『 ・・・ココだけの話 』   

 

 

 

 

 

あ〜 こんにちわぁ。 いいお天気だなっす。

ここいらはあったかいだんねぇ・・・ ほらぁ、桜がもう満開だべ。

 

アタシの故郷ではぁ まんだまんだこれからだ。

 

・・・え? アタシの仕事?

えへん。 それはぁ 家政婦さんだよう。

『 メリ-・ポピンズ 』 ってお話、知ってる?

あのポピンズさんみたくなス−パ−家政婦さんになりたくてぇ アタシ、がんばってるだよ。

・・うん、 なかなか大変サ。

アタシぃ、頭、悪いしぃ、ぶきっちょだもんね・・・・

もうチョンボばっかやってるだよ。 ははは・・・

でもな。 チカラとやる気だけは誰にも負けねえからねぇ、

また明日もがんばるべぇって思って 仕事してるだよ。

 

今日? 今日はぁ あの岬の洋館だよぅ。

えっと・・・ なんとか研究所・・・ははは、いっつも忘れちまうだ。

いろんな家に行ってるだども、 あの洋館がアタシ、一番好きだな。

 

まあねぇ・・・・ よそ様んちに入るわけだからぁ、そりゃいろんなコトがあるさ。

どこのウチにも ・・・ ゴミと<事情>ってぇもんはたまってるわけで。

そ〜ゆうコトは 見て見ぬ振りだよ。 

あ、ゴミはちがうよ? ちゃんとキレイ〜にするのがアタシの仕事だもの。

 

え? どんな事情かって? 

う〜ん・・・・ まあ、よそ様にはよそ様のやり方ってもんがあるんでないの?

ほらぁ、<人生いろいろ>ってやつよ。

べつにィ、悪いコトしてるワケじゃないんだしアタシ<いろいろ>あっていいと思うよ。

 

・・・ああ、あの洋館のこと?

住んでるのはぁ、若ご主人さん以外み〜んなガイジンさんだけど

み〜んな日本語上手だし。 ぜんぜん普通の日本のウチと変らんよ?

 

家族構成?

うん、それはねぇ、<こじんじょうほうのほご>っていってさ、

ひと様んちのコトは べらべら喋っちゃいけないんだ。 

家政婦協会からも、きつく言われてるしねぇ。

アタシ個人の<しんよう>ってこともあるから、それはちょっと。 ごめんね。

 

 

 

・・・ んだども。

 

 

・・・ココだけの話だども。  あンただけに教えるけど。

だ〜れにも言ったらダメだよ?

 

あの洋館にはねぇ。

若ご主人さんとその奥さんと赤ちゃん。

あと・・・多分ね〜奥さんのおとっつぁんらしいご隠居さんが住んでるだよ。

なんとか・・・研究所ってのはご隠居さんの名前らしいね。

このヒトは白髪でお髭も白くていっつも書斎でむずかし〜〜い横文字の本ばっか

読んでるけど。  うんにゃ、全然おっかなくねぇべさ。

 

盆栽やら趣味で、アタシ、よく土とかたい肥運びとか水汲みを手伝うとね、

とってもお喜びなさるんだよ。 やさしいお爺ちゃんだぁ。

 

若ご主人さんはねぇ。

・・・ そんだぁ、あのウチにアタシが初めて派遣された日になぁ・・・

ココだけの話だよ? だれにも言ったらダメだぁ。

あの、な・・・

 

 

 

 

「 ・・・ おかしいな。 もうとっくに待ち合わせの時間は過ぎてるのに。

 この駅に改札口はココしかないしなあ ・・・ 」

ジョ−は人もまばらになった改札口から伸び上がってホ−ムを眺めた。

上下とも電車は出てしまったばかりで、

ラッシュ時まではまだ間があるロ−カル駅のホ−ムは閑散としていた。

 

「 家政婦協会からのメ−ルでは ・・・ ココに4時って約束なんだけどなあ。 」

カサリ、とジョ−はポケットから出したメモをもう一度眺めた。

 

「 ・・・ 山田葉子さん、か。 」

 

何回も眺めた腕時計はもうあまり待ってもいられない時間を指していた。

・・・ しょうがないなあ。

ほっと溜息をつき、ジョ−は携帯を取り出した。

「 ・・・ もしもし? 家政婦協会さんですか? 」

 

 

「 本当に ・・・ いいのかしら。 イワン、いいの? 」

「 ・・・モウ、何回念ヲ押スンダイ、ふらんそわ−ず?

 大丈夫。 ボクダッテ 001 ナンダヨ? 」

困ったみたいな、嬉しいみたいな。

半分泣きべそをかきそうな顔で自分を覗き込んでくるフランソワ−ズに

イワンはあきれて<返信>をした。

「 まったくきみは苦労性だなあ。 大丈夫さ、ちゃんとした紹介所に頼むし・・・

 ほんの数時間だもの。 なあ、イワン? 」

「 ウン。 みるくヲ一回モラエレバ、ソレデおっけ−サ。 」

「 ・・・ そうね。 そうだわね・・・ でも・・・ 」

「 また <でも>かい? ・・・さあ、もうそんな心配そうな顔はやめて。

 笑ってごらん、フランソワ−ズ? 

 きみには笑顔が一番似合うよ。 ね、 着てゆく服の準備でもしたら。 」

「 ・・・ええ・・・ありがとう、ジョ−。 

 ふふふ・・・じつはね。 お誕生日にあなたが買ってくれた服。

 アレを着てゆきたいな・・・って思って。 」

「 わ♪ そうなんだ? 嬉しいなあ・・・

 全然着てくれないからさ・・・ 気に入らなかったのかなぁって

 密かに悩んでいたんだぜ? 」

「 あら、気に入らないなんて・・・。 いっとう大事なお洋服だから

 <素敵なコトがある日>までとっておいたのよ? 」

「 ・・・ ありがとう、フランソワ−ズ・・・ 」

「 それは ・・・ わたしの言うコトでしょ・・・ 」

 

ジョ−の腕がするり、と細い身体を引き寄せる。

早春の澄んだ空気に亜麻色の髪が甘い香りを放つ。

「 なんだか・・・ 久し振りのデ−トだね? 」

「 そうね。 嬉しいわ・・・ 舞台も楽しみだけど・・・ あなたと外出するのも・・・ 」

白い手がジョ−の首に絡みつく。

「 夜景がきれいだろうね。 」

「 ・・・ あら。 どこのおハナシかしら・・・ 」

「 え・・・ あ・・・ あの劇場は・・・たしかPホテルの中って・・・ パンフレットに・・・ 」

「 ふふふ。 そうよね〜 あのホテル、最上階のスウィ−トからの夜景は有名ですものね。 

 本当に綺麗 ・・・ 」

「 え! ふ、フランソワ−ズ・・・ きみ??? 」

「 帰りに見ましょう? 夜明けを鑑賞するのは ・・・ また次にチャンスね。 」

「 ・・・う、うん・・・ ( ・・・ちぇ!) 」

フランソワ−ズはジョ−の腕からするりと抜けて、イワンのク−ファンを覗いた。

「 じゃあ・・・ まず、イワンのおめかしからね。 よそ行きのベビ−服、着てみて? 

 ・・・あら、寝ちゃったのね。 」

「 ふうん? ま、この陽気だしね。 赤ん坊だって<春眠暁を・・・>ってとこかな。 」

「 こんなにいっつも寝てるのに? 」

「 イワンにはイワンのバイオリズムってのがあるんだろうね。 

 ・・・ なあ。 ・・・いいだろ? 」

一緒にク−ファンを覗きこみ、ジョ−はこそ、と彼女の耳に熱い息を吹きかけた。

白磁の頬がさっと桜いろに染まる。

「 ・・・あん・・・ もう ・・・昼間っから・・・!・・・ 」

「 ・・・ 誰も いないよ・・・・ 二人っきりなんて、めったに ・・・ 」

ジョ−はもう一度腕を伸ばして、傍らの身体を抱え上げた。

 

・・・ ぱこん。

 

フランソワ−ズのスリッパが片方、ぬげて落ちた。

 

『 ・・・マッタク。 コッチガ気ヲキカセテルンダッテコト、察シテ欲シイナ。 』

ク−ファンの中から、諦め気分の呟きが漏れてる。

『 フン。 ドウゾゴユックリ。 ・・・ふぁ〜〜 本当ニ眠クナッテキタヨ・・・ 』

呟きはやがて、可愛い寝息に変った。

 

 

早春の光が満ちるリビングでは ・・・ ソファが軋る音だけが時折聞こえていた。

 

 

 

ながい人生のうちにはまさに<間が悪い>時があるものだ。

悪魔の仕業か?と思うほどに偶然な事柄が - それも不具合なコトばかり - 

重なり合う。

それぞれの不都合になんの関連もないのだが・・・ たまたま同じ時に起こってしまう。

その時も ちょうどそんな具合だった。

 

 

「 ・・・ あら! そうなの? チケット、取れたのね。 ・・・うん、うん。

 嬉しいわ〜〜 もうダメだって諦めていたのよ。 」

 

珍しくかかってきた電話にフランソワ−ズが嬉しそうな声をあげ話しこんでいる。

ジョ−はリビングのソファで新聞を広げ、聞くとはなしに彼女の明るい声音を楽しんでいた。

フランソワ−ズの可憐な嘆声が耳に快い。

 

・・・そうだよな。 こんな風に普通の生活を楽しんでいる彼女が一番さ。

 

自分だけが知っている彼女の様々な声を思い浮かべ

ジョ−は一人でにんまりとしていた。

 

「 ・・・ね? いいでしょ? 」

「 え・・・? あ・・・・ ああ? 」

少々<個人のお楽しみ>世界に浸っていたジョ−は いきなり間近に当の彼女の顔を

見つけ、どぎまぎとしてしまった。

「 ・・・なに・・・? 」

「 もう・・・やあねえ。 さっきから聞いてるでしょ?

 明後日。 舞台のチケットが取れたのよ。 ねえ、一緒に行きましょう? 」

「 ・・・ へえ? 」

演目を聞けば、ジョ−自身も心引かれるモノだった。

単に彼女のエスコ−トとしてではなく、自分自身もその舞台に興味があった。

 

「 うん、いいよ。 ぼくも丁度観たいなって思ってたし。 」

「 わあ♪ よかった。 じゃあ・・・ ソワレだから、この日でも大丈夫よね。 」

「 うん。  ・・・なあ、久し振りに・・・ ゆっくりしてこようよ。 」

「 ええ。 ・・・嬉しいわ。 」

 

 ・・・ あ。

 

「「 ・・・イワン! 」」

 

二人はほぼ同時に声をあげ、顔を見合わせてしまった。

日頃、なにかと人の出入りが多いこのギルモア邸であるが。

ここ数日は森閑とし、ジョ−とフランソワ−ズ、そして<寝ぼすけ王子>のイワンだけの

静かな日々が続いていた。

 

ご当主のギルモア博士は学会への数少ない出席のため渡米したままだった。

当家の料理指南役の張大人は季節柄、宴会の予約に大わらわ、

3日に2回?はこの邸に帰ってくるグレ−トも 本業絡みの仕事で地方に出ていた。

・・・・そう、イワン君のお守り役が誰もいないのである。

 

「 ・・・ まさか、イワンに留守番を頼むわけには行かないし・・・ 」

「 まあ、ジョ−、当たり前でしょう? 赤ちゃんを一人きりにするなんて・・! 」

「 あ、うん、そうだよね。 いっくらス−パ−・ベビ−でもね・・・・ 」

「 一緒に連れてゆこうかしら。 イワンなら泣いたりむずかったりしないし・・・ 」

「 う〜ん ・・・ でもチケットが・・・ 」

「 ・・・あ、そうねえ。  しょうがないわ・・・ 諦めるわ・・・ 」

「 そんな・・・ 」

『 ソウダヨ! 二人デ行ッテオイデヨ。 』

「「 ・・・ イワン? 」」

突然、頭の中に響いてきた声に ジョ−とフランソワ−ズはまたもや一緒に声を上げた。

『 ボクノコトナラ。 べいび−・しった−ヲ頼ンデクレレバイイヨ。 』

 

「「 ベビ−・シッタ− ?? 」」

 

 

 

・・・そして。

フランソワ−ズが心待ちにしていた日、ジョ−は駅の改札口で時計を何十回となく

そわそわ眺めつつ右往左往しているのである。

 

派遣されてくるはずのベビ−シッタ−さんは

約束の時間を大幅に過ぎても一向に現れる気配はなかった。

・・・仕方ない。

溜息・吐息で ジョ−が携帯を耳に当てた時・・・・。

 

 − どん!

 

迂闊にも背後から体当たり?を喰らって 009は思わず踏鞴を踏んだ。

 

「 な・・・!? 誰だっ? ・・・・あ。 」

「 すンません、すンません〜〜。 遅れましたぁ。 

 アタス、家政婦協会から来ましたぁ、やまだようこです。 すンません! 」

「 ・・・あ、 や・・・やあ。 どうも・・・・ 」

 

強烈な衝撃に思わず<島村ジョ−>は009として臨戦態勢で応戦してしまったが。

咄嗟に手を伸ばした場所に・・・残念ながらス−パ−ガンは存在せず代わりに・・・

 − 眼の前には。

 

髪をしっかり二つ分けに縛りソバカスだらけの顔を真っ赤にしている頑丈そうな少女がいた。

コ−トは半分はだけはみ出たマフラ−を引き摺り・・・

その少女はまだ春も浅いといのに 額にハナの頭に玉の汗を浮かべていた。

 

「 しまむらサンの・・・ご主人さんですよね? すンませんです〜〜〜

 アタス、電車、間違えてしまったっす。 申し訳ねえす。 すンません、すンません。 」

「 あ・・・ああ。 会えて・・・よかった。 島村です、どうぞ宜しく。

 さあ、早速家に案内しますよ。 」

「 ・・・・はぃ。 どうも・・・すンませんこってす・・・ 」

 

 

 

 

・・・あのな。

アタス・・・じゃなかった、アタシ、初めてあの家に行った日ぃ、

電車間違えて、すんごい遅刻をしてしまっただよ。

もう〜 ぶっとんで行ったどもえらく怒られるか、もうええ!って断られるかと思ってた。

んだども。

若ご主人さんはぁ、な〜んも気にせんでええよって。

笑って・・・ すげ〜かっこええ車であの岬の家に連れて行ってくれたんだぁ。

 

アタシ、初めは どうよう してて。 よっく若ご主人さんの顔、見てなかったんだけど。

車の中でじ・・・・・・っと眺めたらさ。

まあ〜〜〜コレがえらいイイ男さんなんだ。 そう、イケてるんだ。

チれいな茶髪でさ。 いんや、染めてるんでねえのよ、ホンモノなんだ?

そんで。 あんましアタシがじ〜っと見てたもんで気がついたんだろね。

 

「 あ・・・こんなナリですけど。 ちゃんと日本人ですから。

 それと・・・フラン・・・いや〜 あの〜その・・・うちの  おくさん  は外国人ですけど

 日本語はわかりますから、安心してください。 」

 

なんだかね、妙〜〜〜に照れくさそうに言うんだよね。

ぁ〜 こりゃぁ 新婚さんじゃねえべか?って アタシ ほほえましい 気分になったよ。

 

え? 奥さん?

ああ! 若ご主人さんの言われるとおりまったくのガイジンさんなんだけどぉ。

まあ〜〜〜〜 チれいなヒトだよ。

金髪碧眼っていうんだろ? 金色ってかぁ、クリ−ム色だな、あの髪は。

それがつやつや光ってるんだ。

それにな、肌の色が違うよ。 真っ白でほんのり桃色でさ。 舐めてみたくなりそうだぁ。

眼はな、夏の空みてぇなんだ。 

透き通って・・・ そんだなぁ〜ラムネの瓶とかビ−玉みたいだな。

うん、若ご主人さんとまったくお似合いの美男美女なんだね。

 

なんだかおめかしなすって。 お出掛けみたいでさ。

きっとな〜 アタシが行くのすご〜く待ってたと思うんだ。 

普通なら・・・ってか、今まで行ったトコだったら怒鳴られるさぁ。 

当たり前だよね。 すンごい遅刻だもの。

<こんなに遅くなって困るじゃないのよっ!>とかね。

それが・・・ 

チれいな顔で ニッコリ笑って。 

<来てくださってよかったわ> なんて♪♪ も〜〜〜天使だよ、天使〜〜

アタス・・・じゃなくてアタシ、しばらくぼ〜〜〜っと奥さんの顔に見とれてただよ。

 

・・・ 世の中には こんなにチれいな人さ、いるだ・・・

 

え? あんたも見たことある? 

チれいだろ? そこいらの あいどる とか勝ち目なんかないよ〜もう。

あのうす薔薇色のほっぺなんか・・・もしか触ったらシュっと溶けてしまうんでないかね。

 

そんでさ。

お世話する赤ちゃんがねえ。 これがまたくりくり太っためんこい坊でさ。

大人しくって手のかからないええコだべ。

 

・・・ だけんど。 なあ。

うん・・・ ココだけの話しだども。 あンただけに教えるだども。

 

あの坊ちゃんは ・・・ あのご夫婦の実の子、じゃあねぇな。

おとっつぁん、おっかさんのどっちにも全然似とらんもん。

そりゃ、まあ・・・ 世間には顔立ちが親に似てないオニっ子も結構いるだよ。

んでも、そういう親子でも姿とか頭の形とか・・・どっか必ず似てるトコがある。

アタシのこのソバカスなんかおがぁちゃんと同じだもの。

それが、さ。

あの坊ちゃんはめんこいけんど。 どっこも誰にも似とらんもん。

 

うん・・・ そったら<事情>はどこのウチにもあることだし、

アタシら他人が嘴をはさむコトではねえ。

みんながシアワセなら ソレでめでたし・めでたし、だあ。

他人のコトをあれこれせんさくするのは、 上品ではねえべさ。

 

え? 虐待? 

ちょっと! とんでもねぇコト、言わんでくれる?

冗談じゃねえべさ。 

あの坊ちゃんは・・・う〜んと可愛がってもらってるよお。

こざっぱりしたベビ−服着て、広いお部屋にはオモチャがいっぱいだったもの。

坊ちゃんも むずかったりしない利発なお子のようだよ。

血が繋がってなくてもぉ 仲良し親子なんでねえかな。

 

・・・ だけんど。 なあ。

うん・・・ ココだけの話しだども。

 

アタシ・・・ 初めての行った日にさんざんドジ、やらかした・・・気がするだ。

ううん、電車まちがえたコトじゃなくってぇ・・・

お家に行ってから、若ご主人さん夫婦を送り出してからなんだども。

 

あそこんちのえらく最新式の だいどこ で ミルクつくってて・・・

な〜んかお皿や茶碗を割っちまった・・・ ような気がするんだ?

あや〜〜 こんなこっちゃ、またクビになっちまう〜ってまっつぁおになった・・・はずなんだ?

・・・それがさ・・・

ほっんとにフシギなんだけどぉ〜 

坊ちゃんにみるくあげて ・・・ な〜んだかアタシも力もりもり〜って気分で

片付けなくちゃ!って だいどこ さ行ったら・・・さ。

な〜んも。 お皿の一枚も割れていねんだ・・・

・・・アタシ、夢でも見てただか・・・?

 

え? アタシ?

さっきも言ったろ? メリ−・ポピンズさんみたくなス−パ−家政婦さんになりたい・・・

・・・ああ、 うん。 学校さ出てすンぐ東京さ、来ただよ。

あったま悪かったし、兄サの嫁さんに<場所>空けてやんねば〜ってさ。

でンも。 もう・・・ ドジばっかで・・・ 

こんなダメっ子・・・ いっそ死んじまったほうが・・・なんて思いつめてただよ。

 

・・・ それが、さ。

 

あの岬の家に初めて行った日に、な〜んか。 よぐわかんねけど。

むくむくむく〜〜〜っと <お〜し。 やったるでぇ!>って気分が湧いてきてさ。

気がついたら・・・ 汚しちまった・・・と思ってた だいどこ、ぴっかぴかに

磨き上げてただよ。

な〜んか。 アタシ自身もよぐわかんね。

 

でも、な。 

なんか・・・ おし! アタシに任せな! って気分になって。

なんでかな〜・・・・って ゆりかごの坊ちゃんに聞いたども・・・あはは〜

赤ちゃんが返事するはず、ねえよねぇ?

 

そんで、ミルクを一回あげて・・・ あとはず〜っと側についてただけだ。

坊ちゃんはよ〜く眠ってただよ。

若ご主人さんと奥さんは 予定の時間よりも早ぐ帰ってきなすった。

奥さん? 

・・・ん、もうな〜〜 きっと楽しいお出掛けだったんだろうね。

チれいな青い目をきらきらさせてさ。 ほっぺも 桃色になってて・・・

はあ〜〜〜って、アタシ、またまた見惚れてしまっただよ。

 

うん、若ご主人さんがあのかっこエエ車で送ってくれる、って言っただども、

お断りしただよ。

なんだか〜 二人っきりになりたい〜〜って む−ど が溢れててさ。

らぶらぶってヤツよ。

あはは・・・ アタシ、これでも案外せんさい なんだよ?

だからぁ、 お邪魔ムシはとっとと退散しただよ。 はっはっは。

 

アタシもさ・・・な〜んかえらく気持ちいくて〜〜 

チれいな月夜を ふ〜わふわ・・・・ 浮かんで帰ってきたよな気分だった。

 

あ〜 あれから、かなあ。

なんかね。 自分でもよぐわかんねけど。 

ちぃっとアタシ自身、変ったような気がするだ。 どごが・・・って・・・言えねだども。

まんだいろいろドジだけど、 アタシ、頑張ろうって元気が湧いてきてるだよ。

 

 

 

「 あら? ベビ−・シッタ−さんは? 」

「 うん・・・ 」

自分のすぐ後からイワンの部屋に入ってきたジョ−に、フランソワ−ズは

ちょっと驚いた顔をした。

帰宅したそのあしで 彼女を駅まで送ってゆくとジョ−は先ほど言っていた。

「 うん ・・・ 送ってゆくよ、って言ったんだけどね。

 歩きたいんだって。 」

「 まあ、そうなの? ・・・ああ、この時間なら まだバスがあるわね。 」

「 うん。 ・・・ なんかさ ・・・ 」

「 なあに? 」

ジョ−はネクタイを緩め、上着をぬぎつつさかんに首を捻っている。

「 さっき・・・ 来た時のカンジと ・・・ なんか変ったみたいなんだけど・・・ 」

「 そう? イワン、よ〜く寝てるし。 さっきチラっと覗いたけど

 キッチンもぴかぴかよ。 いいシッタ−さんなんじゃない? 」

「 そうだね・・・・ 初めはちょっと心配したけど。 

 また・・・ 頼もうよ。 それで・・・・ 今度はもっとゆっくり・・・ ね・・・ 」

「 ふふふ・・・ そうね。 ・・・・あ、ダメだってば。 悪いコね、ジョ−・・・

 ・・・ イワンがいるのよ・・・ 」

「 よ〜く眠ってるんだろ? ・・・ 今夜のきみは 本当に素敵だよ・・・ 」

「 それは・・・ あなたが買ってくれた服のせいでしょ。 」

「 ・・・そうかなぁ? ・・・ そんなことないよ・・・ ほら。

 ・・・ こんなに綺麗じゃないか ・・・ ココも ・・・ ココも・・・ 」

「 あ・・・ あん ・・・ ダメだってば。 こんなトコで ・・・ 」

「 服なんか無くても・・・ きみは十分に魅力的さ・・・ 」

フランソワ−ズの足元に 真新しいワンピ−スが脱げ落ちた。

・・・ ほどなくして淡雪みたいなランジェリ−がふわり、と重なる。

 

大きな月が水平線からゆっくりと昇ってきた。

やわらかな光が部屋中に満ちている。

 

「 ・・・ 見て、ジョ−。 きれいなお月さま ・・・ 」

「 キレイなのは ・・・ きみ、さ ・・・ 」

 

白い肌に月の光が銀の煌きを散らばせる。

ジョ−は 我が腕の中の裸身をほれぼれと眺めていたが、やがてそっと抱き上げた。

 

「 ・・・ イワンの邪魔をしちゃ悪いから・・・ね。 」

「 ・・・・ 」

 

子供部屋のドアがゆっくりと閉まった。

カ−テンの隙間からこぼれる光は ク−ファンに無心に眠る赤ん坊をそっと照らす。

潮騒の声をバックに、可愛い寝息だけが聞こえていた。

 

岬の洋館に今夜も穏やかな夜が訪れた。

優しい夜の帳が恋人たちの褥に降りてきたようだった。

 

 

 

 

え? アタシ?

やまだ ようこ っていいマス。

うん、元気だよ。 アタシ、田舎もんだけど。 力とやる気はだ〜れにも負けね。

毎日、がんばってるだよ。

このごろじゃ、しめい してくれる家もだ〜んだん増えてきたし。

まンだまンだ ポピンズさんにはなれねどもねぇ。

目標ってのはでっかい方が楽しいもんな。 はっはっは。

あンたもぉ がんばるだよ。 ええね? 

 

・・・ンだども。

アタシ、あの家がいっとう好きだな。

坊ちゃんは大人しいしィ、 だいどこ は最新式だしィ。

若ご主人さんはカッコええし〜 奥さんは優しくてェもんのすごくチれいなヒトだし。 

アタシ、楽しみだよぉ。

 

え? なんつ〜家かって? ほらぁ、街はずれの・・・ 岬の洋館だよぉ。

若ご主人さん?

島村サンっていうんだ。

 

 

ま、・・・ココだけの話だべ。 あンただけに喋ったんだよお?

だまっとってねェ。  ないしょ、だよ。 な?

 

 

 

******    Fin.   ******

Last updated: 04,04,2006.                                index

 

 

***   ひと言   ***

あはは・・・ この原稿、WORDの<こんな日本語ありません>警告の

オンパレ−ドでしたです(^_^;)

メルヘン・タッチの原作にちょっと脚色してみました。