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プロセスの不適合の客観的証拠は、製品の不適合
 
 例えばある組織では営業車両を購買製品と捉えており、評価して採用していたとします。しかし、その評価の方法が受付の女性が美人かどうかだったらこれは不適合でしょうか。7.4.1で「供給者が組織の要求事項に従って製品を供給する能力を判断の根拠として、供給者を評価し、選定すること。」とあるから不適合と考える審査機関があるかもしれません。しかし、それは間違いです。営業車両はもともと購買製品ではないのです。品質に影響しないからです。だから、どんな評価方法だって構わないのです。
 その方法が不適合だとしたら、その客観的証拠があるはずです。それが製品の不適合です。もし審査員がその方法が間違っていると考えたら、それが原因で起こった製品の不適合を探し出さなければいけません。このような製品の不適合が発生しています。この原因は購買先の評価の方法にあります。この評価方法では顧客要求事項、規制要求事項を満たした製品を一貫して提供するのに不十分です。よって7.4.1に対して不適合です。とアプローチしなければならないのです。
 それでは製品に直接影響しない、製品実現のプロセスを支援するプロセスや継続的改善のためのプロセスも製品の不適合がなければ不適合とできないのでしょうか。これは少し難しい問題です。しかし、あくまで不適合の客観的証拠は、製品の不適合のみとすべきです。なぜなら、審査で実証するのはあくまで「顧客要求事項及び適用される規制要求事項を満たした製品を一貫して提供できる能力を有すること」だからです。例えば内部監査やマネジメントレビューが不十分だったとします。しかし、改善提案や社内委員会の活動で常に品質マネジメントシステムが継続的に改善され、要求事項を満たした製品を一貫して提供できる能力が維持されていれば、不適合にする意味がありません。継続的改善の目的は、顧客のニーズ及び期待の変化、競争と技術の進歩に対応するということですから、その目的が達成されてさえいれば(製品の不適合が発生していなければ)、せいぜい改善の機会として観察事項にとどめ不適合とするべきではないのです。
 ISOではトップダウンでしか品質保証ができないと考えていますが、日本ではボトムアップで品質保証ができる土壌があります。つまり、規格の要求事項は日本の組織にそぐわない部分があるのです。しかし、製品に直接影響するプロセスの検証に自信のない審査員は、製品に直接影響しないプロセス(日本の組織にそぐわないプロセス)ばかり審査するということになりがちです。このような審査では、“組織のため”どころか組織を混乱させるだけです。この意味からも不適合の客観的証拠は製品の不適合のみとすべきなのです。




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