『  入日 ( いりひ )  』  

 

 

 

 

 

 

大爆発とともにその島はずぶずぶと海中に崩れ落ちていった。

あたりの海面を覆いつくしている白煙が散るころには 島の姿もすっかり見えなくなっているだろう。

おぞましい怪物達を改造していた島は サイボ−グ達の手によって破壊された。

一時でも足を留めた島であり、少々捨てがたい気持ちもなくはなかった。

しかし。

彼らを改造したモノが、その流れを汲むモノが存在するかぎり、サイボ-グ達に安住の地はないのだ。

 

・・・ それが俺たちの宿命だ。

 

アルベルトの淡々とした言葉に誰もが頷き そして 誰もが寒々とした思いを噛み締めていた。

そう、理屈はわかってはいるのだが・・・・

 

キノコ型の飛行艇は案外乗り心地もよく、サイボ−グ達は一応の落ち着きをみせていた。

しかしコクピットには沈黙が重くよどみ、私語のひとつも囁かれることはなかった。

 

   ・・・ せめてこれがドルフィン号だったら・・・

 

誰もがかつての彼らの愛機を思い浮かべていた。

 

「 ・・・ よし。 一応自動操縦にしたよ。 」

ジョ−がパイロット席から 沈黙を破った。

「 そうか。 それじゃ ひとまず・・・ 博士、どうぞお休みください。 」

アルベルトはコクピットの一番奥に陣取っているギルモア博士に声をかけた。

「 なにを言うか。 ワシは元気じゃぞ、ほれこの通り ・・・ あ! 」

「 危ない! 」

ギルモア博士は憤然としてシ−トから立ち上がり、腕をぶんぶん振り回してみせたのだが 

自分自身の勢いに負け、踏鞴を踏んだ。

「 お気をつけになって、博士。 」

フランソワ−ズがすぐに駆け寄り、手を貸した。

「 ・・・ いやぁ ・・・・ 面目ない。 ずっと座りっきりじゃったので・・・・つい、な・・・ 」

「 よっしゃ、博士。 これからワテが美味しいお茶、淹れますさかい、それをお上がりにはって

 ちょこっとお休みください。 」

「 おう、我輩も手伝うぞ。 ・・・ コレはあるな? 」

グレ−トはくい・・・っとグラスを傾ける仕草をしてみせた。

「 グレ−トはんの分はありますかいな。 あんさん、傷が安生ようなるまで禁酒やでェ 」

「 へ、へん・・・! もうとっくに治ってら。 」

グレ−トは敵襲に遭い 大火傷をしていた。

「 ほっほ。 そんなら仰山手伝うてな。  皆はん、ち〜と待っていておくんなはれや。 」

陽気な声をあげると、張大人はグレ−トを従えこの機の厨房に消えた。

 

「 オレ、見張りしている。 皆、やすめ。 」

「 ジェロニモ。 君だって疲れているだろう。 」

「 オレ、後でいい、大丈夫。 皆 やすめ。 」

寡黙なヒトの一言には誰にも有無を言わさぬ強い意志があり、メンバ−達はありがたく

彼の申し出を受けることとなった。

 

 

 

 

「 ・・・ あら。 この窓から夕焼けが見えるわ ・・・ 

「 ・・・うん? なんかずいぶん明るいなあと思ってたけど。 夕焼けか・・・ 」

うう−−−ん と伸びをすると、ジョ−はそれでも窓の方を眺めることもなく

そのままフランソワ−ズの髪に顔を埋めた。

狭いキャビンの中は カ−テンを引いていてもぼんやりとした明るさが漂う。

ほとんど部屋を占領しているベッドで、フランソワ−ズはゆっくりと顔の向きを変えた。

カ−テンの隙間から 遥かにひろがる不毛の地平線とそこを染め上げる日の入りが覗かれた。

「 ねえ? 砂漠の夕焼けって ・・・ こんなに近くで見たの初めてだけど ・・・

 なんだか綺麗、というよりもちょっと 毒々しいかんじ・・・ 」

「 ・・・ ほら。 きみの肌に夕陽が映って ・・・ 綺麗だなあ ・・・  」

ジョ−はやっと顔を上げ、腕の中の白い肢体をしげしげと眺めている。

「 やだ、そんなに見ないで ・・・ 明るいうちからイヤだって言ったのに・・・ きゃ。 」

「 ふふん・・・ いいじゃないか、休息時間なんだし。 ・・・ああ、ココ、可愛い・・・ 」

「 ・・・ や ・・・そんな に つよく ・・・ 」

フランソワ−ズの二の腕の内側に 点々と花びらが散ってゆく。

「 ね ・・・ あの兵士 ・・・ 大丈夫かしら。 」

「 ・・・ え? ・・・ ああ、あのアラブ兵か ・・・ 」

「 そうよ。 博士はもう手の施しようもない、とおっしゃっていたけれど・・・ 」

「 あの毒虫にやられたのなら 無理だろうね。 どこかオアシスにでも送り届けるしかないな。」

「 そうねえ・・・   わたし達 ・・・ これからどうなるのかしら・・・ 」

「 とりあえず、この地域でヤツラの基地を見つける。 そこ叩くのが先決さ。 」

「 ええ。 ・・・ わたし、出来たらそれから・・・またあの邸に戻りたいわ。 」

「 あそこはもう ・・・ 全部焼け落ちてしまったじゃないか。 」

「 また作りましょう?  わたしね、なんとなくあの場所、あの岬の突端が好きなのよ。 」

「 ・・・ そうだね。 ぼく達が初めて一緒に住んだ土地だものね。 」

「 ええ・・・ こうやって目を閉じれば ほら・・・ 波の音まで聞こえてくるわ・・・・ 」

ぱふん・・・とジョ−の胸に顔をうずめるとフランソワ−ズはそっと目を瞑った。

「 ・・・ 帰ろう。 必ず。 ぼく達にだって故郷 ( ホ−ム ) はあるんだ。 」

「 そうね。 帰って・・・ また、一緒に暮らしたい・・・ あなたと。 」

「 ・・・・・・ 」

ジョ−は何も答えずにフランソワ−ズの白い胸に唇を当てた。

「 きゃ・・・・ ジョ− ・・・ ジョ− ・・・ そんなに強く ・・・ だめ、よ・・・ あ・・・ 

キャビンの中にはたちまちまた温気が立ちこめ、甘い声が吐息があふれ出す。

 

   ・・・ ここは 砂漠よりも熱い・・・! 

   ぼくは きみに ・・・ きみという太陽に 焼かれる ・・・ 焼き尽くされる!

 

   ・・・・ ! ジョ− ・・・ ! どう・・・したの・・・?

   あなた ・・・ なんだかムキになって ・・・ あ あああ ・・・

 

 

外はいつの間にやら日が落ち、びょうびょうと拡がる砂の原はぐん・・・!とその温度を下げ始めた。

灼熱の昼は終わり、星々も凍る夜がやってくる。

 

二人は汗ばんだ肌を寄せ合ったまま・・・ 芳しい眠りの奈落の底に落ちていった。   

 

 

 

ビ −−− !  ビ −−−− !

どのくらい眠ったのだろう。 

ジョ−は朦朧とした意識の底で その音を聞いていた。

 

   ・・・ なんだ ・・・? 誰が呼んでいるのかな・・・

   目覚まし?  いや ・・・ ちがう ・・・  !!!

 

緊急信号だ! と気が付いた途端、彼は完全に覚醒した。

「 !  ・・・・ フラン? フランソワ−ズ ・・・? 」

ジョ−は腕の中に眠る恋人の身体を優しく揺すった。

「 ・・・ ん ・・・・?  ・・・ ああ ジョ− ・・・ この音・・・?  あ! 」

フランソワ−ズはゆっくりと目を開いたが すぐに事態を認識したようだ。

「 スクランブル! ・・・ 急ぎましょう! 」

「 うん。 ・・・ この時間の当番は大人とグレ−トのはずだ。 」

「 ともかくコクピットへ! 」

「 ああ! 」

二人は大急ぎで身支度を終えるとキャビンを飛び出した。

 

「 ・・・ あ!!  ・・・ な・・に?? 」

 

廊下に出たとたん、フランソワ−ズは声を上げ棒立ちになってしまった。

「 どうした? ・・・ なにが見えたんだ? 」

「 ・・・ 外! 外に ・・・なにかすごく大きなモノがいる! それも ・・・ 沢山。

 なんだか ・・・ 不気味よ、あれは。あれは ・・・ なに? サソリ ?? 」

「 ロボットか、サイボ−グかい。 それとも生体? 」

「 ・・・ わからない。 群れをなしてじっとこちらを窺っているわ。 」

「 そうか。 ひとまずキャビンに急ごう! 」

「 ええ ! 」

二人は螺旋をえがく長い廊下を辿っていった。

 

 

 

そして 今。 

彼らはあのキノコ型の飛行艇をさえ、捨てる羽目となり灼熱の砂の上を進んでいる。

ともかく 進まなければならない。 留まっていることは 許されなかった。

「 ・・・ ひょえ〜〜〜 もう ・・・ワテ、歩かしまへんわ・・・ 」

「 ほ〜らほら・・・ 日頃の運動不足のツケが回ってきたぞ?

 大人〜〜 そのメタボ腹が引っ込んで丁度よいかもな。 」

「 ・・・ そやけど・・・ キツゥおま。 どこまで歩きまんねん? 」

「 うん。 このまま闇雲に侵入していいのかな。 その・・・ BG絡みの基地は

 どの辺りにあるのか デ−タはあるのかい。 」

ピュンマが太陽の位置を測っている。

「 いや。 正確なデ−タはない。 しかし昨日のあの巨大さそりの大群といい確かにヤツらは

 オレ達を見張っているのだ。 たった今もどこかでなんらかの方法でな。 」

「 へ! 気に喰わねェな! ちょっくらオレが空中から偵察してくらア 」

「 だめだ、ジェット。 砂漠の真ん中だぞ? 標的になりにゆくようなものだ。 」

「 ち! こう〜〜〜 二本足でぺたぺた歩くのはよ、オレ様の性に合わね〜よ! 」

ジェットはイライラと足元の砂を蹴りあげた。

「 ・・・ 今は行くだけだ。 ここに生命は ない。 」

博士とイワンを庇いつつ、ジェロニモが重い口を開いた。

全員が ねばっこい疲労と暑さで重苦しい気分を持て余していた。

「 あら。 」

「 なにネ? なにか綺麗なモノでも見えはりましたかな。 」

「 建物があるわ。 この岡の向こう側・・・・  古いわね、遺跡みたい・・・ 」

「 ひょう! ともかく日陰があるならば御の字だ! 」

一行の歩みは自然を早くなった。

やがて前方に半壊した城砦のごとき建物が姿を現した。

 

 

「 モ−ゼ??  あの ・・・ 旧約聖書に出てくるあれ、ですか。」

「 さよう。 モ-ゼは蘇った!と申して近隣のオアシスに支配の手を伸ばしているらしい。 」

「 でも ・・・ そんなデタラメに皆ほいほい従っているのですか? 」

「 いや。 なにか不思議なチカラを振り回すそうだ。

 逆らったモノやら信じないモノには 神の怒りが炸裂するだろう、と言ってな。 」

「 ほう ・・・ 実際にご覧になりましたのかな。 」

「 いや。 ワシらはつい最近こちらに来ましてので、噂だけです。 」

考古学者氏は肩をすくめ、少々あきれかえっている様子だった。

サイボ−グ達が辿り着いた城砦の中は荒れ放題で すでに廃墟の様相を示していた。

彼らはそこで盗賊どもに捕らわれていた考古学者と出会ったのだ。

「 ふん。 そんなことをして何になるのでしょうな。 子供騙しですよ。 」

「 しかし なんらかのチカラを持っているのであれば・・・ どうも胡散臭いですな。 」

「 だいたい今時 神の怒りもなにもあったものではないでしょう。 」

「 それはそうですが。 」 

どうも考古学者氏は徹底してリアリストらしい。

アルベルトさえも、苦笑して話相手になっている。

 

「 ・・・ ねえ? なんだか ・・・ 妙な風が吹いてきたわ。 」

「 うん? ・・・ ああ、そうだな。 砂嵐ともちがう・・・ 」

「 おっととと・・・ これはかなりの風だな。 砂嵐でもくるのか? 」

一行が空を仰いだ時。

 

   わはははは ・・・・ !  愚か者どもめ・・・!

 

「 な、なんだ?? 」

「 どこから聞こえてきている? 」

「 いきなり愚か者やて、随分シツレイやおまへんか。 」

「 ・・・ あ! あそこよ、城壁の上に ・・・ あれはヒト・・・? 」

「 なに? 」

フランソワ−ズの指し示す方向を全員が見つめた。

 

「 ・・・ なんだ、あのジジイ。 」

「 時代がかった扮装をしているね。 一体どこから現れたのかな。 」

「 しかし、ぼく達がここにいることがどうしてわかったんだ? 」

「 だれだ !  お前は! 」

 

  愚か者ども! とっとと立ち去れ! 神に背くものどもよ!

 

「 なんだ、なんだ アイツ。 勝手に現れて勝手にほざいて ! 」

「 し。 なんだか様子が変だぞ? 」

 

  きけ! わが名は モ−ゼ。 神に代わって汝らを処罰してやろう!

 

「 モ−ゼってやはりあのモ−ゼかい?? 」

グレ−トはついに吹き出してしまった。

「 シッ ! 気をつけろ。 なにか ・・・ 隠し持っているようだ。 」

 

  神の怒りを受けるがよいッ!!

 

モ−ゼと名乗る老人は 手にした杖を高々と宙に差し上げた。

バ −−−− !!

一瞬稲妻が杖の先端に集まったかと思うと ・・・ 一条の光線が発射された。

 

 バシュ ・・・・!!!!  

 

「 危ない! 伏せろ。 」

「 ・・・ わ!! 」

光線が城壁に炸裂し、がらがらと崩れだした。

「 ・・・ あ! あの学者さんが・・・ 」

「 なんだって? ああ・・・・ 」

とばっちりを受け、考古学者氏は崩れた岩の下敷きになってしまった。

 

   もう一度警告する。 立ち去れ ・・・!!

 

「 くそ〜 なんだか知らねえがよ、ヒトの命を粗末にする神なんかいねぇんだよ! 」

ジェットがついに痺れをきらし、スーパーガンを撃った。

「 ・・・ おお? なんだ? レ−ザ−が?? 」

「 な、なんだ? アイツ ・・・ 」

ス−パ−ガンから発射されたレ−ザ−はモ−ゼと称する人物の身体を素通りしてしまった。

「 くっそう〜〜 喰らえ! 喰らえ〜〜 」

ジェットはムキになって連射したが いずれも背後の壁を粉砕しただけだった。

「 やめておけ。 無駄になるだけだ。 」

「 だけどよ! アイツ〜〜 」

 

  ははは・・・・ わかったかね? ワシに刃向かっても無駄なのだ・・・!

  立ち去れ ! 愚かものども。

 

「 ふん。 なにかのからくりだ。 さっきの光線にしても放電装置を仕込んだ杖なんだろう。 」

「 そんじゃ、アイツが素通しってのはどうしてなんだよ? 」

 

  まだわからんのか!  それならば ・・・

  風よ!  砂嵐よ!  叫べ!  そして 迎えるのだ、 地獄の獣を・・・!

 

「 な、なんだ?? まったく芝居がかったジジイだな。 」

「 あんさんよか上手アルね〜 」

「 ウルサイ。 ・・・ お? 風向きが変わったぞ? ・・・あ? なんだ、あの音は・・・・」

グレ−トの言葉が終らないうちに彼らの足元が揺れ始めた。

「  ・・・・ 地震 か? 」

「 みろ! 砂漠が ・・・ 割れてゆくぞ! 」

「 砂が吹きあがってゆく ・・・ なにかでてくるのか? フランソワ−ズ、見えるかい。 」

「 おい! 出てきたぞ! 」

「 ・・・ なんだア ありゃ・・・ 」

サイボ−グ達は一塊になって裂けてゆく砂漠をみつめていた。

 

 

 

 

「 そう、全部一種のホログラフィだったのよ。 あと、監視カメラと隠しマイク。 」

フランソワ−ズは手にしていたス−パ−ガンを静かにホルスタ−に収めた。

彼女が 周囲に隠されていた装置を破壊すると同時にモ−ゼと称する老人も怪物も

たちまち消え去ってしまった。

「 なんだ・・・ あのジジイも怪物も全部マヤカシかい。 」

「 ふん。 あんなこけ威しの手を使ったってことは これ以上砂漠の奥に踏み込まれては困る

 ということだ。  ヤツらの基地は近い。 」

「 そうだね、アルベルト。 これもトラップだったってわけだ。 」

「 ・・・ そう、そして、ここから西へ4キロの地点にこの機械を操作していたヤツらの車があるわ。」

「 なるほどな、そういう筋書きだったのか。 」

「 僕たち、まんまとひっかかったってわけか。 」

装置の残骸をざっと調べ ピュンマは顔をしかめた。

「 ・・・ 簡単なものだよ、本当に <子供だまし>だ。 」

「 ええ、あの放電にちょっと目くらましされてしまったわ。 わたしも周囲の透視を忘れていたもの。 」

 

「 それじゃ。 ・・・ 行こう! 」

ジョ−はそれだけ言うと ぱっと手を差し出した。

「 ・・・ ええ ! 」

フランソワ-ズもただ一声こたえ、彼に駆け寄った。

「 よし! 」

シュン ・・・!

独特の音とともに、フランソワ−ズを抱きかかえたジョ−の姿は消えた。

「 あ! おい、待てって! オレも行くぜ!! 」

声が終らないうちにジェットも空に紛れてしまった。 」

 

「 ちぇ〜〜 お熱いこって。 」

「 ま、いいじゃないか。 基地潜入には彼女の 目と耳 が必要だもの。 」

「 ふん。 オレ達は別口で基地をめざそう。 どこかで監視しているのだろうな。

 こっちが普通のペ−ズでゆけば ジョ−達が目立たずに動けるだろう。 」

「 ワテらは一種の囮、アルね。 」

「 そういうことさ。 」

彼らも警戒しつつ再び前進を始めた。

 

 

 

「 なにか見えるかい。 」

「 ・・・ すごく大きな基地よ。 砂漠に下に ・・・ かなりの規模で拡がっているわ! 」

「 やっぱり。 BGは復活していやがったんだ! 」

ジェットは激しく舌打ちをした。

「 ヤツらのひとつの細胞なんだろうね。 あの時、魔人像の中で聞いたとおりに

 <悪> の細胞は他に沢山あるってことだ。 」

「 へん! それじゃオレらはソイツを叩き潰してゆくっきゃね〜じゃん。 」

「 ちょっと待てよ。 ともかく様子を見よう。 」

「 案外ガ−ドが甘いのな。 こんなトコまでくるヤツはいねえもんな。 」

「 う〜ん・・・ それも気になるんだが・・・ 探知装置とかあるかい? 」

「 いいえ ・・・ べつに。 兵士は沢山いるんだけど、なんだかヘンなの。 」

「 ヘン? 」

「 ええ・・・ 気配が薄いというか ・・・ あまりに静かだわ。 」

「 雑魚どもの数が多くてもへっちゃらじゃん。 イッキに叩いちまおうぜ。 」

「 焦るなよ、ジェット。 もう少し・・・ 探ってみよう。 」

ジョ−達は基地の中を慎重に進んでいった。

目的の車をみつけ、009、003 そして 002は そのまま地下基地に潜入した。

飛行艇のような乗り物は砂漠の下に降下し、そこには巨大な基地があった。

あのモ−ゼと称していた老人が どうも統括しているらしい。

飛行艇から降りた彼は 出迎えの部下となにやら話こんでいる。

 

「 もう少し近づいて見ようぜ! 」

「 あ! ジェット、気をつけろ・・・! 」

「 ・・・ ぁ! きゃあ・・・ ! 」

ジョ−とジェットがそろそろと前進し始めた瞬間、二人のうしろでフランソワ−ズの悲鳴が上がった。

「 どうしたッ !?  くそ! 」

「 おっと。 下手に撃つとこの女に当たるぜ。 」

密かに忍び寄っていた敵兵が フランソワ−ズを羽交い絞めにしている。

「 くそ! ヤロウ〜〜 その手を放せ!! 」

「 ジェット! < ぼくが加速して助けるから! 兵士をやってくれ > 」

「 OK ! 」

脳波通信を飛ばしたその時

 

「 あの二人を捕らえよ! 」

「 は! 」

老人は突然 正確にジョ−達が潜んでいる場所に杖を差し向けた。

ばらばらと兵士たちが集まってくる。

「 くそ・・・!  はめられたか! 」

「 その女は 別に捕らえておけ。 残りのヤツらを誘き寄せるエサにしよう。 

 ゼロゼロ・ナンバ−・サイボ−グどもよ! 一人残らず始末してやる。 」

「 ほざけーー! 」

「 あ、ジェット! 待て・・・ 」

ジェットはジョ−の制止を振りきり飛び出して攻撃を始めた。

「 ・・・ くそ! 」

ジョ−は仕方なく彼に加勢しつつ 周囲を見渡したがフランソワ−ズの姿はすでになかった。

 

< フランソワ−ズ?? どこにいる? 返事しろ、003??? >

 

襲い掛かる兵士どもと撃ち合い、ジョ−は脳波通信を飛ばしたが応答はない。

「 ・・・ ジェット! おかしいと思わないか?! 手ごたえが無さ過ぎる・・・ 」

「 へん、いい傾向だぜ。 イッキに片付けてフランを見つけ出す。 おりゃ〜〜!! 」

「 よくないよ! これはきっとなにか罠があるに決まってる。

 早くここを離れて ・・・ フランソワ−ズをさがそう ! 」

「 了解。 だけどよ、その前にこの鬱陶しいヤツらを掃除して行こうぜ! 」

「 いや。 急げ、あのモ−ゼを追うんだ! 」

「 わかったぜ。 ・・・ ん? 」

 

  わあああ −−−−−−− !!!!

 

一瞬、モ−ゼの持つ杖が光り次の瞬間、ジョ−とジェットは激烈な電磁波で床に叩きつけられた。

「 ・・・ うううう ・・・・ な・・・ なんだコレは・・・! 」

「 くそう・・・ !! 身体が ・・・ 動かねえ・・・ 」

「 ははは! 愚か者どもめ! ワシの忠告を無視した報いだ。 

 そうしてのたうち回って死んでゆけ! ははは ・・・・ 」

モ−ゼは高笑いを残し 去っていった。

 

  ・・・ く ・・・・ 少しでも ・・・ 身体が動けば ・・・ 加速装置 ・・・

  おい? ジェット?!  大丈夫かい? 

 

  ・・・・ う 〜〜〜 ・・・・ むむむ ・・・・

 

床でうごめく二人の上にするすると筒状の覆いが天井から降りてきた。

彼らは完全に拘束されてしまった。

 

 

 

「 ほう? お前が003か。 評判通りのなかなか美人じゃな。 」

「 ・・・・・・ 」

モ−ゼを名乗る老人は くい・・・とフランソワ−ズの顎を指で押し上げた。

「 ふん・・・! そのレ−ダ・アイでもうわかっておるだろう。 お前の仲間らはほぼ死に絶えた。 」

「 ・・・・・・ 」

「 そら、これを見るがいい。 」

老人は傍らのモニタ−を示した。

その画面には。  洞窟内で凍りつく004、と006、007の姿が、 そして砂漠で瓦礫に埋もれつつ

奮戦している005達が映し出されている。

「 お前と一緒に侵入してきたやつらどもも もう虫の息じゃて。 

 ふふふ ・・・ 神に逆らうとどうなるか。 今、身をもって悟っておることだろう。 」

「 ・・・・・・・ 」

フランソワ−ズは老人を睨み据えたきり一言も発しない。

彼女は 必死で周囲をサ−チし、コンロ−ル装置を探っているのだ。

 

「 お前もアイツらとひと思いに吹き飛ばしてもよかったのだが・・・ 」

老人はにやり、と妙な笑い方をした。

「 この美貌 ・・・ ただ捨てるのはちと勿体ないでの。  ま、存分に楽しませてもらおうか。 」

しゅる ・・・・ !  音をたててマフラ−が床に落ちた。

「 BGのデ−タによると お前は一番生身に近いそうじゃな。

 ふふふ・・・・ ワシがそれをしっかりと検証してやろう。 ふふふ ・・・・ 」

皺だらけの指が フランソワ−ズの首筋から無遠慮に差し込まれはじめた。

「 ・・・( このジジイ・・・! ) 」

ジ ・・・・  微かな音をたて背中のジッパ−が引き下ろされる。

「 ほう ・・・ これは素晴しい。 BGのサイボ−グ技術の最高粋だな。 」

さらされた白磁の肌に 老人の指が這い回りだした。

「 なかなか大人しくてよい娘じゃ・・・・ ちょっと手錠を・・・ 」

老人はフランソワ−ズの両腕を拘束していた機具を外し、防護服の上着を引き剥がした。

 

   ・・・ 今だわ ・・・!

 

ガッ ・・・!  フランソワ−ズの一撃が彼女の胸に手をかけていた老人を蹴り上げた。

「 グゥッ・・・! な、 なにをするっ! この・・・ アマ・・・! 」

仰向けに引っくり返ったところをもう一蹴りし、彼女はモニタ−に駆け寄った。

「 え・・っと・・・? ああ、これね!   ・・・ ジョ− −−−!!  ジェット !

 大丈夫?? 今、この電磁波を止めるわ!!  あ・・・! 」

レ−ザ−の衝撃が彼女の腕を掠めた。

解除ボタンを押した途端、杖で脚を狙われそのまま床に引き倒されてしまった。

「 く ・・・! 」

「 ・・・ ゆ、油断した・・・! ふん! たっぷり礼をさせてもらうぞ・・・! 」

よろよろしつつも老人はしっかりとフランソワ−ズを床に押し付ける。

圧し掛かったまま彼女の下着も剥ぎ取ろうと手を蠢かせてくる。

  

  <  ジョ− ・・・!!  気がついて・・・! >

 

必死で抵抗するが、負傷した腕がなかなか思うように動かない。

脳波通信でずっと呼びかけてはいるが ジョ−の応答はない。

・・・ こんなヤツに ・・・ !

フランソワ−ズは唇を噛みスキを狙った。  

確かに解除ボタンは押した。 強力電磁波の拘束は解かれているはずだ。

ともかく 時間を稼がなければならない。

・・・  カチリ ・・・

下着のホックが外されてしまった。

「 ほう・・・ これはこれは。 この宝珠を思いっきり弄るのも一興だ・・・! 」

好色な視線でじろじろと眺めていた老人は いきなり彼女の両胸を鷲づかみにした。

 

「 ・・・ !   < ・・・・ ジョ− −−−−!! > 」

< ・・・ フラン・・・? フランソワ−ズ・・? >

ようやく 切れ切れの通信が返ってきた。

< ジョ−!! 気が付いたのね! >

< ・・・ あ、ああ・・・・ きみがアレを解除してくれたのか? どこにいる? >

< 助けて・・・・  あの老人に ・・・ ああ! >

< ?! 今 行く!! >

フランソワ−ズのただならぬ声音に ジョ−は全てを悟ったらしい。

 

  グワッシャ −−−!!

 

なにかが粉砕さえる音が彼女の 耳 にしっかりと届いた。

< ・・・ ジョ− ? >

< ふ ・・・ 加速してド−ムに体当たりした。 どこだ? 上か? >

< そうよ、そこのほぼ真上 ・・・ あああ・・・ ううう ・・・ やめて・・・!>

< くそ!! >

 

一瞬 旋風が吹き込んだ・・・と感じたあと、そこに凄まじい形相の009が立っていた。

「 ・・・ この ・・・・ !!! ヒヒジジイ 〜〜 !! 」

ス−パ−ガンを構えるヒマもなく、 ジョ−は一瞬にしてフランソワ−ズを組み敷いていた

老人を蹴り飛ばした。

 

「 ぐゥッ !  ぎゃあ − − − − − − !! 」

「 ・・・ ジョ− ・・・ ! 」

「 フランソワ−ズ! 大丈夫か?? 」

ジョ−は愛しい人を両腕にしっかりとかき抱いた。

「 ・・・ ジョ− ・・・ ジョ− ・・・ よかった・・・ 」

「 フラン!! きみってひとは・・・! きみこそ ・・・ ああ、こんな姿に! 」

「 大丈夫・・・・ わたしは大丈夫よ。 あなたが無事でよかった・・・! 」

「 ・・・ ちょっと待っててくれ。 」

ジョ−は隅に落ちていた彼女の防護服を拾い上げ、そっと彼女に羽織らせた。

「 怪我はない? ああ・・・ きみの胸が・・・・ 」

「 やだ・・・ そんなに見ないで。  平気よ、こんなのかすり傷だわ。 」

「 ・・・ もう ・・・ 本当にきみって ・・・ 」

「 アイツは? 

「 ふん。 とっくにオダブツさ。 おそらくBGに代わることを企んだのだろうけど。 」

「 あ! 皆は??  そのモニタ−で見えるみたいよ。 」

「 ・・・ああ、 これだね?  う〜ん ・・・ どの装置で解除したらいいか解らないな。 

 よし、ちょっと避けていてくれる? 」

「 ええ。 」

「 サ−チを頼む。 多分モニタ−も落ちるだろうからね。 」

「 了解。 」

「 やるぞ! 」

 

  バーーーーー !!!

 

ジョ−のス−パ−ガンが四方に炸裂し、周囲を取り巻いていたメカを一気に粉砕した。

< ・・・ ジョ−? 009? 聞こえるかい? >

< ピュンマ ! 大丈夫か? >

< ああ。 たった今、 イワンのテレパシ−が復活してね。 こっちは何とか切り抜けたよ。 >

< よかった・・・! >

< 009? 君が解除してくれたのか? >

< アルベルト!! ふふふ・・・なんだかよく判らないから闇雲に壊したんだ。 無事かい? >

< 助かった! こちらは全員無事だ、地上にもどる。 >

< よし。  みんな 〜〜〜  あの要塞跡に集合だ。 >

< 了解 ・・・! >

つぎつぎと脳波通信が飛び込んできた。

 

「 さあ。 フランソワ−ズ。  ・・・・ 帰ろう。 」

「 ええ。 帰りましょう! 」

 

ジョ−は黙って腕を差し伸べ、 フランソワ−ズは微笑んで彼の手に我が腕を預けた。

砂漠の基地は 砂の下で崩れ始めた。

 

 

 

 

「 ・・・・?  あら? 変ねえ。  出かけているのかしら。 」

フランソワ−ズは首をかしげ、もう一度チャイムのボタンに指をかけた。

足元を爽やかな風が吹き抜けてゆく。

春もそろそろ過ぎ 花びらが風に散る季節となっていた。

穏やかに晴れ上がった午後、 フランソワ−ズはジョ−の部屋の前でさっきから立ちん坊である。

「 今日は家にいるって言ってたのに・・・ 」

マンションのドアは 開く気配がなかった。

 

 

砂漠でのミッションが終了し、サイボ−グ達はひとまずあの海辺の町にもどってきた。

「 コズミ君のおチカラ添えもあるからの。 ワシはやはりここに本拠地を据えようと思う。 」

焼け跡に立ち、 ギルモア博士は淡々と言った。

「 ここに研究所を立て直す。 諸君がいつでもこられるよう・・・ ここは我々のホ−ムじゃ。 」

博士の言葉に誰もが黙って頷いた。

 

   オレ達にだって ホ−ム はあるんだ。 

 

誰もがほっとした思いだったに違いない。

結局 完成した研究所にはご当主の博士とイワン、 そしてフランソワ−ズが住むことになった。

 

「 ジョ− ・・・? どうして・・・」

フランソワ−ズは言葉に詰まってしまった。 

いや、それ以上口を開いたら涙も一緒に零れ落ちそうだったから・・・

仲間達はそれぞれの故郷に戻り、グレ−トと張大人は新しく建てた張々湖飯店に移り住んだ。

研究所に 静かな日々が訪れたとき、 ジョ−がぽつり、と言った。

 

「 ぼくも市内のマンションに移ります。 」

 

「 どうしてかね。 お前、以前と同じようにここに住んでかまわんのじゃぞ。 」

博士も驚いてジョ−に訊ねた。

「 ありがとうございます。 ぼくも仕事を見つけましたし、いつまでもお世話になっているのは

 心苦しいです。 」

「 ジョ−! お世話、だなんて。 」

「 ふむ。 どんな仕事をするのじゃ? また レ-シング関係かな。 」

「 ええ・・・ でも、もうドライバ−はしません。  今度は取材する方・・・

 車関係の記事を書いてゆこうと思って ・・・ その関係の出版社に。 」

「 そうか。 よかったな。  ・・・ まあ、時々は顔をみせておくれ。 」

「 博士! そんな ・・・ 止めてください。  ジョ− ? ここが ・・・いやなの?

 わたし達と一緒に住むの、 ・・・ イヤ? 」

フランソワ−ズはついにぽろぽろと涙をこぼし始めた。

「 あ・・・ 泣くなってば。 そんな・・・・ ちがうよ。 イヤだ、なんてとんでもない。

 仕事に通うのには 市内のマンションの方が便利なんだ。 それだけだよ。 」

「 ・・・ でも ・・・ でも ・・・ 」

「 さあ、そんな顔、やめてくれ。 週末には戻ってくるよ、きみの美味しい料理を食べにね。 」

「 ・・・・ きっとよ? 週末にはきっと ・・・ 」

「 ああ、約束するさ。  きみも好きな時に遊びにおいで。 」

ジョ−はフランソワ−ズの涙を指で掃った。

「 まあまあ・・・・ フランソワ−ズ。 ジョ−だって一人暮らしがしてみたいんじゃろ。

 それに お前が時々見に行ってやらねば きっとヒドイ有り様になっとるじゃろうよ。 」

「 あ・・・ 博士、ひどいなあ。 へへへ・・・でも時々、アイロンとか・・・頼みたいナ。 」

「 勿論よ! ・・・ でも ・・・・ 」

 

   ・・・ 本当は また一緒に ・・・ ここに、一つ屋根の下に暮らしたい・・・

 

「 そうだ! 食器選びとか・・・ 手伝ってくれるかな。 」

「 ええ、いいわ。 」

なんとなく丸め込まれた気分だったが ジョ−は悠々と <独立> してしまった。

それでも、 約束通り週末ごとに彼は研究所に戻ってきたし、

フランソワ−ズが彼のマンションに泊まりにゆくこともあった。

 

   ジョ−がこの方がいいのなら。 ・・・・ ガマンするわ・・・

 

仕事に打ち込んでいるジョ−を眺め、フランソワ−ズはこっそり溜息をのみこんでいた。

 

「 ・・・ やっぱり留守なのかな。 どうしよう ・・・ コレ。 」

フランソワ−ズの両手には食材がぎっしり入ったス−パ−の袋がぶら下がっている。

「 仕方ないわね・・・ ウチの今晩の夕食に ・・・ あら? 」

 

「  ・・・・ やあ ・・・ 」

 

やっとドアが開き、ジョ−が顔を覗かせた。

「 ジョ−! いないのかと思ったわ。 ・・・・あら? 」

「 あ・・・ごめん・・・  徹夜仕事でさ、今朝帰ってきたんだ。 今、起きたとこ。 どうぞ、入って 」

「 起きたって・・・ もうお昼すぎよ? あらら・・・ 」

ジョ−はぼさぼさ髪のガウン姿、 いささかぼ〜〜っとした顔で彼女を迎えいれた。

「 さ! 熱いシャワ−でも浴びていらっしゃいよ。  美味しいコ−ヒ−を淹れておくわ? 」

「 ウン ・・・ サンキュ・・・ じゃ、頼むかなア・・・ 」

「 ほらほら・・・ 目、覚ませて、ジョ−! 」

「 ・・・ ウン ・・・・ 」

いささか危なっかしい足取りで ジョ−はバスル−ムに消えた。

 

  ふふふ ・・・ もう、仕事になると夢中になっちゃうんだから・・・

 

フランソワ−ズはオトコ臭いリビングに入るとカ−テンを払い、窓を大きく開け放った。

爽やかな初夏の風が さわさわとカ-テンを揺らす。

市内といっても繁華街からは離れているので、周囲は緑が多く気分がよかった。

「 さ〜てと♪ まずはコ−ヒ−を淹れて・・・っと。 」

さっき持て余していたス−パ−の袋、膨らんだ袋を抱いて彼女はキッチンに入った。

 

悲惨な状態を予想していたが、ジョ−の部屋のキッチンは案外整然としていた。

シンクに使いっぱなしの食器などはなく、水切り籠にマグカップがひとつ。

片付けてある、というより使っていないのだろう。

「 ・・・ わ ・・・! ホコリっぽい!  今度徹底的にお掃除に来なくちゃ。

 取り合えず・・・ コ−ヒ−、淹れましょ。 え〜っとカップはどこかしら。 

 ついでに軽くサンドイッチでも作って ・・・ 」

フランソワ−ズはあちこちの引き出しをあけたりし始めた。

 

 

「 ・・・・ フランソワ−ズ ・・・ 」

「 きゃ・・・  やだ、ジョ−?  」

ふわり、とシャンプ−の香りがして ・・・ 次の瞬間 ジョ−の両腕が絡まってきた。

「 もう ・・・ びっくりするじゃない。 ・・・ ああ、わるいコね、ジョ−ったら。 」

「 ・・・ フラン〜 フランソワ−ズ 〜♪

 ぼく、腹ペコなんだ。 朝、帰ってきてそのままベッドにぶっ倒れたから・・・ 」

「 ええ、ええ。 だから今サンドイッチ、作っているのよ? ジョ−の好きなハムとキュウリの。 」

「 う〜ん ・・・ それよりも食べたいものがあるんだけど。 」

「 あら、なあに? リクエストしてちょうだい。 」

フランソワ−ズは肩越しにねじ向いて ジョ−の頬にキスを落とす。

「 ふふふ ・・・・ それはね。  き ・ み ♪ 」

「 え ・・・? 」

「 きみが食べたい〜〜 ♪ お腹ぺこぺこなんだ〜〜 もうガマンできない♪ 」

「 ジョ−ったら・・・ きゃ♪ 」

ジョ−はそのまま彼女を軽々と抱き上げた。

彼のボディ・ソ−プの香りが 彼女を包む。

ジョ−はそのまま彼女をリビングのソファに抱いていった。

 

「 ・・・ いいだろ?  」

「 ・・・ ほんと・・・に ・・・ わるいコね、ジョ− ・・・ ! 」

彼女の返事も待たずに ジョ−はブラウスのボタンを外し始めた。

 

 

 

   ・・・  あ  ・・・・

 

ぼんやりと開いた瞳に 遅い午後の光がにぶく部屋に満ちているのが映った。

・・・ やだ。 カ−テンも引いてなかったんだわ・・・

フランソワ−ズはまだ、身じろぎもせずに天井を見上げていた。

頬のすぐ側には ジョ−のすべすべした胸がある。

彼の手が まだ自分の胸に当てられていたが その暖かさがかえって心地よかった。

 

   ・・・ あ ・・・・ ああ ・・・・

 

低い声が自然に彼女の咽喉から漏れでてきた。

 

「 ・・・ ん ・・・・?  あ ・・・ 」

「 ジョ− ・・・・ 」

「 ・・・・ 久し振りだよね。 ・・・ ああ ・・・ いい気分だ ・・・ ! 」

「 ふふふ ・・・ 本当に ・・・ 悪いコね♪ 」

「 ・・・ そうさ、ぼくは ・・・ わるいコ・ジョ− ・・・ 」

ジョ−の手が動きは始めた。

午後の白っぽい光のなか 再び彼の手がゆるゆると愛撫を始めた。

「 ・・・ ねえ。 聞いても ・・・ いい。 」

「 うん?  ・・・なに。 」

「 ねえ。 どうして ・・・ 別なトコに住みたかったの。 」

「 うん ・・・・  ちゃんと独立して。 しっかり仕事をして、さ。

 それで。 堂々と  ・・・ きみを貰いにゆきたかったんだ。 」

「 ・・・ それって ・・・ 」

ジョ−は ふう ・・・ と熱い息を洩らした。

「 あの ヒヒジジイに弄られているきみを見たとき・・・ 

ぼくの頭の中は恐ろしいほどに真っ白になって爆発した。 もうたった一つのことしか考えてなかった。 」

「  ・・・・・ 」

「 ・・・ この女は ぼくのものだ! ぼくのだ! ってね。

 だけど。 ぼくはソレを一人で決めていただけだった。 ・・・・ 当のきみにすら言ってなかったんだ。 」

かさり、と彼女の身体に手をかけたまま、ジョ−はソファに身を起こした。

「 だから。 ちゃんと言います。 

 フランソワ−ズ ・・・ どうか ぼくと結婚してください。 」

 

 

その日。 初夏の太陽はゆっくりと西の空を染め、沈んでいった。

「 ・・・ きれいな 夕焼け ・・・ 」

ジョ−の恋人は ぽつり、と彼の腕の中で呟いた。

「 そうだね・・・ 本当に綺麗だ。 」

愛しいヒトと一緒に眺める入日 ( いりひ ) はいつだって最高だ、とジョ−は心から思った。

 

 

 

*************   Fin.    *************

 

Last updated : 02,26,2008.                             index

 

 

********   ひと言   *******

はい、<裏でなにしてましたか?> 原作設定〜〜な あのお話です♪

原作でも二人は仲良しですよね、 <体内に時限爆弾が!>のシ−ンには

二人で一緒にコクピットに現れるし>>夜なのに♪♪

そしてこの後は 『 移民編 』  になるのですが、なぜかジョ−は

博士やフランちゃんとは別居しています! ・・・でその辺の裏事情?を

妄想してみました。  こんなのも・・・ あり、かな〜〜(^_^;)