***** 前書き *****
じつはその。 コレは当サイト最初で最後のキリリク作品なのであります。（大焦り〜〜）
過日、＜一回きり！＞と設定したキリ番に申告は無く小躍り？しておりましたら。（無能ですので・・）
な、なんとキリ番踏みの女王・ROKOさま より【 ３９０００踏みました！ 】 のご連絡が〜♪
あの・ROKO様です。 粗相があってはなりませぬ。 平身低頭して頂いたお題が
【 島村くんの学生時代の思い出 ほのぼの風味 】 という事でした。 ・・・・・う〜みゅ・・・
・・無い知恵絞って・絞って・・・やっとこ書き上げました・・・でも・・・す、すみません、
＜ほのぼの風味＞には程遠いです。 おまけに 原作ベ−ス+平ゼロ設定、という無茶苦茶な仕様に
なってしまいました。 時間的にもちょっと妙ちくりんだし・・・
幸い、慈悲深い・ROKOさまのお許しが出ましたので ここにアップいたします。
お時間と寛容なおこころをお持ちの方だけ・・・・ 読んでやってくださいませ。 <(_ _)>
『 流星 − ROKO様に − 』
そのとき、どうして彼を思い出したのか自分でもわからない。
正直言って 彼のことはすっかり忘れていたし、そんな事があった記憶すら曖昧である。
しかし
その情景は じつに不意に私の脳裏に甦ったのだ。 それも ひどく鮮やかに。
− 死んだら。 星になるんだ。
いつも 鬱陶しげに揺れている前髪をさらりと分けて
セピアの瞳をじっと 夜の高みへと注いで。
少年は ひとり言をいったのだろうか・・・・。
高校生になって初めての移動教室。
退屈な屋外学習。
あまり興味のない天体観測の班にはいったのは くじ引きではずれたためだ。
おまけに コンビを組むのは。
「 よろしく。 （ ・・・ああ、 ついてない。 ） 」
「 ・・・うん。 」
こっちを見ているんだかどうだか、彼はそっけなくうなずいた。
− そっけない。
まさに 彼はその全てをこの一言で代弁できてしまう様な存在だった、と思う。
彼 − 島村 ジョ−。
真面目だけど。 どこかいつもヒトの陰にまわりたがって でも、なぜか目がいってしまう存在。
ハ−フだという彼の外見に 女子の大半ははじめ、きゃあきゃあ言うのだが ・・・・
「 ・・・・なんかさ。 クラいのよね。 」
「 うん。 ノリが悪いっていうかノル気がないっていうか。 」
「 別にお高くとまっているワケでもないんだけど。 ま、アタシはパスだな〜 」
「 ご辞退申し上げます、って♪ 」
成績、特に理数系はいつも上位に名を連ねていた。
「 あいつ〜 進学しないんだろ、手加減しろって・・・ 」
「 趣味でオベンキョする方に割り込まれたくね〜よ。 」
「 結構運神あるのによ、部活やってねえもんな。 」
「 ま、オンナどもの誘いにも乗らないし・・・ ワケわかんね〜 」
進学にしろナンパにしろ 自分たちとはいつも距離を置いているような彼を
男子たちも遠巻きに眺めてるだけだったようだ。
そういえば 放課後も彼はなにかから逃れるように帰宅する。
繁華街をほっつき歩いていたという噂すら 流れてこなかった。
「 バイトの鬼なんだって〜 」
「 バイト？ なんで。 」
「 ほら。 あのヒト・・・教会付属の施設で育ったから。 家計費とかに・・・」
「 ふうん・・・。じゃあ、就職？ もったいないね〜 」
「 いろいろフクザツらしいよ。 」
「 ・・・・そっか。 パス、だな〜やっぱ。 」
「 うん。 なに考えてるんだかよくわかんないし・・・ 」
そんな会話で しだいに＜ファン＞は遠ざかってゆき、彼は相変わらず独りだった。
彼自身も それを望んでいる・・・ ように見えた。
でも、なぜか 自分には ・・・・ 気になる存在ではあったのだ。
気になるってコトは。
好き、なのかなぁ・・・・。
・・・・いっくら考えても でてくる答えは クエスチョン・マ−クだけ。
そんな靄に紛れた感傷に浸っているほど、10代はヒマではない。
次第に 彼の存在は、じゃまっけだから見ない振り、になっていった。
だから よりにもよって同じ班になろうとは。
星占いだけじゃなくて あらゆる占いの神様を呪いたい気分だった。
ま、いっか。
とにかく 手早くノルマをこなしてしまおう・・・
そんな気分で 望遠鏡をセットしていたわたしの耳に その言葉は鮮烈に届いた。
− 死んだら。 星になるんだ。
彼、島村くんはやけにはっきりと呟いた。
わたしは なんとも不思議な気持ちで彼の視線をともに追い、自然とうなずいていた。
都会では とうてい考えられないほどの煌きが天空を埋め尽くしている。
すうっと 身体ごとその闇に引き込まれてゆく。
なんだか 逆に自分の方が星々からじっと見詰められている気持ちにすらなってくる。
「 きれいだろうな・・・・ 島村君の星。 」
「 ・・・え？ 」
「 う、ううん。 なんでもない。 さあ、はやく観測をしてしまいましょうよ。 」
「 ・・・・ ああ。 」
単調な作業に集中するフリをして わたしは自分の持て余していた気持ちを忘れようとした。
短い会話。 義務的な作業。
その夜の記憶は ほとんどといっていいほど無い。
ただ 残っているのは。
こころも埋没しそうな 星空と カレのつぶやきだけだった。
しかしそんな出来事も 掃いて捨てるほどある思い出の中にたちまち呑み込まれ
いつしか 記憶の底へと沈んで行ったに違いない。
本当に そのときまでわたしは全く忘れ切っていたのだ。
進学 就職 そして結婚
いわゆる人生の＜催し物＞に 追われて日々を重ねてゆけば
いつしか わたしは二人の子持ち、 りっぱな＜おばさん＞になっていた！
− 今年も 暑そう・・・・
梅雨明けの 珍しく晴れた夜空にちらりと視線を投げて、わたしはまた溜め息である。
− 夏物、 買い足さなくちゃ・・・。 お姉ちゃんのもカズのも。
二階の開け放した窓から 弾んだ姉弟の声が聞こえてくる。
ごく平凡な娘と息子だけれど、いつも仲良く元気で結構な事だ。
夫のＹシャツにアイロンを当てながら わたしは聴くとはなしに二人の会話に
耳を傾けていた。
「 今晩、お父さん、早く帰るって言ったのに・・・ 」
「 しょうがないよ、カズちゃん。 お仕事なんだから。 」
「 ・・・・うん。 」
膨れっ面で 夜空を見上げた弟の目から一筋 煌きが流れ落ちる。
「 ね、用意をして待ってよう？ お父さん、びっくりよ。 」
「 うん！ 」
姉の笑顔に 弟は目をこすって元気に頷いた。
「 ほんとに今晩は たくさん見えるね。 」
「 そうね、すごいね。 」
夫はごく普通のサラリ−マンだが、学生時代からの趣味でヒマがあると
物干しに出て 望遠鏡などをいじくっている。
いいかげん年代モノになってしまった物干し台を 換えられないのも彼の趣味のためなのだ。
初めは ロマンチックに思えた星空観察も わたしはここ何年かは付き合ってもいない・・・
まあ、 その分子供たちが熱中しはじめたようであるが。
「 あ！ お姉ちゃん、あれ！ 」
「 わあ・・・・・ きれい！ 」
「 おかあさ〜ん、来て来て！ すごく綺麗な流れ星〜〜 」
「 え・・？ 」
大声で呼ばれ、息子の指さす方向を仰ぎ見れば。
ひときわ大きく弧を描き 強い光が中天をよぎってゆく・・・・・
「 あら、ほんとう・・・ めずらしいわねえ・・・・ 」
− 死んだら 星になるんだ。
「 ・・・・え・・？ 」
「 なに、おあかさん？ 」
「 ・・あ、・・・・ううん。 なんでもないの。 」
どうして その言葉が口を突いてでたのか自分でもわからない。
不意に 耳元で聞き覚えのある声が 甦った。
− 死んだら 星になるんだ。
「 あいつ。 死んだらしいよ・・・・ 」
「 え！ あいつって・・・あの。 」
「 ああ、島村。 あいつ、中退しちゃったろ？ 」
「 ・・・そう、だったわね。 」
「 それで、なにか暮らしてた施設が火事になって・・・ その時揉め事があったらしいんだけど。
それっきり。 死んだ、というか。未だに行方不明だって。 」
「 ・・・・ まあ ・・・・ 」
そんな会話を交わしたのは この春のクラス会だっただろうか。
ショッキングな話題だったけれど、なぜかその日が来るのを知っていた気がした。
「 すごいね・・・！ お母さん・・・」
「 ・・え、ええ。 そう、そうね・・・・ 」
「 あれぇ？ お母さん、泣いてるの？ 」
小学生の息子が 不思議そうにわたしの顔を見上げた。
「 え、 あ、 ううん。 ちょっと・・・あんまり綺麗なんで じっと見詰めすぎたみたい。 」
「 ふうん・・・？ 」
「 ああ、あなた達、 なにかお願いごとをした？ あの・・・・お星さまに。 」
わたしは あわてて目尻を払い、子供たちに笑顔をむけた。
「 僕はね〜 」
遊び盛りの息子は いつも明るく屈託がない。
「 あたし？ あたしはね・・・・ 」
お姉ちゃんは、と問われて。
ごく自然に なんの気負いもなく。 だからそれだけになお鮮烈に。
娘の澄んだ声音が 平和への望みを語ってゆく・・・・
ああ、 そうね・・・。 お母さんもそう思うわ・・・・
− ジョ− −−−−−−−−−−−− ！
突然 想いの長けの全てを籠めた ほそい少女の声が
わたしの娘の声に重なって響いてきた・・・ような気がした
それは。
たましいを 喰いちぎられた 叫び
こころを えぐられた 哀しみの迸り
それは。
わたしの心に 深く染み透り溶け込んでゆく。
訳のわからない でも透明な哀しみがひたひたとわたしの心に満ちてくる。
その声を 耳に 消えてゆく星の光を 眼に
わたしは 静かに涙をながし続けた。 そう、いつまでも・・・・いつまでも。
****** Fin. ******
Last updated: 05,09,2004. index