談合疑惑に対する「事情聴取」の実際
昨年末の2002年12月25日、情報公開請求によって、「『エコフロンティアかさま』工事入札談合疑惑に対する事情聴取」の記録を読むことができました。
これは昨年9月の「エコフロンティアかさま」工事入札前に、新聞社などに談合情報が寄せられたことに対して、県環境保全事業団が企業グループを対象におこなった事情聴取の記録です。
談合情報の内容というのは「2工区の落札業者が2つのゼネコングループにすでに決まっている」というものでしたが、その時の事業団の事情聴取記録はA4判で40ページばかりのものです。しかし非公開の部分が多く聴取内容そのものを知ることはできませんでした。ただ談合疑惑の事情聴取というものがどの程度のものであるかについては概略わかりましたので、それをお知らせしたいと思います。
1、事情聴取の期日と場所
・日 時 入札予定日の前日(9月月24日)午後3時〜4時
・場 所 事業団事務所
・聴取側 事務局次長以下6名の事務局員(つまり7名)
・被聴取側 入札予定企業72社(大成建設グループや鹿島建設具グ ループなど12の共同企業体)の関係者72名
2、事情聴取の仕方
事務所側は2人一組(一人が聴取担当、もう一人は記録担当)で4班に分かれて1企業体(6社)ずつ聴いていくやり方です。1企業体あたり所要時間はわずか10分から15分です。1つの班の例を挙げましょう。10分刻みの聴取であることがわかります。
1班(N事務局次長とG副参事)
・15;20〜15;30 A企業体6社(A社が代表して答弁)
・15;30〜15;40 B企業体6社(B社が代表して答弁)
・15;40〜15;50 C企業体6社(C社が代表して答弁)
・15;50〜16;05 D企業体6社(D社が代表して答弁)
3、他県の談合防止対策
この聴取時間の中には、挨拶や自己紹介趣旨説明なども含まれているでしょうから、所要時間10分ではこれはもう事情聴取などと言えるものではありません。事業団事務所職員がすぐに疑惑を解明できるほど企業間の談合は甘いものではないでしょうから、このような聴取で疑惑を解明できるはずはないのです。ですから、
@疑惑がとりざたされた時点で入札を即刻中止し再公告する(埼玉県の浄水場建設の例)
Aあるいは事前情報と落札業者が一致すれば、談合の事実関係が確認されなくても入札を無効にする(愛知県の例)、
などの厳しい対応が必要なのです。これらの事例はいずれも朝日新聞9月28日号で紹介されている他県の防止対策の場合です。
4、長野県の談合摘発
長野県では同県の淺川ダムに関する談合疑惑について、同県の第三者調査機関「公共工事入札等適正委員会」が1月31日、「談合が行われたものと判断する」との調査報告をまとめ、田中康夫知事に提出しました。これを受けて田中知事も「報告書を尊重し、公正取引に速やかに伝える」と述べています。
この調査報告をまとめた鈴木満委員長は「強制権限がなくても資料の積み重ねのみで談合を明らかにした」と語ったそうです。談合を許さないとする知事の強い姿勢があれば、疑惑の解明についてこのような方向にすすむことが可能なのです。