『 しあわせ 』
く ・・・ く〜〜 むにゃ もにゃ す〜〜 す〜〜〜
ちっちゃい寝息がふたつ、聞こえてきた。
「 ・・・はあ〜〜〜 やっと寝たわ ・・ ふう 」
フランソワーズは 特大のため息をついた。
並んだ子供用ベッドの中に 色違いのアタマが二つ。
「 ふ 〜〜〜 こうやってネンネしている時は天使だけど
・・・ 寝ている時だけ よね 」
やれやれ・・・と 彼女はそうっと立ち上がった。
「 しばらくは寝ているはず・・・ さあ〜〜 この間に
掃除して 洗濯モノを乾して ・・・ よしっ 」
フランソワーズは 気合いをいれ、エプロンのヒモを結びなおした。
冬の朝、 ジョーとフランソワーズに双子の子供たちが誕生した。
「 ・・・・ ! 」
真っ赤な顔をした二人を両手に抱き、ジョーは泣いて笑っていたが
ついには声をあげて大泣きをしていた。
「 おやおや 父さん どうしたね。そんなに泣いてたら娘と息子が
おどろいてしまうぞ 」
「 ・・・ う ・・・ ううう 」
博士は笑って 彼の腕から赤ん坊を抱き取った。
「 しっかり育てておくれ ・・・ 」
「 ・・・ は はい ・・・ ! 」
ああ ジョー ・・・
なんて すばらしい笑顔 !
ジョー ・・・ 最高に素敵よ !
涙でぐちゃぐちゃのジョーを フランソワーズは最高の気分で
眺めていた。
「 フラン ・・・ ありがとう〜〜 ありがとう ! 」
「 ・・・ ジョー 」
彼は彼の愛妻の頬に あつ〜〜〜いキスを落とした。
可愛い双子の子供たち。 このチビ達を家に迎え ― 新たな闘い? が始まった!
眠って泣いて ・・・ の赤ん坊の日々は なんとかなった。
そりゃ 夜泣きだのなんだので大変だったけれど
ジョーの絶大な協力により なんとか乗り切った。
やがてお座りができるようになり ハイハイも活発になると行動範囲も広がった。
「 あ〜〜〜〜 だ〜〜〜 」
「 あら すぴか。 キッチンまで来られたの? な〜に 」
「 おか〜〜〜 しゃ 〜〜 あ〜〜 」
「 はあい? あら すばるは? 」
「 ? ばる〜〜? 」
「 そうよ すばる君は? 」
「 〜〜 あ〜〜〜 ち 」
「 え? すばる〜〜〜 ? 」
フランソワーズは よいしょ、と娘を抱き上げリビングに戻った。
「 すばる ・・・ あ〜〜〜〜 」
「 おか〜〜〜しゃ 〜〜 うふ〜〜〜 」
リビングのソファの下で すばるはその日の朝刊をびりびりにしていた。
「 すばる君〜〜〜 それ 今朝の新聞なんですけど〜〜 」
「 し〜〜〜? おか〜しゃ ・・・ うふふ〜 」
すばるは 新聞の切れ端をぴらぴら振り回している。
「 〜〜〜 すぴ 〜〜 ? 」
「 ばるぅ〜〜〜 わい〜〜 」
すぴかは母の腕から抜け出すと 弟の側に這いずって行った。
「 すぴ〜〜 」
「 ばるぅ〜〜 きゃ〜〜〜〜 」
「 あは〜〜 」
ちっちゃな姉弟は 新聞の切れ端をひっかきまわし大はしゃぎだ。
「 ・・・ あ〜あ・・・ もう ・・・ ご機嫌ちゃんねえ
ねえ すぴか すばる。 美味しいミルク、 飲もうか?
ウェファースもあるわよ 〜 」
「 みるく? わ〜〜〜 みるくぅ〜〜〜 」
「 うぇ ・・・? 」
「 そうよ、ミルクとウェファース。 キッチンで頂きましょ?
ほ〜ら 一緒よ〜〜〜 」
母は娘と息子を両腕に 抱き上げた。
う・・・ 重 ・・・!!
ああ ・・・ サイボーグ でよかった ・・・
彼女は 乾いた洗濯モノでも持つみたいに平気な顔で子供たちを抱いて行った。
そう ― あの頃から いろいろあったけど
チビ達はオトナの監視範囲に収まって母はしっかり手綱を握っていられたのである。
・・・ そんな日々は あっという間に過ぎた。
「 お。 なあ フラン、みてみて〜〜 すぴか、あんよがすごく上手! 」
「 あら ほんと。 じょうず じょうず ねえ 〜
すぴか ほら お母さんのとこまで来てごらんなさい ? 」
「 ん 〜〜〜〜 おか〜しゃ〜〜ん 」
すぴかは ちっちゃな顔を真っ赤にして えい えい えいッと
ちっちゃなあんよを動かす。
「 わ〜〜 すごい〜〜 ほら すぴか がんばれ〜 」
「 すぴか〜〜 いらっしゃ〜〜い 」
「 おか〜しゃん ん ん〜〜〜 」
すぴかは もこもこのオシリを左右に揺らし、母の腕の中に飛び込んだ。
「 わあ 来たぁ〜〜 すごいわあ 」
「 あんよ 上手だねえ すぴか〜〜 」
「 おと〜〜しゃ〜〜〜ん 」
すぴかは ちっちゃな手を父に向かってのばす。
「 な〜んだい すぴか 」
「 おと〜しゃん たか〜〜 たか〜〜 してぇ 」
「 たか〜 ・・? ああ アレかあ おいで。 」
ジョーは 娘をひょい、と抱きとると アタマの上まで持ち上げた。
「 ほ〜ら すぴか〜〜 たかい たか〜〜〜い たかい たか〜〜い 」
「 わあ 〜〜〜 わあ〜〜〜 」
きゃっきゃと声をあげ すぴかは大にこにこ〜〜のご機嫌ちゃんだ。
「 まあ すごいわねえ すぴか。 リフトも全然平気なのね
今に素敵なバレリーナになれるかな〜〜 」
「 きゃ 〜〜〜 おか〜しゃ〜〜ん 」
「 ふふふ〜〜〜 いいわねえ〜 お父さんに高いたかい〜〜 して
いただいて ・・・ 」
「 あはは〜〜 すぴか。 お母さんも 高いたかい〜〜 好きなのかな 」
「 おか〜しゃん も 」
「 あら お父さん、 リフトしていただけます? 」
「 ・・・ 遠慮しておきます。 さあ すぴか 肩車だよ〜〜〜 」
「 わあ〜〜〜い おと〜しゃ ん 」
「 ほら しっかりお父さんのアタマにつかまってろよぉ 」
「 おと〜しゃ〜〜 わあ〜い 」
「 うふふ ・・・ あら。 すぴか、すばるは? 」
「 すばる ? 」
「 そうよ。 すばる君は? 」
「 え 〜〜 と? 」
「 すばる〜〜? 」
フランソワーズは 慌ててリビングのドアをあけた。
「 すばる・・・ ああ こっちにいたのね 」
「 あ〜〜 おか〜しゃ ん 〜〜 」
すばるは リビングの床にたくさんの雑誌を並べていたのだ。
「 あ ら すばるクン、そのご本はお父さんのでしょう?
びりびりしちゃ だめよ 」
「 びりびり〜〜 しないもん 」
フランソワーズの小さなムスコは にこにこ・・・ 床に上に座っている。
「 そう? いいこねえ すばるクン。 」
「 えへ〜〜 おか〜しゃ〜〜 」
すばるは 笑顔のまま 母の方にハイハイしてきた。
「 なあに すばるく〜〜ん♪ 」
思わず差し出した母の手に すばるはすりすりしている。
「 ねえ すばる。 あんよ してみない? 」
「 あん よ ? 」
「 そうよ。 すぴかはねえ キッチンまであんよしてきたの。 」
「 ふ〜ん 」
「 すばるもきっと上手にあんよできるわよ? たっち は好きでしょう? 」
「 たっち? 」
「 そ〜よ。 ほうら・・・ 」
母は息子を立たせ 手を離そうとした。
「 おか〜しゃ だっこ〜〜〜〜 」
「 あんよ しよ? 」
「 や。 だっこ〜〜〜 おか〜しゃん 」
「 ・・・ ん〜 もう 〜〜 」
ジョーによく似た明るいセピアの瞳で にっこり・・・笑いかけられると
もう フランソワーズは逆らえない。
しょうがないわねえ 〜 なんていいつつも にこにこ・・・
カワイイ息子を抱き上げてしまう。
「 んふ〜〜 おか〜しゃ ん 〜〜 」
「 甘えん坊さんねえ すばるクンは 」
「 お〜 すばる? なんだ お母さんにひっついて 」
「 すば〜〜るぅ〜〜〜 わ〜〜〜い 」
ジョーがすぴかを肩車したまま リビングに入ってきた。
「 な〜〜んだ〜〜 すばる。 オトコのくせに だらしないぞ 」
「 す〜ばるぅ〜〜 たか〜〜いよ〜〜 おと〜しゃんより たか〜い 」
すぴかは 父のアタマの上からぶんぶん手を振っている。
「 あ こら〜〜 すぴか。 あんまり暴れるなよ。 そっから落っこちたら
・・・ ぺしゃんこだぞ 」
「 ぺしゃんこ? きゃ〜〜 ぺしゃんこ〜〜 ぺしゃんこ〜〜 」
すぴかは大喜び、 もこもこオシリまで揺らす。
「 す すぴか〜〜 ちょいストップ! おと〜さんのアタマをはなさない。
いいね 」
「 は〜〜〜い がし。 」
「 ・・・ お おい! 耳 ひっぱるな〜〜〜 いたいってば 」
「 おと〜しゃ ん? おみみ? 」
「 すぴか おとうさんの耳 離して? 痛いって 」
「 ごめんなしゃい おと〜しゃん 」
「 いいよ いいよ ・・・ ああ 痛かった・・・取れなくてよかった・・・ 」
ジョーは そっと自分の耳を擦っている。
「 大丈夫 ちゃんとくっついてるわよ。 取れちゃったら
あろんあるふぁ でくっつけてあげるわ 」
「 ・・・ ご親切、 感謝いたします。 」
「 ほ〜ら すばる? すばるもお父さんの肩の上にのっかってみる?
たか〜〜い たかい〜〜〜って 」
「 ・・・ ぼ 僕 ・・・ 」
「 いいよ すばる。 すばるもおいで〜〜 」
ジョーは息子を抱き上げようと 屈みこんだ。
「 ・・・ ! や ・・・ ! 」
「 ほ〜ら おいで〜〜 」
小さなムスコを両手で 抱き上げた瞬間 −
わ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 ・・・・!!!
すばるの絶叫? が 響きわたった。
「 !?! ど どうした すばる?? 」
「 すばる〜〜 どっかイタイの??? 」
「 すば ・・・ る ・・・ 」
両親はびっくりして 息子の顔を覗きこむ。
「 ・・・ うっく うっく うっく ・・・ 」
「 すば〜〜るぅ? たか〜〜い よ〜〜 」
同じ日に生まれた < 姉 > も 手を伸ばすのだが
彼は べそべそ〜〜 泣いているのだ。
「 すばる、 お父さんの手、痛かったかい? ごめん ・・・ 」
「 すばる どうしたの? お母さんに教えて? 」
うっく ・・・ こわ ・・・い ・・・
「 ?? こわい?? 」
「 ! すばる、 高いたか〜い は恐いのかい? 」
「 ・・・・ うん ・・・ おか〜しゃん だっこぉ〜 」
「 え? 」
ぴと。 すばるはおサルさんみたいに 父の腕から母の胸にへばりついた。
「 あ あら ・・・ もう〜〜 甘えん坊さんねえ 」
「 ・・・ すばる〜〜 怖くて泣いてたのかい? 」
「 ウン。 僕 おか〜しゃん すき〜〜〜 」
「 ・・・ が〜〜〜ん ・・・・ 」
息子の態度に ジョーは少なからずショックを受けた。
活発な娘と同じく 息子も元気に父に肩車をせがんでほしい ・・・
高い たか〜〜い をしたり 飛行機 ぶ〜〜ん♪ を したいのだ。
「 すばる ・・・ 」
「 おと〜しゃん。 アタシ たかいたか〜〜い だいすき
おと〜しゃんよりたかい、だいすき〜〜〜 」
すぴかは ジョーのアタマをしっかり抱えている。
「 ・・・ あ〜〜〜 ありがと〜〜 すぴか ・・・・」
「 アタシ おと〜しゃん だいすき〜〜 」
「 ありがと〜〜〜 すぴか〜〜〜 」
「 ほら すばる? あんよ してみよ? キッチンまできたら
美味しいミルク、 のみましょ? 」
母は手かえ品かえ 甘えん坊のムスコを歩かせようとする。
「 みるく? ・・・ あま〜〜い? のむ〜〜〜 」
「 あんよ したらね。 」
「 僕 ・・・・ あんよ する! 」
すばるは 母の腕からすべり降りた。
「 おか〜しゃん アタシも みるく 」
「 はい すぴかの分もちゃ〜〜んとありますよ 」
「 すばる〜〜 」
すぴかは 母の足元にいる弟に 手を差し出した。
「 さ すばるくん? 立っちしてね 」
「 ・・・ う〜〜 」
母の声にも すばるはまだゴネていた。
「 すばる〜〜〜〜 」
「 すぴ か ・・・ 」
すると すばるは姉の手にむかって えっこらせ よっこらせ〜
と 歩き出した。
「 すぴか ・・・ 」
「 すばる〜〜〜 いこ〜〜 」
「 ウン 」
姉弟は手をつないで ぽってん ぽってん歩き始めた。
「 あ は・・・ いいなあ〜 すばる。 すぴかとおてて 繋いで 」
「 すぴか〜〜 お願いね〜〜 」
両親の声援をうけ、双子はよちよちキッチンに到着した。
幼児時代を過ぎても 姉弟のチカラ関係? は変わらなかった。
「 大丈夫だよ すばる ! 」
いつも自信まんまんな姉のあとを すばるはにこにこ・・・・ついて歩く。
「 ・・・? すぴか〜〜 すぴか どこ? 」
「 ここっ! いくよ〜〜 すばるっ 」
「 う うん すぴか 」
たったか駆け脚のすぴかの後ろから とてとてすばるが追いかけてゆく。
― その構図は変わらない。
「 あ〜〜あ また ・・・ すばるってば ・・・ 」
フランソワーズはこそっとため息をつく。
「 うん? ど〜した? 」
「 ジョー。 ねえ 見てよ? いつまでたっても すばるはすぴかの
後をくっついて追いかけているの。 も〜〜〜 」
「 いいじゃないか。 すぴかは頼もしいし ・・・
姉弟なんだもの チカラを合わせて 」
「 でもね! すばるは オトコノコ なのよ?
お姉ちゃんと守る くらい言ってほしいわあ 」
「 まもる? ・・・ ぷっ ! 」
ジョーは思わず吹きだしてしまった。
「 ジョ〜〜〜〜 」
「 あ ごめん ごめん。 でもさ〜〜 ウチじゃ そのセリフの主は
すぴか だろ。 先頭きってすすめ〜〜〜 ってさ 」
「 ・・・ だわね ・・・ もうお転婆で。 オンナノコなのに 」
「 いいじゃないかい。 すぴかはすぴからしく すばるは
すばるらしく生きていって欲しいな ぼくは。 」
「 でも ねえ ・・・ 泣き虫すばる に お転婆すぴか じゃ ・・・ 」
「 今は ね。 成長してゆく間に変わってゆくさ。
二人とも いいコンビなんじゃないかい 」
「 ・・・ そう? 」
「 うん。 多分ね すぴかは後ろにすばるが控えているから
勇気りんりん〜 なのかも ・・・だよ 」
「 あ ・・・ すばるの笑顔 って無敵ですもんねえ 」
「 だろ? すばるはすぴかの後ろにいるけど 多分状況をじ〜っと
見てるんだろうなあ 」
「 ・・・ そうねえ。 そうかも ・・・
でもどうしてわかるの ジョー。 あの子達の性格 ・・・ 」
「 自分に似てるのは すぐにわかるさ。 」
「 え ? 」
「 ぼくは ― いつも フランがいてくれるから 頑張れるんだ。
家にいる とかいうことじゃない。 いつもぼくを支えてくれてるからさ。 」
「 わたし ?? そう?? 」
「 そう さ。 もうず〜〜〜〜っと前 いや 出会った時から さ 」
「 ?? 」
ジョーは 静かに微笑むだけだった。
うん。 あの時から さ ・・・
ゴ −−−−−−−−− ッ !!!!
砲弾が猛烈な勢いで空気を切り裂き飛んでくる。
あ ― そろそろ離脱しないと ヤバいか な・・?
加速中の009は スローモーションを見ている気分で自分の周辺を眺めていた。
うん、アレを倒して から離脱だ !
009はスーパーガンを構え直した ― その瞬間
≪ 〜〜〜〜〜 このぉ〜〜〜〜〜 バカっ 吹っ飛びたいのかよ〜〜〜 ≫
「 え?! ≪ ぜ ゼロゼロツ〜〜 ? ≫ うわ〜〜〜〜〜 」
脳裏にガンガン響く声と同時に 009の身体は突然引っぱり上げられた。
≪ !? な なに?? 002? ≫
009は空中を引きずられつつ 慌てて訊いた。
≪ なに じゃね〜〜〜 おめ〜だって加速装置、ついてんだろ?
ちゃんと使え〜〜〜 ≫
≪ だからあと数秒は ≫
≪ ばっかやろ〜〜〜〜 反対側からも飛んできてるじゃね〜か ≫
≪ え?! ・・・ あ ≫
009は視線を戻し 思わず叫んでしまった。
彼が隠れていた岩影は 三方からレ―ザーで攻撃されていた。
≪ ・・・ 知らなかった ・・・ ≫
≪ バカっ そんですむかよ〜〜〜 てめ〜の位置と敵弾の弾道、しっとけ! ≫
≪ ・・・ ごめん。 後ろからの、気が付かなかった ・・ ≫
≪ 009。 003からのデータを聴いているのか ≫
ドスの利いた声が響いてきた。
≪ ( うわ・・・ ) ぜ 004・・・ 003 のデータ? ≫
≪ ! お前 まさか003に脳波通信開いて ない のか?? ≫
≪ え? だ だって ・・ この方面の作戦に参加してるのは 004、君と
002、005だろ。 君たちには開いているよ? 後は後方で ・・・ ≫
≪ ≪ ばかやろ〜〜〜〜〜〜〜 !!!! ≫ ≫
002 と 004 の 罵声が 009のアタマの中で爆発した。
・・・・ う 〜〜〜〜〜 ・・・・
な なんなんだあ ・・・・
≪ ・・・ 全員に 開くべき なのかい ≫
≪ 当然だろっ 戦場に出たらイッチに 003 に繋げっ ≫
≪ ぜ 003? ≫
≪ 彼女は我々全員の 眼 であり 耳 だ。 ≫
≪ あ〜 それが彼女に能力 ( ちから ) だよね。
でも ・・・ オンナノコに戦況が判断できるのかなあ ≫
≪ バッカじゃね〜〜の おめ〜〜〜 ≫
≪ 009。そんな考えでいたらお前自身だけじゃない、全員を危機に巻き込むぞ。≫
≪ ・・・ え ・・・ あ あの ・・・ ≫
≪ 003のデータなしでは 我々の戦闘は不可能に近い。
彼女は エキスパートだ。 新参モノのお前なんかより何百倍もな。≫
≪ へ! お前は 00<9> で 彼女は 00<3> だぜ! ≫
≪ あ ・・・ ≫
≪ お前 ニホンジン、と言ったな? さっきの発言はニッポンの男尊女卑か? ≫
≪ え ・・・ あのぉ〜〜 ≫
≪ い〜か サムライオトコ〜〜 003 が いなかったら
オレら 手足をもがれたよ〜なもんだ。 レーダーなしで
飛行機が飛べるかっての !!! ≫
≪ ・・・ そ そう なんだ ・・・ ≫
ジョーは 忸怩たる思いをかみ砕きつつ すぐに脳波通信を全員に開いた。
≪ ・・・ 皆 無事?
≫
すぐにかっきりした声が 響いてきた。
≪ お〜〜〜 そっちは? 003 ≫
≪ 大丈夫。 004 と 009は? ≫
≪ 俺達は無事だ。 ちょいと時代錯誤ヤローに説教してた。
戦況は ? ≫
≪ データ 送るわ。 ≫
・・・ わ ・・・!?
彼女の通信が終わるや 膨大なデータが009の人工頭脳に送信されてきた。
≪ おい〜〜〜 新人? しっかりデータ、もらっとけよっ ≫
≪ いくぞ。 ≫
≪ ・・ う うん ・・・ ! ≫
動きだした彼らに 切れめなく敵の位置データが送られてくる。
≪ 〜〜〜〜〜〜 ・・・ ! ≫
≪ よし。 三方に分散だ。 002、○○度○○分から 009、○○度○○分だ ≫
≪ お〜らい いくぜっ ≫
≪ わ わかった ≫
三人は すばやく移動を始めた。
すっげ ・・・ このデータ量 ・・・
彼女一人で収集・送信してるの か ・・・!
・・・ そっか。
003がしっかり控えているから
皆 全力で闘える んだ
仲間達が 縦横無尽に少ない人数でも有効に闘えていたのは
003がしっかり後ろで < 固めて > いたからなんだ
ぼくは ― なにもわかってない !
・・・ ぼくは !!!
ジョーは心の中で自分自身を罵倒していた。
≪ 作戦変更だ。 俺は正面から突入する。
003 悪いな、援護射撃 たのむ ≫
≪ 了解 004。 気をつけて ≫
≪ ふふん ・・・ 002 009 両サイドから行け ≫
≪ お〜らい オッサン〜〜 ≫
≪ ・・・ ぼ ぼくが援護射撃を ・・・ ≫
≪ は?? 003は 射撃の名手だ。 水鉄砲しか撃ったことのない
お前とは
比較にもならん。 ≫
≪ ・・・ う ・・・ ≫
≪ 持ち場を固めろ。≫
≪ 了解 ≫
009、いや ジョーは口を一文字に結ぶと 闘いの中に身を投じていった。
そして。 自分の持ち場で奮戦しつつ目にしたものは。
鉄壁の援護射撃に護られ 悠々と正面から攻撃をかけ、敵を殲滅させてゆく
004の姿だった。
004 すげ〜〜〜
い いや 003の援護射撃があったから だ
002の 陽動作戦も効いてるんだ・・・
― なにより 003のあのデータ ・・・・
あれが 仲間たちを支えている !
ジョーは この時、心身ともにゼロゼロ・ナンバーサイボーグの一員 と
なった。
彼は今でも はっきりと覚えているのだ。
「 ふふ ・・・ あれからいろんなことがあったけど。
今だって ・・・ ぼくは このウチがあるから がんばれる。
フランと子供たちがいるから どんなことでも乗り越えてゆけるんだ。 」
おと〜さ〜〜〜ん ・・・ すぴかが金色のお下げを振り振り、飛び付いてきた。
小学生になっても お転婆さんは変わらない。
「 お〜 すぴか。 どうした? 」
「 えへへ〜〜 今日ね なわとび検定 で 特級とった〜〜 」
「 え 特級? それってもしかして 一級より上 かい 」
「 ぴんぽ〜〜〜ん♪ アタシね〜 < はやぶさ > の
後ろ回し、できるんだもん 」
「 ひえ〜〜〜 すっごいぞ〜〜 すぴか〜〜 」
「 おと〜さんもできる? < はやぶさ >。 」
「 あ〜〜 もう出来ないよ きっと。 すばるは? 」
「 すばるは ぁ〜〜 」
「 ? お〜い すばる〜〜〜 縄跳び検定 どうだった? 」
「 ・・・ なに おと〜さん 」
すばるが ソファの後ろからひょっこり顔を覗かせた。
「 わ・・・ おい どこにいたんだい すばる 」
「 ソファのうら。 せまくておちつくんだ〜〜
」
「 へ〜〜 んなの〜〜 すばる〜〜 アタシ、ひろ〜〜〜いトコが好き♪ 」
「 ソファの裏でなにやってたんだ? 」
「 てつどうじゃ〜なる 見てた〜〜 トンネルにいるきぶん〜〜 」
< 小テツ > な すばるはにこにこしている。
「 そうか・・・ ま 本は明るいトコで読め。
で 縄跳び検定は ・・・ 」
「 けんてい? あは 僕 じきゅうとび で一番になった〜〜 」
「 じきゅうとび? 」
「 ん。 くらすイチ だよん 」
「 すぴか じきゅうとび ってなんだ? 」
「 ず〜〜〜〜っととんでるの、 ず〜〜〜っと 」
「 へえ ・・・ ず〜〜っと跳んでたのかい すばる。 」
「 ウン。 やまだせんせい もすごいね〜〜〜って ♪ 」
「 そっか〜〜 そりゃスゴイね すばる 」
「 えへへ〜〜〜 がくねんでも一番だよ〜〜 じきゅうとび。 」
「 すっげ〜〜〜〜 すばる も すぴか も すごいなあ〜〜 」
「「 えへへへ 」」
子供たちは 父に褒めてもらい 大ニコニコだ。
「 それじゃ 一緒にオヤツ、しようか 」
「 え〜〜〜 おと〜さんがつくるのぉ? 」
「 うん。 ホットケーキ 焼くよ 」
「「 わ〜〜〜〜〜 ♪ 」」
「 僕ぅ〜〜 じゃむ と はちみつ かけて〜〜 」
「 アタシィ〜〜 チーズ と めんたいこ! 」
「 お〜 了解。 さあ 手伝ってくれるかい? 」
「「 うん♪ 」」
父子三人は わらわらとキッチンに入っていった。
すぴかは 後ろでにこにこ・・・すばるが控えていてくれるので
それが安心になり 進んでゆけるのだ。
「 すぴかは アイツの中身はぼくだなあ。
すばるは 見てくれはぼくに似てるけど、 中身はフラン似だ うん。 」
えへ。 ぼくは世界一の しあわせモノ さ♪
ジョーは 心からに〜〜んまり するのだった。
****************************
Fin.
****************************
Last updated : 04,17,2018.
index
*************** ひと言 ***************
お馴染み 【 島村さんち 】 設定 ですが
ジョーくんの 幸福論?
・・・ ま シアワセとは ひとそれぞれ ですにゃ♪