弁才天(べんざいてん)

<蛇を従え、財や冨をもたらす女神>

         

 弁才天といえば、美と智恵と音楽の神として知られている。そしてまた、鎌倉(神奈川県)の銭洗い弁天のようにお金を増やしてくれる神でもある。
 弁才天は、インド神話において「サラスヴァティー」と呼ばれる。 もとはインドのサラスヴァティーという河を神格化したもので、穀物を豊に実らせる河の神である。
 サラスヴァティーは水多き地といった意味で、弁才という意味ではない。弁舌の神「ヴァーチ」と結合して同一視され、弁舌、学問、音楽の神となったとも、また川の流れのすずやかで美麗な音から美音天、弁才天と訳したとも言われている。

 日本の弁才天信仰は、奈良時代に始まるが、単独に祀られるようになったのは、中世になって財と福の神としての性格が加わってからである。七福神の一神として数える時は、才を財と書いて、財と福をもたらす女神であることが強調されている。
 弁才天は、神道では市杵島姫命(いちきしまひめのみこと)と同一視されている。また仏教では、観世音菩薩(かんぜおんぼさつ)の化身だとも考えられている。さらに、梵天(ぼんてん)の妃であるとも、娘であるとも言われている。
 弁才天が福の神の仲間入りをしたのは、弁才天が蛇を使者に用いることに由来すると思われる。蛇は世の東西を問わず財宝の守護神であることから、弁才天の福の神としての一面は、蛇に対する信仰の方から強いられていったのであろう。

 


 
 もっとも、インド最古の聖典『リグ・ヴェーダ』には、この神に関して「世界の冨を知る」とか、「冨を伴侶にする」と述べられていて、初めから福や冨の神としての要素はもっていたようである。江戸時代になって、十二支の蛇、すなわち”巳”の日に弁才天の守り札が出され、その霊験あらたかなことが大いに宣伝されたために、弁才天信仰が民間に広まったと言える。以来、巳の日は弁才天の縁日となった。

 近江(滋賀県)の琵琶湖・竹生島(ちくぶしま)弁天、相模(神奈川県)の江ノ島弁天、安芸(広島県)の厳島弁天、陸前(宮城県)の金華山弁天、大和(奈良県)の天川弁天を五大弁天とされ、広く信仰されている。
 もともと、水の神であることから、水辺に祀るのが一般的だが、奈良県の高野山のように、最高峰に祀られている例もある。
 

 

弁才天に関する奇瑞(きずい)はいろいろ伝えられている。
 その一つ、江ノ島の伝承によると、かって江ノ島は海で、そこに悪龍が住みつき人々を苦しめていた。ところが欽明帝の頃、大地が震え動き、海上に孤島が浮かび上がった。その島に弁才天が降りてこられ、人々に災いをもたらしていた悪龍を退治したと言う。

 通常、弁才天は琵琶を持った女神像で知られているが、八本の腕に武器をもの、あるいは人頭蛇身(じんとうじゃしん)の弁才天もある。
 

 

・ご利益
 鎌倉の銭洗い弁天では、弁天を祀る洞窟の涌き水でお金を洗うと、お金が増えるというので賑わっている。
 東京・上野の不忍弁天では、財布に入れておくだけで金銭に不自由しないといわれる「巳成金」というお守りに人気がある。

 歌手になりたい、雄弁家になりたいというのであれば、印呪(いんじゅ)を常に結び誦すれば、弁才天の助けによって、それが叶うと言われている。