意 見 陳 述 書
塙 清 一
1 私は、被告がしゃにむに建設を押し進めている廃棄物処理施設の建設を差し止めるために今回の裁判を提起した原告103名の団長をつとめております。また、私は、本件施設の建設予定地である笠間市福田に住んでおります。
この103名の周りにはさらに本件処理施設建設に反対する膨大な数の住民がおります。
2 昨年は、私たちの提起した本件処理施設の建設差止めを求める仮処分申立て事件が貴裁判所によって却下の決定を受けるという残念な年となってしまいました。
今も建設工事は進んでおり、私たちの不安は日増しに大きくなっております。私たちは巨大な危険施設が私たちの住宅のすぐ近くに存在することに改めて不安と脅威を感じております。
3 ところが、私たちが毎日工事を監視していると、廃棄物が持ち込まれる最終処分場予定地の斜面が数カ所土砂崩れを起こしているのを目撃しました。また、工事中に作業員が重傷を負うという事故も起きています。そのために、工事の進行は大幅に遅れている状況にあります。
被告は本件施設は安全だと一方的に主張していますが、安全な施設とするための前提となる建設工事に、外部の私たちも気付くような事故や不手際が多発していることは、これから建設される施設の安全性とはどのようなものかをおのずから物語っていると言わざるを得ません。
裁判官の皆様は、危険な廃棄物が山となってたまっている処分場、巨大な煙突がそびえ立った溶融炉を、夜となく昼となく目にし、意識せざるを得ない生活を思い描いたことがあるでしょうか。しかも、その施設は、採石場跡地にできたものとは思えないほどの美しさを保っていたふじみ湖とそこに生息していた多様で貴重な生物の犠牲の上に造られるものです。ふじみ湖にたたえられていた澄んだ青色の水の豊富さを思い浮かべるならば、その上にこのような巨大な施設を建設することの危険性は誰でも十分知り得たはずです。
私たちは、今後何十年も施設の危険性に怯え、健康や自然の汚染に怯えながらの生活をして行かざるを得ないのです。また、今まで身近にあった自然の恵みを受けることができなくなるのです。
この私たちの苦しみをどうぞ裁判官の皆様は自分の身に置きかえてご判断いただきますよう強く願うものです。
4 ところが、被告や県は、このような私たちの不安を取り除くために努力しようとはせず、形式的に手続を踏み、強引に事を運ぼうとしてきました。
その結果、私たちの福田地区でも県などから肝心な情報を得られず、疑心暗鬼に陥って、家族同士、隣近所同士で言い争いをし、対立する姿が見られるようになりました。本件施設の危険性から生じる精神的苦しみの他に、このような手続の不手際から生じる苦しみも私たちは負わされているのです。
その上、平成16年12月になって、県と一体となって建設を押し進める笠間市が「エコフロンティアかさま」監視委員会なるものを設置しようとしてその組織案を策定したのですが、その構成員として本裁判の原告団を除こうとしていることが判明したのです。
笠間市は、原告になった私たちを保護すべき住民と考えていないのでしょうか。原告になっている私たちもまた施設に事故があれば、被害を受けるのです。笠間市の姿勢は、住民を敵か味方かの観点からしか見ず、市の政策に疑問を持つ者を敵と見て、味方だけで政策を進めようとするものです。このような子供じみたことしか考えられない笠間市を恥ずかしく思います。
5 本件施設予定地付近には知的障害者の施設や老人ホーム、学校などがありますが、そこを利用している人々は建設反対の声を上げることが難しい人々です。また、未来に生きる私たちの子孫も反対の声を上げることができません。
私たちは、このような人々の願いも担って裁判を起こしたものです。
裁判官におかれては、本件を自分の身において判断していただくことを強く要望して私の意見といたします。