義経腰越状 奇妙な竹田奴 2005.2.19

8日、歌舞伎座昼の部を見てきました。

主な配役
五斗兵衛盛次 吉右衛門
義経 三津五郎
泉三郎忠衡 左團次
伊達次郎 歌昇
錦戸太郎 歌六
亀井六郎 松緑

「義経腰越状」―五斗三番叟のあらすじ
九郎判官義経は平家討伐で圧勝したが、そのために兄・頼朝に疎まれ、梶原景時の讒言によって謀反の疑いを掛けられる。義経はこの疑いを解こうと鎌倉へ向かうが、その手前の腰越の地から都へ追い返されてしまう。そればかりか愛妾の静御前を人質として差し出すように命が下ったが、義経はこれを断る。

今にも二人の間には戦が起こるだろうという噂が飛び交う中、義経の家臣・泉三郎忠衡は、以前は木曽義仲の家臣で名軍師として名をはせたが、今は目貫師として世を忍ぶ五斗兵衛盛次を、義経に推挙するために館へ招く。

一方梶原に内通する錦戸太郎と伊達次郎の兄弟は、義経をそそのかして毎晩遊興させている。それを諌める忠臣、亀井は義経の逆鱗にふれ、目通りを差し止められる。

亀井を追い払った上は、あとは邪魔者は泉ただ一人と、錦戸と伊達は五斗兵衛が大酒飲みなのを利用して目通り前に良いつぶし、推挙した泉を失脚させようと計画する。

義経に目通りするためにやってきた五斗兵衛に、錦戸たちは義経からの下され物だといって、酒を飲まそうとする。最初は断っていた五斗兵衛だが、兄弟が美味そうに飲み始めたのを見て、誘惑に負け大酒を飲んで酔いつぶれてしまう。

そこへ義経が出てきて、兵法について尋ねるが酔っ払った五斗兵衛はまともに答えることが出来ない。錦戸たちの狙い通り義経は五斗兵衛に腹をたて、推挙した泉の気持ちをも疑う。泉三郎は兄弟の策略とみぬくが、どうしようもなく無念の想いで立ち去る。

目をさました五斗兵衛は追い払おうとやってきた奴たちを相手に、刀の目貫を物語り、戯れに三番叟を踊り始める。見事に舞い納めた後、奴たちを馬代わりに悠々とまたがり、泉三郎の後を追っていくのであった。

「義経腰越状」は1770年に初演された、並木宗輔作「南蛮鉄後藤目貫」が改作された浄瑠璃が元になったもので、この作品の三段目にあたり、義経は豊臣秀頼、五斗兵衛は後藤又兵衛、泉三郎は真田幸村を暗示しているそうです。(筋書きより)

煙草入れを剣先烏帽子に、肩衣を素襖のように身に着けて、三番叟を踊る吉右衛門には、渋い味がありました。

そのあと「阿古屋」にも登場する、思い思いに顔をへのへのもへじのような落書き風に描いた10人の竹田奴を、奴凧に見立てたり、相撲をとらせたて途中から紙相撲に見立ててみたり、最後には馬に見立てて角樽を頭に騎馬戦のような格好で引っ込んでいく、奇抜な演出が面白かったです。

この竹田奴というものは、人間離れした奇声をあげてぴょんぴょん飛びながら出てきたり、下っ端の妖怪に近いような雰囲気があり、いかにも歌舞伎的な存在だと思います。

以前團十郎が演じた時は、最初にきょろきょろしながら出てくる五斗兵衛の印象が鮮明に残っていますが、今回は竹田奴とのやりとりが興味をひきました。大事なお目見えを大酒を飲んでしくじったというより、この人には深い考えがあってわざとそうしたのではないかと思わせる、吉右衛門の豪傑ぶりでした。

「番町皿屋敷」では、時蔵の白地に紫の伊予染めに菊の裾模様の着物が良く似合っていて綺麗でした。時蔵のお菊は播磨が最後のお皿を打ち割るころには播磨の無念さを悟り、切られるものと覚悟を極めて静かに死んでいったように思えました。

梅玉は最初のころは喧嘩を好む連中の仲間には見えなかったですが、お菊になぜ殺さなくてはならないかを言って聞かせるところには人が変わったように迫力がありました。

その次が「隅田川」。南座の顔見世と同じ、鴈治郎の班女の前と梅玉の船頭でした。

最後に九代目三津五郎七回忌の追善狂言「どんつく」。菊五郎の親方、三津五郎のどんつく、仁左衛門の大工、魁春の白酒売り、左團次の門礼者、時蔵の芸者、菊之助の町娘、巳之助の子守で楽しくにぎやかに江戸の風俗舞踊をを踊りました。

菊五郎の親方の曲鞠は、この日はちょっと調子が悪くてなかなか入りませんでしたが、三津五郎のおかめの面をかぶった踊りはなんとも愛嬌があり、出演者全員で田舎者のどんつくの真似をして次第に速く踊っていくところなど愉快に盛り上がりました。

この日の大向こう

この日は数人の方が声をかけられていました。会の方は2〜3人ということでした。

「番町皿屋敷」では時蔵のお菊が皿を割ろうか、どうしようかと悩んでいる大事なところで地震があり、客席がざわつきましたが、時蔵は何事もなかったかのように落ち着いて続けたのでそのまま収まりました。その上いいところで2回も携帯の着メロがなってしまい、役者さんが本当に気の毒でした。

「五斗三番叟」にはあまり声が掛からず、「はりまや〜?」という尻上がりの声だけが目立ちました。

「どんつく」には再び沢山の声がにぎやかにかかり、威勢のいい声も聞こえてきました。

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