念願の初大島!
ヨットに乗り換えた時から漠然とだが遠くに行ってみたいと思い始めていた。
その「遠く」が大島と具体的な名前を得るまでそう時間はかからなかったと思う。
冬、テレマークの行き帰りにヨットの猛者でもあるNaoさんにアレコレと大島の事を聞くと
「付き合ってあげるよ」とのありがたい申し出を頂いた!それっと行ければよいのだが、
それから船の乗り換え・レストアと月日は流れ、やっと今年波浮港に向かうことができた。
お盆前の忙しい時期にS沢さんも駆けつけてくれ、大日本茸の会海を行くのとばかりに
8月1日午後11時30分、YBMの舫を解いた。
夜船を出したのは花火の時くらいで、本格的なナイトクルージングは初めてである。
大潮で逆潮。風も南とアゲンストばかりだ。それでも何とかセイリングでとコースを取ると、
気がつけば本線航路の真っ只中!それにしても他船の航海灯など見慣れないとどちらにどう
という動きがピンとこないものだと痛感した。もう一度よくGPSを確かめながら
航路外にコースを取り直し東京湾口を目指す。アシカ島周辺など潮がきつく、
機走しても対地速度は1.6ノットである。遅々として進まずとはこのことだ。
予定では日の出前に剣崎をかわすはずであったが、白々と夜が開けてしまった。
東京湾を離れ三浦半島が見えなくなるまで随分とかかったが、
潮も風も相変わらずアゲンストで今度は島影が見えてくるまでが長い。
私には雲が一番多い辺りが大島だろうくらいしか分からなかったが、ベテラン二人には
ぼんやりとながらも島影が見えるらしい。恐るべし心眼!
だいぶ暫く逆潮とうねりに弄ばれた後、やっと目指す大島が雄大な姿を現した。
島近くに進むと風はいよいよ上がって、うねりも大きくなってきた。
渓流同様、海も潮は深いところが早く、岸近くは緩いとのこと。
島に張り付くように接近してからタックして波浮港に上るコースを取る。
山からの吹き降ろしがすごい!船は一気にヒールして堪える。
何度か繰り返すうちに益々強風となり、突然バンッという音とともに
メインシートトラベラーが飛んでしまった!
私は勿論頭真っ白で直ぐには何が起きたのかもわからない。
Naoさんの号令一喝、メインを下ろしてジブを展開、ギリギリにまで絞る。
ホッとした反面、何か別のトラブルに見舞われるのではと不安が過ぎる。
しかしBW25は偉かった!重い腰で踏ん張り、ゆっくりではあるが安定して上り始めた。
それにしてもNaoさん、S沢さんのベテランが一緒でなかったらどうであっただろうか!?
島影で潮流を避けるという知恵もなく延々と沖合いで徒にエンジンをふかすか、
はたまたトラベラーを飛ばされてなす術なく岸に打ち付けられているか。
いずれにせよ二人の豊富な経験と操船技術がなければどうなったかわからない。
一人で乗る不安を具体的に突付けられ無力感に打ちのめされた。
この1時間あまりのうちに見て聞いて起こったことを反芻しているうちに念願の波浮港に到着。
外の海況がうそのようなひっそりとした佇まいに胸をなでおろす。
やっと念願の大島・波浮港に来たのだ!
昨夜YBMを出てから15時間余を要した船旅であった。