『 海に ― (1) ― 』
海に いるのは
わたしの 愛
海に いるのは
あなたの 恋
海に いるのは
寄せる真実 返すいつわり
寄せる哀しみ 返すほほえみ
その夏 ― 海洋での事故が続いた。
台風などの影響もないのに さまざまな規模の船舶が行方不明になるのだ。
その場所は 太平洋上のいちおう公海に属する地域だったが 日本から遠くはなかった。
マスコミはさっそく喰らいつき 魔の海域 とか 謎の海洋 とか・・・
騒ぎたてている。
騒いでいるだけで 事態はいっこうに好転せず、相変わらず消息を絶つ船舶の数は
増えていった。
「 − あら また よ。 」
「 え なにが。 」
TVを見て居たフランソワーズが 声を潜めて言った。
「 うん? どうかしたのかね 」
雑誌を眺めていたジョー、 書籍をひろげていた博士も その声の暗さに
思わず顔をあげたほどだ。
「 フラン・・・ なにか あったのかい 」
「 例の ほら・・・ 船の遭難よ 」
「 あ〜〜〜 魔の海域に引きこまれた〜〜 とかいうアレ? 」
「 そ。 ・・・ そんなことって 本当にあるのですか 博士 」
「 そんなこと とは船舶の遭難事故のことかね。 」
「 それも ありますけど ・・・ つまり そのう〜〜〜 特定の場所で
次々に船の事故が起こるって ・・・ 」
「 ふむ? 海流の関係や 強い風の道がある場合には考えられるな。
しかし必ず理由があるはずじゃ。 自然界とは あんがい理論通りなことも
多いのだよ。 」
「 まあ ・・・ それじゃ この一連の事故は 」
「 常識的には海流の急変 とか 嵐、台風の類が連続して発生した、などが
考えられるぞ。 」
「 へえ・・ それじゃ 海の魔物の仕業じゃ〜ないんだ〜〜〜 」
ジョーがかなり素っ頓狂な声をあげた。
「 海の魔物?? それは ― うむ、存在するとしたら もっと人里離れた場所に
ひっそり生息しているのではないかね 」
「 う〜〜〜ん??? こう〜〜〜 さ 海の中から ざば〜〜〜〜って
怪獣がでてきてさ〜〜〜 」
「 ジョー。 怪獣って海にいるの 」
「 あ〜〜 いや〜〜〜 ・・・ あ ほら ネッシーみたいのが ざば〜って・・
犯人かもしれないぜ〜〜〜 」
「 ネッシー??? あれは湖でしょう? 」
フランソワーズはどんどん呆れ顔になってきた。
「 そ〜だけど〜〜 海にだっているかもしれないぜ?? 」
「 それは そうだけど ・・・ あ! ジョーさん。 探検に行ってはいけません。 」
「 え〜〜〜〜〜 そりゃないよ〜〜〜 ぼく達にしかできない
冒険 ― いや 探索 ・・・ 」
「 ほらほら ホンネがみえてるわよ? これはわたし達の守備範囲じゃないでしょう?」
「 そ そんなこと ないよ! 今までだって山や僻地や・・・ 宇宙にまでだって行った じゃないか〜〜 」
「 それは必然的にそうなったってことでしょ。 」
「 ・・・ まあ それは そうだけど 」
「 イワンもなにも言ってないし。 」
「 ワカナラナイことはイワナイ主義 だとさ。 あ! あのう・・・
フラン きみ・・・・ < 見える > ? 」
「 ! ええ 見えますよ、 海が ね。 どこまでもあお〜〜い大海原が
見えます。 」
「 ・・・ ごめん ・・・ 」
「 別に いいわよ、謝らなくても。 つまり < わからない > ってこと。
イワンはまさしく 正解 を言っているのだと思うわ。 」
「 ・・・ だ ね ・・・ 」
そう − この類の < 事件 > について 彼らの仲間・スーパー・ベビークンは
ワカラナイコト ハ イワナイ主義
と 実にそっけない返事をし。 く〜く〜 寝息をたて始めたのだ。
「 ふふ ・・・ ま そんなところなんだろうよ 」
二人の掛け合い漫才? を 博士は面白そうに聞いていた。
この時 ― < 謎の海難事故 > は 全くの他人事、対岸の火事 だった。
そんなやり取りをした数日後 ―
チャプ ・・・ チャプ チャプ ・・・・
外洋は思いの他、 穏やかだった。
ジョーは 自動操縦に舵を固定すると 甲板に出た。
「 お〜〜〜〜 やっぱ光の強さが違うよなあ 〜〜〜
」
羽織っていたシャツを ぽい、と脱ぎ捨てると サングラスをかけ直す。
「 う〜〜〜ん あ〜〜〜〜 海〜〜〜 って気分だなあ〜〜〜
ふ〜〜〜〜 ・・・ 空気の密度が違うよ 」
天を仰いで 深呼吸を繰り返す。
ふ 〜〜〜〜 は〜〜〜〜
「 あは ・・・ 肺の底まで海の匂いでいっぱいだあ〜〜〜 いいなあ〜〜 」
チャプン 〜〜 クルーザーはゆっくりと上下する。
「 うん 一度さ〜〜〜 このフネ、 一人で操舵してソトに出てみたかったのさ・・
な〜〜 いい相棒だよね〜〜〜 」
彼は ぽん、と船端を叩く。
「 えへ ・・・ 黙ってでてきちゃったからな〜〜〜 あとでフランに怒られるかな〜
ま いっか〜〜 本当に緊急時には 脳波通信があるし なんとかなるよ。
これはぼくの 夏休み さ 」
う〜〜ん! もうひとつ伸び〜〜をすると 彼は操舵室に戻った。
「 えっと? 例の < 謎の海域 > まで行ってみるかな〜〜〜
帆を上げれば燃料費の節約にもなるし。 え〜と ・・・ 」
パネルを操作し、モニターをみながらレバーで操作してゆく。
「 ・・・ お〜〜〜 完成〜〜〜 へへへ 帆船はオトコのロマン〜〜〜
なんちっち〜〜〜♪
」
ジョーは 超〜〜〜ご機嫌ちゃんで 操舵パネルもなにもかもそのままで
再び 甲板に出ていった。
さわ〜〜〜〜〜〜 さわさわ〜〜〜
風をはらみ 真っ白な帆がゆれる。 船体もさっきとはちがう揺れ方だ。
「 お♪ いい感じ〜〜〜〜 帆をあげろ〜〜〜 いざ 出発!
それでは 抜錨〜〜 ってとこかな 〜〜 」
ふん ふん ふ〜〜〜〜ん♪
ハナウタ混じりに 彼は操舵室に戻った。
「 ・・・・ あれ。 モニタも、切っていったっけか ・・・・ 」
ちょいと独り言をつぶやき パネルをオンにし自動操縦に舵をセットした。
「 こ〜れで よし。 ― それじゃ 始めるかな〜〜〜 」
ぱん。 彼は 音を立ててたちあがった。
「 さあ〜て? そろそろ出てきてもらおうかな 密航者さん? 」
・・・・ コト ・・・・ 操舵室の戸棚から物音がした。
「 そこにいたのかい。 出港時から窮屈だっただろうなあ〜〜〜
重量チェックで ちゃ〜んとわかってたのさ。 」
・・・・・・・・・ 戸棚は静まりかえっている。
「 すぐに追い出してもよかったんだけど ― 君の目的がしりたくてさ。
・・・ あの港にいたヒトかな 」
・・・・・・・ 物音はしない。
「 ふん。 黙って出てきたけど。 一応普通のマリーナから出航してきたんだ。
ウチのヒトたちにすぐにわかるようにって思ってさ。
もちろん 心配させるつもりなんかないよ、ただ例の海域に行ってみたかっただけだもの。
― で。 やっぱり余計な人員を乗せておくわけにはゆかないんだ。 」
・・・・・ ことん。 足音がした。
「 やっぱり ね。 じゃ ここ 開けるよ。 それで退出ねがうから。 」
ジョーは戸棚の前に立つと ちょっとばかり首をかしげ操舵席に戻るとチェストの中から
スーパーガンを取りだした。
「 ま ・・・ 必要ないとは思うけど ― さあ 開けるよ? 」
戸棚の取っ手に手を掛け一息吸ってから ガチャ。 彼はドアを開けた。
す ・・・ 白い脚が優雅に一歩踏み出してきた。
「 あら どうもありがとう。 」
「 !!??? ふ ふ フラン〜〜〜〜〜 ??? 」
「 はい フランソワーズ・アルヌールです。 ええ 員数外クルーですから。
すぐに退出いたします。 」
「 な なんだってきみは ―
」
ジョーは呆然として口をぱくぱくさせてる ― そんな彼の前を彼女はすたすた・・・
通りすぎ 操舵室を出ようとした。
「 ふ フラン??? 」
「 ああ ・・・ そうだわ。 どこに出かけようとアナタの自由ですけど?
ひとこと言ってください? 一応 共同生活してますのよ、わたし達。
晩ご飯のオカズの都合もありますからね。 それじゃ − 」
「 え ・・・ おい〜〜 それじゃ・・・って〜〜〜 」
「 ・・・・ 」
彼女は 家の玄関から出るのと全く変わらない足取りで クルーザーの舳先までゆくと
ひょい、と船端に脚をのせた。
「 ! ふ フラン〜〜〜〜 どうするつもりだ??? 」
「 だから。 退出します。 船長サンのご希望通りに ね。 シツレイ〜〜 」
「 ! ま まって〜〜〜
」
本気で飛び込もうとしていた彼女を はっし! 彼は抱き留めた。
「 おいおい〜〜〜〜 」
「 まあ なにをなさるの? 」
「 そ それはこっちのセリフ! 〜〜〜〜 もう〜〜〜〜 」
「 あら それこそわたしのセリフだわ、ジョー。 ふらり、と放浪〜〜って
いい加減にしてもらえます? 」
「 ・・・ だから ちゃんとマリーナから出航して 」
「 外洋まで出るって届けてました? 」
「 ・・・ いや ・・・・ 」
「 な〜〜んかソワソワしてるな〜〜〜って見てたの。 興味な〜いって顔してたけど
この前の連続遭難のニュースを見てから どうも目つきが違っていたわ。 」
「 ・・・ バレてた? ・・・ どうしても自分の目で確かめてみたくて ・・・
・・・黙って出てきてことは ― ごめん。 謝りマス 」
ぺこり。 ジョーは素直にアタマを下げた。
「 うふ ・・・ 謝るのはわたしもよ。 あのね〜 わたしもね〜〜〜 < 謎の海域 > には
ちょこっと興味があるの♪ 」
「 な〜んだ〜〜〜 」
「 < 謎の〜 > っていうのに魅かれちゃうって わたし達の宿命かしら ねえ 」
「 あ そうだね・・・ 今まで随分無鉄砲な冒険 してきたものね 」
「 うふふ ・・・実はね〜 わたしも・・・ ねえ なにかワクワクしてこない?
< 謎の海域 > はもうすぐなのでしょ? 」
「 うん まあね。 でもさ〜〜 いつクルーザーに入り込んだのかい?
全然気がつかなかったよ 」
「 あらァ・・・ あのね、準備完了して甲板で最後の点検をしていたでしょ?
あの時にね〜〜 わたし 堂々と乗り込んだの。 」
「 あ〜〜〜! あの時 かあ〜 帆の具合を確かめてず〜っと上を見ていたんだ。
なんか音がしたな〜って思ったんだけど。 風かなって ・・・ 」
「 うふふ・・・ 油断大敵よ、船長さん 」
「 了解です〜〜〜 」
「 あ それからね、わたし自分の食糧はちゃんと持参していますからご心配なく。 」
「 え・・・ 」
に・・・っと笑うと彼女は先ほどまで隠れていた戸棚を開け放った。
レトルト食品と水のペットボトルが増えている。
「 けっこうな量だね、これ全部もってきたってわけ? 」
「 そうよ。 ・・・だから重量オーバーでバレちゃったんだけど 」
「 ・・・ ま いいさ。 フラン、きみをこのフネに招待するよ 」
「 メルシ キャプテン。 」
「 ヨロシク ・・・ えへ ・・・ 二人きりで旅行だね 」
「 うふふ ・・・ そう ね♪ 海のデートね♪ 」
彼女はするり、と彼の首に腕を回してきた。
「 ・・・ あの〜〜〜 このフネはキャビンは一室だけなんですけど〜 」
「 ・・・ ねえ ベッドも? 」
「 一つ。 」
「 おっけ〜 ♪ んんん 〜〜〜〜 」
彼の唇に熱いキスが降ってきた。
「 ・・・・・・ 」
彼は ちらっと自動操舵装置を確認すると 彼女を抱き上げた。
「 新しいクルーを歓迎するよ 」
「 新しい船に感激ですわ あ ・・・ 」
彼は彼女をキスで封じ キャビンへ入っていった。
ゆうらり ゆらゆら ・・・・ ゆら ゆら・・・
身体が揺れているのか 船が動いているのか ― 心地よい眠りに身を任せつつ
彼女はぼんやり感じていた。
ふう・・・ ん ・・・
わたし ・・・海の中 に いる の ・・・?
ちゃぷん ・・・ 遠くで波が船端を洗う音が聞こえる。
うすく開いた眼から 茶色の温かい瞳が見えてきた・・・
「 ・・・ あ ・・・? 」
「 ふ ・・ 起きたかい 」
「 ・・・ ここ ・・・ 水の なか ・・・? 」
「 さあ? どうだったかな ・・・ ぼくは溺れそうになった よ 」
「 溺れる ・・・? 」
「 そ きみの ・・・ 海に ♪ 」
ちゅ。 柔らかいキスが降ってきた。
「 ・・・ きゃ ・・・ もう〜〜 」
「 ふふふ ・・・ 起きる? それとも 」
「 それとも?? 」
「 − もう一回 < 泳ぐ > ? ぼくはそれでもいいけど? 」
ザワ ・・・ リネンの海の下で彼の素脚が絡んできた。
「 ・・・ こら。 起きるわ ・・・ 今 何時? もう夕方でしょう? 」
「 え〜と ・・・ ああ 夕方だね。 陽は沈んだようだ 」
ジョーは身体を起こし キャビンのカーテンをすこしめくった。
「 じゃ ・・・ 晩ご飯にしましょ。 あ〜〜 先にシャワー使うわね 」
「 どうぞ あ 海水のシャワーですよ 悪しからず。 」
「 了解〜〜〜 」
フランソワーズは リネンを巻いたままベッドから降りた。
「 ふ〜〜〜〜 ああ 夕焼けがまだ残ってる・・・ 海はどうかな〜〜 」
さっと飛び起き、 散らばった服を身に着けると彼は甲板に出ていった。
ゆら〜〜〜り ゆら ゆら 〜〜〜〜 ・・・ ちゃっぷん ・・・
西の空もすっかり夜の色になった。
頭上には 星の天井が、 まさに降るように輝いている。
ジョーとフランソワーズは 甲板で天を仰いで寝転がっていた。
「 ・・・ あ〜〜〜 美味かった♪ ご馳走様でした 」
「 うふふ・・・ よかった ・・・ 」
「 なあ 食糧 ・・・ いつ運び込んだのかい? 」
「 あら ・・・ わたし ず〜〜っと戸棚に潜んでいたワケじゃあないのよ? 」
「 え そ そうなの?? 」
「 勿論よ〜〜 船長さん あちこち点検したり操作したり・・・ 一人でお忙し、
だったでしょう? 」
「 まあ ね・・・ 船長 兼 下働き だからな〜 」
「 ですから 密航者にはスキだらけ だったわけ。 わたしは大きな荷物をさげて
堂々と乗船いたしましたわ。 」
「 う〜〜〜〜〜 ・・・ セキュリティ〜〜 問題だな〜〜〜 」
「 ドルフィン号並み・・・とはゆかなくても もうちょっとご検討ください 」
「 ・・・ ど〜しよ〜〜かな〜〜〜 」
「 あら なぜ ? 」
「 だって さ。 万全のセキュリティ にしてたら ― こんな魅惑の密航者さんを
迎えられなかったもんな〜〜〜〜 むぎゅう 〜 」
彼は身体の向きを変えようとして そのまま彼女を抱き寄せた。
「 きゃ ・・・ もう ・・・ 」
「 ふ ふふ ・・・ 星空の下で ・・・ どう? 」
「 ちょ ・・・ 背中 痛いわよ ! 」
「 あ ・・・じゃ これ ・・・ 」
彼は羽織っていたパーカーを脱ぐと 差し出した。
「 ・・・ ん ・・・ どうしようかしらぁ〜〜 」
「 いいじゃん ・・・ 二人っきり ・・・ ― うん ? 」
ジョーは ぱっと起き上がると 船端に駆け寄った。
「 ?? なに どうかしたの?? 」
捲れあがったTシャツをひっぱり下ろし、 フランソワーズも海面を確かめにいった。
ズ ・・・・ ズズズズ 〜〜〜〜〜〜
海面は 青黒くなり 不気味な音とともに渦巻始めていた。
「 ! このままだと引きこまれるぞ ! 」
ジョーは 操舵室に飛び込んだ。
「 ・・・ あ! ジョー ! 」
フランソワーズもしばらく海面を凝視していたが すぐに彼の後を追った。
ザザザ 〜〜〜〜〜 ザザザ〜〜〜
クルーザーは全速力でその海域を離脱し始めた。
がこ〜〜ん ぐわ〜〜ん ・・・ 船体は左右に大きくローリングしつつも
力強く波を掻き分けてゆく。
「 ・・・ 大丈夫か フラン? 」
ジョーは 操舵しつつ声を張り上げる。
「 大丈夫よ! それよりも船は? 」
操舵室の後ろ、固定バーに齧り付いているフランソワーズが はっきりと応えた。
「 ・・・ な なんとか振り切った・・・と思う ・・・ 」
「 すご ・・ さすが〜〜 009ね! 」
「 いやあ ・・・ ドルフィンじゃないから ・・・ もうぎりぎりさ・・
このクルーザーは戦闘用じゃないんだ。 本来ならこんな全速力回避は不可能だ 」
「 あら でも? 」
「 かなり無理したから ・・・ もしかしたらダメージあるかもな 」
「 そう? ねえ ・・・ この付近の海域はずいぶん静かなのね 」
「 ふん ・・・ ちょっとモニターで観察しててくれないか。
ぼくは船体チェックしながら進むから 」
「 アイアイ サー 」
フランソワーズは ぱっと挙手の礼をするとモニターの前に陣取った。
ジョーは 船体スキャンに集中する。
「 う〜ん ・・・ 通常の航海ならなんとか ・・・ なる な。
その代わり もうあんな逃走劇は不可能、ってことか。 う〜〜ん ・・・
ピュンマがいてくれたらなあ ・・・ あ でも通常時に < ちから > は
使わないよって断われるぜ きっと
」
ぶつぶつ独り言をいいつつも ジョーは船体チェックを進めてゆく。
! ・・・ 彼のとなりで息を呑む音がした。
「 どうした フラン? 」
「 ジョー ・・・ これ ・・・ 自然 じゃないわ。 」
「 ?? なにが 」
「 あの海域よ! さっきの ・・・ あの渦、巨大な渦が出現したところ。 」
「 また アレが出てきたのか 」
「 海中に あの大渦巻があるの! 海面は穏やかなんだけど 」
「 ! そんなことがありえるのか??? 」
「 だって あるんですもの! 」
「 ・・・きみ < 見える > のかい ? 」
「 いえ < 見えない > の。 渦自体は見えるわ、でも 中 が見えないよ。
不自然なシールドがある! 」
「 そりゃ ・・・ 」
ジョーは エンジンを再びスタートさせた。
「 え 帰るの? 」
「 帰るか 進むか ・・・ どっちにしろきみは戻れ。 今なら小型脱出ボートで
― 逃げられる。 」
「 ? 冗談じゃないわよ! わたしだって003 」
「 わかってるさ。 」
「 それなら そんなこと、言わないで。 行動を共にします! 船長。 」
「 ― 出来ればそう願いたいんだけど。 」
「 え? 」
「 フラン。 ライフ・ジャケット装着しろ。 」
彼はじっと操舵パネルをみつめたまま 振り返りもしない。
「 ― 防護服に着替えるわ それでいいでしょう? 」
「 急げ! 」
「 え?? 」
「 ― 引っ張られてるんだ! 今度は振り切れるかどうか わからない。 」
「 さっきの 大渦巻 ・・・? 」
「 ああ 多分ね。 」
「 ちょっと 待って。 」
フランソワーズは 操舵室からじっと後方 ― つまり先ほどの海域 ― を見つめる。
「 ジョー ともかく全速力で流れから離脱して 」
「 了解 」
「 狙ってる。 すごい海流が ― このフネを追いかけてきてる! 」
「 見える のか 」
「 ええ。 人工的なモノなら003の超視覚から逃れることなんかできないのよ。
・・・・ 聞こえるわ! すごい音よ! 」
「 操舵は任せてくれ。 実況中継を頼む。 」
「 その前に ジョーも着替えて! これは ― 戦闘だわ。 」
「 ふん そうだね。 あ〜〜 やっぱり火中のクリに手をだすのはぼく達の宿命か 」
「 あら! 今回はね〜 あちらさんが勝手にやってきたの!
いい加減にしてほしいわ〜〜 」
「 だ ね。 でも もう ― しっかり巻き込まれつつあるな 」
「 ふん。 受けて立とうじゃないの? ジョー! 行くわよっ 」
「 へいへい ・・・・ あ〜〜〜 本当にきみは 003 だねえ〜 」
「 な〜に当たり前のこと 言ってるの? ほら 着替えた? 」
「 ああ しっかりマフラーも巻いたよ 」
「 宜しい。 では ― 戦闘開始 よ !
」
「 おう。 」
009 と 003 は に・・・っと笑い合い ― ちゅ♪ 唇を合わせた。
ゴゴゴゴゴ 〜〜〜〜
海鳴りは どんどん大きくなり海面はドス黒く逆巻いている。
「 ― う〜〜〜〜 もうエンジンの限界だ。 焼き切れる・・・ 」
「 待って?? なにか 渦の中心から・・・ 浮き上がってきた! 」
「 別の海流か? 」
「 ・・・ ちがう。 なにかとてつもなく大きな ・・・ 泡 ?? 」
「 泡?? 巨大な泡か?? 」
「 膜 ・・・ みたい な ・・・ ああ〜〜〜 来るわ! 」
「 くそ〜〜〜 フネに加速装置! が付いてたらなあ〜〜〜 」
クルーザーは全速力で逃れようとしたが ―
ザザザザ〜〜〜〜 ゴ〜〜〜〜〜〜〜 ザバァ〜〜〜〜〜〜〜!!!
海中から浮き上がってきた巨大な泡にすっぽりと覆われてしまった。
「 うわあ 〜〜〜〜 」
「 きゃ〜〜 ・・・! ジョー これ・・・ バリア よ? 」
「 なんだって??? そ そんなこと ありえるか?? 」
「 でも そうなんですもの! 」
「 う〜〜〜 ひ 引っぱられる〜〜〜 フラン どこでもいい!
しっかりつかまれ! そうだ マフラーで身体を固定しろ 」
「 わ わかったわ・・・ ああ〜〜 船が ・・・ 」
「 む! くそ〜〜 」
「 「 お 落ちる 〜〜〜〜〜〜 」
」
ゴ 〜〜〜〜〜〜〜 ・・・・!
二人を乗せたクルーザーは海の底へと引き込まれていった。
Last updated : 09,06,2016.
index / next
*********** 途中ですが
原作あのお話 ・・・ 何回か 書きましたけど
今回は 二人で! 海の底へ! ですにゃ〜♪