PSO小説
present by ゲバチエル
Seraphic Fortune PHANTSY エピソード1

プロローグ〜旅立つ天使の翼〜

 キシャアアアアアア!!
 標的を見つけたかのように叫ぶ獣は、今まさに一人の女性へ襲いかかろうとしていた。青いストレートのかかった長髪に凛々しい顔立ち。
 やや褐色のかかった適度に日の焼けた肌。そして、透き通るように蒼い両の眼。髪や眼とそろえているのか、すらりと長い足を際立たせるような青の長ズボン。
どこまでも青の女性―――そんな彼女になぜ、獣が襲い掛かるのだろうか?
「邪魔ねっ!!」
 ズシャッ・・・
 しかし。その女性の声とともに、突如その獣は吹き飛んでいた。吹き飛んだ獣は地面に崩れ落ち、そしてそのまま灰と消えて。
「最近―――多いよね」
 獣が崩れ落ちる―――と、やや幼さの残る女性が横からとことこと姿を見せる。女性と言うよりも少女というほうが似合っているかもしれないが。
 亜麻色にどこか赤みの強まった肩にかかる程度の短い髪。それが普通じゃない事を示しているような、左右それぞれ異なる朱と蒼のオッドアイ。鮮やかの色のロングスカートは、どこか少女の性格をあらわしているようにも見える。
「多いって何が?」
 そんな少女を、とぼけるかのようにその声の方を見る。
「何がって・・・モンスターだよ。もう!ルナったらわざと言ってるでしょ」
 そんな彼女に、少女はぷんぷんという擬音が似合いそうな顔で言い返していた。
「まあね。―――でもほんっと、散歩も気楽じゃないわ」
 青の女性―――ルナは、少女の言葉に肯定しながら今の状況に不満をもらしていた。モンスター、その名の通り化け物や魔物の事を示すもの。
 それが最近になって、はっきりと判るほどではないにしろその数が増えている、と。
「んで・・・イリス?何よ」
 ルナは少女の名をそっと呼ぶ。わざわざ自分のところまで来たのだから何かあるだろう、と。
「たまには一緒に歩きたいなーって思って。別に嫌ならいいんだけど・・・」
「何で嫌にならなきゃいけないのよ。でも、いっつも一緒にいるようなもんじゃない。それがどうして?」
「なんでだろう。私もよく判らないんだけど・・・」
 少女―――イリスは、とにかくルナと一緒にいたかった。よく判らない。けど、その気持ちだけは確かにある。ルナもその気持ちがなんとなく判っていた。それに、断る理由がどこにもない。
「判んなくもないけどね。なんか最近モンスターも多―――きゃ」
「ルナ!・・・え!?」
 それは唐突に二人を襲っていた。いや、二人をというのは間違いかもしれない。
 ゴゴゴゴゴゴ・・・
 地鳴りのような音と、大型の地震のような激しい揺れ。その規模はすさまじく、二人は立っていることができなかった。
「いきなり何―――」
「それに大きいよ・・・?」
 突然の事態に、二人は何が何だか判らない。ただあるのは、嫌な予感や恐怖といった感情だけだ。
 しかしそれは、時間が経つほどに大きいものへと変わっていった。
「・・・変ね」
「うん。おかしすぎる・・・こんなの、普通じゃない」
 一分、三分、五分・・・。いくら時間が過ぎようと、この地鳴りが消えることはなかった。絶えず響き渡る音、揺れ。それは誰がどう考えても異常としか思えないほどだ。
「・・・!?イリス・・・判る?」
「うん・・・。強くて黒い―――」
 しかしそれだけでは終わらなかった。地鳴りとは別の感覚が、二人に突き刺さる。強く、外側から放たれる、それでいてすごく不吉な何かを・・・。
「この地鳴り―――それにこの感覚。どこかで何か起きてるのは間違いないわね」
「まさか・・・星の―――!?」
「決め付けるのはまだ早いわ。でも最近のモンスターの増加―――関係あるとしか思えない」
 二人はこの原因が何となく判ってしまっていた。過去にも同じような感覚を、覚えた事があるからだ。
「あ・・・おさまった・・・?」
「みたいね・・・」
 十分くらい経っただろうか? それくらいの時間が過ぎてから、ようやく地鳴りがおさまっていた。だが、それはやっと終わったのではなかった。
「とりあえず一回帰ろうよ・・・」
 もう一緒に歩くどころじゃない。今のイリスは、とにかく帰りたいという気持ちでいっぱいだった。
 ―――だがその気持ちは、近づいていたものさえも気がつけなくなってもいた。
「そうね―――と言いたい所だけど。色々厄介な事になってるみたいよ」
「え―――?」
 何の事、と聞き返す暇も無かった。
 グルルルル・・・
 そこには、狂気の目を浮かべた数体の獣がこちらへと牙を向けていたのだから。
「気がつかなかったなんて・・・」
「無理もないでしょ。あんなのの後じゃ―――あたしだって気づいたのついさっきだもの。 ―――話は後!今はこいつらをなんとかするわよ!」
「うん!判ってる・・・!」
 二人は静かに頷くと、そのまま丸腰のままで獣の前へと立ちはだかった。近づいてくる二人―――それらを前に、獣もまた勢いよく飛び掛る。
「―――」
 飛び掛る獣を避けることなく、そのまま立ち尽くす二人。普通に見れば、危ないとしかいいようのない状況―――だが彼女達は違った。
 二人はそのまま、かっと眼を見開く。その眼はうっすらと光を放ち―――瞳孔が獲物をとらえるかのように縮まる。
 ガアアアアア!
 獣たちは彼女達へ今にも噛み付こうとその口を開く。
 ―――と、それはほぼ同時だった。その口が触れる寸前、二人は大きくその両腕を広げていた。
 ズシャッ!
 複数の獣は二人を噛み付く事なく、勢いよく吹き飛んでいく。まるで、そこから何かが放たれたように。
「これくらい魔法剣を出すまでもないわ。 ―――相手にしてたらきりが無い。走るわよ、イリス!」
「うん、判った!」
 まだ獣がいなくなったわけじゃなかった。倒しても倒してもゾロゾロと姿を見せる獣の姿。それらを前に、二人はきびすを返すかのように走り出していた。獣達もまた、その後を追いかける。
 ―――だが、飛び掛る獣が一匹とも彼女に触れる事は無い。触れようとしたものは例外なく、宙へ吹き飛び灰となっていたのだから。
「ったくキリがないわね。なんだってこんなのにつきまとわれなきゃなんないのよ!」
「私が聞きたいよ。普通じゃないって言うのは判るけど・・・」
 ウオオオオオオオオオオン!!
 突如、二人の会話を遮るかのように背後からけたたましい唸り声が響く。自分たちを威嚇なり挑発しているのか。その手にはのらないとばかりに、二人は見向きもせずに走り続ける。
 ・・・だが。その唸り声は、一つの合図でしかなかった。
 グルルルルルル・・・
「っ!」
 数十秒ほど走ったところでその唸り声の主は二人の目の前に立ちふさがっていたのだから。気づけば辺りに他の獣はいない。いるのはただ巨大な木々さえ倒しそうな声の主だけだ。不気味なラインが身体のいたるところに浮かび上がる様は、まるで地獄の番犬。
「やれやれ。本体がいたってわけ?」
「みたいだね・・・それにあの模様、身体を侵食してるみたい・・・」
 二人は辺りに他の獣がいないことも、その不気味なラインの意味も判っていた。
 オオオオオオオオオオン!!
 突如、その巨大な犬は勢い良く二人へと飛び掛かる。その勢いに身構える二人。だが、彼女達が行動へ移る前にそれは終わりを告げる。
 ドシャッ
「心配して来てみて正解だった。大丈夫か?」
 巨大な犬は瞬く間に消滅し、その開けた景色の先には一人の紅き双剣を持つ青年が立っていたのだ。ラフな服装に青き髪、しかし透き通った眼は深紅。ルナと似ているがどこか正反対なイメージがある青年だ。
「フォル・・・何でここに?」
 青年―――フォル。当然ルナもイリスも彼の事を知っている。いや、知っているというよりも・・・いつも一緒と言うべきだが。
「何でじゃないだろ。あんな地鳴りやら妙な魔力を感じたんだ。 そりゃ二人の事が心配になるって」
「そんなにイリスの事が心配だったのかしら?」
「ったく、判ってて聞くなよな。 ―――それはともかく。二人とも・・・あそこへ行くぞ」
 フォルは二人に構わず、静かにある方向を指差していた。それ以上言わずとも・・・ルナとイリスにはどこへ行こうとしているのかが判る。
 その場所―――それこそが妙なものを感じた場所に他ならないのだから。
「そうね・・・原因を突き止めるには、それが手っ取り早いわ」
「あそこへ行くの・・・?」
 その場所が判っているだけに、イリスはためらいがちにそう尋ねた。
「―――気乗りしないのは判る。俺だってあんまり行きたくないくらいだし。でもこのまま何かあるかもしれないって思うと、見ないわけにもいかないだろ? それに俺たちには自慢じゃないけどそれくらいの力・・・あるんだからさ」
「そうだね・・・。うん、行こう!」
 イリスはその場所に嫌な想い出を持っている。正確には三人とも、だが。しかしフォルの言うとおり立ち止まっているわけにもいかない。
 そこへ行く―――イリスがそう決意すると同時に、三人はその場所へ走り出した。時折襲い掛かる獣達を退けながら進むと、やがてその場所が姿を見せる。
 そこだけ他とは異なる空間。要塞か何かのようにそびえたつ森、そしてそこから放たれる何か。
「行くぞ」
 それでも、三人はそれに恐怖を感じる事なくその中へと足を踏み入れていった。踏み入れた先には、光という光が失われた漆黒の闇。微かに覗く光が見せる、うっすらと見える木々は不気味さをより一層表している。
「あの場所へッ!!」

 しかしそれでも止まらない。漆黒の闇や不気味さに怖気つく事もなく、三人は走り続けた。
 その速度は、何体獣が立ちはだかろうと止める事はできないほどに速く、そして強い。
 ドクン、ドクン、ドクン。
 同時に、進めば進むほどに高まる何かを覚えずにはいられない。まるで威圧感とも悪寒ともいえる―――さきほどから三人に根付いているものの正体でもある。
 そしてその感覚がはっきりと強く、そして確信の持てた時。その時が、『その場所』へ到着した時であった。
 漆黒の闇の先にただ一つ光が差し込む場所。樹海と呼ぶにふさわしい・・・一種の聖域。はたしてそこには、その感覚の形があった。
「何よ、これ・・・」
「この数は・・・」
 樹海にいたのは無数のモンスター達。不気味なラインを浮かび上がらせたものもいれば、到底普通の獣とは思えないようなものもいる。
「取り込んでる・・・のか?」
 それだけではなかった。その中には、他のモンスターを取り込み自分のものにしているものさえいたのだ。ざっと見ただけでも、百は軽い。それだけのモンスターが、この一箇所にこれでもかというくらい集中している。
 ―――裏を返せば、この場所に何かがあるという事でもあるのだが。
「・・・!見て!」
「どうしたんだ?」
「あれ・・・扉が・・・すごい光と魔力と一緒に開いてる・・・」
 イリスが指した方向は、確かに数メートルは越えるであろう扉のようなものが開いていた。禍々しい光と波動を放ちながらに。
「扉―――。 あれが開くって事はつまり、よほど影響力の強い何かがその先にあるって事よね・・・」
 本来その扉は開くことはない。しかし、特殊な時のみその扉を開くことがあった。例えば、危機が迫っているとか。例えば、封印が解けたとか。
 そういった特殊な時のみ開くはずの扉――――それが今、こうして口を開いている。
「開いてるわね・・・なら、その先で本当の事確かめないとっ!」
「待って。行くなら行くってみんなに言わないと」
 ここまで来た以上戻る理由もない。しかし―――イリスには、その前にどうしてもやっておきたい事があった。
 それはみんな――――家族にちゃんと一言告げる事だ。
「みんなって、うちらの事でしょ?」
 しかし・・・イリスのその考えは、瞬く間に打ち消されていた。三人の背後には―――見慣れた顔ぶれが並んでいたのだから。
「どうして・・・?」
「判るわよ。そうでしょう、みんな?」
「うん。自分達の子供がすることくらいお見通しだよ?」
 並ぶ男女たちは、口々にそう告げる。他でも無い―――三人の両親、先祖、家族当然の存在―――そんな人たちだ。
「ったく、こうもみんなで来ると拍子抜けだっての」
 フォルはやれやれ、と溜息をつきながらもみんなが来てくれたのが嬉しかった。
 しかし喜んでいる暇も無い。三人はそれぞれ軽く会話を交わすと、そのままその扉へと向き直る。
「ルナ、イリス」
 扉を見据えたまま、静かなトーンでフォルが二人の名を呼ぶ。その様子に、思わず身構える二人。―――だがそんなそぶりに構わずフォルは喋り始めた。
「二人で行ってくれないか?俺はこっち側で状況を調べてみたいんだ。 っというか、こっち側の状況を知ってる奴も一人くらい必要だろ? あいつらにも声をかけてみる。 俺と二人で・・・別行動をとりながら、俺がそっちに行く形で状況をまとめたいんだ。だから二人で行ってくれないか?」
 突然自分は行かない、と言い出すフォル。しかしそれは、行きたくないという意味でもない。少ない言葉ではあったが、二人にはその意味がはっきりと伝わっていた。
「でも―――」
「判ったわ。ただし!別行動とりっぱなしだったらぶっとばすわよ。 あたしとイリスはすぐに戻れる保障なんて無いんだから。 だからちゃんと、戻る方法も状況も色々持ってくる事。いいわね?」
 そんなフォルに、ルナは確認させるようにフォルに言い放った。自分達を必ず迎えに来て、と。
「そのつもりだって。ったく、女の子がぶっとばすなんて言うもんじゃないだろ。 我が姉ながら呆れるよ」
「あんたこそ。下手なことやらかしたら承知しないわよ? イリスを泣かせでもしたら・・・」
「え? 大丈夫だよ、フォルなら。私を置いてどっか行ったりしないもん」
「イリス―――」
 笑顔で当たり前に言い切るイリス。そんな彼女を、フォルがぎゅっと抱きしめていた。
「・・・イリスこそ、無茶するなよ? ルナがついてるから大丈夫だとは思うけど・・・」
「心配性だよー。これでも私、二人より魔法は全然強いんだからー」
「だけど・・・」
「だから心配性なの! フォルは自分の恋人、信用できないのー?」
 返事を判ってて笑顔で言い切るイリス。そんな彼女に、フォルはもはや心配も吹き飛んでいた。
「やっぱお前とルナには一生勝てそうにない・・・。何だか情けないな・・・」
「そんなことないよ。それより、そろそろ離して? 私たち、いつまでもこうしてるわけにもいかないよ」
「ああ、判った。でもその前に・・・」
 その前にという一言と共に、フォルはイリスへそっと口付けていた。イリスもまた、それを素直に受け入れる。本当に、嬉しそうな顔で。
 しかしそんな時間もすぐに終わりを告げ、二人はお互いそっと離れた。
「・・・それじゃあフォル。あとはよろしくね・・・」
「何度も言うなって。―――それじゃあ、あいつらは俺たちでひきつける。ルナとイリスは扉の先にっ!」
「判ったわ。・・・父さん、母さん、みんな・・・行ってくるわ」
「行ってきます。フォルの事・・・よろしくお願いしますね」
 二人も今は、ただの女の子だった。そんな彼女達へ、フォルを含めた全員はいってらっしゃいとばかりにそっと微笑む。
 それ以上言葉はいらない。いや―――言葉なんかなくとも、彼らには判っていた。だからそれ以上引き止める事も、交わすことも特にいらない。
「んでは―――」
 言いながらにルナ、それに続くようにイリスが樹海の奥へと走り出す。それに気がついた異様なまでのモンスター達がまた彼女達へ飛び掛る。それを守るかのように、十人にも及ぶものたちがモンスターを食い止め、退けていく。
「・・・今のうち・・・早くっ!」
 無数のモンスターの群れを前に、フォルが叫ぶ。
「ええ!行くわよ、イリスッ!!」
「・・・うんっ!」
 ルナはしっかりとイリスの手をつかむと、二人同時に扉の中へと踏み込んでいった。未知の世界へ。しかし自然と恐怖はなかった。
 お互い―――親友を感じていられたから。だから、それだけで全ては吹き飛んでいた。
「お土産話よろしく。無理だけはするなよ?―――気をつけて」
 背中に響くフォルの声―――それが二人にとって、何もよりも強く耳に残っていた。やがてフォルの声が消え、モンスターの気配すらも消えていく。だんだんと、どこを歩いているのかさえも判らなくなっていく。
 ―――そんな時だった。
 不意に、二人を無重力にも似た感覚が押し寄せる。が、それもつかの間。その感覚はすぐに落下の感覚へと変わっていた。

―――それこそが扉の先にたどり着いた証拠。そして、二人にとって新たな始まり―――

 タンッ
「―――ふぅ」
 ルナが腕と手を開きながらに膝をかがめるように地面に綺麗に着地する。周りにはしっかりとした大地と土の香りが感じられる。
 そして辺りには植物や木々の数々、そして照りつける日差し。ここがどこだかは判らない―――が、環境はそれなりにいい場所であろうことはうかがえる。
 ドサッ
 しかし。ルナの隣では、派手に倒れているイリスの姿があった。どうやら、ルナとは裏腹に着地に失敗したらしい。
「あはは・・・着地ってなんか苦手で・・・うまくいかないよ」
 身体を起こしながらにばつが悪そうな顔を浮かべるイリス。そんな彼女に、ルナは安堵にもにた溜息をもらさずにはいられなかった。
「こんなとこへ来ても相変わらずなんだから、イリスは」
「ほめてるんだか馬鹿にしてるんだか判んないよ・・・」
 二人立ち上がり、改めて辺りの状況を確認する。いったい自分達はどこに来たのか、周りに何があるのか。そういったものが、さっぱり判らない状況だからだ。
「・・・あの巨大な船・・・かな?あれなんだろ」
 言いながらイリスが指した方向は、頭上遥か遠くの空だった。そこには巨大な船が浮かんでおり、何かがあるのをにおわせる。
 もう一つ言えば―――誰かがいる可能性が高い、という事でもあるのだが。
「何はともあれ、もうちょっと辺りを歩いてみないとね。 ―――っというわけで魔法剣の出番ね」
 言いながらにルナが、両手をさっと構える。―――直後、何が起きたのかどこからともなくその手には大鎌が握られていた。
 それに習うかのように、イリスもまた両手に槍を握る。先ほどまでほぼ丸腰であったはずの二人がどこから武器を取り出したのか―――。それこそが魔法剣というものであり、彼女達が愛用する武器に他ならない。
「それじゃあまずは誰かを探さないと!」
「ええ。とりあえずあの船の辺りまで行くわよ!」
 武器を用意するとすぐに、二人は勢い良く走り出していた。右も左も、ここがどういうところなのかも何もかもが判らない二人。
 だが、目的だけははっきりしている。原因を突き止めること。そしてそれが悪影響を及ぼしているのなら止める事。
 やるべき事だけを胸に―――二人はその髪をなびかせながら、ただ駆け抜けた。 何と向き合うかも知らず、何に近づくかも知らず。
 ただひたすらに・・・無邪気な子供のような瞳で。

―――二つの翼は、まだ飛び立ち始めたばかりなのだから―――