意 見 陳 述 書  

                 原 告  多   崎   貞   夫
1 本件処分場の計画が公になってからこれまで幾度か茨城県による説明が行われました。そのような説明会の中で、出席者から「大地震への対策はあるのですか」という質問が一度ならずありました。それに対して県職員の方々はいつも「笠間には活断層がないので大地震の心配はありません。」と答えていました。
  「基本計画策定委員会」や「生活環境調査委員会」さらには「環境保全委員会」のいずれにおいても、そこで提出された資料には処分場の耐震構造とか大地震発生時の対応措置について触れた記述はありませんでした。従って、地震に関する議論もまったくありませんでした。
  この経過からみれば、「エコフロンティアかさま」の処分場においては、大地震への対策がまったくないままに建設がすすめられていることは明らかです。
2 本年3月23日、政府の地震調査研究推進本部から「全国地震動予測地図」が発表され、大きく報道されました。
  その中から「エコフロンティアかさま」にかかわりがあると思われる部分を次に挙げてみます。
  (1) 発表では「国土の約3割の面積が、30年以内に3%以上の確率で震度6弱以上の強い揺れに見舞われる。」としています。同本部によれば3%以上の確率というのは「高い」ということができます。また、48都道府県の県庁所在地での確率も発表されていますが、水戸市の場合8,4%の確率となっています。これは相当高いということができます。
  (2) 海溝型地震の確率も発表されています。茨城県沖の場合、M6,8程度の大地震発生の確率は90%程度です。全国の主な海溝として17の区域が発表されていますが、この90%の確率というのは、宮城沖の99%に次いで全国第2位となる極めて高い確率です。
  (3) 同本部の発表では「福岡沖地震のような地震は、いつ、どこで起きてもおかしくない。確率が低いことを安心情報と考えないでほしい。」と警告しています。ちなみに玄界灘には海溝がありません。それにもかかわらず、今年3月福岡沖で大地震が起きたのです。
  以上のことからみれば、「活断層がない」ということで地震対策を無視してきた「エコフロンティアかさま」は、その安全についての前提条件が崩れたということができます。
3 震度6前後の大きな地震が発生した場合、「エコフロンティアかさま」で想定されることを3つ挙げてみます。
  (1) まず、そのような大地震が発生すれば、釜底型のこの処分場では人工的に積み上げた土砂や廃棄物に大きなずりやゆがみが生じ、人工的で本来きわめて軟弱な遮水工に甚大な損傷を与えることが予想されます。
  (2) また大地震の場合、福田地区で強調された強固な地盤は、反面弾力性がありませんから亀裂が生じやすく、地下水系に大きな変異をもたらすと考えられます。この水脈(みずみち)の変異は全国各地の被災状況で例外なく報告されていることです。この水脈(みずみち)の変異が遮水工へ重大な影響を与えることも容易に推察されるところです。
  (3) 以上のことは、処分場内の汚染水が、地震で大きく損傷した遮水工を通り抜けて、地下に一気にかつ大量に流失することを予測させます。これは最終処分場で一番懸念される地下水汚染が引き起こされるということを意味します。これは、通常の「シートの損傷」とは規模において全く異なるものであり、一部分の補修ではとうてい間に合わない非常事態を想定しなければならないということです。
  大地震発生で想定されることは以上のことですが、現在、私たちが家を建てる場合にも、「建築基準法」で耐震構造のある家作りが義務づけられています。まして大きな公共の建造物では、近年とくに耐震構造の見直しが行われています。
  一方、最終処分場建設の場合、その「技術上の基準」は、平成10年に出された『総理府・厚生省の改正共同命令』に基づいています。この『改正共同命令』は、昭和52年(1977年)に規定された『共同命令』を改正したものです。
  この28年前に規定された『共同命令』で地震に触れた文言が見られるのは、第一条、四のイに「自重,土圧、水圧、波力、地震等に対して構造耐力上安全であること」という一項があるだけです。そして新しい『改正共同命令』でもこの「構造基準」は変更されておらず28年前のままです。つまり処分場の建設においては国の大地震対策が完全に抜け落ちているということができるのです。
  平成14年に始まった「エコフロンティアかさま」の構造基準が、この平成10年の『改正共同命令』に準じたものであることはいうまでもありません。したがって大地震への対策がまったくないままで巨大処分場の建設が進行しているのです。
4 最後に
  以上見てきたように、大きな地震が発生すれば、遮水構造が大きく損傷し、地下水の大規模汚染が起きるであろうことは火を見るより明らかです。そしてその汚染による被害はすべて地元住民が背負うことになるのです。
  裁判官におかれては、地震国日本にありながら安全対策の根本を無視したこの「エコフロンティアかさま」の建設を一刻も早くストップして下さるようにお願い申し上げます。

                                 以上

  

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