エピソード『心の座』
Seraphic Fortune PHANTASY
エピローグ〜心の座〜
「ここに・・・デルタが・・・」
転送地点に広がるドーム状の部屋、巨大な端末、生命の渦。
友人がいるはずのその場所へ、エリスはそこにたどり着いていた。
「デルタ!!どこにいるの・・・?」
他とは明らかに違うその空間―――しかし彼女はそれに見向きもせずその名を叫ぶ。
純粋にただ会いたい―――その想いだけを瞳に浮かべて。
『イルギル。侵入者を排除しなさい!』
エリスの言葉に答えるかのように、辺りに声が響き渡る。
―――冷たく淡々とした声が。
「その声はデルタ――――?」
聞き覚えのある懐かしい声。
しかし、エリスを出迎えたのは三体の死神だった。
「どうして・・・」
そこで待っていたのは再会ではなく、エネミー。
確かにデルタの声―――だからこそこの現実が判らない。受け入れられない。
しかしエリスがそう思っても、死神は止まる事なくその鎌を向ける。
「デルタ・・・デルタ・・・どうして、ねえっ!」
しかしデルタの声は返ってこない。
そして、そんな彼女を排除するべく、三筋の鎌が振り下ろされた。
だが、その鎌がエリスをとらえることはなかった。
シュウウウウ・・・
三体の死神は、その鎌で彼女を切り裂く事なく消滅していたのだ。
「はぁ―――はぁ―――」
肩で息をしながらに立ち尽くすエリス。
―――まだ、先ほどのダメージが消えたわけではなかったからだ。
しかし、彼女には何が何でも倒れるわけにもいかなかった。
もしも今の声がデルタなら、なおさら。
「デルタ・・・うちだよ。エリス。エリス=レナフォード・・・覚えてる―――よね?」
誰もいない空間に、エリスの声だけが哀しく響き渡る。
―――と、その瞬間。
中央の渦から光が現れ―――それが閃光のように弾け出していた。
「デルタ―――」
そこからは一人の青髪の女性が姿を現していた。他でも無い、デルタが。
懐かしいその姿―――その姿に、エリスは内側からこみ上げている何かを感じていた。
そしてそれらは、声に変わる。
「デルタ・・・久しぶり・・・だね」
「そうですね・・・。こうしてエリスに会うのは何年ぶりでしょうか・・・」
デルタは淡々と告げる。だがそれでも、彼女もエリスとの再会は嬉しいものには変わりない。
「―――だっていうのに、どうして?どうしてあんな事―――」
あんな事―――とは当然エリスに向けられた死神の事だ。
明らかにデルタの声―――しかし再会を喜ぶ彼女。一体どういうことだというのか。
「―――あなたは友人と呼べる存在です。だから迎え入れてあげたい。
ですがそれはできないのです」
「できない・・・?」
「制御塔を管理するものとして。マザーシステムを管理するものとして。
―――管理者、それが私の存在理由。
だからできないのです。管理者として動かない私など、存在の意味がないのですから」
「そんなのおかしいよ・・・」
「あなたから見ればおかしいかもしれませんね。
管理という名目に縛られる事なく、自由でいられるあなたには・・・」
「自由―――」
まるでうらやましいと言っているかのようなデルタ。
しかし―――エリスは自分が自由だと思えたことは一度たりとなかった。
ラヴィス=カノン、ダークファルス。そういうものに縛られていたと同じだからだ。
「私には自由を与えられなかった。―――いいえ。
存在の意味すら、与えられなかった。」
「どういうこと?」
「棄てられたのです。・・・マザーシステムと共に」
デルタは中央の渦を指しながらに哀しげに告げた。
自らが棄てられた存在なのだ、と。
「棄てられた―――」
「ですが私にはその管理こそが存在意義。
たとえ棄てられても、それを管理する事だけが私なのです」
事実を淡々と述べるデルタ。
しかしその言葉は、とても普通の事ではなかった。
「なんで・・・。どうしてそんな哀しい事を言うの・・・?」
そんな彼女の言葉を・・・エリスは聞いていられなかった。
「哀しい―――ですか?」
「うん。マザーシステムは棄てられた。もう管理する必要がない。
なのにそれを管理する事だけがデルタの存在意義なんて哀しすぎる・・・」
「哀しいなどと考えた事もないですね。
はじめからそうやって造られた私には、それが当たり前なのですから。
私が管理をやめる―――それは私から存在意義が消える事。
つまり、存在の死と呼べるのです」
デルタの言うとおり、造られた彼女から管理を奪う事は死ぬ事も等しい事だった。
存在の死―――だから彼女は、棄てられたと判っていてもそれを管理する事をやめない。
「ちょっと待ってよ。デルタの存在意義って・・・本当にそれだけなの?」
納得いかない―――そんな気持ちと共に、確かめるようにエリスは言った。
「そうです。いいえ、初めからそれしかもっていない、というべきですね」
「違う―――!!」
淡々と自分を語るデルタ―――しかしそれを、エリスは強く否定していた。
「何が違うと言うのですか?あなたなら知っているはずですよ。
私がどのようにして造られていたのかを」
「うん・・・。制御塔を管理する媒体のような存在として造られた・・・それがデルタ。
でも、ね。本当にそれだけが存在意義・・・?
違うよ・・・。少なくとも私は―――デルタの友達だから。
私の友達―――それも充分な、存在意義でしょ・・・?」
エリスは・・・優しく微笑んでみせた。友達だ、と。
「友達―――そんなもので存在を決定するものではありません」
「寂しいよ、デルタ。それとも私の事嫌いになったのかな・・・?
違うよね?さっき言ったよね、友人と呼べる存在って。
ならそれでいいと思う。どんなにくだらなくっても、私達にとっての存在意義だから」
「エリス・・・。だいぶ、変わられましたね」
「そうかな?―――まあ、色々あったから」
記憶を失った―――とはさすがにエリスは言えなかった。
再会したっていうのに、ついさきほどまでデルタの事を忘れていたなんて、誰が言えるだろう。
「それにね。存在意義って、最初からあるものじゃないと思う。
誰かがくれるものじゃない。自分で見つけるものってね。
むしろ、お互いが作っていくものなのかな。
制御塔を管理するっていうのは一つの存在意義だったのかもしれない。
でも、それにとらわれすぎだよ。
存在意義は一つだけなんて、誰が決めたの?
それに―――棄てられた・・・んでしょ」
「そうですね・・・。エリスの言う事にも一理あります。
しかし―――私から管理者としての意義がなくなること、つまり存在の死。
―――それは私が死んでるも同じなのですよ?」
しかし―――デルタはエリスの言葉を聞き入れようとしない。
「もう―――。そんなの知らないよっ!」
そんな、あまりにも頑なに言葉を続けるデルタに、エリスは半ば怒っていた。
デルタの哀しすぎるまでの言葉もそうだが、彼女をそう決定付けた存在にも―――だ。
「エリス、あなたは知らなくていいんですよ。
あなたには自由でいられる力も意思もあるのですから」
「知りたくもないよ、そんな哀しい事。
それに管理者?存在の死?―――そんな事、どうだっていいと思う。
一緒に行こうよ、デルタ!」
エリスは、はっきりとそう言っていた。
友人と一緒にいたい。再会―――そしてもう離れたくない。そんな気持ちから。
「一緒に行く・・・何を言っているのですか?」
「何ってそのまんまだよ。
棄てられたものにとらわれる理由なんてない。
そうやって存在意義にとらわれて、デルタ自身の可能性を否定するなんて嫌だよ。
デルタは造られた人間なのかもしれないよ?
でも―――それでも生きてる。
生きてるって事は、それだけで色んな可能性があるって事だと思う。
それを・・・否定しないでほしいから」
「同じですね・・・」
「え?」
「エリ=パーソンが、カル・スに言った事とエリスが言っている事―――ですよ。
私はあなた達のように、可能性のように不完全なものを―――」
「マザーシステムは棄てられたんでしょう・・・?それって不完全って事じゃないの?」
「・・・」
デルタは何も言い返さない。いや、言い返せなかった。
まして―――カル・スが眠っている。次なる生命体へ進化できる保障もないのに、だ。
「デルタ、私達と一緒に行こう?
存在意義とか存在の死とか完全とか不完全とか、そんなのどうでもいい。
デルタがデルタとして、私達の友達として、一緒に行こうよ。
もしも存在意義が無いと駄目っていうなら・・・私達があげる。
私達の仲間っていう存在意義―――居場所を。
ね、行こうよ!」
「それは―――できません」
「何で・・・。まだどうこう言うの・・・?
これ以上管理者っていいはるなら、無理やり連れてくよ!?」
「いいえ、そうではありません」
「そうじゃない・・・?」
「あなたの気持ちは嬉しい。ですが、そうする事はできないのです。
今―――カル・スは眠っています。
制御塔とマザーシステムの管理者として、彼は見届けなければなりません」
「そんなのどうだって――――良くないよね・・・。
エリの大切な人だし・・・。でも・・・ずっと独りで見届けるなんて辛すぎるよ。
なんとか・・・なんとかならないの・・・」
「私は今までも独りでした。それを辛いなどと・・・思うこともありませんよ。
大丈夫ですよ、エリス」
「大丈夫なんかじゃないっ・・・。それが哀しいって・・・言ってるんだよ。
もう決めた!うちはデルタを絶対連れて行くんだからね!」
「無理言わないでください。カル・スをどうしろというのですか?」
「うーん、眠ってるんだよね。・・・どれくらい、眠るの?」
「それは私にも判りません。―――ただ、長い時間がかかるとしか」
「なら決まりっ!制御塔に完全なセキュリティをかけよう!
そんなに心配なら、たまに様子を見に来ればいい。
もうデルタが、いつまでもここにいる理由なんて無いんだよ。
たとえカルが眠ってても―――きっとカルだって、デルタがここにとらわれてほしくないとおもう。
―――というか、そう思っとこうよ」
「確かにそれならばカル・スの邪魔をされる事はありませんが―――」
『セキュリティレベルMAX起動。全転送装置の機能を停止。
すべてのゲートを封鎖。座標ログ消去。
各フロアの警戒レベルを最大。マザーシステムの保護を最優先とします。 』
デルタが言いきるより早く、エリスは制御塔の中枢コンピューターを素早く操作していた。
―――そのまま。
管理者であるはずのデルタを無視して、辺りに響く警報とコンピューターの声が響いていく。
「エリス、何をするのですか!」
「もう決めたって言ったでしょ。
管理者権限で操作しちゃえばセキュリティくらいなら・・・かけられるし」
「―――私の負けです、エリス。仕方無いですね・・・」
言いながらに、デルタはエリスと端末の操作を変わっていた。
「こんなセキュリティでは突破されてしまいます」
端末をエリスよりも素早く操作するデルタ。
その横顔は・・・どこか嬉しそうにも見えていた。
『制御塔内部のエネルギーをマザーへ集中。
海底トンネルのゲートを厳重封鎖。
制御塔地下の操作権限を移行、セキュリティロック完了。
地下へのゲートを封鎖。中央管理区内部の転送座標を消去。
制御塔内部のログを削除―――暗号化完了。
―――全てのセキュリティロック、完了。
一分後に強制的に転送装置を起動させます』
「デルタ・・・」
機械的に響くデルタの声。だがそれは・・・エリスの願いを聞き入れてくれたことに他ならない。
エリスは、言葉ではなく行動で示す彼女に、思わず笑みがこぼれていた。
『転送終了後、管理者権限で全ての座標とログは消去します』
「―――転送装置、起動します」
「デルタ・・・ありがとう」
自分に応えてくれた事。それが何よりもうれしくて、エリスはそういわずにはいられなかった。
「それは私がいう言葉ですよ・・・エリス」
―――しかし、そんな感謝の気持ちを、デルタはそのまま返していた。
デルタが言えた精一杯―――だがそれも転送と共に誰にも届く事なく消えていった・・・。
―――晴れた星空と、静かな波が待つ海岸へ―――
「―――これがラグオルですね。
データでは知っていますが・・・実際見るのははじめてです」
海岸へとついたもつかのま、デルタがそんな事を口にした。
―――彼女は管理者として生きるがゆえ、制御塔という狭い世界しか見た事がないのだ。
「綺麗でしょ?星空とか、海とか」
「綺麗―――この感覚が、綺麗―――」
デルタははじめてこの眼で見る景色―――それに抱く感情に戸惑っていた。
情報としては知っている。しかし―――それを素直に感じたのは初めてだったからだ。
「うん。これより綺麗なものもいっぱいあるよ。
これから、もっと色々なモノが見れるし、色々な気持ちになると思う。
―――戸惑うかもしれないけど。
でも、うちがいるし、きっとみんなもいてくれるはず」
エリスはデルタの横に並びながら、嬉しそうな顔でそう言った。
これからずっとこうしていられる―――それだけで、幸せになれたからだ。
「ねえ、デルタ?」
「どうしましたか?」
自分の感情に戸惑いながらも、いつものような冷静なそぶりで聞き返すデルタ。
外に連れてきても相変わらずだ。
――――そんなデルタがおかしくも思えながら、エリスはまじまじと彼女の眼を見た。
そして、告げた。
「改めまして・・・これからもよろしくねっ!」
「何を言い出すかと思えば、そんな事ですか。
あなたこそ、私をこんな場所まで連れてきた責任・・・ちゃんと取ってくださいよ?」
「う・・・責任―――そんな言い方しなくってもいいじゃない」
責任―――その言葉の重さに、ちょっと不安になるエリス。
「いいえ。無理やり連れてきたんです。それくらいの覚悟はしてください」
しかしデルタもまた本気だ。未知の世界に連れてこられたも同じなのだから。
「元からそのつもりだけど・・・責任なんて言われちゃうと・・・」
「判りましたね、エリス」
「あーもう!判ったよ、デルタ。うちがきっちりと責任とるからっ!
だからそんな言い方しないでよ・・・」
あまりにも強く言い切るデルタに、エリスも言い切るしかなかった。
無理やり連れてきたのはエリス―――しかしこれではまるで逆の立場だが。
「―――しかし外の世界は暗いんですね。これが夜―――というものですか?」
「そうだよ。照明とかよりずっと落ち着くでしょ?」
「そう・・・ですか?私には暗すぎてどこか慣れませんが―――?」
「うん?どうしたの?」
突然デルタが、何かを見つけたかのようにその方向へと歩き始める。
その様子になんだとばかりに、エリスもまたその後を追いかける。
向った先―――そこには、一人の女の子が倒れていた。
「どうやら・・・転送が不安定だったようですね」
その少女をここへ送ったのは他ならないデルタだ。
ゆえに、その転送結果に管理者として後悔を覚えずにいられない。
「―――イリスン!」
しかし・・・エリスはそんなのもお構いなしに飛び出していた。
女の子―――イリス=シルディアの元へと。
「―――ン!――スン!!イリスン!!」
どこからともなく聞こえる、私を呼ぶ声。
「う・・・ん・・・」
絶えず繰り返される自ら名前―――それが目覚ましのように、私はゆっくりと眼を開く。
「良かった・・・無事、だったんだね」
「エリスン・・・?ここは・・・」
そこに待っていたのは、エリスンだった。
エリスンがいる―――じゃあここはどこだろう。
そもそも私はあのあと―――どうしていたのだろう?
「―――海岸です。私がすぐ近くの安全な場所まで送らせてもらいましたので」
「・・・!?」
しかし、私の問いに答えたのはエリスンではなかった。
青髪の私よりスタイルの―――じゃなくて、制御塔の管理者であるはずのデルタだった。
エリスンがいた事もよく判らないが、それよりもデルタがいるということに戸惑いを隠せない。
何せ―――あまりにも驚いてしまった私は、彼女を前に声を失っていたほどだし。
「なんで私がここにという顔ですね?
それは私が聞きたいくらいですよ・・・」
言いながらに、デルタはちらりとエリスを見る。
―――どうやら、デルタを連れてきたのはエリスらしい。
・・・どういう経緯でそうなったのか、まったくもってわけわからないけど。
「立てますか?あまりに強制的に転送したのでどこか打ったかもしれません」
「え?あ、うん・・・大丈夫」
さっき制御塔にいたデルタとは、別人のような気さえ感じられる。
口調は相変わらず淡々としているけど、その言葉からは冷たさをどこか感じない。
優しくなったというか、そんな感じだ。
そう長い時間が経ったわけじゃないとは思うんだけど・・・。
「それと―――私から言わせてもらいます。
イリス=シルディア、あなたにありがとうと」
「私に・・・?」
「はい。あなたはエリ=パーソンと共にカル・スをマザーまで導きました。
D因子から彼を解放し、彼が生まれた本来の意味を持たせた。
確かにカル・スに与えた影響はエリ=パーソンのほうが大きいでしょう。
ですが―――ここまで彼を導いたのは、あなたがいたからなのです」
「私―――そんな何もしてないと思うけど・・・。
エリを泣かせてそのまんま、声もかけられなかった、カルも―――」
見ているだけ、見守っているだけ。
なのにこんな・・・過大評価されて、お礼を言われるなんて・・・。
「イリスン、相変わらず自分を過小評価しすぎだよ。
それに、声をかけらんなかったって、言い方を変えれば見守ってたんだよね。
なら、それでいいと思うよ。イリスンの気持ち、きっと伝わってる」
「だけど―――」
「あなたが思っている以上に、あなたはカル・スを導いている。それは事実です。
ですので、マザーシステムの管理者としてお礼を言わせてもらいます。
ありがとう、と」
「―――どういたしまして」
いきなりありがとうと言われても、困るけど・・・。
なんだかくすぐったいけど―――でもその気持ちを踏みにじるほうがよっぽど最悪だ。
そう思った私は、素直にデルタへそう返した。
「―――それよりエリは?エリはどこ・・・?」
だんだん動き始める思考。
ここに来てようやく私は、エリの事が頭に浮かんでいた。
「判りません。ですが、私はあなたたちを同じ場所へ転送しました。
つまりあなたがここにいると言う事は、彼女達もここへいると言う事です」
―――早く見つけてあげないと。
そう思うと、私の身体と言葉は自然と動き出していた。
「そっか、ありがとう。
それじゃあ私―――エリを探してくる。
今のエリを・・・一人になんてしておけないから」
「うん、行ってあげて。何があったか判んないけど、大体検討はついてる。
うちらはこの辺にいるはずのフォルとルナを探してみる。
デルタも、行くよ」
「それではイリス=シルディア―――」
「待って」
私はデルタの言葉が気になって、思わず二人を止めていた。
かなり個人的で、くだらない事だけど・・・。
「何かありますか?」
「何かってほどじゃないけど―――その呼び方。
フルネームで呼ぶのやめようよ。なんか長いから」
「では、なんと呼んだらいいですか?」
「うーん、イリスでもイリスンでも任せるよ。とにかく、名前か愛称で呼んでね」
「判りました、イリス。―――呼び名とは、変なところにこだわる人ですね」
それは自分でも自覚してる。でもさすがにフルネームもどうかな・・・と。
「デルタは判んないかもだけど、結構呼び名って大事だよ。
そうだよね、イリスン?」
「そういう事―――それじゃ、私は行くね」
最低限の事が決まる―――と、私は二人に別れを告げる。
「判った。それじゃ・・・また後でね。
デルタ、うちらも行くよ!」
「判りました。それでは改めて。
イリス、また後で」
「ふふ、またね」
デルタが名前で呼んでくれた事がどこか嬉しくて、ついつい笑顔になる私。
だがそれも一瞬。二人が駆け出すと同時に、私もまたエリを探しに駆け出した。
走り出して数十秒。私は二つの影を発見した。
やや前方の高台に、スゥとキリークの二人が立っていたのだ。
「あの二人にも・・・顔出しとかないとね」
私はそう思うと、二人の高台へと駆け上がった。
そこへたどり着くと、スゥが待ってましたとばかりにこちらを見た。
キリークはというと、遠くを見るかのようにこちらに背を向けたままだ。
まるでたそがれてるんじゃないの?って思えるくらいだ。
しばらく誰も何も言わない―――が、その沈黙をスゥがそっと破っていた。
「あの子・・・」
あの子―――といいながら、スゥは海岸の方を指差す。
どの子―――と思うまでもなく、その方向にはエリが立っていた。
遠くからでどんな顔をしているか判らない―――がその姿はどこか寂しげだ。
「小さい頃のあたしに似てるわ」
「似てる・・・?」
スゥとエリが似てる―――どっからどうみてもそう思えない二人なだけに、私は思わず尋ねていた。
そんな私の問いかけに、コクリと頷くとそのままスゥは話を続けた。
「平気な顔してるんだけど泣いてるの。―――やんなっちゃう」
「そうだね・・・」
エリの性格は判ってる。でも―――スゥにもそんな面があったなんて意外だった。
いや―――似ている部分があったからこそ、
今回のようにスゥがエリをなんだかんだで見守っていてくれたのかもしれない。
再び沈黙。だがそれもほんの短時間。
「―――マザー計画・・・人類の新たなる母を求めるプロジェクト」
自分と似ているだけに話したくないのか、スゥはそれとなく話を変えていた。
変えていた―――というよりも、本題というべきか。
「薄々気づいてるとは思うけど・・・そんな計画があるのよ。パイオニア計画の裏でね」
気づいている―――と言うよりも、知っている・・・かもしれない。
しかし今回の事で判らなくなった、とも言える。
私の知っていたはずのマザー計画と、今回のそのマザーシステムが違っていたからだ。
「―――それを知りたくてこんな惑星くんだりまで来てはみたけど・・・それももうおしまい」
「おしまい?」
しかしスゥは、今度は答えなかった。
何も言わず、何も反応を示さない。そしてそのまま・・・言葉を続けていた。
おしまい―――つまりこういう真実に近づく行為をやめるということ・・・?
―――判らないけど、なんとなくそんな気だけはする。
「オスト博士とモンタギュー博士・・・か。
あーあ。まったく科学者の考えることってのはわけがわからないわ」
「それは同感かな。―――というより、そのせいだもん」
わけがわからないどころかこの結果。
正直―――わけがわからないというレベルではすまされない。
―――いや、だからこそわけが判らないって感じだろうか。
こんな結果を招くと科学者なら予測できたはずなのに―――。
「本当呆れたもんね。ま、転送装置の座標ログも消去しておいたし。
ラボには適当にごまかしておいてあげる」
「珍しく気が利くじゃない?」
スゥがそこまでしてくれるなんて、正直考えられない。
私は処罰とかは覚悟の上だったから―――それだけに余計にありがたく感じるし。
「―――あたしも見てみたいしね。その次なる生命体とか言うヤツ」
しかしスゥは、照れ隠しなのかカルの行く末を見たい、とだけ告げた。
まあ私も見たい所もあるし―――何よりエリとカルに幸せになってもらいたいし。
別に私の言葉が流されていた―――としても悪い気はしなかった。
「―――またどこかで会いましょ」
そのままスゥは、静かに高台を下っていく。
「戦場かプライベート。どちらでも楽しめそうね。フフ、しばらくは監視しないでいてあげる」
去り際に意味深にそれだけ言い残て。
「あの子待ってるわよ」
遠くにいるエリを指差し―――それだけ告げて、静かに去っていった。
まったく・・・素直じゃないんだから。
と、それはスゥが去るとほぼ同時。
キリークがその後を追うように、つかつかとこちらへ歩いてきていた。
「―――強くなったな、イリス」
私とすれ違うその瞬間。
キリークは、そんな事を言ってきた。
―――強くなったなって言われても、素直に喜びにくいけど。
「まだまだここも楽しめそうだ」
そのまま、捨て台詞のようなものを言い残すと、彼もまた静かに去っていった。
「何が楽しめそう・・・なんだか」
強さしか見ていないその姿勢がなんだか呆れてくる。
キリークらしいといえばらしいけど―――でも、今回は色々助けてもらった。
彼なりに、良い所もあるんだって実感できた。
「はぁ―――」
なんとなく思わず溜息を吐かずにはいられない。
なんっていうか、もう『はぁ』って感じとしか言いようがないくらいに、溜息しかでなかったからだ。
「―――エリが待ってるよね・・・」
しかし、まだ最後にやる事が残っている。
溜息ばっかりはいてもいられない。エリが待ってるから。
よし、と自分に言い聞かせると―――そのまま私は海岸へと走った。
「イリス!!」
しかし―――エリのもとへつく前に、私を呼びかける声が響く。
忘れるはずも無い。親友というより姉妹といえる―――ルナの声が。
「ルナ、フォル!―――え?」
その後ろにはフォルもいる―――が、その横には予想外の人が立っていた。
「お前が驚くのも無理がないな」
無理ないっていうか、その装甲が大破してるし、色んな意味でびっくりする。
「何でフリットがいるの・・・?」
そして思わず、そんな事しか聞けない私。
「まあ色々あってのよ」
しかしルナは、その問いかけに対して曖昧に答えた。
多分―――今ここで話したら長くなるからだと思うけど。
「ここもまだまだ盛り上がるばかりだな。
オイラも負けているわけにはいけないようだ。
―――次会う時はお互い更に強くなってるといいな」
フリットはそれだけ言い残すと、スゥやキリークと同じように静かに去っていった。
「まったく、あいつは他に考える事はないのか?」
フォルが呆れたように両手をあげる。
まったく同感だ。キリークといいフリットといい、ほんと溜息しかでない。
「黒き猟犬と紅の猟犬か―――うち紅の猟犬はあの剣の媒介。
―――そして人造ダークファルスを制御する―――はずだった」
「媒介?あの剣?それに人造ダークファルス―――
もしかして―――ラヴィス=カノン?」
ダークファルスを抑制する為に造られた剣、ラヴィス=カノン。
人造ダークファルスとあの剣―――よく判らないけど、そこから推測されるのはそれしかない。
「正確には人造ラヴィス=カノンだけどね。
―――でもその話を今するべきじゃないでしょ?」
「ああ。今はイリスに、やる事あるだろ?」
やる事―――そうだ。私は最後にやる事が・・・!
「早く行ってあげて!エリちゃんをいつまでも泣かせてるつもりなの?」
「・・・う、うん!」
言われるがままに私は走る、エリの元へ。
砂に足を取られそうになる―――けど、それでも走る。
そして―――やっとたどり着いた。彼女のすぐそばへ・・・。
「あ。イリスさん!」
私の姿を見つけたエリが、こちらへ駆け寄ってくる。
私もまた、彼女へ近づく。
二人触れ合うほどまでに近づくと―――私はまず、彼女に笑ってみせた。
―――すぐそばで見たエリの眼はうさぎちゃんだった。
涙の筋が頬に残っている―――でも、それでも泣いてるそぶりなんて一切みせなかった。
「エリ、もっと近くで海見ようよ。せっかくこんな形とはいえ海に来たんだから!」
かなり子供染みているかもしれない。
でも―――私ができるのは慰める事じゃない。元気づける事―――。
だからせめて、私だけでも笑っていようと思った。
「そう・・・ですね」
どこか浮かない声で、静かに答えるエリ。
無理もないけど―――そんな彼女の手を無理やり引っ張り、私達は海へと足を入れる。
波がそっと、その足をさらいそうなところで二人―――そっと佇むように。
ザザ――ザザ――
小さく聞こえる波の音。何も言わない私達。
でも、その沈黙はどこか心地くも儚くも感じられる、不思議なものだった。
「すごぉく格好つけちゃいました。フフッ」
隣でエリが、そっと微笑む。
―――と、それを合図にしたかのように彼女は静かに語りだした。
星空を見上げながら―――どこか儚げな横顔で。
「・・・こういうとこダメなんですよね」
こういうところ―――どこか静かで、どこか儚く、どこか寂しい場所。
それでいてどこか綺麗で、心の中を出しそうな―――そんなところ。
きっと私なら、沈んだ時こんな場所に来たら・・・叫びたくなると思う。
「・・・私。本当はちょっと泣きたかったりしますけど・・・でも大丈夫・・・」
ちょっと泣きたかったり―――?
そんな真っ赤な眼で―――ちょっとなわけない。
むしろ、泣きたかったり―――じゃなく、もう泣いている。
それでも―――エリは強がっていた。
そんな彼女に、無理しないでなんて―――言えない。
そこまで頑張ってるエリにできるのは―――結局見守ってるだけ。聞いてあげるだけ―――。
「私たち・・・この星でどうなっちゃうんでしょう・・・」
「この星で・・・」
私たち―――それは他でもなく、カルとエリの事だと思う。
次なる生命体。それになれるかどうかも判らない。
ましてエリを覚えているかどうかも判らないカル。
そしてそれを待ち続けるエリ。いつまで待ち続けるのかも判らない。
二人が結ばれるのかも判らない―――そんなエリの気持ち。
そんな彼女に、私は答える術を持たなかった。
気休めを・・・いう事もできない・・・。
「ねえ。イリスさん。
私がどうしてパイオニア2に乗ったのか知りたいですか?」
唐突に。エリは私の顔を見つめながらに切り出していた。
あまりにも唐突―――しかし断る理由もあるわけがなかった。
「教えてくれるなら・・・」
私がそう返すと直後、エリはその理由を語りだした。
直後―――それはまるで、私の返答なんて待ってなかったかのようなタイミングだ。
「・・・私、小さい頃から英雄って存在に憧れてたんです。
レッド・リング・リコ・・・彼女みたいになってみたかった」
「英雄―――」
私も、そういう存在には憧れた事がある。
―――でも私は長い時間と旅の中で気がついた。
英雄はなるものじゃなくて。認められてはじめて英雄なんだって・・・。
「自分の力でなにかを変えることのできる存在・・・
―――でも私じゃちょっとムリみたい」
まるで私と同じ―――カルに何もできなかったことを悔やんでる・・・。
でも、私と同じだからこそ判る。そんな事ないって。無理なんかじゃないって。
だけど―――それを言うわけにもいかなかった。
再び沈黙―――今度はどこか気まずい。
気まずくなるほどに、私はかける言葉を失っていく。
「―――えーと」
エリもその沈黙が嫌だったのか―――再び自分の口で沈黙を破った。
「・・・でもなんとなくわかるんです。
英雄もいつかは消えては・・・また生まれてくるんだと思うんです。
それこそ!可能性や希望みたいに・・・。」
いつかは消える―――か。
ハンターの英雄と呼ばれるリコ―――。彼女も、その勇敢さゆえに消えてしまった。
でも多分―――エリはその末路までは知らないだろう。
そして、彼女が英雄だと思っているならばなおさら―――そんな現実をあえて口になんてできない。
そして―――そんな英雄もまた生まれるものなんだとエリは言った。
「今は真っ暗闇で何も見えないのかもしれないけど・・・。
次の英雄と呼ばれる人だってもう生まれてるかもしれない。
・・・イリスさんを見てるとそう思えるんです」
「・・・私?」
次の英雄―――私を見てるとそう思う―――。
あんまりに心の準備ができてなかった私は、思わず驚かずにはいられなかった。
「ラボに入る前に初めてカルに会った時だって・・・
イリスさんが傍にいてくれたから・・・。あの時は彼を助けてあげることもできたし・・・。
私、ここまで頑張れたんだと思います。・・・フフッ。」
「それって・・・エリ・・・」
ラボに入る前―――それはあの時、カルをバックアップした時に他ならない。
つまり・・・エリは・・・。
「忘れてると思いました?」
まったく、覚えてるなら覚えてるって素直に言ってよね・・・。
「とぼけてたんだ・・・。
何にもできなかった私の事なんて、すっかり忘れられてると思ってたくらいだよ」
「そんな事ないですよ。一人じゃ何も出来なかった・・・。
イリスさんのおかげで、私はカルに会えたんです・・・」
「エリ―――」
色々な嬉しさ。そういうものが内側からこみ上げてくる。
止まらない―――。涙すら溢れそうな・・・そんな気持ちが。
「あの時も今回も・・・当たり前のように手伝ってくれて。
きっと―――イリスさんみたいな人が――えっと――英雄―――って呼ばれる―――
えーと―――何言ってるんでしょう。あははは」
―――照れながらに、エリはそう言ってくれた。
それは、エリにとっては私が英雄なのだと言っているようなものだった。
何も出来なかったと思っていた私。
でも―――私が思ってたのと正反対くらいに、エリは私の事を見てくれていた。
見守ってるだけだった。声をかけられなかった。でも―――エリはそれで満足してくれてたんだ・・・。
馬鹿―――なんだか私が泣いちゃう―――よ。
「エリ―――」
突き上げる感情とエリの言葉―――その二つに、私も泣きそうだった。
声にならない叫び―――涙の決壊がまだかまだかと押し寄せてくる。
「―――私が言うのもあれだけどさ。
カルにとっては、エリは英雄なんじゃないかな」
そんな気持ちをごまかすように、私はそんな話をしていた。
ごまかしている割に―――大分まともな会話だけど・・・。
「私が・・・?」
「うん」
「そんな事無いです・・・私、リコやイリスさんにはなれない・・・」
「ううん。エリにとって私みたいなのが英雄みたいな存在なら。
カルにとって・・・エリも英雄みたいな存在だよ。
誰も気がつかないかもしれない。でも―――カルにとっては、充分すぎるほどにね」
自分で自分を英雄みたいなんて言うのは気が引ける。
でもそれ以上に、エリにも胸を張ってほしかった。
自分と同じように自分には何にもないって思ってるエリには・・・。
「あ、そうだ」
顔を真っ赤に染めたエリが、戸惑いながらにそう言った。
自分が英雄って言われて照れてるのは一目瞭然だ。
「うん?」
でもあえてそれを止めようとは思わない。
いや―――私だって、照れ隠しをあまりに話をそらした―――というよりエリに反撃したんだし。
「これ、自分で作ったんでちょっと・・・えーとあれなんですけど、でも!
いちおうリコのレッドリングみたいなもののつもりです」
そう言いながらに、エリはポケットから腕輪のようなものを取り出した。
「はい!あげちゃいます。」
そのまま、私の手の上へと半分強引に差し出される。
見た目は女の子らしさを感じるくらいの可愛い装飾が施されていて、腕輪―――にはちょっと見えない。
でも―――そんな見た目とは裏腹に、下手な盾や腕輪よりよっぽど精巧に作られている。
そんな手作りの腕輪―――私の為に作ってくれたのかカルの為なのかは判らない。
でも―――そんな想いのこもったものを、受け取らないわけにもいかなかった。
むしろ・・・もらっていいの?と逆にためらいそうなくらいだ。
「ありがとう・・・さっそくつけさせてもらうね」
受け取ったそれを、ためらう事なく腕にはめる。
サイズは丁度よく、それでいて邪魔じゃない。
下手な防具より強力なのは一目瞭然。にも関わらず、装飾品のような感じしかしない不思議な感じ。
―――何よりも、私にとってエリからもらったっていう、絆にもにた宝物になったし。
すごく嬉しい―――それがエリに伝わったのか、彼女もまた微笑んでくれた。
―――と思うのもつかの間。
満面の笑顔―――それを浮かべたまま、エリはこちらへと改めて向き直る。
何だろう?と思わず身構えると―――彼女ははっきりとその気持ちを口にしていた。
「―――今までありがとう。
・・・それと・・・これからもどうぞよろしく!イリス=シルディア!」
溢れんばかりの笑顔とお礼。そして改めてよろしく―――と。
フルネームで呼ばれるのも、こんな時ばかりは逆に嬉しく思える。
そんなエリの言葉に、私は何も言わない。
ただ―――彼女に対して笑顔を浮かべてみせていた。
不思議と言葉がいらない気がしたから、なんだかそれだけで充分と思えたから。
エリが笑ってくれてる。それで、充分だ。
でも―――彼女の笑顔は、そこが限界だったのかもしれない。
そのまま何も言わずに、私達はパイオニア2へと戻る。
―――ううん、戻ろうとした。
「なんで・・・今更・・・止まらないんだろ・・・」
私を笑顔で見ていたはずのエリは―――静かに、涙を溢れさせていたのだ。
必死に強がって、泣いてたはずなのにそれでも隠した涙。
しかし―――ここに来てそれも限界へ来てたみたいだ。
「・・・変ですよね、なんだか寂しくなっちゃって」
笑顔で終わらせるつもりだったんだと思う。
笑顔のまま帰るつもりだったんだと思う。
でも、一度あふれ出した想いは、涙は、もう止められない。
そんなエリの姿が、私もかすんでいた。
限界なのはエリだけじゃない―――私も、みたいだ。
相変わらず―――最後の最後で格好つかない私。
でも、そうだと思っても―――私の涙が・・・ゆっくりとその頬を伝っていた。
そして溢れた気持ちが、エリの涙が、想いが、勢いよく私を突き動かした。
とめどなく涙を流すエリを、私は力いっぱい胸に抱きしめていたのだから・・・。
彼女の支えになる為に。自分自身を支える為に。
エリを抱きしめてなきゃいられなくなっても、涙が溢れても。それでも私は笑ってみせた。
くしゃくしゃになるくらい泣きながら、それでも本当に笑ってみせた。
「イリスさん―――」
エリの英雄のような存在なのに。その英雄も―――今は普通の女の子でしかなかった。
私はそんな強くないから。
人前でに平気で泣いちゃうくらい、ただの女の子だから・・・。
「―――もう少しだけ・・・こうして・・・」
私の胸の中で強く泣きながら、エリはそれを望んでいた。
きっと寂しいから。もう―――止まらなくなっちゃったから。
だから―――震えるその手で私をつかみ、まだしがみついていたかったんだと思う。
「―――いいよ」
そんなエリを、私は力いっぱい受け止める。
ぎゅっと、胸へと強く引き寄せる。
―――私もこうしていたかったから。
だから・・・自分を言い聞かせ支えるように、エリの頭をそっと触れるように叩く。
私の涙が、エリへと静かにこぼれていく。
ザザーン、ザザーン。
響く静かな波の音。でもそれは涙を、寂しさをさらってはくれなかったから・・・。
だからせめてこの場所で。私達は二人、想いと涙が枯れるまで抱きしめあった。
―――星空と幻想的な月の光が照らす、この海岸で―――
Thank you for reading! presented by ゲバチエル
終わった達成感と未熟に悔しさがいっぱいなあとがき 05 4/10
いやあ、誤字脱字の多すぎる(ぁ)心の座終わりましたねー。
ごめんなさい、誤字脱字そのうち直すつもりです(汗
ごめんなさい、第七話なんてほらふいて(笑
七話―――ではなくエピローグにしちゃいました。
この後エピローグとしてその後をやってもよかったんです。
でも・・・ここで終わらせたほうが後味スッキリすると思ったので、ここで終わらせました。
エピローグだらだらやってもしょうがないですからね。
最後のThank you for〜の所も、心の座のラストの引用です。
せっかくここまでやったんだから、最後も同じように閉めようと思ったので。
完または続くって書こうかなって思ったんだけど、なんか他人っぽい文字が興ざめするんでやめました。
続く―――それでも物語は続くっていう意味合いですね。
しかし、今回一番オリジナル展開になったのはフリットじゃなくてデルタですね(汗
制御塔の管理者―――なのに、連れてきちゃいましたから(笑)
ちょっとあれだけで連れてこられちゃうのは、動機が弱かったかなと思ってます。
もうちょっと動機をはっきりさせたいけど―――とりあえず今回はこんな感じです。
基本的にイリスの視点で書きたかったのですが、それだと不可能で突拍子もないシーンが並びそうでした。
また心の座では元々がころころ視点の変わるシナリオ。
というわけで、客観視点とイリスの視点の二つになりました。
―――が、しょっちゅう視点が変わって読みづらかったかな、というのが本音です。
やっぱり揃えたいですね。かといってエリスとイリス二人の視点だともっと見づらいけど。
でも、キャラクターを借りて出演させたエリスとフリット。
思ったよりもうまくいったかな・・・とは思ってます。
特にエリスなんか、若さの象徴的キャラクターになったような気が・・・。
記憶が戻るシーンとかは、少々いきなりな部分があったりもしますけどね。
キリークはちょっと苦戦してたのになんで疲れてるエリスがイルギルを即効倒せたか?
感情の力&ラヴィス=ブレイドの力ですよ(え、聞いてない?
そして相変わらず最後の最後に格好つかないイリスですが、俺としてはこういうほうが好きです。
すんごく強くて、魔法も使える。でも・・・やっぱり普通の女の子。
エリにとっては英雄だけど、実はそんなに変わらない―――そんなキャラ。
うーん、ちょっと自分の女っぽい部分がそのままイリスに跳ね返ったのかもしれないなあ。
心の座、一応(誤字脱字とか多いから)完結しました。
なので、ビシバシ感想・苦情・文句・意見を言ってやってください。待ってます♪
突っ込みも受け付けます。だって、お約束やありえない部分がいっぱいあるし。
それと―――結局恋や愛が絡みまくってしまいました。
熱いのを期待してた人、ごめんなさい。戦闘シーンも描写費やしすぎた・・・。
小説書き上げるといっつも課題がでまくりな俺ですが、PSO小説これからも書いていきます。
エリじゃないですが・・・。
プロローグから総計八話にもなる長いお話しをここまで読んでくれた皆さん、本当にありがとうございます。
そして・・・これからも、応援よろしくおねがいします。
それではラグオル&小説の世界でお会いしましょう。それでは、またね〜! |