マナマナ☆おまけシナリオ

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1・マナとレ○ル7シーフ

「よっし、宝箱だー!」
「シン、ちょっと待った」
 いつものように宝箱に手を伸ばそうとしたシン君。
 しかし、眼鏡の奥の瞳が鋭く光ったパロさんがそれを止める。
「なんだよパロ」
「もうこれ以上あなたに宝箱は任せられないわ」
「どういう意味だよ?」
「だって、ねえ・・・」
「アハハ」
 不服そうに睨み返すシン君。
 あたしはパロさんと顔を見合せて苦笑するしかなかったわ。
 だってシン君たら、いつもいつも宝箱の罠を外すのを失敗するんだもの。
 石つぶてのつもりが毒針。
 スタナーのつもりがガス爆弾。
 シン君一人だけがケガをするならともかく、この前なんて爆弾に引っ掛かっちゃったものだから・・・
 お気に入りのピンクのローブが爆弾のすすで真っ黒になってしまったの。
 オシャレに気を使う女の子としては、それはもうショックだったわ。
「でもよぉ、俺が宝箱を開けなかったら誰が開けるんだよ? まさかお宝を目の前にしてみすみす見過ごすなんてのはイヤだぜ」
「それなら心配無用よ。マナ、お願い」
「ハイ」
 パロさんに促されて、あたしは召喚の呪文を唱えた。
「それではお願いします。サモン、レ○ル7シーフ!」
 目の前に召喚陣が輝いて、そこから一人の男の人が現れた。
 それは浅黒い肌の一見中年のおじさんっぽい人で、ちょっと大きめな蛮刀と小型の盾を装備している。
「紹介します。レ○ル7シーフさんです」
「どうも、レ○ル7シーフです」
 あたしの紹介にレ○ル7シーフさんがペコリと頭をさげてお辞儀する。
 見た目はちょっと怖いけど、礼儀正しい人みたいで良かったわ。
「な、なんだよソイツ? 一体いつの間に・・・」
 突然のレ○ル7シーフさんの登場に愕然とするシン君。
「だからレ○ル7シーフさんです。契約してもらったのはついこの前で・・・」
「俺が聞いてるのはそんなことじゃねえ! マナ、なんでシーフなんて召喚するんだよ?」
 興奮気味にまくしたてながらあたしに迫るシン君。
「なんでって・・・」
 まさかシン君がこんなに怒るとは思ってなかったから、あたしはちょっとドギマギしちゃった。
「待ちなさいシン。落ち着いて。マナにシーフと召喚契約するように頼んだのは私よ」
「パロが? なんでまた・・・」
「あなたねえ、いつもいつも罠に引っ掛かっておいて・・・少しは反省しなさいよね」
「うっ・・・」
 言葉に詰まるシン君、やっぱり気にしてたんだなあ。

2・レ○ル7シーフで悪いか

「でも、だからって他の奴に宝箱を任せるなんて・・・それじゃあ俺はもう用無しってことか?」
「そういうわけじゃないわ。ただ、私とマナはシンに成長して欲しくて」
「そうよ、シン君」
 あたしとパロさんがシン君の肩を優しく叩いて慰めると
「そうか、分かったよ」
 シン君も一応は納得してくれたみたい。
 立ち直り早いなあ。
「でもよ、なんでそいつの名前は『レ○ル7シーフ』なんだ? 普通に『レベル7シーフ』って名乗れば・・・」
「あー!」
「ゴホンゴホンっ!」
 あたしとパロさんとでシン君の言葉を必死にさえぎる。
「な、なんだ?」
「いいことシン。それは聞いちゃいけないの。大人の事情、じゃなくて、そう、乙女の秘密ってやつよ。そうよねマナ」
「そ、そうなの。乙女の秘密は男の子にはナイショだよ」
 わざとらしくアハハと笑ってごまかすあたしとパロさん。
 決してア○キーの人が「レベル7」とするところを「レブル7」と間違えた、なんてバレてはいけないわ。
 そんなあたしとパロさんの説明にシン君は
「お、乙女の秘密・・・それはまた・・・」
 ゴクリと生唾を飲み込んだりして、どうやらまたエッチなことでも考えているみたい、もう!
「でもよお、『レ○ル7シーフ』なんて呼びにくいだろ。だいたい作者だって変換するのが・・・」
「あー、それなら平気よ。どうせ作者は辞書ツール使ってるはずだから」
「ジショツール? それって何ですか?」
 耳慣れない言葉なのでパロさんに聞いてみた。
「マナ、それこそ大人の事情ってやつよ。深く考えちゃダメ」
「はい・・・」
 どうやら大人の世界には、まだまだあたしの知らないことがたくさんあるみたい。
「それじゃあ名前を付けましょう。呼び名っていうか、ニックネーム。えーと何が良いかなあ・・・」
 あたしはレ○ル7シーフさんの呼び名を考えることにした。
 だってやっぱりシン君の言うとおり、「レ○ル7シーフさん」なんて呼びにくいもの。
「そうだなあ、レ○ル7だから『ナナちゃん』で」
「ちょっと待ったマナ!」
「マナ、それはどうかしら・・・」
 すかさずシン君とパロさんからストップがかかった。
「ダメですか?」
「ダメというか・・・」
「ホラ、男の人に『ちゃん』はないんじゃないかしら」
「えー、それじゃあ『○男さん』?」
「うーん・・・」
 渋い顔をする二人。
 あたしの付ける名前ってそんなに変かしら。
「そうだ、本人に希望を聞いてみましょう。というわけでレ○ル7シーフさん、何か希望の名前はありますか?」
「いえ、自分『レ○ル7シーフ』で構いませんから」
「でもそれじゃあ可愛くないし・・・」
「可愛くしてもらう必要、ないっすから」
 かたくなにニックネームをこばむレ○ル7シーフさん。
 きっと自分の名前にこだわりがあるのね。
「にしてもあんた無愛想だね。もっと愛想良くできないの?」
「自分、不器用ですから」
「シーフが不器用じゃダメだろ!」
 容赦なくツッコミを入れるシン君。
 でもさ、運が悪いシーフに言われたくないよねえ。

3・レ○ル7シーフと呼ばれて

「それじゃあ自分、仕事に掛かりますから」
 レ○ル7シーフさんはボソリと言うと、宝箱の前にしゃがみこんだ。
 慣れた手つきで宝箱を調べるレ○ル7シーフさん。
 うん、これなら任せて安心かな。
「むっ? これは・・・」
 レ○ル7シーフさんの顔が変わったわ。
 何か問題でもあったのかしら?
「やはり・・・そうか・・・」
 ブツブツと、宝箱に向って何やらつぶやくレ○ル7シーフさん。
 その顔は真剣そのもの。
 シン君もあれくらい真剣なら失敗もしないんじゃないかしらねえ。
 やがてレ○ル7シーフさんが立ち上がった。
 ゆっくりとこちらを振り返り、大きく首を横に振ったわ。
「レ○ル7シーフさん?」
「マナさん、この宝箱は諦めたほうがいい」
「えっ? どういうことですか」
「この宝箱は危険だ。触れないほうがいい」
 レ○ル7シーフさんはそれだけ言うと、あとはじっと口を閉ざしてしまった。
 何か嫌なことでも思い出したのかしら・・・
「けっ、やっぱりそんな奴に宝箱は任せられねえ。俺がやる!」
「シン君!」
「シン、待ちなさい」
「どけ!」
 シン君はレ○ル7シーフさんを押しのけて宝箱に飛びついた。
「おい、やめるんだ。それはマズイ」
「うるせえ、俺だって宝箱くらい開けられる。俺はシーフだ!」
「やめろ、開けたらダメだ」
「ええい、放せ!」
 レ○ル7シーフさんを突き飛ばすシン君。
「よし、開けるぜ」
 その手が宝箱の蓋をこじ開けた・・・その時。
「いかん!」
 今度はレ○ル7シーフさんが逆にシン君を宝箱の前から突き飛ばし、一人で宝箱を抱え込んだの。
 そして次の瞬間、周囲に閃光が走った。
「うわっ!」
「きゃー」
 あまりの眩しさに目も眩むばかりとはこのことよね。
 しばらくは視界が真っ白に弾けて何も見えなかったんだから。
「まったく・・・今のは何だったのかしら? みんな、大丈夫?」
「ええ、大丈夫です。まだよく目が見えないけど」
 何しろ視界が飛んで真っ白になったものだから、パロさんと手を取り合ってお互いの無事を確認する。
 良かった、パロさんは平気だったみたい。
 気持ちが落ち着くと同時に、視界のほうも少しずつ回復してきたみたい。
「そうだシン君、シン君は大丈夫・・・」
 あたしがシン君の姿を探して視線を彷徨わせると、シン君は宝箱の前で呆然と立ち尽くしていたの。
「シン君?」
「どうかした、シン?」
 シン君の様子がおかしいと思ったあたしとパロさんが、シン君の後ろから覗き込んでみたら・・・
「レ○ル7シーフさん!」
「ちょっとあなた、一体どうしたの!」
 呆然と立ち尽くしていたシン君の足元には、レ○ル7シーフさんが真っ黒に焦げた状態で倒れていた。
「レ○ル7シーフ、あんた、どうして・・・」
 シン君がガックリとその場に跪き、レ○ル7シーフさんの身体を抱き上げる。
「あれは・・・高圧電流の罠だ・・・」
 息も絶え絶えのレ○ル7シーフさんの口から言葉が零れ落ちた。
「高圧電流だって?」
 恐怖の罠、高圧電流。
 それは宝箱から放たれた高圧の電流によって、最悪の場合パーティのメンバーを灰と化してしまうものだって後でシン君が教えてくれた。
「そうだ、自分は昔あの罠に引っ掛かって、パーティの仲間を全て死なせてしまったことがあった・・・」
「そんなことが・・・」
「ボウズ・・・シーフってのは・・・パーティの命を預かってるんだ・・・それを忘れるな・・・」
 レ○ル7シーフさんがやっとのことでそれだけ言うと召喚陣が浮かび上がり、そのまま吸い込まれるように消えてしまった。
「レ○ル7シーフ、分かったよ。俺、もっとうまく罠を外せるようになるから。レ○ル7シーフ・・・」
 シン君は泣きながら、いつまでもいつまでもレ○ル7シーフさんの名前を呼び続けていたんだ。

   ☆   ☆   ☆

 数日後。
「なんでお前がここにいるんだよ!」
「自分はマナさんと召喚契約をした身ですから」
 宝箱を開けようとするシン君と、それを止めようとするレ○ル7シーフさん。
「マナ、こいつは死んだんじゃなかったのか?」
「んー、あたしもよく分からないんだけど、試しに召喚してみたら出て来てくれたの」
 そう、あたしもレ○ル7シーフさんは死んだものと思っていたんだけど・・・
 シン君があまりに悲しそうにしていたから、試しに召喚してみたらこうなったってわけ。
「けっ、勝手にしろ。だがいいか、この宝箱は俺が開けるからな」
「ボウズ、待て」
 レ○ル7シーフさんを無視して宝箱を調べ始めるシン君。
「これはスタナーだな。よし開けるぞ」
 自信満々のシン君、その手が宝箱の蓋に触れた瞬間。
「いかん、隠れるんだ!」
「えっ?」
「きゃあ!」
 レ○ル7シーフさんがあたしとパロさんを抱えて物陰へと逃げ込んだの。
 そして。
*おおっと爆弾*
 どっかーん
「うわぁー!」
 今日も迷宮内にシン君の悲鳴が響き渡ったのでした。

マナマナ☆おまけシナリオ・・・おしまい