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品質目標は、品質マネジメントシステムを策定する際の基準である

 品質マネジメントシステムとは、要求事項を満たした製品を一貫して提供するために策定されたプロセス(手順)の集まりです。プロセスは、まさにそのプロセス一つを指す場合はプロセスと呼び、複数のプロセスを指す場合はシステムと呼びます。そして全てのプロセスを指す場合は、それぞれのプロセスとは呼ばず品質マネジメントシステムと呼ぶのです。なお、プロセスは通常文書化され、その文書は品質マネジメントシステムの文書の一部となります。
 それぞれの部門及び階層で第2階層文書(システムつまり複数のプロセスを表した文書)、第3階層文書(プロセスを表した文書)を持つような組織では、通常それぞれの文書を作成承認する権限は、それぞれの部門及び階層にあります。プロセスを策定する権限が部門や階層に委譲されているということです。しかし、部門や階層でそれぞれプロセスを策定(計画)すると方向性やレベルがまちまちになってしまう恐れがあります。だからそれぞれのプロセスを策定する際の方向性を表した品質方針、レベルを表した品質目標が必要なのです。
 つまり、品質目標は、策定(計画)しようとする品質マネジメントシステムのレベルを示したものであり、プロセスを策定する権限の数だけ品質目標が必要といえます。プロセスを表した文書が一つしかないような組織では、品質目標は最低一つあれば十分です。
 さて、ISOでは、まず目標を立てその目標を達成するために品質マネジメントシステムを策定するというトップダウンを想定しています。こう考えると品質目標はプロセスの基準で非常に重要です。しかし、日本では目標などなくてもボトムアップで品質マネジメントシステムが策定されてしまうという土壌があります。ですから日本のほとんどの組織では、マネジメントシステムを策定したあとで目標を立てています。後付けですからプロセスとの整合性などあるはずありません。それぞれの部門で立てないといけないと勘違いし、営業部門の品質目標「売上10%アップ」などとしたり、品質目標をどのように使っていいかわからず、品質目標達成年間計画表なるものを作成している組織も多いと思います。
 このような実態は、厳密に言えば規格の要求事項に対し、不適合といえるかもしれません。しかし、重要なのは結果として策定された品質マネジメントシステム(それぞれのプロセス)であり、品質目標は、あくまで品質マネジメントシステムを策定するための手段です。審査をする時点で品質マネジメントシステムは、既に構築されているわけですから、日本の場合、実際には品質目標の審査は重要でないのです。
 




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