「エースをねらえ!」 ドラマレビュー8話・中編

 

「藤堂、サービスプレイ!」

 

宗方コーチのコールとともに、ひろみと藤堂の試合が始まりました。

 

藤堂の目も本気です。

  

(なんで…?藤堂さんと試合なんて……)

 

まだ戸惑っているひろみ。

しかし、口ではああ言っても、ジェントルマン藤堂のこと、

きっと、女の子のひろみ相手には手加減してくれるはずです。

 

「うおおぉぉ!!」

 

「ええぇ〜!」

 

(マジですか!?)

 

手加減なかったです。

 

(ちょっとやりすぎだろ!)

 

「本気でやれ」と言った本人が驚いています。

 

「うおりゃああぁぁ!!」

 

なおも続く、藤堂の強烈サーブ!

 

「うにゃ〜!」

 

全然追いつけません。

 

(オイ、藤堂!)

 

これじゃあ、全然試合になりません。

宗方コーチ、何とか言ってやってください!

 

(いいぞ、藤堂!)

 

苦しむひろみの姿を見て、コーチのSが目覚めた。

 

藤堂も手を抜く気配なし。

  

(まあ、みなさんで楽しそう……)

 

お蝶夫人が見つめる中、ひろみと藤堂の試合は続きます。

 

しかし、1球も返せないまま、ついにその場に倒れこんでしまったひろみ。

 

「……………」

 

(鬼だ、鬼コーチだ……)

 

藤堂のスパルタぶりに、宗方コーチも唖然。

 

まだ、立ち上がれないひろみ。

もしかして、復活した時の桑田のマネでもしてるのか?

 

(き、救急車!177、177)

 

さすがの宗方コーチも心配になった、その時!

 

「岡君、ここはコートだ!」

 

藤堂が吼えた!

 

(ええ〜!?)

 

「立てぃ!」

 

藤堂もSに目覚めたようです。

 

急に性格が変わった藤堂に怯えるひろみ。

しかし、その怯えた表情が、藤堂をますます燃えさせます。

  

「立て!立つんだ!」

 

丹下段平が乗り移ったようです。

 

(それ、俺のセリフ……)

 

宗方コーチの立場、危うしです。

 

「はぃぃ」

 

その迫力の前に、強制的にプレイを続行させられるひろみ。

  

「サーブならどうだ!」

 

あれだけ練習したんだから、いくら藤堂でもそう簡単には……

 

スコーン!

 

簡単に返された。

 

「本気だ!(ちょっと飛んでたし)」

 

凶暴化している藤堂。

 

(こっちも本気だ!)

 

このままでは、何をされるかわからない。

ひろみも覚悟を決めて、全力で藤堂に挑みます。

 

いつも以上にハッスルしている藤堂。

 

だが、今度は何とか追いついた!

 

そして、初めてラケットに当たった!

 

だが、惜しくもネット。

 

「うわっ!」

 

ネットだったのに、かなりびびってる藤堂。

 

(うわっ、変な顔!)

 

藤堂、意外とへタレだったようです。

 

ムキになる藤堂。

 

ひろみ、返す。

 

さらにムキになる藤堂。

 

これも返す。

 

ついに、藤堂からリターンエースを取った!

  

(この試合、もらったぁ〜!)

  

1本返しただけなのに、満面の笑みのひろみ。(さっきまで倒れていたのに)

 

「ワイの弾丸サーブが……」

 

やられた藤堂はショック。提供バックにされてるし。

 

提供バックの宗方コーチ。

  

(え、私も提供バック?)

 

提供バックにされたので、腹を立てて帰るお蝶夫人。

 

しかし、その帰り道、お蝶夫人の脳裏には、

昨晩のお蝶パパの言葉がよみがえってきました。

 

娘の竜崎麗香を外してでも、岡君を残したいと言ったのだよ!」

  

(ついにひろみと同じ症状が……)

 

宗方病(頭の中で他人の声が聞こえる病気)の発病に、ショックを受けるお蝶夫人。

それと同時に、さらに昔の記憶もよみがえってきます。

  

「おとうしゃま〜、かちました〜」

 

子供の頃のお蝶夫人。ょぅじょハァハァ。

今の大人びた雰囲気と違って、とっても無邪気です。

 

若き日のお蝶パパ……って全然変わってねえ。

 

「麗香は将来、誰よりも強いテニスプレーヤーになるぞ!」

 

娘を抱き抱えるお蝶パパですが、

 

明らかに嫌がっています。

 

「フフフフ……」

 

嫌がる娘を揺さぶるお蝶パパ。まさに幸福の絶頂です。

しかし、ある出来事が、そんな状況を一変させます。

 

宗方仁、選手生命絶望。

  

「おとうしゃま〜、みて〜みて〜しょうじょう〜!」

 

お蝶夫人を完全に無視するお蝶パパ。

 

「オイ!見ろよ、ジイさん!」

 

これがきっかけで、お蝶夫人はグレてしまいました。その結果……

 

こんな年齢不詳の女子高生に……

 

しかし、お蝶夫人はその時に誓ったのです。

(お父様のためにもっと強くなろう……)と。

 

誰よりも強くなって、日本のテニス界の将来に失望した父を喜ばせようと。

そう、ずっと前から、宗方コーチとは因縁があったのです。(宗方コーチは知らないけど)

 

 

 

……その頃、コートでは、

 

まだ試合が続いていました。

 

けど、今、終わりました。

 

「セット、6−0、藤堂」

 

当然の結果です。

 

「ありがとうございました……」

 

完膚なきまで叩きのめされ、ひろみもしょんぼり。

決勝を前にして、自信を失ってしまわないか心配ですが。

 

「よくがんばったね!」

 

さっきまでの鬼コーチぶりがウソのように、優しい言葉をかける藤堂。

 

(藤堂さん……)

 

優しくする→厳しくする→また優しくする

このギャップに女の子はコロリといく訳です。

 

(岡君……)

 

作戦がまんまと成功して、満足げな藤堂。

 

(お前ら、早く手を離せ!)

 

そんな2人の間で、すごく居心地の悪そうな宗方コーチ。

 

背後から強い視線を感じて、手を離す藤堂。

 

「よし!」

 

念が通じて喜ぶコーチ、だが、

  

藤堂に握られた手を、いとおしそうにするひろみ。

 

マズイ。このままでは、宗方コーチの存在価値がなくなってしまう。

こんな時、宗方コーチはどうすればいいのか?

 

もちろん、独演会です。

 

「今の試合で、お前は何を思った?」

 

「何をって……ただ、夢中で打っていました」

 

「それでいいんだ」

 

「……え?」

 

「お前は相手が藤堂であることを忘れ、夢中で打った。竜崎とのことも同じだ」

 

なるほど、勝ち負けではなく、試合に集中することが大事。

この試合を通じて、宗方コーチが伝えたかったことは、そういう事だったんですね。

さすが宗方コーチ、とても回りくどいやり方です。これには、ひろみも……

 

「同じぃ〜?」

 

明らかに疑問形です。

 

「同じ気持ちで、竜崎にぶつかっていけばいい!」

 

ひろみの予想外のリアクションに、同じ言葉を繰り返す宗方コーチ。

 

「でも……」

 

しかし、ひろみの反応はイマイチです。

宗方コーチの計画では「わかりました!」って言うはずだったのに。

 

……こうなったら、強硬手段に出るしかありません。

 

「お前は逃げている!」

 

いきなり、必殺の断定形。

 

(えっ?いきなり何を言い出すの?)

 

突如、厳しい口調になった宗方コーチに、ひろみも困惑。

  

「竜崎に勝つことから逃げている!」

 

畳み掛けるように、またも断定形。

 

「人は誰でも無意識のうちに、自分の目標を超えることを避ける。

 その目標を超えてしまったら、何を目指していけばいいかわからないからだ。

だが、それに満足していたら、その人間の成長はそこで終わる」

 

「いいか岡、竜崎から逃げるな!

 

「コーチ……」

 

むしろ、コーチから逃げたい。

 

だが、逃げられるはずもなく、一緒に帰る。

 

港沿いを歩く、黒コートの男とジャージ姿の女子高生。

知らない人が見たら、通報されかねない光景です。

 

宗方コーチがひろみのマフラーを手に取った。

 

寒いから自分に巻くのか?

 

いや、ひろみに巻いた!

 

ちょっと手間取ってる!

 

「試合は明後日だ、肩は冷やすなよ」

 

優しい〜首締めるのかと思った

 

ていうか、「肩を冷やすな」とか言うなら、

初めからこんな所に連れて来なければいいのに。

 

「コーチ!」

 

海からの風で、髪の毛がワッサワッサ揺れている宗方コーチ。

 

「あの……感謝してます」

 

(……俺、何かしたっけ?)

 

特に感謝されるようなことをした覚えはないのだが、

(……まさか、あの時、助けた鶴が!?)

 

「コーチに会えて良かったと、本当にそう思います……」

 

別に理由はなく、ひろみはただ純粋に、宗方コーチにお礼を言いたかっただけでした。

 

(言い方が、過去形なのが気になるけど、嬉しい)

 

でも、にやけた顔を見られまいと、すぐにそっぽを向く、恥ずかしがりやの宗方コーチ。

 

 

 

……その夜、宗方コーチは、

 

「そうか、藤堂と試合させたか!」

 

自宅で太田と酒盛りです。

この2人、外に飲みに行くことはないのでしょうか?

 

「今日の藤堂を見てわかった、あいつはきちんと岡を包める男だ」

 

本人達の知らぬところで、勝手に縁談を進められている、ひろみと藤堂。

 

(藤堂に包まれる岡……)

 

いやらしい笑顔を浮かべる太田。

 

上機嫌の宗方コーチ、お酒も進みます。

 

ほろ酔い気分の宗方コーチが、ふと視線をうつすと、

 

そこには、母親が好きだった花が。

 

「太田、この頃、よく母の夢を見る」

 

「そういや、明日だったよな、おふくろさんの命日」

 

「亡くなった当時、夢に出てくる母はいつも泣いていた。

俺はそんな夢を見るたび、母と自分を捨てた父を憎んだ」

 

「だが、この頃、夢に出てくる母は笑ってるんだ……」

 

(こんな顔か!?)

 

(そろそろ、いいのかもしれん……)

 

長い時の経過と共に、宗方コーチの父親に対しての感情にも、変化が現れてきたようです。

 

(なあ、母さん……)

 

翌日、母親の墓参りへと向かう宗方コーチ。

 

だが、母親の墓には、すでに花が飾られていた。

 

(……まさか、幽霊?)

怯える宗方コーチ。その時、背後から物音が!

 

「仁……」

 

現れたのは蘭子でした。

 

「お前だったのか、毎年、命日に母の好きな花を手向けてくれたのは……」

 

長年の謎が解けた宗方コーチ。

 

「ううん。違う

 

違いました。

 

「お父さんなの。でも、事故の怪我が治らなくて、今日はあたしが。

仁、この前、行ってやらなくていいのか、って言ってくれたでしょ。

そしたら、お父さん、自分は仁に何も出来なかったのに申し訳ないって。そう言ってた」

 

「……お前こそ、もう俺に気を使う必要はない」

 

「……えっ?」

 

まさか「兄妹の縁を切る」とでも言い出すのか?

 

「何もお前のせいではない。お前が苦しんで来たことはわかっている。

自分が生まれたために、俺や母が不幸になったのだと、ずっと自分を責めてきたんだろ」

 

そう、宗方コーチは、蘭子の思っていることは全てお見通しなのでした。さすが兄妹です。

まあ、蘭子は宗方コーチが何を考えているかは、さっぱりわからないでしょうが。

 

「俺は、もう誰も恨んでいない。俺や母は不幸ではなかった」

 

「命がけで愛せる相手にめぐり合えたんだ、そんな母が不幸なはずはない」

 

「やっと…そう思えるようになった」

 

すごく感動的なセリフに聞こえるかもしれませんが、

宗方コーチが巡り会えた「命がけで愛せる相手」っていうのは、ひろみのことでしょうか?

そう考えると「死ぬまで岡を離さない!」とも読み取れることが出来る、恐ろしい発言です。

 

「ねえ、仁……」

 

そんなことも知らず、ウルウルしている蘭子に対して、宗方コーチは、

 

とどめの宗方スマイル。

 

「兄さん、お兄さん!」

 

母親の墓の前で抱き合う義兄妹。いいのか、それは?

 

墓参りの帰り道、高台から夕暮れの街を見下ろす宗方コーチ。

それでは、しばらくの間、宗方コーチのさわやかな顔特集をご覧ください。

 

 

 

終了。

  

もう、この世の中に、憎むべきものが何一つなくなった。

悟りを開いた宗方コーチの目の前に広がるのは、ただ美しい世界だけです。

 

夕暮れの街を歩く宗方コーチ。

 

そして、マトリックスのマネを……

 

!?

 

続く。

 

 

 

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