吉野山と四の切 亀治郎の狐忠信 2010.8.26 W276

20日18:00から国立大劇場で催された、「亀治郎の会」追加公演を見にいってきました。

主な配役
佐藤四郎兵衛忠信
実は狐
亀治郎
静御前 芝雀
源義経 染五郎
川連法眼 寿猿
妻飛鳥 吉弥

「吉野山・四の切」のあらすじはこちらです。

毎年、意欲的な企画で大いに楽しませてくれる「亀治郎の会」も今回で8回目。昨年は女形中心で舞踊劇3つを演じましたが、今年は「義経千本桜」の「吉野山」と「河連法眼館」の二つと他の分野の俳優たちと共演する「上州土産百両首」。しかし私が行くことができたのは、E+主宰の追加公演だったため「上州土産百両首」は残念ながら見られず、そのかわりに亀治郎のインタビューで興味深い話が聞けました。

「吉野山」では静御前の芝雀が気品があり、憂いにみちた風情の中にもしっかりした賢い女性を感じさせて好演。静は常盤衣に常盤笠。杖の持ち手に紫の布が巻いてあるのが目につきました。

その静の衣装に対して忠信はふかし鬢で小さい源氏車が飛んでいる着付。中の襦袢は水色に金の扇模様。この拵えは亀治郎にとてもよく似合っていて、きりっとした男らしさが出ていました。吉野山の最後は逸見藤太などは出ず、静と忠信の絵面の見得で終わりました。

静御前の家来としての分を守り、狐の動物的な動きにもわざとらしさがなく、なによりも身体つきが狐忠信にぴったりで、そのことはこの後の川連法眼館でいっそうはっきりとしてきます。立役である、本物の忠信も堂々としていて、狐忠信の狐言葉もおおむね自然に感じられました。「私めは、その鼓の子でござりまする」など長くのばしてさっさっと締めくくる台詞回しも絶妙でした。

狐忠信で下手に引っ込み、上手屋体の窓から本物の忠信となって顔をだすなどの早替わりも完璧といって良い見事さ。また宙乗りしている時も足の使い方が上手く愛嬌があり、初演にもかかわらずこの澤瀉屋型の忠信を演じるに最もふさわしい役者だということをアッピールしました。

頭が階段にかかるほど深く反る海老ぞりや、長袴を蹴りあげる場面も美しく、素晴らしい速さでぐるぐる回転するところなどなど、いろいろな点でとても魅力的な亀治郎の狐忠信でしたが、しかしながら四の切では情という点で、今ひとつ物足りなかったのは残念でした。染五郎の義経は、暗く沈みすぎでタイトルロールとしての華や、存在感が不足していました。

今回のプログラムは2500円と数ある公演の中でも飛びぬけて高価でしたが、後半にはこれまで演じてきたいろいろな役の同じポーズの写真を、叔父猿之助と亀治郎両方を見開きに掲げる大胆さ。猿之助の芸の後継者としての自負が強烈に感じられる筋書きでした。

終わってから、狐忠信の衣装のまま舞台に登場した亀治郎はE+の女性社員のインタビューに答えて、ゼーゼーしているのが客席に分からないように息を殺す早替わりがいかに大変で、前もってスポーツクラブに通って一度上がった心拍数を下げる訓練をしたことや、狐忠信の宙乗りでは他の役とちがって身体が水平になるためハーネスが胸をもろに締め付け非常に苦しいこと、そのために猿之助は二度鳥屋に入るやいなや失神したこと、欄間抜けでも猿之助が手すりをつかみ損ねて片腕を脱臼(または骨折?)したこと、狐になっている時は飛び降りるさいに音がしないようにしなくてはならないことなど苦労話を、豊かな艶のある声で面白く語ってくれました。

早々とチケットが売り切れになる人気絶頂の亀治郎の会ですが、10回をもって終了する決意だそうで、あとの二回を思い残すことがないような舞台にしたいと考えているという話でした。兼ねる役者としてばかりでなく、プロデューサ―としてのきらめくような才能も合わせ持つ亀治郎の今後の活躍を期待したいと思います。

この日の大向こう

この日は声を掛けるかたはあまり多くなく、大向こうさんがお一人見えていて、あとは一般の方が2~3人時折おかけになっていました。

本物の佐藤忠信が上手にひったてられて入る時のツケ入りの見得で、バ―ッタリのバ――がちょっと長めだったためか、こらえきれずにお一人声を掛けてしまわれましたが、この間の息詰るような緊張感を共に体験していただきたかった、そうすれば途中で掛かってしまうことはなかっただろうと思いました。

亀治郎の会(追加公演)演目メモ
義経千本桜
 吉野山―亀治郎、芝雀
 川連法眼館―亀治郎、芝雀、染五郎、寿猿、吉弥

亀治郎へのインタビュー

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