無名抄 その拾八


 高校弓士へのアドバイス(弦が切れたら)


「ぶちっ」「がた〜んがらがらがら…」(えっ!?…うそだぁ)
試合中に弦があがった(切れた)時の焦りは、何に例えたらいいでしょう。
急いでいるのに自転車のタイヤがいきなりパンクした時ぐらいの衝撃が走ります。
パンクならばそのまま置き去りにして走るか、急いで自転車屋に自転車を引いていけばいいのですが、
弦切れの場合、作法に従って弦や弓を拾い、進行係に弓を預けねばなりません。
弦切れに遭遇することは滅多にないけれど、処理のしかたを覚えておくと焦りも半減します。
替え弦の用意も必要です。替え弦がないと、弦切れの時点で途中退場になる場合があります。

 

失の処理の3原則
弦切れ・弓の落下・筈こぼれなどを「失(しつ)」といいます。
弦が切れるのは予測しがたく、射手の責任とは言い切れませんが、行射の流れを中断させる緊急事態です。
次の3原則に従って処理すれば、問題なく行射を続けられます。
  (1)礼に従う。
  (2)他の人に迷惑にならないよう、すみやかに。
  (3)恐縮の意を表する。

落としたものを拾う順番は?
(1)弓 (2)矢 (3)弦 の順に拾います。
落としたものが複数の場合は、「主たるもの」から順に拾うことになっています。
眼鏡を飛ばした場合は…どうでしょう? 審判員や進行係にまかせるのが良いかと思います。


弦切れの処理の流れ
先日、弦切れの処理を思い出せなくて恥ずかしかったので覚え直しました。
ここに書いておけば、私も読んで思い出せますし、高校弓士の皆さんの助けにもなるかもしれません。

◎「甲矢で弦が切れ、弓も落とした! 切れ弦は射場内に落ちている」場合。
・弦はたいてい「離れ」の時切れます。弓手の弓も落としたので弓倒しはできません。
・両手を腰にとり(執弓の姿勢のように)、顔を戻し、“弓が落ちている所に近い方に”足を寄せて閉じる。
  この時は的方向に落としたので、左足はそのまま、右足を左足に寄せました。
・足を閉じてもまだ弓や弦まで遠いときは、数歩歩いて近づき、手が届く所で半足引いて跪座。
“主たるもの”をまず拾う。この場合は「弓」を左手で拾います。
・甲矢で切れたから乙矢が右手に残っていますので、これを左手に持ち替える。
  矢尻側が握りのところに来るよう差し込み、弓と乙矢を一緒に左手で持つかっこうになります。
・右手で「弦」を拾う。弓から離れている時は、膝をついたままにじり寄って近づく。
・拾った弦をすばやく「左手の、親指以外の4本の指に輪に巻いてまとめる」。
  左手に弓と乙矢を持っているわけですが、その左手の4本の指を伸ばしてやや開き、
  それを軸として弦をぐるぐる巻きます。位置は腰の横あたりで。
  4本指をぴったり揃えすぎると、後で巻いた弦が抜けにくくなりますので注意。
・輪のように巻いた弦を4本指から抜き、輪をつぶして握りやすくして左手に持つ
・左手に持ち替えていた乙矢を、右手にとる。今、左手には弓と巻いてつぶした弦が残っています。
・射位に戻る。
  跪座をして膝をついている状態から、右膝を射位側に開いて右膝に左膝を寄せる、を繰り返して、
  射位に膝で横歩きしていきます。遠い場合は立って歩いて射位に戻ります。
  この時、的にお尻を向けてはいけません。(私はうっかりやってしまい叱られました)
・射位に戻ったら、他の人に対して迷惑をかけてしまったことを思って「揖(ゆう)」をし、
  恐縮の意を表わす。無言で「ごめんなさい」の意思表示です。
・進行係が弓を受け取りに来るので、弓と切れ弦を一緒に渡し、替え弦に張り替えてもらう。
・跪座の状態でじっと待つ。
・弦を張った弓を持った係が、弓を渡しに来ます。じっと跪座をしたまま、手を差し出さず
  差し出された弓の握りが左手のところまで来たら受け取る。
・すみやかに行射を続ける。

弦を切った射手の後ろの射手は、失の処理がもたついたとしても前の人の動作を追い越せません。
弓が戻ってきて通常の行射に移るまで、じっと待つことになります。

弦が半分に切れ、片方が拾えないところまで飛んでいった場合は、拾えるほうだけを拾って処理します。

 

一連の流れを思い出しつつ書いてみましたが、細かいところに誤りがあるかもしれません(-_-;)
間違いを発見した方は、どうぞご指摘下さい。

審査や試合での弦切れは、びっくりしたり焦ったり、同じ立ちの人にも迷惑をかけるおそれがあります。
切れそうな弦は避け、替え弦を忘れずに準備しておくのがいいですね!


2003.04.29 観

2003.05.08一部追加訂正しました。

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