無名抄 その拾参


 高校弓士へのアドバイス(審査の間合い)


段級審査についてのアドバイスは、以前に無名抄その参・その四・その六に掲載しました。
しかし、肝心の「審査の間合い」についてはまだ書いていなかったので、
秋の審査を前にここに「五人立の審査の間合い」を掲載しておきたいと思います。
高校弓士が審査に臨むにあたって、的中よりも何よりも心配なのは、動作を間違ったらどうしよう!
という点だと思います。「審査」と「試合」では、行射の間合いが異なります。
動作を忘れたり間違えたりして動揺し、いつもの射ができない、という事態は避けたいものです。
また、次の動作を忘れて動けないでいると、後の人も次の動作に移れなくなります。
基本的に前の人の動作を追い越してはいけないため、同じ立ちの人達にも影響が出てしまうのです。
「審査前講習会」に参加して、自分の立ち順での間合いを最終的に確認しましょう。

まず、5人のうち「大前」と「五番」だけが違う動作をする点があります。

「大前」・入場の際、揖ではなく「礼」をします。
    射場に入るとき、一歩目はあづちに向かって左足を大きく踏みだし(いち)、
    二歩目で右足を上座(審査員席方向)へ踏みだし(に)、三歩目で左足を右足に寄せ(さん)、
    背筋を伸ばし審査委員長を目視(し)してから「45度の礼」をし(ご、ろく)
    上体を起こし(しち、はち)ます。
    ・「礼」のあと本座のやや手前まで進んだら「直角に」曲がり、大前の位置まで進みます。
    上体を起こしたのち、左足をあづち方向へ踏みだし(いち)、右(に)、左(さん)、
    で本座やや手前に来ると思いますので、右足を左足かかとにひきよせつつ「L字」に方向転換(し)。
    左、右、左、右…と、大前の位置まで進みます。
    横目で的を見たりせず、「大前の的はここだ」と感じた所で右左足かかとを「L字」にし、
    的正面方向へ向きを替え、「本座の約半歩手前」まで進みます。
    五番の受審者までが的方向に向いて揃ったな、という時点で大前は右足を半足引き、跪座します。
    それに揃って、二番以降の人も跪座するので、大前の人はぼんやり立っていないこと。
    ・跪座した膝頭が、ちょうど本座の線に来るように、立つ位置に気をつけてください。
    大前が位置を間違えると、他の4人も間違えます。
「五番」・行射が終わったら、一歩下がって退場します。
    五番の受審者は、一手(2本)引き終え、弓倒し、顔を戻す、右・左と足を閉じたら、
    右足で一歩後に下がります。下がった右足に左足を揃え、右、左、右、左と出口へ向かい退場します。
    うっかり前にそのまま退場してしまうと、次の立ちの受審者とぶつかってしまいますので、
    落ち着いて一歩後退してください。

◎五人立ちの審査の間合い
・本座で揖(ゆう。10センチ程上体を屈する)。
・腰をきり、左足で立ち上る(左足は右膝より前に出さない)。
・正しい執り弓の姿勢のままで、左、右、左と射位に進み、左足に右足を揃えたら右足を半足引き、沈むように跪座。
 自分の身体が10センチ沈めば、自然と末弭(うらはず。弓の先端)が床に着きます。
・腰をきると同時に末弭を自分の目の高さまで起こし、そのまま開き足(左膝を右膝にかぶせるように90度開く)、
 方向転換しつつ腰をおろしつつ左足に右足を寄せて、審査員席正面に向くと同時に跪座完了。
・静かに弓を立て、膝を生かし、腰の高さあたりで右手で弦を返します。
・矢を組み、甲矢・乙矢を見分け、顔を戻して甲矢をつがえ、乙矢を逆に打ち込み左手の指で挟み、右手を腰に。
↑ここまでは、五人同時に行います。前の人の動作を追い越さないよう気をつけましょう!
前の人が動作を忘れて固まってしまったら、ひとまず待って、審査員の指示を待ったほうがいい思います。
また、前の人が間違ったときは、その間違った動作をマネしてはいけません。

1.大前は、すみやかに腰をきって立ち、甲矢の行射に移ります。
  二番は、大前の胴造りが終わったら腰をきって立ち、大前の弦音でとりかけ、行射します。

2.三番は、大前の弦音で腰をきって立ち、二番の弦音でとりかけ、行射します。

3.四番は、二番の弦音で腰をきって立ち、三番の弦音でとりかけ、行射します。

4.五番は、三番の弦音で腰をきって立ち、四番の弦音でとりかけ、行射します。

5.四番の弦音で、大前・二番・三番は弓を立てます。
  大前は、五番の弦音で腰をきって立ち、乙矢の行射に移ります。

6.四番は、五番の弦音で弓を立てます。
  五番は、甲矢の行射後、誰の弦音も待たずに自分で弓を立てます。

あとは、乙矢を甲矢の時とおなじ間合いで行射すればいいのです。
「前の前の人の弦音で立つ」「前の人の弦音でとりかける」
「大前・二番・三番は、四番の弦音を待って一緒に弓を立てる」
を覚えておけば大丈夫ですね。
だいたい、審査員が一人ひとりの射をちゃんと見られるように間合いが決まっています。
大前は、五番の甲矢の離れまでを審査員が見終わったら立つ、といったような感じです。

乙矢を引き終わったら、右、左と足を閉じ、右足から射位を出ます。
出口に近づき、末弭が出口敷居のあたりまで来たら左足を審査員席側に踏みだし、
その左足に右足を揃えると同時に審査委員長を目視し、揖をします。
上体を起こしたら、ふたたび右足から出口へ向きを変え、「敷居を踏まないように」
「右足で敷居をまたぎ」退場
します。
「敷居を踏まないように」は、入場の際も同じく注意してください。
審査員席から自分の背中が見えるうちは、決して気を抜かず、きびきびと控室に戻りましょう。
その前に、今行射した自分の矢を、矢取りの人が持ってくるのを待ってお礼を言い、
よく確認の上持ち帰るとより安心ですね。替え弦の弦巻も忘れずに!!

秋の審査は寒い場合が多く、1年生部員には初めての審査で、緊張も重なって身体が固まりがちです。
よくよく準備運動をしてリラックス、いつものいい射を審査員の先生方にみていただけるといいですね。
受審されるみなさんのご健闘を祈ります!


2002.10.25 観

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