意 見 陳 述 書
原 告 鈴 木 イ ク 江
1 私は3人の子供を持つ母親です。又,かわいい孫の婆ーバとして陳述させていただきます。
笠間市には,私共のついの住み家として,又地域の方の交流の場として,都会で暮らす方の憩える場を提供したいと考え10年前に東京から引っ越して参りました。
住んでちょうど4年目の秋,平成11年9月新聞報道からこの処分場建設の計画を知りました。
私は,子育てをしている頃から,このやっかいな物質のゴミに心を痛めてきました。
高度経済成長と共に食品添加物が乱用され,同じ子育てをする母親達と安全な食品の共同購入など手がけました。疑わしきは使用せずと生産の場にも言われるようになりましたが,それと並行してゴミの氾濫です。
大量生産・大量消費・大量廃棄により、今までどれほどの大量のゴミが燃やされ埋め立てられてきた事でしょうか。
2 「エコフロンティアかさま」建設差止の仮処分における裁判所の判断では,『高度に発達した現代社会においては社会生活を営む上で産業廃棄物が発生することが避けられず,現時点においては本件処分場のような埋立処理施設の社会的必要性を認めざるをえない。』とありますが,大いに疑問を持たざるを得ません。特に,大量の化学物質をゴミにしてしまうことが高度に発達した社会と言えるのでしょうか。
大量廃棄の構造は大気汚染や酸性雨,地球温暖化,オゾン層破壊といった地球規模の環境破壊を引き起こしている原因となっていることは否定できない事実ではないでしょうか。
県は,第一次廃棄物処理計画で発生抑制,再使用再生利用を進めて,廃棄物の埋立処分場を限りなくゼロに近づける計画(ゼロ・エミッション)を推進していく一方,埋立処分しなければならない廃棄物は「エコフロンティアかさま」に埋め立てるとしています。ゴミの多くが産業廃棄物といわれています。排出企業が自社の製品をゴミにしない責任を負わせる発生抑制の仕組みを作ることが何よりも重要だと思います。
3 次に,裁判所の判断として,『埋立処理施設が建設されその操業が開始された場合には,持ち込まれた産業廃棄物は地中にとどまることから,廃棄物に含まれる有害物質の流出を防止する措置が講じられない限り環境汚染を招き,周辺地域の住民等の生命・身体(健康)に害を及ぼすことになる。 人格権を侵害された者は,物権の場合と同様にその排他性の現れとして現に行われている侵害行為を排除し,また将来生ずべき侵害行為を予防するために侵害行為の差止を求めることができると解するのが相当である』と,よって『債権者は合理的根拠をもって・・・主張,立証すべき』だと言っている一方で,債権者は一般住民に過ぎず,管理者の具体的内容を詳細に知り得る立場にないと言われているにもかかわらず,合理的根拠をもって立証しなさいというのは、私たちに不可能なことを要求しているのではないでしょうか。
被告は、遮水工が多重構造であることを誇っていますが,しかし計算すると早晩4年8ヶ月でそこから汚水がしみ出す結果となっています。多重遮水構造だから汚水は浸出しない,安心安全だといわれても私たちは納得することはできません。
4 山から湧き出る水の大切さ,大気の大切さ,動植物の住み家や美しい景観,永々と築いてきた素晴らしい山村,稲作,自然と共生なくしては生きられない,生態系を壊すようなことはやってはいけないという理念が私達人類の知恵であり歴史の教訓だと思います。
小学校5年の教科書(光村図書)において、伊藤和明氏がこのように警告しています。地球の46億年の歴史を1年にたとえると,人類は生まれてから7時間ほどしかたっていない。1秒が1年を壊す・・・人類は地球が1年かかって築き上げた環境を1秒で壊してしまう・・・地球に取り返しがつかないことをしようとしている。これ以上おごりたかぶるなら地球から大きなしっぺ返しを食らうに違いないと。環境汚染や被害が出てからでは遅いのです。
私は、この処分場で一番の問題は,住民の安心安全を守る立場の行政が,公共がやるから安全だの一点張りで、住民に対して現在のゴミ問題のしわよせを図ろうとして、有無を言わせず犠牲を強いてくることにあると考えます。また,本件のような大規模な処分場が人家のすぐ近くに造られるのは、いったん被害が出れば取り返しがつかなくなりますので、本件の建設現場には絶対に造るべきではないと考えます。
加えて,涸沼川は8市町の水源地であり,涸沼から太平洋へと注ぐ源流です。この事は,単に本件処分場の問題が地元福田地区の住民や笠間市民にとどるような狭い問題ではなく、多くの人々に関わる広い問題であることを示しています。
5 ここにおられる裁判官の方々,事業団の弁護団の方々,行政の方々にも今のお立場と同時に,同時代を生きる人間として,親として子どもや孫につながる問題として考えていただきたいと思います。
万が一の未然に防ぐ予知能力と叡智をもって,疑わしきは使用せずの精神を生かし,この処分場の建設と操業を止める決定を出していただきますようよろしくお願い申し上げます。
子ども達は,じっとこの裁判の行方を見ています。今,最も大切なことは,資源を生かす循環型社会をスローガンだけでなく本気で総力を上げ,限りなくゴミにしない社会構造をつくることに力を合わせるべきだと考えます。
以上