『 ケーキ ケーキ ケーキ ― (1) ― 』
その年 クリスマスを目前にしてゼロゼロ・ナンバー・サイボーグのメンバー達は全員が
日本で過ごすことになった。
冬の最中に起こったこの国での小さなミッションが 意外と尾を引いてしまい、
後始末のために全員があれこれ・・・それぞれの分野で奔走するハメになり・・・
欧州組をはじめ ( ピュンマはもう早々に帰国を諦めていた )
アメリカ在住の二人も 「 めんどくせ〜〜 」 「 むう ・・・ 」 ということになった。
つまりは。 ギルモア邸に7人も! 大のオトコがごろごろすることになったわけだ。
「 うわ〜〜〜〜 大変! 今年はチキン、三羽は焼かないと足りないかも〜〜 」
当家の主婦はもう大忙し。
「 フラン 大変だね〜 ぼく 手伝うよ 」
「 ジョー。 それなら 大掃除、おねがい。 」
「 ・・・ え ・・・ 」
「 そうやで。 お御馳走はフランソワーズはんとワテに任せてや〜〜
アンタらは このお家をきれ〜〜にしてもらいまっせ〜〜 」
「 ・・・ 大人 」
キッチンでは 張大人が大はりきりだ。
「 大人 お店の方はいいのかい? 」
「 ほっほ ピュンマはん。 仕込みはちゃ〜んとやったぁる。
最後の一味、にちょいと戻りまっせ。
けど メインの料理は ここの くりすます・でいな〜 やで〜〜 」
「 けどよ〜〜〜 ほら 食材とか! 運ぶだろ?
機動力にはオレのチカラがないとマジヤバいんでね? 」
「 機動力なら俺のトラックが上だ
」
「 ほ〜 ほ〜 吾輩ならなんにでも変身できるぞ?
超大型コンテナ なんぞ朝飯前なのだが。 掃除に回るのは
物資輸送部門の重大な損失であるな 」
なんとか掃除をサボりたい面々は必死に食い下がる。
そんなさもしい仲間達を尻目に メンバー随一の巨躯の持ち主は掃除用具を手に現れた。
「 俺は 外回りを引き受ける 」
「 まあ〜〜 ジェロニモ〜〜〜 ありがとう! 」
「 むう ・・・ 」
彼はかすかに頷き さっさと庭に出て行った。
「 さあ〜〜 あとは。 バス・ルームとトイレ掃除組、 窓磨きは 〜 」
「 オレ! 」
ジェットは思い切りよく手を上げるとそのままテラスへの窓を開けた。
「 オレならよ〜〜 外からだってホイチョイ よ〜〜 」
「 あら ありがと、ジェット。 え〜と後は〜 」
「 わかった。 水回りは僕が引き受けるよ。 最後の格納庫から海への
通路も巡回してくる。 」
「 あら ありがとう、ピュンマ。 うふ ついでに海中散歩してきてもいいのよ〜」
う。 お見通しだよ〜〜〜
あは ・・・ ぎくっとした顔に強張った笑みを浮かべ ピュンマもそそくさ〜〜と
リビングから出てゆく。
「 それじゃ〜ね ジョーとアルベルトはお家の中をお願い。
しっかり掃除機かけて拭き掃除もお願いね 」
「 ・・・ うへえ・・・ わかったよぉ 」
「 ふん 俺達はどうやら貧乏クジってやつか ジョー。 行くぞ!
さっさと始めてとっとと終わらせる! 」
「 え〜〜 ・・・ まだ大晦日までは日数があるよ〜〜う
クリスマスだってまだじゃないかあ〜〜 明日出来るコトは明日 ・・・ 」
「 ジョー。 俺はな、明後日できることも今日やってしまいたいんだ。
掃除機は俺がかける。 お前は雑巾がけだ! 」
アルベルトはジョーをほっぽらかしてどんどん行ってしまった。
「 あ〜〜〜 あるべるとぉ〜〜〜〜
ぼくぅ〜〜〜 今日はゆっくり 」
「 ジョー! はやく来いっ 今やっておけばクリスマスにはすっきり だ! 」
「 う〜〜〜 ・・・ 」
「 お前〜〜 なんのために加速装置が付いてるのか??
それでもサイボーグなのか?? 」
「 ・・・ へ〜い ・・・
」
ジョーはやっと腰をあげると のろくさリビングを出ていった。
「 じょ〜〜〜 がんばってねぇ〜〜〜〜 」
フランソワーズは陽気にひらひら手を振った。
「 ほっほ・・・ アルベルトはん、 めっちゃくちゃな理屈でんな〜 」
「 うふふ そうねえ・・・ 彼は ほら、アレなんじゃない? 」
「 アレ? なんでんすねん 」
「 え〜と ・・・ ほら えっと・・・ そう、いたち!! 」
「 いたち??? あの動物の鼬でっか? フェレットの仲間やろ? 」
「 あ〜 ・・ ちがったかしら? ほら せっかちなヒトのことを 」
「 ! そりゃ いらち でんがな、フランソワーズはん。 」
「 あら そう? だからその いらち よ。 」
「 ほっほ〜〜 そやなあ〜 アルベルトはんは冷静やけど いらち もあるなあ
ほんにフクザツなおヒトやな 」
「 でしょ? まあ ジョーといいコンビかもね 」
「 ほっほ・・・ ジョーはんは根本的には 天然坊や やからなあ 」
「 そ〜そ〜 さあて これで大掃除はなんとかなるわね 」
「 せやな。 あとは ワテらで お御馳走 やで。 」
「 はい 大人シェフ♪ クリスマス・ディナー の仕込み、ガンバリまっす♪ 」
「 ハイナ〜〜 安生 気張ってや〜〜 」
「 は〜い。 で 残る問題はあ〜 」
「 ?? なんぞまだあるねんか? 」
「 あります。 大問題よ〜〜 クリスマスには クリスマス・ケーキ が必須!」
「 ほい ケーキでっか。 ああ このお国では華やかに宣伝してはりますな〜
ヨコハマの店の近所でも豪華なのん、売ってまっせ 」
「 そうね、この国では皆 お店で買ったりしてるけど・・・ でもね 」
「 はん? クリスマスは西洋の御祭ですさかい ワテは不調法やで・・・
フランソワーズはん、 仕切ってや 」
「 まあ そう? 大人の故郷ではクリスマスは祝わないの? 」
「 イマドキは お子たちのためにやってはるやろけど・・・
ワテの若いころは 正月、それも旧正月がメインやったさかい 」
「 ああ そうねえ お国によっていろいろよね 」
「 そやで。 ウチはみ〜〜んなごた混ぜやさかい ・・・ 好きにやらはったらええ 」
「 そう? それじゃ 」
えっへん。 フランソワーズはちょっと居住まいを正し発言した。
「 ケーキ は家でつくらなくちゃ 」
「 クリスマス・ケーキ?? 」
その日の晩御飯は 珍しく全員が揃っていた。
大掃除作戦の第一部は まあまあな状態で終了していたので 皆 腹ペコだった・・・
という理由も ある。
< ごちそうさま > をした後で この家の主婦はもう一回高らかに宣言したのだ。
「 はい、皆さん。 今年のクリスマスは ケーキはウチでつくります 」
「 お〜〜〜 いいぜぇ〜〜〜 」
「 ふん 当然だな。 」
「 へえ いいねえ 僕の国ではクリスマスとは無縁だからなあ 楽しみ♪ 」
概ね 好意的な反応が得られた。
「 いいね。 あ! 」
― ガタン。
終始にこにこ〜〜 していたジョーが突然立ち上がった。
「 ? どうしたの ジョー 」
「 ケーキも大事だけど ― もういっこ 大切なこと、忘れてるよ! 」
「 忘れてる? 」
「 そ。 これだってナシですませることはできないさ。 」
ぼくは教会育ちだからね〜〜 と ジョーはちょいと胸を張る。
「 ねえ なあに 」
「 ジョーはん なんやねん 」
「 おっほん。 それはね ― クリスマス・ツリ― さ! 」
あ。 全員が < あ > という顔をした。
「 だよな〜〜〜〜〜 オレの国じゃとっくに点灯セレモニー やってるぜ
NYのロックフェラーセンターでよ〜〜 」
「 そうだわねえ ねえ ステキなオーナメント、探してきたいわ
日本はそうゆうの、得意でしょう? 」
「 ふん ・・・ おい お前、枝ぶりのいいやつ、探してこい。
俺がすっきり切り倒す。 」
「 おうよ〜〜 オレ様がひとっ飛びして索敵してくるぜぇ どの辺だ? 」
「 そうね 北の方にゆけばあるんじゃない? 」
「 オッケ〜 そんじゃっ 」
気の早い赤毛は もう窓わくに手を掛けている。
「 ま〜った待った! ダメだよ。 」
だん。 今度はピュンマがテーブルを鳴らし立ち上がった。
「 ピュンマ?? 」
「 せっかく大きくなった樹を 切倒す なんてダメだよ。 もっての他さ。
森林破壊は極力さけなければ・・・ どうしても・・・っていうなら 根付きで
掘りだしてきて クリスマス後に元の山に返すんだね。 」
「 うむ〜〜 環境破壊は よろしくないな。 」
「 んならどうしろってんだよぉ〜〜〜 いっくらオレだってよ〜〜
根つきのでっかい木 担いでは飛べねぇぜ 」
「 そう ねえ・・・ 目立っちゃうし ・・・ 」
「 ううむ ・・・ 」
「 ほんならフェイクのんにしまっか? 中華街たらで組み立て式のん、
売ってまっせ〜 」
「 うむ。 しかしなあ やはりホンモノがあらまほしい。 」
「 んならど〜しろってんだよぉ 」
「 う〜〜〜む ・・・ 」
しばし言葉が途切れた。 誰も妙案が浮かばない。
「 ― ウチの庭で やればいい 」
普段寡黙な巨人が ぼそり、と口を開いた。
「 へ??? ウチの庭ぁ??? けどよ〜〜 クリスマス・ツリーは
生えてねえぜ? 」
「 クリスマス・ツリーではなくて。 樅の木 だ。 」
アルベルトがびしっと訂正する。
「 へ? どっちだっておんなじじゃ〜んか 」
「 いや ちがう。 そもそもだな 」
「 ちょっと〜〜 脱線しないでよ? ねえ ジェロニモ。 ウチの庭で
どうするの? ホントに樅の木は生えてないわよ 」
「 おお そうであるなあ 」
「 うん うん 」
全員が巨躯の持ち主を見つめた。
「 むう・・・ 樅の木は ない。 しかし 枝ぶりのよい大木がある。 」
「 そんな木、あったかしら・・・ 」
フランソワーズは首をめぐらせ頭の中に我が家の庭を思い浮かべる。
庭造りと温室管理の一切を担っているジェロニモ・ジュニア は別として
仲間うちでは フランソワーズが一番長い時間を庭で過ごしている。
花壇の隅から裏庭の柵まで よ〜〜く親しんでいるはず なのだ。
「 木・・・ってば 柿でしょ 夏ミカンでしょ イチジクでしょう? 」
「 フラン、 食べ物ばっかだよ? 」
「 え だってちゃんと世話していないと 美味しい実が採れないでしょう?
虫がつかないか 枯れた葉っぱを取るとか いろいろあるのよ。
だから 庭の樹はみ〜〜んなお友達なの。 あ! わかった〜〜 」
「 へ? モミの木 あったか? 隅っこの方とか? 」
「 ウウン。 ウチの庭に樅の木はないわ。 でもね 似た枝ぶりの木があったの。」
「 むう ・・・ 」
ジェロニモ・Jr.が 微かに笑みを浮かべた。
「 うふふ アレでしょう? 」
「 そうだ。」
「 なんなんだよ〜〜〜 教えろよぉ〜〜 」
「 はい。 あのね、 裏庭の隅っこに、柵と一緒に並んで繁っている木があるでしょ
そ れ ね? 」
「 え〜〜〜 あ わかった〜〜〜 ヒマラヤ杉!! 」
ジョーが頓狂な声をあげた。
「 ぴんぽ〜〜〜ん♪ あの木ならたっくさん飾れるわ。
ジェット てっぺんのお星さま おねがいね〜〜 」
「 うっす! けど ひまらや・・・なんとかってあったか??? 山かあ?? 」
「 違うわよ〜〜 背の高〜〜〜い針葉樹よ。 後でじっくり見学してきてね 」
「 へ〜い 」
「 ふん そうだったな。 裏庭に故郷でも見慣れた樹があるな とは思っていたが。
名前までは知らなかった。 」
「 オッサンの国は 木だらけの山ん中かあ? 」
「 馬鹿。 オレはベルリンっ子だ。 しかし北ドイツには針葉樹の深い森がある。 」
「 へ〜〜〜〜 で さ アレに飾んのか〜〜〜 」
「 ね〜〜 オーナメント、いっぱい買い足さなくちゃ。 足りないわあ 」
「 あ ぼく、作るよ。 カンタンさ、ホーム・センターに買いにいってくるね 」
「 一緒に行くわ〜〜 わたしにも作り方、教えてね ジョー♪ 」
「 うん♪ 」
もう完全に恋人気分の世界に浸っている二人、慣れっこのメンバー達は完全にスルーしている。
へいへい ・・・ どうぞ ご勝手に 〜〜
誰もが ― 当の二人以外! ― 心の中で呟き目にフィルターを掛けた。
「 よし それじゃ ツリー問題はこれで解決だな。 」
「 ほんじゃさ〜 今 ウチにあるやつだけ飾っとこうぜ? 」
「 ああそうだね。 えっと・・・ 季節モノの雑貨は屋根裏だったかな 」
「 へ〜〜 取りにいってくら〜〜 」
「 僕も手伝うよ。 」
赤毛と褐色の肌の二人組は どたばたと階段を上がっていった。
「 だからよ〜〜〜 全部 使おうじゃん! 」
「 ったく。 つくづくセンスのないヤツだな お前は! 」
「 センスだか団扇だか しらね〜〜けどよぉ でっかい木にはでっかく飾る!
それがクリスマスじゃんか〜〜 」
「 いや ちがう。 この中から銀と青だけで飾りあげる。
LEDを使えばますます荘厳になる。 」
「 やだ〜〜〜〜 でっは〜〜にぎんぎら〜〜 ゆくんだあ〜〜〜 」
屋根裏では大騒ぎが繰り広げられていた。
ガタン。 屋根裏のハネ戸が持ち上がった。
「 こっちの納戸にもあったよ〜〜〜 ?? なんだい? どうしたっていうのかい。 」
ピュンマが目をまん丸にしている。
「 お〜〜〜 ピュンマ〜〜〜 な? そっちのも全部飾ろうぜぇ〜〜 」
「 え? あ ・・・ ああ 」
「 いや。 ウチのツリーは厳選したモノで格調高く飾る。
ピュンマ そっちのを全部みせてくれ。 俺が選ぶ。 」
「 え? あ ・・・ ああ 」
ハネ戸から顔をだしたまま ピュンマは固まっていた。
「 ほら〜〜〜 かせよ? そっちの飾り 〜〜 」
「 俺が受け取る。 ほら 手を離せ。 」
「 いや オレが! 」
「 俺がやる。 」
「 な なにやってんだよ 二人とも。 コドモみたいだぜ?? 」
「 いいからよ〜〜〜 」
「 いいから! 」
「 ・・・・・ 」
ピュンマは肩を竦めると だまって大振りなダンボ―ル箱を持ち上げた。
「 もう ・・・ なんなんだよ? 」
「 あら どうしたの? ピュンマ 」
首を振り振り・・・ ピュンマはキッチンに戻ってきた。
「 どうもこうも ・・・ 屋根裏でケンカしてるんだよ〜 」
「 ケンカ?? 誰が 」
「 飾り、取りにいったのは誰 ? 」
「 あ ・・ あの二人? あ〜 どうりで何か声が聞こえるな〜って思ってたんだけど
・・・でもなんでケンカなんかしているの?
― わたし。 いつかのお正月みたいなことはもう嫌よ。 」
「 そりゃ 僕だって同じさ。 ジョー ちょっと見てきてくれるかい 」
「 あ ・・・ うん いいけど ・・・・ これ濯いでからでいい 」
ジョーはお皿拭きの布巾をシンクに置いた。
「 ちょ〜〜〜っと待って! ジョーじゃだめよ。
わたし が行くわ。 」
ひゅう〜〜〜〜♪ ピュンマは口笛を吹き内心喝采をした。
「 ( でた! 最強にして最終兵器〜〜 ) あ それじゃ 頼めるかな〜〜
フランソワーズ? 僕、ジョーを手伝って片づけを完了させるから さ 」
「 お願いね。 あ 布巾はちゃんと煮沸しておいてね。 」
「 へいへい 」
「 ゴミコーナー もしっかり磨いてね 」
「 了解です。 」
「 フラン ぼくが教えるから ・・・ 安心して 」
「 そう? お願いね〜〜 ジョー。 それじゃ・・・ イタズラっ子たちを
叱ってこなくちゃ。 」
きゅ。 エプロンのヒモを結びなおすと 彼女は静かに階段を上っていった。
「 ― わかりました。 」
フランソワーズは大きく頷いた。
「 よ♪ さ〜すがフラン〜〜〜 な? ツリーはやっぱド派手によ〜〜 」
「 フランソワーズ。 お前ならヨーロッパのセンスを理解できるはずだ。 」
今までわあわあ 己の意見を喚いていた二人に彼女はじ〜〜っと視線をめぐらせる。
「「 だから! 」」
「 わかった、と言いました。 二人の意見はよ〜く聞きました。 」
ずん。 彼女の声が一段低くなっていた。
・・・ やば! マズい!
歴戦の勇士? 002 と 004 は背筋にす・・・っと冷たい感触が走り
同時に 口を閉じた。
怒らせたら ・・・ ヤバいんだよ〜〜〜〜!!!
う。 彼女を怒らせるのは ― 避けたい。
「 ・・・ あ あのよ〜〜 その 〜 」
「 あ ああ そうなんだ だか ら 」
沈黙の重さに耐えかね二人はぼそぼそと呟く。
「 ― 裏庭のヒマラヤ杉は 二本あります。 一本づつ好きに飾ったらいいわ。 」
「「 あ な〜〜〜る ! 」」
今までわいわいいがみ合っていたオトコたちは 一緒にぽん、と手を打った。
「 そんなこと、ちょっと裏庭を確かめればすぐにわかるでしょう??
もう〜〜〜〜 クリスマスを前に下らないことで喧嘩するのは止めて頂戴!
そもそもクリスマスとは 聖書にもありますが 」
彼女は手にしていた小型の書物をぱらぱらとめくりだした。
「 あ! え〜〜と? 飾りつけ、急ごうじゃん? オッサン、 オレ・・・
これ全部持っておりるわ 」
「 おう。 じゃあ俺はピュンマがもってきたヤツを・・・あ じゃあな フラン 」
銀髪と赤毛は 段ボール箱を担ぐとそそくさ〜〜〜と屋根裏から降りていった。
ふん・・・! ああここも掃除させなきゃね。
パンパン・・・ フランソワーズはエプロンを払うと悠然とした足取りで
埃っぽいその部屋から出ていった。
「 ・・・ 相変わらず すっげ〜な フランってば 」
廊下でそっと盗み見していたピュンマは 慌ててドアの陰に身を隠しつつ溜息を吐いた。
「 あら ピュンマさん? お暇なら掃除を手伝ってくださる?
屋根裏の掃除 忘れていたのよ。 」
「 ・・・! 了解 ・・・ ( しまった〜〜 003の目と耳を逃れるのは
不可能なんだよねえ ) 」
彼は潔く? 出頭した。
「 やれ ただいま戻ったよ・・・ 」
とっぷりと暮れたころ 博士が外出先から戻ってきた。
「 お帰りなさい 博士〜〜〜 電話くだされば駅まで迎えにいったのに 」
玄関に出たジョーは ずしり、と重い鞄を受け取った。
「 うわ・・・ こんな荷物もってあの坂道 上ってきたんですか? 」
「 うん? 坂道? ああ あの道は思索に拭けるのに最適でな〜〜 」
「 し しさく??? あの急な坂上りながら考えるんですか? 」
「 おう。 ワシの大切なアイデイアの元 じゃよ〜〜
それにな、足腰を鍛えておかんと 脳味噌も鈍るわな
」
「 そ そんなモンですか ねえ ・・・ 」
「 そうじゃよ、 お前もロード・ワークに精を出しおるじゃないか 」
「 あ ・・・ アレは身体、鈍ると困るから ・・・ 」
「 うむ うむ〜〜 一緒にアタマの中身も鍛えておけよ? 」
「 へ〜〜〜い 」
「 そうそう・・さっき気が付いたのじゃが 裏庭がなんだか明るくないか 」
博士はもう一回玄関のドアを開けた。
「 あ・・・ はい〜〜 裏庭のヒマラヤ杉に飾りつけを ・・・ 」
「 飾りつけ? 」
「 あの〜〜〜 クリスマス・ツリー の代わり なんですけど 」
「 ! あ ああ〜〜 そうか そうか もうそんな時期じゃな
どれ ちょいと覗いてこようかな 」
「 あ あの〜〜 びっくりしないでくださいね〜〜 」
「 ?? なにを驚くというのかね? ああ LEDを使っておるのじゃな〜
― お ・・・・。 」
裏庭に回った博士の足が 止まった。
「 ― こ れは すごい のう 〜〜〜 」
「 あの・・・ あんまり派手すぎます かね?? ご近所から苦情がくるかも〜 」
「 ジョー? < ご近所 > とはどこかな。 」
この邸は 岬の一軒屋だ。
「 あ ・・・ ああ そう ですよねえ ・・・ 」
「 いやあ〜〜 これはすごい。 こっちは ・・・ ふ〜〜む この色彩から
すると アルベルトの管轄だな? あっちのぎんぎんぎらぎら〜〜 は ジェットか 」
「 博士! す すごいです〜〜〜 どうして彼らの大騒ぎをご存知なんですか?
誰か 電話でもしました? 」
「 いいや? なにも聞いてはおらんよ。
しかし この飾りっぷりを見れば 誰の管轄かすぐにわかる。
そしてなぜ二本も飾ってあるか ― 原因は明白じゃろ? 揉めたのじゃろ? 」
「 え ええ・・・ 屋根裏での怒鳴り合いは階下まで筒抜けでしたよ 」
「 やはりなあ〜 ああ もう年中行事じゃな。 」
はっはっは ― 博士は腹を抱えて笑っている。
「 ええ まあね ・・・ フランソワーズの指図でなんとか・・・
あの状況になって ― 収まったんです。 ちかちか ぎんぎん楽しいけど 」
「 そうじゃな ま いいじゃないか。 二人は満足なんだろ? 」
「 ええ ・・ さんざんお互いに自慢し合ってましたけどね 」
「 ふふふ いいじゃないか。 賑やかなクリスマスになりなあ
」
「 はい。 あ フラン〜〜〜 博士のお帰りだよぉ〜〜 」
ジョーは博士のカバンをもって室内に入った。
ちかちか きらきら ― 裏庭の ヒマラヤ杉 は満艦飾☆
一本は 銀とブルーで統一され もう一本は ごてごてぎらぎらにオーナメントが
攣る下げられていた。
「 うふふ ・・・ それじゃ クリスマス・ケーキ ね♪ 」
「 フランソワーズ。 楽しそうだね〜〜 」
「 え 〜 だって こんなにゆっくりクリスマスを楽しめるって
ひさしぶりじゃない? 」
「 そうだねえ いいね〜〜 」
「 ね♪ 」
片づけを終わったキッチンで ジョーとフランソワーズはほっこり・にっこり。
あまぁ〜〜い雰囲気で見つめあっていた。
― 翌日からの大騒ぎを知る由もなく ・・・
「 ふむ。 まずミンスミートを作らねばな。 ええと ケンネ脂にドライ・フルーツ
・・・ ブランディ もいるな〜〜 」
「 レーズンにオレンジ・ピール ミックス・ナッツ だな。
ドライ・イーストにバター・・・ ラム酒にブランデー 粉は 〜〜 」
「 生クリーム!! どっちゃりいるな〜〜 あとぉ〜〜〜 スノーマンや
サンタの飾りとかねえかなあ〜 でっかいのがいいぜ〜〜 」
「 チョコレートは必須よ。 ロール・ケーキを美味く焼けるといいんだけど 」
「「「「 この材料を買ってきてくれ ( ちょうだい ) 」」」」
買い出し係のジョーの前に メモ用紙が次々に差し出された。
「 ・・ これ、 全部 ・・・? 」
「「「「 クリスマス・ケーキは 手作りじゃなくちゃ! 」」」」
「 うわ ・・・ ど どうしよう ・・・ 」
クリスマスを目前に ジョーは途方に暮れていた ・・・!
Last updated : 12,13,2016.
index / next
********* 途中ですが
え〜〜〜 ・・・・ 原作あのお話・クリスマス版 です☆
まあ いろいろあるでしょう、あのメンバーなら ね♪