「エースをねらえ!」レビュー 第4話・後編
第4話3部作もついに後編。王の帰還です。
「ピンポーン」
宗方コーチの家に、夜遅くに鳴り響くチャイムの音。
「だ、誰だ!?」
怯えだす宗方コーチ。幽霊?借金取り?
「岡さんのケガ、どうなのかなと思って……」
訪問者は蘭子でした。
「少し打っただけだ、決勝に問題はない」
「そう……」
「用はそれだけか、他にないなら帰るぞ」
昔の女には冷たい宗方コーチ。
「仁!」
抱きつく蘭子。
「あたし、もう耐えられないの」
つ、ついに一線を超えてしまうのか?
「テニスが出来なくて、おかしくなりそう」
あ、そっちですか。
「オレに何が出来る?(セクハラ以外で)
オレはただ、お前にラケットを持たせてやっただけだ」
「だからよ!だから助けて欲しいの!」
「無理言うな……」
「やっぱり、今のあなたにとって岡さんだけが全てなのね。
私、今日試合を見ていてたまらなかった…
初めはテニスをしている岡さんをうらやんでいるのかと思った。
だけどそうじゃなかった。私はあなたを失い、そして、テニスも…今の私には何もない」
よく喋る女です。
結局、言いたい事だけ言って、蘭子は帰っていきました。
決勝戦の前だというのに、呼び出された宗方コーチはいい迷惑です。
―――そして、関東大会決勝戦、当日の朝を迎えた。
決勝戦当日の岡家
「じゃあ、気をつけてな」
「わかった!」
「おもいっきり、やってらっしゃい!」
「わかった!」
「1+1は?」
「わかった!」
何だこの一家。
決勝の相手、大原高校のテニス部のコーチは太田。
宗方コーチの大学時代の同級生で、よき友人でもある男です。
決勝戦を前に、さすがの音羽さんも真剣な表情。
蘭子も複雑な表情で見守る。
……会場には試合前の緊張した空気が張り詰める。
「がんばれぇぇ〜ひろみぃぃ〜!」
1人空気を読んでないマキちゃんの声援と共に試合開始。
決勝 西高:竜崎・岡 VS 大原高:辻・田所
辻ちゃんのボレー!
お蝶夫人リターン!
田所スマッシュ!
ひろみリターン!
決まった、ゴール!
第1セットは、竜崎・岡ペアの勝利。
「第1セットのことは忘れろ。
それよりこの先、絶対に竜崎とは打ち合うな。徹底的に岡を叩け!」
具体的な指示を与える太田コーチ。
「とにかく動く事だ、動きはお前達の方が良い。
フットワークで相手を翻弄しろ!大丈夫、お前達なら勝てる!」
抽象的な指示を与える宗方コーチ。
太田コーチの指示通り、ひろみ狙いの辻ちゃん。
宗方コーチの指示通り、動きまくるひろみ。
お蝶夫人が前衛でカバーしてくれているのにムダに動き回るひろみ。
そのまま転倒、足にケガを負う。
「岡さん!」
「マズイぞこりゃあ……」
一転して、大ピンチ!
一体、誰のせいでこんな事に……
宗方コーチ「フットワークで相手を翻弄しろ!」
↓
ムダにハッスルして動き回るひろみ。
↓
そのまま転倒。足にケガを負う。
↓
フットワークで相手を翻弄するどころか、自分が翻弄される。
結論:宗方コーチのせい。
こいつは重症だ……
「どうする岡?お前次第だ。
ここで棄権しても、誰も文句は言わん」
あんたの指示のせいでケガしたんですが。
むしろ、文句を言いたいのはひろみの方だと思いますが、
「いえ、コーチ、やらせてください。あと1セット戦えます」
「だめよひろみ、無理をしては……」
「戦います。私、絶対に勝って見せます」
「わかった…」
再びコートに戻っていくひろみ。
「どりゃああ!」
「フンガー!」
(まあ、必死……)
「もし、音羽さんか若月さんがペアに選ばれていれば、
こんな無様な試合にはならなかったはずよ」
「もちろんよ!」
いつものように、愚痴る音羽軍団。
しかし……
「そうかしら…
もし、あたしがあの子だったら、
あんなに打たれても、打たれても、
めげずに立ち上がれたかどうかわからない…」
な、なんだってェ―――――――!!
お、音羽さんが変になった!
ケガにも負けず、ひろみはプレイを続け、
いよいよ西高のマッチポイント!
ひろみのダイビングショット炸裂!
「勝った……」
「勝ったあぁぁー!!」
笑顔のお蝶夫人がひろみの元に駆け寄る。
「ひろみ、よく頑張ったわ」
「お蝶夫人……」
こうして、関東大会決勝は、
西高の竜崎・岡組の優勝で幕を閉じた。
―――試合後
「優勝、西高、竜崎、岡……」
試合結果を見つめる音羽さん。
そんな紙、破っちゃえ!
!?
ど、どうしたんだ音羽さん!
いつものように、破っておくれよ!
その晩、太田と酒を飲みあかす宗方コーチ。
「ああ負けた、完敗だよ。とにかく、あの竜崎麗香、
ありゃあ高校生じゃねえな!」
確かに。
黄桜のCMでも狙ってるのか、コイツは?
―――翌日
……衝撃の展開が!
「え、音羽さんテニス部やめんの!?」
「そう、今、必死になって若月さんと島さんが音羽さんを引きとめてる」
音羽さんがテニス部をやめる?
まさか、ひろみが原因で?
ヤバイ、音羽さんに見つかったら何をされるかわからない。
見つからないうちに早く逃げなければ。
↑
!?
殺られる!
と思ったら、ひろみの横を素通りして行ってしまった。
「あなたのせいよ、岡さん。
音羽さんはあなたのせいでテニス部を辞めたのよ」
そこに、リーダーを失った音羽軍団がやって来た。
「あなたみたいな、遊び半分でテニスをやってる人が音羽さんを傷つけた。
あなたが音羽さんの夢を潰したんだわ」
音羽さんの夢……?
あの人、日本一のいじめっ子を目指してたんじゃなかったの?
……よく考えれてみれば、いじめっ子って職業じゃないし。
ジャイアンにも歌手という夢があるように、音羽さんにも夢があった。
それに気づき、すぐに音羽さんを追いかけるひろみ。
「あの…」
「何も言わないで……」
「私、わかってたの。どんなにテニスを愛していても、
けっしてトップに立つ事は出来ないって。
……でも、それをあなたみたいな人に思い知らされるなんてね」
テニスを愛している割には、ひろみのラケットを隠したり、
ガットをメチャクチャにしたりと、色々やってますが。
「すみません……」
「謝らないでよ。もっと惨めな気分になるじゃない……
1つだけ言っておくわ、あなたは私からテニスを奪ったの」
「……だから、強くなりなさい、誰よりも」
!!
さようなら音羽さん。
あなたの事は忘れません。
(忘れたくても忘れられません)
(あたしが音羽さんの夢を…)
あんなに自分をいじめていた音羽さんでも、
辞めるとなると、色々な感情が沸いてきます。
「岡さん、昨日の試合おめでとうを言いに来たんだけど、
どうやらそんな雰囲気でもなさそうね。また先輩にでもいじめられた?」
そこに蘭子がやって来た、この人は誰の所にもやって来ます。
ケガで練習できないのが、よほど暇なんでしょう。
「あの、緑川さんはどうしてテニスを始めたんですか?」
「何よ急に?まあいいわ、しいて言えばコンプレックスかしら」
「コンプレックス?」
ああ、ひろみ、蘭子に質問しちゃったよ。
この人、喋りだすといちいち話が長いんだよな……
「私、子供の頃から背が高くて、それがいやでいやでたまらなかった。
だけど、ある時出合った一人の男の人が、そんなあたしを変えてくれた。
君のその背の高さを武器に変えろ、テニスならそれが出来るって。
わたしはその人が教えてくれるテニスに夢中になった。
そして夢中になればなるほど、その人のことを好きになった。
でも、かなわぬ恋ってやつね。その人と私は母親の違う兄弟だったの。
私は恨んだわ、自分の運命を。そして、そんな私にテニスだけが残った」(読み飛ばし可)
「岡さん!」
「はい?」
「あなたは自分がどれだけ幸せかわかってる?
つまらないことで傷ついてる暇なんてないのよ!」
(どうして、私が怒られるの?)
「あなたは私が愛した兄が選んだ人なんだから」
「兄って?」
「そうよ、私の兄は宗方仁よ!」
ガーン!
なぜか見ていたお蝶夫人もガーン!
蘭子の言葉に悩むひろみ。
「宗方コーチは、蘭子でも、お蝶夫人でもなく、自分を選んだ……」
悩んだ末にひろみが向かった先は……
(ふう、学校で吸うタバコはうめえなあ〜)
「コーチ!」
「……何だ?」(……ビックリした)
「わたし、強くなれますか?」
「あたしには、お蝶夫人のような技術もない。
緑川さんのようなパワーもない。
そんな私でも、強くなる事はできますか?」
「岡……」
「はい……」
「鳥はなぜ空を飛べると思う?」
「えぇ〜?」
突然、何を言い出すんだ、この人。
「それは鳥が飛べる事を疑わないからだ。
もし疑えば、逆巻く風邪にのまれ、地に落ちる。
テニスも同じだ、自分は強くなれる。
それを信じていれば、可能性に限界はない」
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「だったら、緑川さんに緑川さんのテニスを教えたように、
あたしにも、あたしのテニスを教えてください。お願いします」
「お願いします!」
「やっと言ったな。オレは今までずっと、
お前からそう言ってくるのを待っていた」
見て、この顔!
新しいおもちゃを手に入れた時の子供の顔ですよ。
「コーチ……」
次回、ひろみ調教編がスタート(ウソ)