夢の星の物語 ――― 夢乃Side プロローグ
大人っぽい女性「変わらないね、あんたってば。」
スーツの男性「お前もな。」
周囲で酒が酌み交わされ、想い出話や身の上話などが展開されている会場。
ここは、いわゆる同窓会の会席だった。
一見、ただの同級生とも取れるこの二人だが、実は、学生時代、複雑かつ特別な
事情に包まれ、翻弄され、それでも立ち続けた仲だった。
この話は、その、波瀾万丈の学生時代の、二人の、だが、決して二人だけでは
ない、矛盾しているような、それでいて忘れられない想い出の一部始終である。
「だぁぁぁぁっ、遅刻だぁぁぁぁぁっ!!??」
春、桜並木がアスファルトをピンクに染める公園を、全速力で突っ走って行く
少女が一人。
彼女の腕時計が指し示す時間は、すでに高校の登校時刻をとうに過ぎていた。
大空夢乃、16歳。
中学生だった頃は、双子の妹、「星乃」とは全く反対方向の、ある私立の、
一貫制の女子学園に通っていた彼女だったが、金銭的な余裕を保てなくなった
と言う家庭の事情により、今となっては、公立全日制普通科、男女共学の高校、
その名も「快晴高等学校」に通っている。
その中でも、特に遅刻の常習者であった彼女は、高校入学直後から、度々親を
呼び出され、こっぴどく叱られていたのであった。
学校にたどり着いた時、すでに校門は閉じられていた。
夢乃「はぁぁぁぁ・・・やぁっぱり、しまっちゃってたか・・・。」
こうなってしまうと、後は職員室から教師に発見され、グチグチと説教を
たれられながら、恥かしい思いで校舎の中を行脚するしかない。
夢乃「ふぅぅぅ・・・。誰か助けてよぉ~・・・」
そんな時だった。
夢乃が猛ダッシュで翔けて来た道とは反対方向から、よく知っている男子生徒が、
息をはあはあ言わせながら、ふらふらした足取りでやって来たのは。
幼なじみの、立原大地だった。
夢乃「おーっす、立原っ!」
大地「・・・まぁたお前もかよ、夢乃ぉ・・・」
これが普段の、彼女らの一日の始まり。
何のへんてつもない、学校側から見ればはた迷惑な日常。
だか、この日常が、時を重ねるに連れ、少しずつ違うものになり・・・
同時に、大空姉妹と立原の、複雑な感情の交差が始まるとは、この時、二人とも
予想だにしていない事であった。
夢の星の物語トップへ