「エースをねらえ!」 ドラマレビュー8話・後編@
「えぇ!宗方が!?」
いきなり驚かしてごめんなさい。
藤堂から「宗方コーチが倒れた」と連絡が!
全力疾走で病院に向かうひろみ、車で行けばいいのに。
「コーチ!!」
はたして、宗方コーチの容態は!?
みんな笑顔。
「いよう!」
(えっ、元気じゃん?)
キツネにつままれたような表情のひろみ。
(……もしかして、ドッキリ?)
「なんて顔してる、何でもないぞ」
「でも、倒れたって……」
もっとひどい病状を期待していたひろみ。
「疲れが少し溜まってただけだ。それなのに太田が大袈裟で、検査入院だ」
疲れが溜まっているだけで、あんな倒れ方はしません。
「フフ、まあ、この男は、昔から自分の体に疎いからな」
道端で突然倒れるのは、体に疎いではすみません。
「そうだったんですか……」
ホッとしたような、残念なような表情のひろみ。
「そんなことより、岡。明日の試合、竜崎にきちんと向かっていけ」
「はい」
自分が入院していても、ひろみの心配をする宗方コーチ。
「わかったら、今日は帰って、早く休め」
「でも、コーチ……」
このまま、病院に宗方コーチを1人残して行ってしまっては、
宗方コーチが寂しくて、夜中に泣いちゃうんじゃないかと心配するひろみ。
「岡君、行こう」
なかなか病室から出ようとしないひろみを、藤堂がうながします。
しかも、動けない宗方コーチを尻目に、さりげなく体に触っています。
そして、部員達が帰った後……
「……これで、いいのか?」
意味ありげな質問をする太田。
「ああ……」
やはり、ただの疲労ではなさそうです。
「よかったね、たいしたことなさそうでさ!」
そんなことは知らずに、能天気な尾崎。
「じゃあ、俺、こっちだから」
そんな尾崎、珍しく2人に気を利かせます。
(ナイス、尾崎!)
これでひろみと2人きり。(しかも夜道)
試合でも見せないような、満面の笑みを見せる藤堂。
「あっ、藤堂!」
「うん?」
「さっさと行けよ!」と言わんばかりに、適当な態度の藤堂。
「明日、頑張ろうな」
「……ああ」
明日の試合の話題になり、一転、真剣な表情になる藤堂。
しかし、決勝に残ったのが、全員西高のテニス部っていうのは、どうにも緊張感にかけます。
(チャンス!宗方コーチも病院だし)
落ち込んでいるひろみをよそに、目をギラギラと輝かせる藤堂。
……その頃、病室の宗方コーチは、
「何が必要かわからなくて、色々持ってきちゃった」
入院のための荷物を持ってきた蘭子。
すっかりお母さん気取りです。
「すまんな……蘭子」
そんな蘭子に素直に甘える宗方コーチ。
「兄さん……」
墓参りの件から、この2人の関係も変化しているようです。
今までに見せたことのないような笑顔を見せる蘭子。
「お兄ちゃん、好き好き!」
と蘭子が甘えようとした瞬間、病室のドアをノックする音が、
(ちぃ!邪魔が入ったか)
しぶしぶ蘭子がドアを開けると、
「あなた……」
ドアの向こうにいたのは、もちろん、お…
音羽さん。
「……誰ですか?」
仕方がなく病室を出て行く蘭子。
そして病室には、宗方コーチと音羽さんが2人きりに。
「コーチ、私はずっと、コーチのこと怨んできました。
今でも、試合に出られなかったことが悔しいです」
開口一番、今までの恨み辛みを語りだす音羽さん。
(やばい!)
今にも、懐から短刀でも出しそうな雰囲気です。
(秘儀・知らんぷりの術)
目をそらす宗方コーチ。
「でも、それで良かったんです。どんなにテニスを好きか、わかったから」
意外と冷めた反応の音羽さん。
(助かった……)
何とか生命の危機を脱した宗方コーチ。
「それじゃあ、お大事に……」
まあ、特に話すこともないので、さっさと退散する音羽さん。
「……音羽」
音羽さんが部屋を出ようとしたとき、宗方コーチが声をかけます。
「子供達にテニスを教えてるんだってな」
「知ってたんですか?」
多分、ひろみが喋ったんでしょう。
「いいコーチになれる」
「はい」
あんたに言われたくねえよ。
自分を無視し続けた宗方コーチからの皮肉に、笑うしかない音羽さん。
……その頃、夜道の2人は、
「はぁ……」
おもいっきり溜め息をついているひろみ。
(2人きりで溜め息をつかれると、非常に辛いのでやめてもらいたい……)
飲み会の帰りに、たいして仲の良くない女の子を送るときのような空気です。
「昨日、君と試合しただろ、結構嬉しかったんだ……」
そんな沈黙に耐え切れず、藤堂が話を切り出しました。
「えっ?」
女子相手に6−0で勝ったことが、そんなに嬉しかったのか?
「球を打つと、その球に自分の心が入る。相手が球を返す、相手の心が返ってくる。
……君の、真剣な心が伝わってきた」
(あたしの真剣な心……)
真剣な心が伝わってきたときの顔。
「宗方コーチは、今、君が心配するより、明日の試合、頑張ることを望んでると思うよ」
本人のいない間に、勝手に宗方コーチの気持ちを代弁する藤堂。
(でも、宗方コーチがいないと……)
「頑張ろう!」
(でも、でも、宗方コーチがいないと……)
「一緒にアメリカに行こう」
別に口説いてる訳ではありません。
(でも、でも、でも、宗方コーチがいないと……)
このままでは埒があかない。業を煮やした藤堂は、
「じゃあ、失敬!」
(うわぁ、懐かし〜!)
かなり久しぶり(半年以上?)の「失敬!」に、ひろみ感動。
(うわぁ、懐かし〜!)
そこを偶然、車で通りかかったお蝶夫人も感動。
ですが、お蝶夫人は物憂げに窓の外を見つめています、その原因は?
「娘の竜崎麗香を外してでも、岡君を残したいと言ったのだよ!」
(また、お父様が出てきた……)
何度も頭の中にリフレインしてくるお蝶パパの言葉。
かなり重傷のようです。
(ワールドダウンタウン面白いなぁ)
そんな娘の悩みも知らずに、くつろいでいるお蝶パパ。
「お父様……」
「麗香、どうした?」
「そちらを向いていらしてください」
(か、顔も会わせたくないと!?)
お蝶パパ、ショック。
「こうかね?」
でも、娘に嫌われたくないので、従うお蝶パパ。
「お父様、私はインターナショナルユースカップの出場を辞退します」
「麗華!」
予想外の発言に、思わずお蝶夫人の方を向いてしまったお蝶パパ。
いったいお蝶夫人に何があったのでしょうか?
「あの大会は世界に出るための第一関門です。
あの大会に出るのに相応しいのは、私ではなくひろみです」
あのプライドの高いお蝶夫人が、試合前から敗北宣言?
自分がひろみより劣っている事を認めたのでしょうか?
「今はまだ、技術の上で、私はひろみより勝っているかもしれません」
いや、まだプライドは保ったままのようです。
「だけど、いずれ、その違いはハッキリします。
その違いがわかった以上、ひろみと試合をすることは出来ません」
「ご期待に添えなくて、申し訳ございませんでした……」
2人の戦いは、こんな結末で終わってしまうのでしょうか?
「待ちなさい、君は大切な事を忘れている」
(……大切な事?)
「確かに、岡君はこれから世界に通用する素晴らしい選手になっていく。
…だが、その岡君を生み出したのは、一体誰だい?」
(……ご両親では?)
「宗方コーチが育ての親なら、生みの親は麗香、君だよ!」
「私が、ひろみの……」
若干17歳にして、1児の母になったお蝶夫人。
「彼女は君に憧れて、テニスを始めた。そうじゃないかな?」
(……そうだけど、何てお父様が知っているのかしら?)
多分、宗方コーチがペラペラ喋ったんでしょう。
「麗華、岡君を生み出した親の1人として、責任を果たしなさい。
全力でぶつかってくる岡君を、気味も全力で受け止めてやるんだ」
……ただ、忘れないで欲しい。
勝っても、負けても、お前は私のたった1人の可愛い娘だ」
「お父様!」
抱きしめながら、お蝶夫人の髪を指でかきむしるお蝶パパ。
なるほど、お蝶夫人の縦ロールはこうやって作られていたんですね。
(中年の香りだ……)
涙を流すお蝶夫人。
感動しているのか、中年の臭いに泣いているのかはわかりません。
その後……
病院の廊下を歩くお蝶夫人。
手に持っている花束は、もちろん薔薇。
向かう先はもちろん、宗方コーチの病室。
(今日は注射が痛かった……っと)
みんなが帰ってしまったので、一人、日記を書いている宗方コーチ。
(なんか、入りづらい……)
なかなか職員室に入れない新一年生のように、ドアの前で固まるお蝶夫人。
……その時、宗方コーチが、
!!
「竜崎か」
(忍者か?あんたは)
「明日、私は全力でひろみと戦います」
ついに決意を固めたお蝶夫人。
「お前ほど、潔いテニスプレーヤーは見たことがない」
(潔い……どういう意味かしら?)
「戦え、全力で」
(やっぱり、説明なし……)
毎度のことなので、苦笑いのお蝶夫人。
病室の前に花を置くお蝶夫人。
(えっ、中は入らないのか?)
夜、一人で寂しかったので、話し相手が欲しかった宗方コーチ。
そのまま帰るお蝶夫人。
(顔ぐらい見せてくれたって……)
悲しそうな宗方コーチ。
その頃、竜崎家の門の前には、不審者(尾崎)が。
決勝戦の前日に、何をしているんですか、この人は?
近づいてくる車の音に気づく尾崎。
もし、パトカーだったら、明日の試合(ていうか人生)が終わってしまいますが。
あなたの家の門の前に、こんな男が立っていたら、どうします?
「尾崎さん!?」
もちろん、驚きますよね。
「俺の明日の試合見ててください」
何の挨拶もなしに、いきなり用件を言う尾崎。
(えっ?何?何?)
混乱するお蝶夫人。
「あなたのために勝ちます!」
暴走を続ける尾崎、ほとんどプロポーズです。
(……電話で言えばいいのでは?)
しかし、お蝶夫人の反応はイマイチ。
それだけ言って帰る尾崎。
相手の都合は考えず、自分の気持ちだけを一方的に伝える、ストーカーの諸症状です。
(しかも、運転手に筒抜け!)
お蝶夫人も明日、決勝を控えているのに、動揺させるようなことを言う尾崎。
確信犯だから余計にたちが悪いです。
その対戦相手のひろみですが……
「明日の試合、竜崎にきちんと向かっていけ」
(眠れねえ……)
入院していても、脳裏に浮かんでくる宗方コーチ。
しかし、明日は決勝。寝ないで試合に出るわけにはいきません。
(なんか違うこと考えよっと……)
「宗方コーチは、今、君が心配するより、明日の試合、頑張ることを望んでると思うよ」
(今度は藤堂さんが出てきた……)
ますます眠れなくなりました。
(宗方コーチが1匹、宗方コーチが2匹……)
なんとか寝ようとするひろみ、そして、運命の決勝へ。
続く。