Sailing alone on a moist day
昨夜の酒が少し残った頭のまま目をこすりながら起きる。
せっかく取った久々の休みだ。とにかく早く出なくてはと支度を急ぎ車を出した。
天気予報と違うじゃないか。舌打ちをしながら厚い雲の下を横浜に向かった。
こんな押しつぶされそうな空でも今日が梅雨の中休み最後の一日だというラジオの声が
耳に残る。コーヒー飲んで来るんだったなーと紫煙と一緒につぶやく。
海と向かい合うと雲はもっと低かった。湿気が肌に纏わりつきながら流れる。
船を出そうか出すまいか移ろいながら、キャビンで今日一杯目のコーヒーをゆっくり味わう。風がないのだ。
軽い朝食を済ませデッキに出る。新しく引いたもう一本のリーフラインの具合を見ようとセイルアップする。
簡単な仕掛けだが一人乗りでは役立ってくれるだろう。
セイルを見上げていると東の風が吹き始めたようだ。やっぱり出すか。
出港のルーティーンを急ぎ、必要なもの全てと熱いコーヒーをコックピットに並べ、マリーナを後にした。
週日の八景沖はさぞ多くの大型船が行き交うのだろうとわずらわしく思いながら出てみると、
近くの漁港から出たのだろう小型底引き漁船が忙しく行きかうばかりで閑散とした感じだ。
今日の訓練テーマは決めてある。風も充分上がり、気ままに舳先を向けてみる。
僕を押し出すように出て行った他のヨットたちも鉛色の海と空の間に溶けていった。
時々遠慮なくこちらに向かってくる漁船や大型船を避けながら風を上る。
こんな天気でも出てみれば捨てたもんじゃない。
船も気持よさそうにヒールして波音を立てている。
懐かしいMAL WALDRONの“LEFT ALONE”がラジオから流れる。
今日はSAILING ALONEだなと声にしてみる。
マリーナに帰る時間が少しずつ延びていく。
今回は私小説風に味付けしてみましたぁ!f(^_^)