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【日記】

 

2005.11.2

 

先週の土曜日に山本梓さんの握手会に行ってきた。

彼女の写真集「あずピース」の発売を記念したイベントだった。

山本梓さんというのは、「内村プロデュース」のアシスタントを務めたり、

カロリーメイトのCMでキーファー・サザーランドを車に乗せ、

「大事件?」とか言っているあの山本梓さんである。

僕は彼女の写真集を一冊だけ持っている微妙なファンだった。

新しい写真集を購入するかどうか迷っていたのだが、

バイトの帰りに寄った新宿の書店で今回の握手会の開催を知った。

握手とサイン本まで付くのならば購入しないわけにはいかない。

事前に写真集の代金と引き換え整理券を購入するシステムらしく、

僕は注文時に若干どもりながらも整理券を購入することに成功した。

整理券の番号は317だった。災難と覚えよう。

 

僕はテレビ番組のロケなどに参加したことはあるが、

アイドルの握手会に参加するのは始めてだった。

世間一般の印象は決してよいものとは言えないだろうが、

日記のネタにもなるので、参加しておいて損はないだろう。

僕がサイトをやっていて良かったと思うことは、

日記のネタになるから、と自分の行動に言い訳ができることだ。

アイドルの握手会に行こうが、メイド喫茶に行こうが、

それは日記のネタにするために仕方なく行っているのだ。

自分のためでなく日記を読んでくれているみんなのためだ。

今回もみんなの代わりに山本さんと握手しにいくのだ。

 

ちなみに僕が今まで生で見たことがあるアイドルは、

豊岡真澄さん、森田彩華さん、上戸彩さん、高橋克実さんが挙げられる。

僕の結論としては、アイドルは生に限る、ということだ。

あまりメジャーではないアイドルも実物は可愛かったし、

現在、日本のトップアイドルであろう上戸さんに至っては、

そのあまりの華奢さに、思わずご飯を食べさせてあげたくなった。

高橋克実さんだけは、テレビで見たままだったけれど。

 

握手会当日、僕は整理券の番号が後ろということもあり、

開始の十分前に会場となる福家書店に到着した。

地下道の一角に設けられた会場は異様な雰囲気だった。

年齢不詳の男性たちが全身から静かに熱気を発散させており、

彼らの多くが巨大なカメラを手に持っていた。

そのどれもが撮影すれば悪霊を徐霊できそうなぐらい立派な物で、

僕は駅で買った写ルンです(680円)を慌ててかくした。

こんなもので山本さんを撮影したら怒られてしまう。

 

握手会は整理券の番号順に行われる。

僕は自分の番号が呼ばれるのを待った。

新宿の地下道に突如現れた怪しい集団に、

通りかかった人々は訝しげな視線を送っていた。

「310番から320番の方」

三十分ほど経ってようやく僕の番号が呼び出された。

整理券の番号は10番ごとに呼び出されるのだが、

呼び出されて前に出たのは僕を含めて三人だけだった。

何か急な用事ができて行けなくなった人が多いのだろうか、

少なすぎる人数を不思議に思っていたが、すぐに疑問は解決した。

僕の前に並んでいた男性が一人で七枚の整理券を購入していたのだ。

一枚3000円なので合計で21000円になる。転売屋か何かだろうか。

改めて周囲を見渡してみると、複数の整理券を持った人は他にもたくさんいた。

どうやら一人で複数の整理券を購入するのは握手会の常識のようだ。

 

僕はドラクエV以来の行列に並んだ。会場は壁で仕切りがされていて、

自分が握手をする番までは山本さんの姿を見ることはできない。

それでも時折、ファンにお礼を言う山本さんの声が聞こえてきて、

何のために並んでいるのかわからなくなってきた僕に、

これから山本さんと握手をするのだということを思い出させた。

それと同時に山本さんと握手することを考えると少し緊張した。

さすがに無言のまま握手をするのは気まずい。

何か言葉をかけるべきだろうが何と言えばいいのだろう。

普通に「応援しています」や「がんばってください」などだろうか。

しかし明らかに自分よりがんばっている人に言うのはためらわれる。

むしろ僕が山本さんから「がんばってください」と言われたい。すごくがんばる。

「好きです!」「結婚してください!」など勢いのままに告白してしまったら、

会場を出た後でファンの方々にボコボコにされてしまうかもしれない。

「あずさ2号」を歌うのは彼女に小学生の頃のトラウマを思い出させてしまう。

「北海道から来ました!」など遠い所から来たとウソをつき、

熱心なファンを装うことで彼女の気を引こうと考えたりもしたが、

「わざわざご苦労様です」など労いの言葉をかけられでもしてしまったら、

後になって、ものすごい罪悪感に襲われてしまう可能性がある。

 

考えがまとまらないまま、僕の順番は近づいていた。

整理券一枚につき、一回撮影ができるので、

僕の前に並んでいた男性が七枚連続で写真を撮っていた。

本人は自分だけの撮影会を楽しんでいるかもしれないけど、

直後に写ルンですを取り出す僕の気持ちにもなってほしい。

撮影を終えた前の男性が満足した様子で帰っていくと、ようやく僕の番が来た。

係員に言われて前に進むと、そこに山本さんがいた。

アイドルは生に限る、強くそう思った。

一言で言うと、かわいかった。二言で言うと、すごくかわいかった。

申し訳ない気持ちで写ルンですを向ける僕に向かって、

山本さんは「かわいい」という言葉を具現化したような笑顔を向けた。

僕はくぅ〜ちゃんに見つめられた清水章吾のような表情になった。

そんな顔をされると僕のことが好きなのではないかと勘違いするので、

もっと汚らわしい物を見るような冷たい目で見てくれてかまわない。

それはそれで興奮するけど。

 

撮影をした後で山本さんと握手をした。

「がんばってください」

結局、僕が選んだのは普通の言葉だった。

何か面白い事を言えば山本さんが笑ってくれたかもしれないけど、

その笑顔を自分に好意があると受け取って勘違いしてしまったら最後。

次回からは自分も整理券を何枚も購入するようになってしまう。

自分に向けられている笑顔はあくまで営業用のもので、

それは他のファンにも均等に向けられていることを僕は知っていた。

二次元の女性と違って、三次元の女性は年も取るしプライベートもある。

もしもお笑い芸人と結婚でもしたりしたら、ショックで立ち直れなくなってしまう。

あまり入れ込まずに適度な距離を取るのが一番なのだ。

 

その時、僕が差し出した右手を両手で握って山本さんが言った。

 

「また、来てくださいね」

 

「はい!」

 

僕は力強く答えた。