無名抄 その九


 馬手も弓手もわからなかったころの会話


弓道を始めたばかりの頃、こんな会話をした覚えはありませんか?
 ◆ ◆ ◆
大会の立順表を見ながら。
「段のとこに書いてある『
錬五』ってなに?『五』となにか違うの?」
「う〜ん、練習の練に似てるから、
五段になるために練習中の人じゃない?」
「じゃあ、こっちの『
』ってついてるのはなんだろう」
学校の先生なんじゃない?」
(ちがう〜!どっちも違うぞ!)
 ◆ ◆ ◆
大会の開会式にて。
「これから
矢渡しを行いますのでなんとかかんとか…って言ってるぞ」
「なにや、矢渡しって」
矢を渡すんだろう
『ハイ、どうぞ』ってか?」
「そうか?いちおう観てみるか」
「げー、みんな正座してるぞ」
矢渡しが何なのか解った後には、足がしびれて立てなくなった一年生が何人か…
そしてその足を踏んでおもしろがっている人も何人か…
足のしびれには、
第二波もあるのでご用心です。
 ◆ ◆ ◆
先輩「一年生、きのう教えた射法八節は覚えたかな?」
一年「…はい(
自信なし)」
先輩「ではおさらいしよう。○ちゃんから順番に言ってみて〜」
一年「え〜と、足踏み」
一年「胴造り」
一年「弓構え!」
一年「打ち上げ〜」
先輩「待った、ちよっと違うな(花火かい)」
一年「じゃ、弓上げ?」
先輩「ちが〜う、『打ち起し』です」
一年「スミマセン…うちおこし」
一年「大三」
一年「引き割り」
先輩「惜しいけどちがう〜(こんどは納豆か?)『口割り』の一部が混入しているね」
一年「あ、引き分けでした…」
一年「会」
一年「離れ」
一年「残心」
一年「弓倒し」
一年「あれ?先輩、
八節なのにいま十個言ってしまったんですが…」
先輩「ほんとだ。なんか多かったねぇ」
多かったのは、「大三」と「弓倒し」でした。
教える方も、たまに間違えます。
 ◆ ◆ ◆
知らないことばかりだった時代のことですが、
書いていたら、つい最近のことでもあるような気がしてきました。
時々、これらと
まるで同じ会話をしている高校生の声が聞こえてきます。

歴史は繰り返す?


2002.08.08 観

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