無名抄 その拾七


 高校弓士へのアドバイス(弓具店に行くときは)


岩手県には、なんと常設の弓具店がありません(2002年現在)。
支店はあるようですが、いつも開いているわけではないと聞きます。
岩手のほとんどの高校弓士の皆さんは、弓具を買いに弓具屋さんに行くという経験がないと思います。
しかし、ありがたいことに出張販売というサービスがあり、
各種大会の会場には、他県から弓具屋さんが来て臨時に店を出してくださいます。
新入部員が矢や弓道衣を買うときなどには、学校への出張販売にも応じてもらえました。
私が入部した時も、高校の第一体育館に売りに来ていただき、矢とゆがけを緊張しつつ買ったのでした。
出張販売は、一般弓士にとっても大変ありがたいものです。いつもお世話になっておりますm(_ _)m
ネット上やカタログでの通信販売もありますが、やはり弓具は実際に見て触ってから買いたいですから。

弓道の道具は全体的に高価なものが多く、一度買ったら何年もの長い付きあいになります。
弓具屋さんは、皆さんに長く使える信頼できる道具を提供してくれます。
お客である私達が、高価な商品を不注意で汚したり壊したりしては大変です。
弓具屋さんで弓具を買うときに注意してほしい点を、ここにいくつか掲示しておきたいと思います。

 ◆◆◆

1.弓には細心の注意を!!
高校生のうちに自分の弓を買う人は少数派かもしれませんが、出張販売では弓も何張か並んでいます。
グラス弓、カーボン弓、竹弓。
新品の弓を見ていると、買う予定はなくてもちょっと引いてみたくなりますね。
その時は、弓具屋さんの許可を得てから、弓立から手に取るようにしましょう。
現在、グラス弓は2万円クラスから、竹弓は9万円前後が最も安い価格かと思います。
弓は、弓具の中でも最も高価な、しかも破損のおそれが高い道具です。
商品として並んでいる弓を試しに引きたいときは、ほんとうに細心の注意を払わなければ、
万が一の時弁償すると言っても大変なことになります(OO;)

  ・壁や天井にぶつけないように注意すること。
  ・引いてみたいときは、弓具店のかたに「試し引きの引き方」を教えていただくこと。
  ・当然ながら、離してはいけません。

「商品としての弓」を、自分の弓を素引するように引き分けるのは厳禁です。
「会」の状態にまでいきなり引くことは、新しい弓にとって非常に危険なのだそうです。
例えば、腕の長い人が並弓を目一杯まで引くとどうなるでしょう?
腕力のある人が弱い弓を思いっきり引き分けてしまうと、弓が力に負けて破損するかもしれません。
静かに、耳の辺りまでゆっくりと引く、とここで文章で書いても分かりにくいと思いますので、
必ず!!弓具屋さんに「ここまでこのように引く」と説明を受けてから、試し引きするようにして下さい。
弓具屋さんは、お客である弓士を信頼して商品を手に取れる場所に並べているのです。
高校生だって弓士のひとり。破損したあと、取り扱い方を知らなかったから、では済まされません。
弓具ひとつひとつを大事に取り扱う、という基本を初心のうちから心がけたいものです。

グラス弓、カーボン弓、竹弓、メーカー・制作者もいろいろです。それぞれに特性があるそうです。
もしも購入を考える場合は、顧問の先生や弓道会の実績のある先生に相談することをお奨めします。
色やキロ数だけではない、弓選びのコツを教えていただくチャンスです。

2.ゆがけを選ぶとき。
ゆがけも、とても大切な弓具ですね。10年、20年と長い付きあいになるゆがけ。
場合によっては射型に影響が出ることもあるゆがけ。慎重に選びたいものです。
選ぶときには、実際に手につけてみることが必要になります。
このときも弓具屋さんに了承を得たうえで商品をみせていただき、
「下がけ」をはめてからゆがけを試着するといいと思います。
革製品に手の脂や湿気は大敵。靴屋さんでも、「素足での試し履きはご遠慮下さい」ですね。
それに、実際に使う際の感覚でゆがけを選んだほうが安心です。
下がけをつけたら、あとはかたっぱしからゆがけに手をつっこんでみましょう。
購入候補からはずれたゆがけは、きちんと元の状態に戻しましょう。

  ・親指が帽子の中である程度動かせるくらいのもの。
  ・他の指部分もきつすぎず、ゆるすぎないもの。
  ・取り懸けの形に、無理なくできるもの。親指部分の形状はどうでしょう?
  ・値段とも相談になりますが、革がしなやかで厚みのあるもの。

ゆがけも皆さん既に、高校弓道最初で最後のゆがけを買ってあるのでは。
使っている途中で穴が開いたりして、二代目を買わざるを得ないときは参考にしてみて下さい。
買ったばかりの時は固くて指が曲げにくく違和感があるかもしれませんが、
鹿皮なので次第に手になじんで初代と同じように使えるようになります。
自分にちょうどいい感じのゆがけに出逢うことは、なかなか難儀なものです。
私は二代目のゆがけを探し出すのに5年ほど費やしました。
初代ゆがけは、最も安価なものでしたが、へろへろになりつつ13年間もってくれました。
弓道会の先生のゆがけは、もっともっと年代物だと伺っています。
鹿皮っていうのは本当に丈夫ですね!
いいのが見つかって買った後は、湿気(雨・カビ・汗)や高温(ストーブの熱等)に注意

3.矢を買うとき。
矢を買うときも、本当はいろいろこだわりたいところですが、高校生・初心者のうちは、
取り扱いに慣れるまで破損の危険性がついてまわります。あづちの屋根に中てたり、看的に中てたり(^_^;)
ですから、羽根の種類は最も安価なターキー(七面鳥)にとどめて置いたほうがいいと思います。
上達して矢飛びが安定してきて、お財布に余裕があるなら、2代目の矢を買うことにして。
破損や羽根の消耗によって、私が2代目として買ったのは、白鳥の羽根の矢でした。
ターキーよりも柔らかい羽根で、再び暴発などをやってしまったものですから羽根がまたはがれ、
仕方なく羽根替えの修理に出し、ターキーの羽根をつけてもらいました。
白鳥・白鷹などの柔らかい羽根の矢は高価になりますが、矢飛びは良くなると思います。
矢のシャフトの太さは、男子は2015、女子は1913、を選ぶのが通常です。1913の方が細いです。
他に遠的矢(1913よりも細い)が店頭に並んでいますが、近的用に間違って買わないようにご注意下さい。
シャフトがカーボンの矢、というのもあるそうです。お店で特性などを聞いてみると勉強になります。

購入した弓具店で、「羽根替え」「シャフト交換」「筈(はず)交換」などの修理に応じてくれます。
出張販売がある大会の会場で、どのように修理してもらいたいか説明して修理に出しましょう。

 ◆◆◆

お正月のお年玉で思い切って弓具を買う!という高校生もいるのかもしれません。
後藤弓具店(仙台市) http://www.sun-inet.or.jp/~kyudo/goto_kyugu.htm では、初売り割引があるそうです。
事前に電話して確認の上、行ってみるのもいいかもしれません(^_^)
皆さんに、いい弓具との出会いがありますように。
弓具を大事に取り扱う高校弓士の皆さんに、弓具もまた応えてくれるはずです。


2002.12.29 観

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