【テキスト】変わる世界
2007.10.21
「おのれ〜! 沙慈の仇!」
本格的に始まったソレによる戦争への武力介入。
しかし武力による抑圧は人々の心に憎しみを生み出し、
また新たな戦争の火種を作ると言うことを少年達は知らない。
主人公であるルイスも恋人である沙慈がソレの戦闘に巻き込まれ、
後遺症で台詞に「荒れるや」が付く何とも気の毒な男になってしまった。
復讐を誓った彼女が学園の地下で見つけた兵器。それがぱにぽにXである。
(第21話「二人のコーラサワー」より)
「よもや君に出会えようとは……乙女座の私には、
センチメンタリズムな運命を感じずにはいられない。
グラハムはまだ27だから……」
「さ、触んないで!」
グラハムの乗るフラッグに強襲された刹那。
機体の名前通りのグラ×刹那フラッグを立てられそうになり、
大慌てで訂正します。ただでさえそういう風に見られがちな今作、
公式にカップリング認定されてしまっては、たまったものではない。
「離れろ!」
「くううっ! 愛が痛い!」
尚も迫る変態にビームサーベル一閃。
パイロットの腕はどちらが上かわかりませんが、
機体の性能の差は、エクシアが段違いで上のようです。
ライフルを斬り落とされたフラッグはそのまま帰艦します。
(酷い目に遭った……)
第一話でどんな敵とでも戦うと決意したものの、
さすがに今回のようなケースは想定していなかった。
生まれて初めて味わった貞操の危機に怯える刹那。
今後、勝手な行動は取るまいと心に決めたのでした。
「よう、遅かったじゃないか、この聞かん坊め」
ロックオンたちに遅れて刹那も集合場所に到着。
ここは人革の軌道エレベーター。
この世界における宇宙への玄関口になっており、
民間、軍事、目的は問わずに使用されています。
「死んだかと思った」
「何かあった?」
「思い出したくもない……」
「ま、まあ、全員無事で何よりってことで」
どうして彼らが集合場所にここを選んだかというと、
プトレマイオスの動力にはガンダムが使われているらしく、
ヴァーチェを軌道エレベーターで宇宙へ戻す必要があるようです。
コロニー開発用の資材に紛れ込ませればバレないとのことで、
先日、テロにあったのにも関わらず、荷物へのチェックは甘いようです。
「ミルク……」
「オレの奢りだ」
「いや、今はいい……」
先ほどの出来事が相当ショックだった刹那。
今はミルクにすら変な連想をしてしまう始末です。
出来ることなら、オレが代わりに宇宙に上がりたい。
あの変態には、もう二度と会いたくないからな……
「グラハム・エーカー中尉、ビリー・カタギリ技術顧問、
対ガンダム調査隊への転属、受領いたしました!」
しかし、そんな刹那の願いは儚くも散ることになります。
グラハムたちは新たに創設された「対ガンダム調査隊」に転属。
今まで彼の趣味で行っていたガンダムへのストーキング行為が、
任務という大義名分を得て、堂々と行えるようになりました。
「退屈だなぁ……」
「ふふ〜ん♪」
ソレによる武力介入も、平和な日本では遠い異国の話、
ルイスたちの通う高校では、何事もなく授業が行われています。
頬杖をつき退屈そうに講義を聞いている沙慈に対して、
ルイスはよほど興味があるのか、熱心に手を動かしています。
前回、「頭は弱い子」と書いたことをここに訂正します。
「じゃ〜ん! 完成だ〜!」
やっぱり頭の弱い子でした。
「工学部なのに、どうして歴史の単位が必要なんだろう?」
「各国との技術者との交流のためにも、
歴史観を養う必要がある。最初に言ってなかった?」
「理解はできるけど……」
高校の履修システムに不満を唱える沙慈。
先日もソレの活動目的に関して疑問を覚えたように、
何事も論理だった説明がなければ納得できない理系脳のようです。
そんな彼をルイスは教授の口調を真似て茶化します。
「あら、そのおかげでわたしは留学できてるんだけどぉ?」
「それについては感謝してる……」
「ホントに?」
そう、ルイスはスペインからの留学生なのでした。
大人しそうな顔して、巨乳スペイン娘を落としたということで、
それまで校内でも地味だった沙慈は、一躍有名人になりました。
「巨乳墜つ」とルイスファン男子は大号泣したものです。
「二年後には留学もおしまいなのよね……」
「ど、どうしたの? 急に……」
「ねぇ、沙慈は将来の事、考えてる?」
「漠然とね」
急にしおらしくなるルイス。
どんなに沙慈と仲良くても自分は留学生。
二年後には国に帰るかどうかの選択が迫られる。
国に帰ったら、今度はいつ日本に来られるかわからない。
沙慈が言うんなら、ずっと日本にいてもいいんだけど……
「その中にわたしの事は入ってる?」
「漠然とね……」
「むき〜! ちゃんと考えろ〜!」
さすがに17歳で結婚は考えておらず、
あいまいな返事をして誤魔化そうとする沙慈。
嘘でもいいから「入ってる」と言って欲しかったルイス。
沙慈の煮え切らない態度にぶち切れて席を立ちます。
「こういうとき、追いかけるの!」
「えっ!?」
「コラッ! ボサっとしない!」
「は、はいぃ〜!」
かと思ったら、正しい対処法を教えるなど、
沙慈を完全に尻に敷いているルイス。周囲も二人を笑っています。
どういう経緯で二人が付き合うようになったのかわかりませんが、
昨今は「ヘタレ萌え」なる人種も存在するらしいので、
おそらくルイスも沙慈のこういうヘタレ部分に惹かれていて、
時折、そのヘタレから責められるのに至上の興奮を覚えるのでしょう。
「ちゅ〜ちゅ〜アル」
前回のジャングル探検隊の格好(コスプレ)から一転、
高級そうなホテルの最上階にドレス姿で現れた留美。
オレンジジュースを「うまいアル。うまいアル」と啜っています。
「ここのお勧めは、オリジナルカクテルだよ」
「あら、私はまだ未成年ですアル」
「おおっと、これは失礼……」
「本当に失礼アルね」
セレブゆえに様々なVIPとの交遊がある彼女、
今夜のお相手はユニオンのアレハンドロ・コーナー。
ソレ側の人間のようですが詳細は不明です。
今のところ公式サイトにも載っていないので、
実際のところ、たいして重要な人物でもないのでしょう。
気になる方は、各自雑誌などで調べてください。
「あっはっはっはっは」
「アルアルアルアルアル」
「…………」
そんな二人の様子をカウンターからチラチラと窺う紅龍。
無口で無愛想な彼は同席するのに相応しくないのでしょう。
それでも常に離れた場所から、留美への視線は外しません。
全て使用人としての忠誠心からの行動ならいいですが、
彼女に少しでも好意や恋愛感情を抱いていたら地獄ですね。
「ふふっ、覗きかい?」
「……!?」
そんな紅龍に話しかけるのは、リボンズ・アルマーク。
アレハンドロの部下のようですが、彼も詳細は不明。
そもそも声優すら不明(エンドロールに記載なし)です。
まだ主要キャラクターですら把握できていないのに、
これ以上、むやみやたらと登場人物を増やすのは、
レビューする側も混乱するので遠慮して頂きたいです。
「ああ、嫌だ、嫌だ。こういう弱いものいじめみたいなの」
「イジメ、カッコワルイ」
CM明け、一話につき一任務という訳で、
今日もソレのサードミッションが開始されます。
今回は三人それぞれが世界各国に分かれての任務。
ロックオンは南アフリカの鉱物資源採掘現場で、
鉱物資源の採掘権を発端とした内戦への武力干渉。
採掘用の兵器を相手にガンダムを使うのは、まるで弱いものいじめ。
気が滅入るような任務ですが、相方のハロがいるので辛くありません。
「止めておけ」
「何故です!? ここからならイケます! ハァハァ……」
「まずは鼻血を拭きたまえ」
世界同時多発ガンダムに大興奮のグラハム。
出撃しようとする彼を制止するのは、レイフ・エイフマン教授。
ガンダム調査隊の技術主任を担当する、ユニオンの技術権威です。
他のユニオン男性の類に漏れず、奇抜な髪型をしていますが、
もうユニオンでは、こういう髪型が普通と思っていいのかもしれません。
「荒れるや、燃えるや〜♪」
南アメリカのタリビア上空を飛行するキュリオス。
空爆で麻薬の栽培農場を焼き払います。
初の不殺任務にアレルヤも機嫌がいいのか、
お得意の独り言がいつも以上に滑らかです。
誰か彼の話し相手にハロを送ってはくれませんか。
「その首、もらったぁ!」
「何でオレばっかり……」
刹那はセイロン島の人革基地で残存勢力を駆逐。
これまた楽な任務かと思われましたが、突然の乱入者が。
人革のモビルスーツ部隊の指揮官であるセルゲイ・スミルノフです。
一話で二人の男に迫られて刹那もゲンナリ。しかも今度の相手は43歳です。
「やるかよ!」
「ぬわぁあ!」
何故かエクシア相手には皆が抱きついて攻撃。
エクシアは頭部を掴まれて、ピンチに陥りますが、
ビームサーベルによる攻撃でこれを阻止。
洗礼を与えるべく登場したベテランパイロットですが、
残念ながら、ランバラルにはなれませんでした。
「オレに……触れるな!」
既に男性恐怖症になりつつある刹那。
視聴者(特に女子)がオレに変なイメージを抱く前に、
早くメインヒロインを出してくれ。頼むよ黒田さん。
「合流ポイントに到着」
「ヴァーチェ、視認しました」
「着艦準備開始。相対誘導システム作動」
軌道エレベーターで宇宙に上がったヴァーチェも、
ポイントでプトレマイオスとの合流に無事成功。
着艦後、ヴァーチェのGNドライブをプトレマイオスと連結し、
エネルギーをヴァーチェからプトレマイオスへ転送させます。
飛行にも、大気圏突入にも、他へのエネルギー供給にも使える。
こんなに便利なGN粒子とは、一体どんな粒子なのでしょうか。
大国が争っているのも、エネルギー問題に起因するので、
この粒子の詳細を知ったら、ますます血眼で彼らを狙うことでしょう。
「無事終了したわ。早く来て、祝杯を挙げましょ!」
「謹んで辞退します」
「あぁん、いけずぅ〜」
何かと理由をつけて、今日も酒を飲もうとするスメラギ。
今まで宇宙服を着ていたのでわかりませんでしたが、
彼女もかなりのダブルオーの持ち主です。
「あれ……」
あの後、色々と驕ることで何とかルイスのご機嫌をとった沙慈。
マンションに戻った彼が自室のドアを開けようとした時、
今まで空室だと思っていた隣の部屋に人影が。
「あの、お隣さんですか?
沙慈・クロスロードっていいます。
この部屋で姉と二人で暮らしています」
隣に越してきたその人物とは、誰あろう刹那でした。
偶然にも、日本での潜伏先にこのマンションを選んだようです。
さっそく刹那に自己紹介をする礼儀正しい沙慈。
彼がルイスのダブルオーを前にしても平静を保てる訳は、
美人の姉と一緒に暮らしていて免疫がついているからでした。
あの美人が裸でうろついていれば、女性への幻想もなくなります。
「刹那・F・セイエイ……」
てっきり完全に無視するものかと思っていましたが、
お隣さん同士、最低限のコミュニケーションは取る刹那。
それにしても、一応コードネームなのでしょうが、
こんなに簡単に名前をバラして大丈夫なのでしょうか。
「セイエイ……プッ、変わったお名前ですね」
予想外の珍名に思わず笑ってしまう沙慈。
「それで相方の刹那・セイエイ・Aさんはどちらに?」
沙慈が突っ込む前に刹那はドアを閉めてしまいます。
「何? 仕事?」
「呼び出しでね。ここのところ忙しいの、ソレのせいで」
「またソレ?」
「へっくし!」
ソレによる三度目の紛争介入の報を受け、
沙慈と入れ違いで慌ただしく家を飛び出す絹江。
二人が玄関先でソレへの愚痴を語っていると、
同タイミングで隣の部屋から刹那のくしゃみが。
「もしもし、沙慈?」
「ルイス? どうしたの?」
「ニュースつけてみて、テレ東以外で」
沙慈が部屋に入ると、先ほど別れたばかりのルイスから電話が。
ニュースなど興味がないはずの彼女がわざわざ告げるのですから、
これはよほど重大な事件が起きたに違いありません。
「今日未明、北アイルランドのテロ組織「リアルIRA」は、
武力によるテロ行為の完全凍結を公式に発表しました。
400年に渡って続いていた北アイルランド紛争が事実上なくなり、
新たな平和への道が開かれることになります。
以上、現場のパンチパーマにしたサイ・アーガイルでした」
それは北アイルランド紛争が終結したとの報道。
その背景には、もちろんソレによる武力介入があります。
今日出されたレポートもまさに北アイルランド紛争に関して、
ルイスは「これでレポート出さなくていいよね」と大はしゃぎです。
「世界が変わってる……」
今日、教科書で習った歴史がソレによって書き換えられていく。
自分の想像以上のソレの影響力に、沙慈は衝撃を受けます。
このままでは、ほとんどの出来事が2307年にまとまってしまい、
後年になって歴史を学ぶ学生は覚えるのが大変楽になるでしょう。
覚え方は「ぶざまな(2307)紛争みな終わる」です。
(そんなに変かな……)
毎度のこととはいえ、やはりショックだった刹那。
今まで「刹那」を突っ込まれた事は数え切れないが、
「セイエイ」の部分を突っ込まれたのは今回が初めて。
「ロックオン」だって相当なものなのに、何でオレばかりが。
自らが選べぬ名前による差別に彼の心は荒んでいきます。
後に「コーラサワー」と再戦した際、それが人名だとわかり、
二人の間に奇妙な友情が生まれることになろうとは、
この時の彼に知る由もありませんでした。