この島に来て、長くなる・・・。
その間、少しは人が来た。四国から来たサイクリストとは仲良くなった。
「また、どこかで・・・」 そう言って別れた。
人と人が出逢うのと同じに、僕らはこの島と出逢った。
そして、人と人に別れがあるように、僕らとこの島との別れも近づいている。
そう、考えていた頃、彼らはやってきた。
海岸から沖を眺めていると2隻のクルーザーが走っていた。
子ども達を大勢乗せて、そう大人も合わせて40人ほどはいる。
どこへ行くんだろう?・・・・ここへ近づいてきているような気がした。
彼らが島へ上陸してきたのは、その直後だった。
不覚! 車が乗り入れられないと安心していた。船って手があったのか・・・。
因島で自分たちだって船をチャーターしようとしていたはずだ。
このあたりに住んでいる人たちは漁業を営んでいる人が多く自分の船を持っている。
中にはクルーザーを持っている人もいる。
「さすが、島だなあ!」 なんて変な感心をしていたら、その40人がどやどやと押し寄せてきた。
「逃げろ!!」
まさに、海賊に襲われた放浪の旅人のようだった。
40対2では勝てるわけがない。「七人の侍」だって40対7だったんだ。
ここは、逃げるしかない。僕たちは島の奥へと逃げ込んだ。
40人の海賊は陽が少し傾く頃まで海岸を占領していた。
夕方になって海岸へ降りた時、そこに散らばるゴミを見て悲しくなった。
夕日の海岸に座って、旅の始まりから今日までの事を考えた。
明日は帰らなくちゃ。
翌日、僕は朝早くに目が覚めていた。でも、ここを離れたくない気持ちでなかなか動こうとしなかった。
相棒も早くから、ずっと海を見ている。
時間の止まったこの島の、時計がとうとう動き始めた。
そして、僕たちは島を後にした。