『 手 』
わたしの 手
白くてすべすべしていて 柔らかい 手
細くてしなやかで繊細な 指
暖かい優しい 手だって あなたは言うけど。
ちがう、ちがう、ちがう・・・・!
わたしの 手
銃を握ることを知っている 手
血にまみれ命を奪ったことのある 指
冷たい作り物の 手だって わたし知っているわ。
この手に染み付いた
血飛沫は 火薬の臭いは 死の影は
洗っても 洗っても 洗っても 洗っても・・・
・・・また・・・湧いてくる・・・噴出してくる・・
それは 一生消えない わたしの罪の刻印
そんな手だから
そんな指のすきまから
・・・逃げてゆく・・・零れてゆく・・・消えてゆくのでしょう・・
微笑が 幸せが 愛が 生命が・・
それは 一生絶えない わたしの贖罪のしるし
ぼくの 手
がっしりとでも柔軟で よく動く 手
長くてしなやかで強靭な 指
頼もしい温かい 手だって きみは言うけど。
ちがう、ちがう、ちがう・・・・!
ぼくの 手
冷徹に目標に銃を向ける 手
トリガ−をひくことに長けている 指
冷たい作り物の 手だって ぼくは知っている。
この手に馴染んでしまった
破壊の 殺戮の 消滅の 手ごたえは
拭っても 拭っても 拭っても 拭っても・・・
・・・いつも・・・戻ってくる・・・甦ってくる・・
それは 生涯付き纏う ぼくの罪の刻印
そんな手だから
そんな指だから
・・・掴めない・・・逃がしてしまう・・・届かないのだろう・・
微笑へ 幸せへ 愛へ 生命へ・・
それは 生涯続く ぼくの贖罪のしるし
(頼もしい温かい 手、ね)
あなたの 手 に初めて触れたとき
( 暖かい優しい 手、 だね)
きみの 手 に初めて触れたとき
それは 煌くときめきの瞬間
それは 輝くしあわせの瞬間
許されるのかしら
この 手 をあなたの胸に添わせることが
許されるのだろうか
この 手 できみを抱きしめることが
そうっと 伸ばしたこの 手
ためらいがちに 差し出したこの 手
・・・もしかしたら・・・また・・
虚しく 空を掴むだけ・・・?
当てもなく 宙をおよぐだけ・・・?
いやだ、いやだ、いやだ・・・・!
触れてほしい 包んでほしい 暖めてほしい
あなたの 手 で
わたしの 手を こころを わたしの 全てを
触れてほしい 握り締めてほしい 温めてほしい
きみの 手 で
ぼくの 手を こころを ぼくの 全てを
それは 途方もなく贅沢なこと・・・?
それは 所詮かなえられないゆめ・・・?
・・・でも・・・
**** FIN. ****
後書き by ばちるど
ツッコミどころ満載の平ゼロで、<手>って隠れたひとつのテ−マだった様な
気がするのです。 (J&Fに限らず)
恋人同士にはまだまだ程遠いころの胸のうち、かな?
Last update : 1,3,2003