夢の星の物語 ――― 星乃Side プロローグ

大人しげな女性「・・・久しぶりだね・・・」
スーツの男性「メール以外で会話するのはヒサブリだもんな。」
周囲で酒が酌み交わされ、想い出話や身の上話などが展開されている会場。
ここは、いわゆる同窓会の会席だった。
一見、ただの同級生とも取れるこの二人だが、実は、学生時代、複雑かつ特別な
事情に包まれ、翻弄され、それでも立ち続けた仲だった。
この話は、その、波瀾万丈の学生時代の、二人の、だが、決して二人だけでは
ない、矛盾しているような、それでいて忘れられない想い出の一部始終である。


学校のチャイムが鳴り響く。 いよいよ、授業が始まる。 でも、いつもの時間に聞いているハズのそれは、今日に限っては別のモノにも 聞こえてしまう。 大好きな絵を、持参したラクガキノートにせっせと描いている彼女の至福の ひとときは、いつもこのチャイムが終焉を告げている。 彼女の名前は、大空星乃。 姉の夢乃とは違い、彼女はいわゆる「優等生」であった。 だが、それはあくまで勉強の上だけ。 まだ恋も経験していない彼女は、未だに多くの事を知らないままでいる。 しかし、学校側にとって、そんな事はどうでも良い事。 とにかく、優秀な人材を育て上げ、社会に貢献させ、果ては学校の評判を上げる 事に終始している面は否めない。 だが、いくら学校の中で優等生が多くなろうと、必ず、1〜2人は、結果的に 足を引っ張る形となっていた。 授業が始まり、先生以外の声が聞こえなくなった頃、その沈黙を破る音がした。 少々古びたこの校舎ならではの、ドアを開ける時の独特の音。 それを発したのは、彼女の姉である夢乃と、幼なじみの立原大地だった。 先生「こらぁっ、夢乃と大地っ!まぁた、お前ら遅刻して来たのかっ!!」 二人を見るなり、その目つきを変えた教科担任が放った言葉。 これが日常茶飯事なのだから、双子の妹である星乃もたまったものではない。 先生「ぼさっとしてないで、さっさと席につく!」 顔ではしょぼーんとしながら、でも決して反省などしていない姉と幼なじみ。 立原の席は、星乃と夢乃を挟んだ、丁度真ん中である。 だが、この席の配列が、後に、この3人の青春時代に多大な影響を及ぼそうとは、 この時、まだ、本人達さえも気付いてはいなかった。

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