

 

そんな過去のトラウマを思い出し、元の人格に戻ったアレルヤ。

人格がコロコロと変わって訳がわからないという人のために、

ここでアレルヤの二つの人格の見分け方を紹介しておきます。

 

アレルヤ(おとなしい)  ハレルヤ(ヌワンギ) 

 

このように前髪が左分けか右分けかで判断が可能です。

二つの人格が統合された際は、真ん中分けになると思われます。

 

「あいや〜、これは困ったアルなぁ……」

 

別の区画にいて難を逃れた留美。

彼女の持っているニントンデーDS(中国製のパチ物)によると、

切り離されたブロックは、後14分で地球の重力圏へ引き込まれてしまうとのこと。

救助隊も発進したようですが、どうやっても間に合いそうにありません。

何とか助けてあげたいところだけど、私はか弱いただの美少女セレブ。

ここは潔く諦めて、ラウンジに戻ってオレンジジュースを飲むアル。

 

「お嬢様!」

「どうしたアル?」

「アレルヤ・ハプティズムが……」

 

留美の元に紅龍が珍しく焦った表情で駆け寄ります。

トイレに行っていたはずのアレルヤが行方をくらましたのこと。

まさか間に合わなかったのか。これは未曾有の大惨事の予感です。

 

「はい? どちら様アルか?」

「ですから、アレルヤ・ハプティズムです。あの地味な……」

 

聞きなれぬ名前に困惑する留美。ガンダムマイスターって、

刹那君とロックオン兄やんと高慢ちきメガネ以外いたアルか?

このように、誰よりも地味で目立たないのをいいことに、

今回も軍事スパイ的な任務を受けていたアレルヤでしたが、

あまりに地味すぎて、紅龍もいなくなったことに気付きませんでした。

 

「ふんっ! ぬうううううんっ!」

 

セルゲイ中佐は、ソーマの機体を部下に回収させると、

降下を食い止めようと、勇敢にも単機でブロックを押し始めます。

アムロは大勢のギャラリーに囲まれてのアクシズ押しでしたが、

中佐はたった一人での孤独な作業。気が折れてしまいそうです。

 

「大変だ! この区画は後5分で地球の重力圏に捕まっちまう!」

「さ、さじぃ……」

「冗談だろ? あと5分なんて……」

 

ブロック内に取り残された数多くの乗客。

飛び込んでくる絶望的な情報に沙慈は顔を青くします。

今18時18分だから、ちょうど本編が終わる時間じゃないか。

助かるにしても全滅にしても、そのままエンディングを迎えることになる。

休日の夕食時に団欒する家庭を絶望の底に叩き込むつもりなのか。

 

「これまでか……」

 

懸命にブロックを押し続けるセルゲイ中佐ですが、

ティエレン一機の推進力ではどうすることも出来ません。

限界離脱領域まで後200秒。救助隊も間に合いそうもなく、

このままでは自身の機体も重力圏に捕らわれてしまう。

200人以上の乗客を見捨てる他ないのか?

 

「ガンダムか!?」

 

セルゲイ中佐が無慈悲な現実を嘆いたその時、

突如、凄まじい速度で近づいてくる機体が。

アレルヤの乗るガンダムキュリオスです。

 

「何をしているアル!? 命令違反アル! そもそもお前誰アル!?」

「貴女にはわからないさ、宇宙を漂流する者の気持ちなんて……」

「何を言っているアルか? バイファム?」

 

本来の任務とは異なるアレルヤの勝手な行動。

留美は通信を繋いですぐに戻るように命じますが、

アレルヤはそれを無視。勝手に通信を切ってしまいます。

どうやら、ソレにおける留美の権限は大したことないようです。

 

「いっけえええええええ!」

 

ガンダムの中でも一番の機動性を誇るキュリオス。

アレルヤは上半身のみをモビルスーツ形態に変形させ、

下半身は飛行形態のままという、何とも気持ち悪い形態で、

ブロックを押し出し、降下をギリギリのところで食い止めます。

 

「ったく、あの子は……」

 

さすがのスメラギもこの事態は全くの予想外。

早急に今後の作戦を修正する必要がありますが、

はたして彼女はどのような指示を皆に与えるのでしょうか。

一番妥当なところでは、アレルヤの減給、または解雇ですが。

 

「全員、中央ブロックに集まれ!

繰り返す! 死にたくなければ、真ん中に集まるんだ!」

「これって……救助?」

「行こう、ルイス!」

 

乗客に中央ブロックへ集まるように指示するアレルヤ。

混乱するルイスの手をとって、沙慈は迅速に避難を開始します。

普段はヘタレだが、いざという時には身を挺して彼女を守る。

このようなギャップに女の子はコロッといってしまうものです。

サイトをご覧の男子諸兄も、宇宙旅行の際は参考にしてください。

 

「聞こえるか? ガンダムパイロット。

このブロックはまもなく限界離脱領域に入る。ここまでだ、離れろ」

 

キュリオスの推進力を持ってしても現状維持が関の山。

このまま燃料が尽きれば、二機とも地球圏に引き込まれてしまう。

セルゲイ中佐はアレルヤに救助を諦めて離脱するよう勧告します。

大気圏突入できるガンダムはともかく、中佐は死んじゃいますので。

 

「ねぇ、沙慈。もしかしたら、死んじゃうかもしれないから

今のうちに言っとくね。私ね……沙慈のことが……」

 

ブロックの中には今も不安な表情で救助を待つ多くの乗客が。

ルイスはもしこれが最期の時となっても後悔しないように、

今まで告げることが出来なかった思いを沙慈に告げます。

 

「フン、できないね! ソレに失敗は許されない」

 

アレルヤはセルゲイ中佐の忠告を聞き入れず、

尚も降下し続けるブロックを必死に押し続けます。

一体何が彼をここまで頑なに突き動かしているのか?

その絶対的なまでの自信の拠り所が理解できない中佐に、

アレルヤは確固たる確信の理由を突きつけます。

 

「それに……ガンダムマイスターは一人じゃない!」

 

「なにっ!?」

 

直後、地球の方から一直線に伸びる光条が、

三つあるブロックの連結部分のみを撃ち抜きます。

セルゲイ中佐が周囲を見渡しても機体の姿はありません。

ということはつまり、これは地上から放たれた一射ということ。

地上から宇宙を漂うブロックの連結部を正確に狙い撃つ。

こんな芸当が出来る人物は世界中探しても一人しかいません。

 

「さすがだ……ロックオン・ストラトス」

「ふっ……」

 

スメラギの命令を受けて休日返上でやって来たロックオン。

オリンピックの射撃代表として招集される日も近そうです。

 

「斬り裂け、刹那!」

「了解」

 

射線上にかかる雲をエクシアの剣が斬り裂きます。

アレルヤの勝手な行動で急遽変更になった今回の任務、

性格的に加担しないかと思われていた刹那でしたが、

今やグラハムが現れない任務なら何でも喜んで参加します。

「雲の中から奴が現れたらどうしよう」という不安を抱えながら、

ここのところ溜まったストレスを発散させるように暴れます。

 

「狙い撃つぜ!」

 

続けて放たれた二射目も見事連結部に命中。

右側も切り離され、残るは乗客が集まった中央ブロックのみです。

「まだ逃げそびれた人がいたんじゃないか?」と思われそうですが、

人革のこの後の発表によると「要救助者、全員救出」とのことです。

この短時間で本当に全員を確認できたのか怪しいところですが、

当局がそう言っている以上、そういうことにしておきましょう。

ちなみに人革は、中国、ロシアの旧共産圏を中心とした国家です。

 

「これが、ガンダムマイスターだ!」

「協力、感謝する……」

 

一つになったブロックを安全領域まで押し出したキュリオスは、

救助艇の到着を見届けると、颯爽とその場から飛び立ちます。

いくら敵であるソレとはいえ、人を救いたいという気持ちは同じ。

その行為にセルゲイ中佐も、恩義を感じられずにはいられません。

ありがとう、ガンダムマイスター。ありがとう、アレルヤ・ハプティズム。

 

めでたしめでたし。

 

「いや、全然ダメでしょう」

 

今回も一人蚊帳の外だったティエリアは苛立ちをあらわに

本来行うべきだった作戦を放棄したスメラギを非難します。

我々ソレの目的は、人助けではなく、あくまで戦争根絶にある。

目の前の人命より、戦争根絶によって救われる未来の人命。

パイロット個人の感情を捨てて、組織の任務遂行のためのみ動く。

今までのシリーズとは違うことをアピールし続けたこの一ヶ月が台無しだ。

だというのに、結果、命令違反したアレルヤの好感度が上がり、

真面目にやっている自分ばかりが、視聴者から嫌われ者にされる。

印象操作はアニメのお家芸とはいえ、これではやっていられない。

 

「よかった……」

「ねぇ、ルイス……」

 

ギュウギュウ詰めの救助艇の中、

沙慈と生きている喜びを分かち合うルイス。

そのバカップルぶりに死亡説が噂されていたルイスですが、

今回一度死に掛けたので、これで当分は死なずに済みそうです。

 

「最後に言おうとしてた言葉って、何?」

「えっ……?」

 

安堵するルイスに沙慈が不意打ちで問い掛けます。

救助のどさくさでうやむやになったけど、君があの時言った、

「私ね……沙慈のことが……」の後に続く言葉は何だったの?

 

「教えて」

「えっ……でも……」

 

ニヤニヤと嫌らしい笑みを浮かべながら返事を待つ沙慈。

何を言おうとしていたのかを完全に理解している顔です。

これこそ以前の3話のレビューで紹介した、ヘタレに責められる状況です。

沙慈が尻に敷かれている関係から誤解されやすい二人ですが、

基本的に沙慈はS。ルイスはMです。

 

「ねえ、教えて」

「ほ、ほえええぇ……」

 

沙慈の強引な責めに完全にはうはう状態のルイス。

あの時は非常時だったから、恥ずかしさとかはなかったけど、

大勢の視聴者が見ている前でそんな恥ずかしいこと言えない。

土曜の夕方にアニメを見ている悲しい独身男性が憤死しちゃうよ。

 

「……おしえない」

 

意地悪な沙慈に、いじけたようにぽつりと呟くルイス。

さっきまで死を覚悟していたとは思えぬほどのストロベリーぶり。

あんまり腹が立つので、急遽画像を差し替えてお送りしました。

 

 

 


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