第15回「日本の森と自然を守る全国集会」第5分科会レポート
                          
(於・大東文化大)
              公共関与の産廃処分場の実態
         ーーー「エコフロンティアかさま」建設始まるーーー

                 建設工事差し止め仮処分訴訟原告 多崎 貞夫

1、「エコフロンティアかさま」とは何か
  茨城間笠間市に県が関与した産廃処分場がつくられようとしています。正確には下の表のように一般廃棄物(笠間市のゴミと県内中間処理施設の焼却灰)も含まれますが、90%は県内から持ち込まれる産廃です。この公共関与(実際は第3セクター)規模は全国3位と言われます。
終処分場 総面積 28,7ha
埋立面積 9,8ha
埋立容積 240万立方メートル
埋立期間 約10年
廃棄物内容 産業廃棄物 22万t
一般廃棄物 3万t
溶融施設 施設規模 145t/日(2炉)
運転方式 24時間連続運転
溶融炉 NKK高温ガス化熔融炉
稼動年数 約15年

 

2、立地の理由
 この処分場が笠間市福田地区にある採石場跡地に立地されたのは、その跡地が相応の規模を持っていたこともありますが、最大の理由は土地の99%を東京の砂利会社が1社で持っていたことです。
 いま各地の処分場計画が頓挫するのは、用地取得が住民の反対に遭遇するからですが、この砂利会社は産廃処理場する計画をもっていたくらいでしたから、県の産廃処分場計画に乗ってこの土地を売ることに合意したのです。

3、立地の不適性
 しかしこの採石跡地は1986年に採石業者が倒産したあと、自然が回復してオオムラサキ、オゼイトトンボ、ハッチョウトンボ、オオタカ、ミサゴ、ハヤブサなどの危急種動物、コクラン、シランなどの危急種植物がたくさん生息しています。
 しかもここは80万トンの水を湛える豊富な湧水湖であること、8市町村の飲料水の水源となる涸沼川が近接して流れていること、湖から300m以内に52戸の民家があって、その多くは井戸水を飲料水として利用しているなど、立地の間違いはきわめて明白です。
 しかも今年になってテレビや新聞で、この湖水(ふじみ湖)がコバルトブルーに輝くまれに見る景観を持つことが報道されて以来見学者があとを絶たず、「貴重な自然を守れ」の声が日増しに強くなってきています。

4、住民の同意は得られなかった
 計画は極秘裏に進められ、住民には決定通知の形で知らされました。笠間市がこの計画に飛びついた背景には、市の処分場が老朽化し、代替地を探したり隣町に共同処理を申し入れたりしていたのですが、ことごとく失敗していたことがあります。
 計画を知らされた福田地区民は白紙撤回の請願や陳情を繰り返しましたが、市議会はいち早く受入を決めました。そして県と市それに市議までが加わってあの手この手の地元説得が繰り返され、ついには受入容認組織さえ地元を分断して結成されたのです。
 しかし私たち市内の反対組織による懸命の広報活動や請願署名活動などに後押しされる形で、今年夏には地区住民の7割強が白紙撤回の連判状に署名捺印をしたのです。このことで県や市がもくろんでいた「県・市・事業団・地元の4者協定」はならず。地元抜きの三者協定に終わったのです。
 しかし県は当初から「公共が関与するのだから地元の同意は必ずしも必要としな
い」との態度でしゃにむに建設計画を推し進めています。

5、安全と程遠い処理施設
 ●危険な最終処分場 
@豊富な湧水を止めることは不可能。埋め戻し採石は水浸しで不等沈下が必至。
A遮水シートやベントナイトなども5年後には完全に水を透す。汚水は地下へ流れ
る。
B検知システムもモニター井戸も汚水漏れを完全に防ぐのは不可能。完全修理も
無理。
C汚水は地下水集排水管を通って防災池へ。防災池から涸沼川へ。涸沼川は汚染。
D処理場内に区画壁がなく、10度の斜め仕上げでは廃棄物の土砂崩れが起きる。
●危険な溶融処理施設
@落札したNKKは試験炉だけで溶融実炉の実績なし。産廃処理炉はもちろん初。
A高温処理でもダイオキシン汚染は避けられない。メーカーの宣伝と実際は違う。
B高温溶融炉は重金属の排出が多くなる。処分場周辺の土壌はその汚染が進む。
C「何でも溶融」はゴミ分別を形骸化し、ごみ減量の運動を困難にする。

6、問題の本質はどこにあるか。
 誰もが最初口にすることばに「どこかには処分場は必要でしょうけど」がある。一面はそのとおりですが、「待ってください」と言いたい。それは今のゴミ行政では、ごみ減量の施策がないままに「処分場は巨大化」していくからです。
 ごみ減量の先進国ドイツのように、製品の最後の行き先と処理まで企業の責任とする「拡大生産者責任」を徹底していかなければならないのです。現在の日本のように、焼却することに重点をおき、ゴミ処理の広域化と高価な溶融施設導入でゴミ問題の解決を図ろうとする限り、この笠間市福田地区のように、企業の出した巨大ゴミを有無を言わさず押し付けられる悲劇はなくなりません。