『 浪漫素 ― ろまんす ― (1) 』
ポトン ポトン トン トン ト ン ・・・・!
どこかで水滴が 春の大地に落ちているのだろうか。
小さな音が断続的に 響いている。
ギルモア博士は 沈んでいた肘掛椅子の中でふと本から顔をあげた。
ここ、リビングに入った時には全く気づかなかった。
しかし 一旦気になるとその音は かなり大きく聞こえるのだ。
「 ・・・ ほう ? 雨が続くからなあ どこぞで樋でも詰まっておるのか 」
ハイ・テクを遥かに越える鉄壁にちかいセキュリティを備えたこの邸だが 見た目はかなり古めかしい。
外装には 張り出し窓だの鎧戸だのがふんだんに用いられていて、いささか時代錯誤な
感もしないでもない。
地域の人々も ― 数えるほどだが ― 岬の古屋敷 などと呼んでいるらしい。
へえ〜〜 変り者もいたもんだ わざわざあんな古家に住んでさ
やっぱ ガイジンさんは変わっているね
でもまあ・・・ 空家にしとくのは物騒だし ・・・
まあな。 ガイジンさんだって住んでくれればありがたいさ
・・・ だねえ〜 感じのいいガイジンさんだったよ
そうそう〜 白髭のご隠居と若夫婦だろ?
当初こそそんな噂がちらほら聞こえたが 特に気にするモノなどいなかった。
― 数年が まずまず穏やかに過ぎていった。
ガイジンさん達は 時に留守をすることもあったがいつの間にかまた戻ってきていた。
そして <古屋敷> についても 当の住人たちの中にそれを嫌うものはなかった。
世界中から訪ねてくる仲間たちもそれぞれ ここの古めかしさを楽しんでいた。
「 どれ・・・少し見てこようかの。 これからはどうも菜種梅雨らしいからなあ・・・ 」
博士はどっこいしょ、とお気に入りの肘掛け椅子から立ち上がった。
ポットン ・・・・ トン トン ト ン ト ン ポットン トン トン ・・・
改めて耳を済ませれば 音は一旦間遠になるがまた盛り返す。
「 ふむ・・・? これはやはり修理したほうがよいな。雨漏りは放置すれば大事に至るからなあ
位置からすると ・・・ 屋根裏部屋の屋根かの。 」
博士は一応居間にある家族共用のPCから屋敷の見取り図を呼び出した。
「 ・・・ 屋根裏には ― おお やはり屋根からの樋が外を巡っておるな。
ここか ・・・ もしくは屋根自体が傷んでおるのかもしれん。 」
これはひとつ、大修理が必要かも、と博士はなんだかわくわくして来てしまった。
やはり根底には モノ造り の血が騒ぐ、というところなのかもしれない。
「 ― よし。 ひとつ、大改築してみるか。 まずは実地調査だな。 これは彼に頼むか・・・ 」
博士は椅子から立つと二階へ声をかけた。
「 ・・・・ おおい? ジョー・・・・? すまんが来てくれないか。 ・・・ うん? 」
いつもはすぐに ドタドタ ・・・ バタバタ ・・・ 大きな靴音とともに
茶髪の青年がひょっこり顔をだすのだが ― 今日は返事がなかった。
「 ・・・・? うん? 出かけたのか?
おお! フランソワーズとデートかな。 うんうん きっとそうじゃ うんうん ・・・ 」
博士は相好を崩し しきりと頷いている。
「 ま・・・ いい若いモノが昼日中から家でごろごろしているのも な。
そうじゃ アイツの仕事の件もコズミ君にプッシュしておかねば ・・・
よし。 それではこの件はワシが! なに、ワシじゃとてまだまだ若いモンには負けん! 」
彼は意を決し 二階へと階段を登りだした。
トントン トン トン トン トン トン トン は〜〜 トン トン
意気込みとは逆に博士の足取りはどんどん重くなってゆき ― 屋根裏部屋のドアの前に立った時には。
「 ・・・・ ふう 〜〜〜〜 はあ〜〜〜 ・・・・ ・・・・ こりゃ・・・ いか ん ・・・
もっと 鍛えて おかねば はあ〜〜〜 ・・・・ いざという時に ・・・ ふう 〜〜 」
ドアに手を付き しばし荒い息を整え大汗を拭い。 博士はなんとか体制を立て直した。
「 よ ・・・ よし。 まずはこの屋根裏から ― 」
― カチャ ・・・ 軽い軋りを残してドアが開いた。
「 ・・・ おお ここに来るのは久し振りじゃのう ・・・ どれ ・・・ 奥の ・・・ 」
博士は一歩 中に踏み込んだ。 無数の埃が ぼんやりした光の中に舞っている。
ここにはもう使わなくなった大型の家具やら 季節モノのカーテン、夜具、衣類などが収納してある。
「 たしか この奥に ・・・ うん? 」
「 だれ ? 」
古い
衣裳箪笥の向こうから 鋭い声が飛んできた。
「 ! ・・・ フランソワーズかい!? 」
「 ― まあ ・・・ 博士 ・・・ ! 」
あわてて奥へ進めば そこには ・・・ 古いソファの上に彼女が座っていた。
「 お前 ・・・ ウチにいたのかい。 ワシはまたジョーと ・・・ 」
「 え? ジョーと? 」
「 あ・・・ いや なんでもないよ。 ちょいと雨漏りを調べに来たのじゃが・・・ 」
「 まあ そうですの? ・・・ ああ そういえば 小さな音が聞こえてました。
あれ・・・雨漏りなのかしら。 」
「 ほう・・ やはり な。 すまんな、ちょっと通しておくれ。 奥に屋根に上るハシゴがある。 」
「 !? 博士・・・ 屋根にお出になるのですか? 」
「 ああ。 今日は一応・・・ その 現状確認というか ・・・ 」
「 博士。 わたしがします。 わたしならここからでも十分に <見る> ことができますもの。 」
「 しかし ・・・ お前 ・・・ 」
彼女は < 能力 > を使うことを好んではいない。 特に日常において・・・
「 大丈夫。 ちゃんと見えますわ。 ええと ・・・ 」
ふっと顔を逸らせたが 白い指が目尻を払うのが見えてしまった。
フランソワーズ ・・・
お前 ・・・ 泣いていたのか ・・・
「 ああ ああ よいよ。 点検のためにもちょいと屋根にでてみるから。 」
「 とんでもありませんわ、博士! わたしがやりますから。
屋根に出る、なんて ・・・ この屋敷の屋根の傾斜、 ご存知でしょう? 」
フランソワーズは真剣な面持ちで 博士の腕を引きソファに座らせた。
「 いや その・・・ しかし だな ・・・ 」
彼女の真剣さにたじたじとなり、 博士はもごもごと言葉を飲み込む。
「 わたしのこと、どうぞお気になさらないでください。
お家の仕事ですもの、わたしがやります。 まかせてください。
えっと・・・・ ? 雨漏りをみつけるんですよね。 え〜と・・・ 」
フランソワーズは熱心に天井を見つめはじめた。
「 あ。 みつけました。 複数ありますがほとんど集中しています。 位置は ― 海側の 」
「 ちょ ちょっと待っておくれ。 メモメモ ・・・と ・・・。 ほい、頼むよ。 」
「 はい。 まず一個目は ・・・・ 」
共同作業は 順調に捗り ポトン ポトン の音源もほぼ特定できた。
「 ― 〜〜 〜〜〜 と。 よし、これであとは修繕だけだ! だな。
いやあ ・・・・助かったよ、ありがとう。 フランソワーズ ・・・ 」
「 いえ ・・・ わたしがお役にたてることってこんなコトだけですから・・・
ホントに役たたずですよね。 いつだって ・・・ 」
― おやおや・・・? なにか・・・言われたのかの
いや そんなことではないなあ しかし元気がないのう・・・
それに先ほどはかなり長い時間泣いておったようじゃし
彼女の瞼は赤味がかり、少しはれぼったい感じがする。
博士はつらつら思い巡らせつつも ― しかし何気なく訊ねてみた。
「 ここはお前の お気に入りな隠れ家 じゃったかな ・・・・
重ね重ねすまんのう。 邪魔者は早々に退散するよ。 」
「 まあ 博士 ・・・ 邪魔者 なんて・・・ そんなこと。
あの ここ ・・・ この屋根裏部屋、似ているんです。 」
「 ― 似てる? 」
「 はい。 昔 ・・・ 子供のころ、家族で過した田舎の家に ・・・
その家にもこんな感じの屋根裏部屋がありました。
兄と探検していて見つけましたの。 やっぱりこんな風にいろんなものが並んでいました。
・・・ 雨の日とか外にでられない日 その部屋で遊んだり本をながめたりしてましたわ。 」
「 ほう ・・・ 楽しそうじゃのう。 」
「 ええ ・・・ それで思い出してちょっと・・・感傷的になっていただけですわ。 」
「 これは失礼しました。 」
「 あ ごめんなさい、別に その・・・ 」
「 なにを言っておるんじゃ ・・・ ワシもなあ懐かしいよ。 」
「 まあ 博士も? やっぱりこんなお部屋があったのですか? 」
「 いや ・・・ 屋根裏ではなくて <隠れ家> 的な存在じゃよ。
チビの頃は気に入りの本や駄菓子なんぞを持ち込んだり・・・誰にもそんな経験があるだろうよ。
青年時代には ・・・ そうそうラブレターなんぞも書いたな 」
「 ら らぶれた〜〜??? ですか? 博士が?? 」
「 おいおい・・・ ワシにだって若いころがちゃんとあったのぞ?
そんなに驚かんでおくれ。 」
「 い いいいえ ・・・ でも その ラブレター ですか? 」
「 ああ。 気になる存在はおったし ワシらの時分はメールなんぞないから
なんでも手書きの手紙じゃよ。 こう・・・マズい字もなんとかカッコよくみえるよう、
万年筆をえらんでな。 レター・ペーパーの選択にも頭を使ったもんじゃ・・・ 」
「 まあ ・・・ 博士が ですの? 」
「 こらこら。 言ったじゃろう?ワシだって血気盛んな時代があった、とな。 」
「 ソレはもちろん ・・・ でも博士は研究やら開発に熱中していらしたのだろうなって思って。 」
「 ははは・・・そりゃそうだが。 四六時中書物やデータとにらめっこしていたわけではないぞ?
それになあ ・・・ ははは ・・・ 女性陣の目を大いに意識して研究に発表に勤しんだもんじゃ。
フランソワーズ? オトコなんてな・・・ 皆そんなモンなんじゃよ。 」
「 ・・・ はあ ・・・ 」
「 お前の想い人な朴念仁も そこは同じじゃないのかの。 」
「 ・・・え ・・・ お 想い人・・って そ そんな ・・・ 」
「 隠さんでいいよ? アイツが・・・何か言ったのか?
う〜〜ん・・・ いったい何年ひとつ屋根の下に住んでおるのかのう 」
「 い いえ いえ そんな ・・・ 」
言葉よりも涙の方がほろほろと零れ落ち、彼女の気持ちを代弁しはじめた。
「 や やだわ ・・・ 目、目がヘンなんです、 ホントに ・・・ 」
フランソワーズはハンカチで懸命に涙を隠す。
「 なあ? 泣きたいときには 泣く。 それが一番じゃよ。 」
「 な 泣いてなんか ・・・ いますね ・・・ わたし。 」
自分自身の言葉がトリガーとなり、 フランソワーズはまたはらはらと涙を零した。
「 やだ・・・涙が ・・・ と とまらない・・・ ホント、わたし ヘンなんです・・・ 」
くしゃくしゃになったハンカチで 彼女は自分の涙を持て余している。
「 ほい どうしたね? ここに座ってゆっくりおし。 」
「 は はい ・・・ 」
「 お前、すこし疲れているのではないかな。
一人でこの家をきりもりするのは ちょいと無理なのではないかな。 」
「 そんなこと・・・ ありませんわ ・・・ 」
「 ふむ? ・・・ ま いいわい。 お互い すこしのんびりするか・・・
今度な、この屋根じゃが雨漏り修繕も兼ねて一大改築をしようと思うのじゃよ。
ここならソーラーシステムをもっと有効に活用できそうなのでな。 」
「 ソーラーシステムですか。 いいですね、楽しみですわ。 」
「 な? この国の太陽の恵みを活用せん法はないからな。 」
「 そうですね。 雨漏りの件はあとで ・・・・ ジョーに頼みましょう。
補修する位置はわかりましたから。 」
「 ・・・ そうじゃの。 ふふ・・・年寄りの冷や水、はまずいな。 ありがとうよ、フランソワーズ。 」
「 どうぞご無理なさらないで下さい。 」
「 本当にありがとうよ。 ・・・ で ジョーがなにか言ったのかい? 」
「 ― え ・・・? 」
「 この涙の原因は あの朴念仁じゃないのかな? 」
「 ・・・・・ 」
博士は手を伸ばすと彼女の頬をそっと拭った。
「 ったくアイツは不器用じゃのう・・・ こんな美女を泣かせて 」
「 ― なにも なにも言ってくれないんです。
何を聞いても ぼくはいいよ・・・って。 やんわり断られてしまって ・・・
わたしのこと ・・・ 迷惑なのかしら。 ふふ・・・煩いオバサンって思われているみたい・・・ 」
「 ふむ? そんなことはないとおもうがな。
アイツは自分自身の気持ちをどう表現してよいのか持て余しておるのでないかな。 」
「 ・・・ そうでしょうか ・・・ 」
「 多分 な。 さあさあ そんな顔せずに・・・ おお ここはなかなか居心地がよいな。
雨の日の避難場所によいかもしれん ・・・ 」
博士はまだ音が続く天井を見上げた。
そこには明り取りを兼ねた天窓が開かれたおり、 雨粒が落ちてくる様がぼんやりと見える。
「 ・・・ やはりこんな日じゃったなあ ・・・ ワシが < 彼女 > と出会ったのは・・・」
「 ・・・・?? 」
「 雨の日に座興に 昔むかしの恋物語でもしようかの。
お前の頬が桜色に戻るのを願って な・・・? 」
「 博士。 是非。 伺わせてくださいな。 」
「 よしよし・・・ しかし、な これは他のヤツラにはナイショだぞ?
親父の思い出話なんぞ、息子ドモにはうざったいだけじゃろうし な。 」
「 うふふ・・・お父さんの昔のロマンスを聞けるのは 娘の特権ですわ。 」
やっと明るい笑みが彼女の頬に戻ってきた。
「 ・・・ ふ ふん そういうことだ。
う〜ん そうじゃなあ・・・ うん 何から話そうかの・・・
ああ そうじゃ ・・・ 丁度 こんな天気の日、じゃったか ・・・ 」
博士はフランソワーズと並んで古いソファに掛けると ぽつりぽつりと語り始めた。
その施設は 設備も資材も驚くべき充実ぶりだった。
甘言巧みに誘われ 疑わしく思いつつもここまで来てしまった。
キナ臭い相手だったら 引き返せばよい。
断るも受けるもこちらに任せる、とあのオトコも言っていたじゃないか
アイザック青年は半信半疑の自分を自分で懸命に言い聞かせていた。
そんなことをしなければならないのは 実は妙なことなのだが ― 所謂象牙の塔に
閉じ篭り、世間とはとんと没交渉な彼は気がつかなかった。
彼は 暗黒世界へとおそるおそる一歩踏み込み ・・・ たちまち絡め捕られてしまった。
ソコ はあまりにもあまりにも魅惑的すぎた。
あらゆる面で 規制 がかかることはない。
経済的にも時間的にも ― 人道的・倫理的にさえも。
自分自身が決めたただ一つの目標に向けて形振り構わず驀進できるのだ。
世界中から誘いに乗ってやってきた人々は 夢中になって自己の研究に打ち込んだ。
後ろ暗い連中もかなりいたし、ほとんど逃亡に近い形で参加した人もいた。
しかし そのような < 些細な > ことを気にする人はいなかった。
良くも悪くも専門バカ、 学問オタク の集団だったのだろう。
アイザック青年も 初めは周囲を見回し ―
「 ブラック・ゴースト? へえ・・・ 変わった名前のシンク・タンクだなあ・・
なんだかスラムの不良どもがつけそうな名だな ・・・ 」
・・・ そんなこともチラ・・っと思ったけれど ― そんなことはどうでもよかった。
彼には、いやソコに集う人々は実に充実した日々を送っていたのだった。
「 ・・・であるからこの酵素に、 あ? やあ〜 」
「 ? ・・・・・・ 」
例によって同じチームのメンバーと現在の試案について論じつつ廊下を歩いていたが ・・・
アイザックは反対側からやってきた女性に 片手を上げて挨拶をした。
相手は こくん・・・と小さく頷くみたいな会釈を 一瞬してくれた。
「 − え? なんです? 」
「 あ・・・ いや、 なんでも・・・ それでその酵素に、だな 」
「 それで? 」
彼は話を続けつつも 振り返って彼女をもう一度見たが ・・・ 後姿が遠ざかるばかり。
誰 ・・・だったかな? よくここですれ違うけれど。
― きれいな人だ ・・・
「 それで? その先は ギルモア君。 」
「 え? あ ああ すまん すまん。 あ・・・ あの クロフツ君? 」
「 なんだ? だからその酵素をどうするのかい。 」
「 あ 別の話なんだが ・・・ すまん、あの人、知っているか? 」
「 ・・・ あのひと ??? 」
「 ああ。 今 ・・・たった今、すれちがった人さ。 この棟のどこかのチーム所属かな。 」
「 ああ? この廊下を通るならそうだろう? いきなり、なんだ? 」
「 あ あ〜〜〜 その ・・・ いや、ちょいと知恵を借りたいな、とおもって・・・ 」
「 なんだあ? ギルモア君、どうした。 気分でも悪いのか。ついさっきとは随分違うぞ? 」
「 だから その。 え〜・・・ あの人にも声かけよう、と思ってな。
うん ここで出会ったのはラッキー♪ ということでちょっと話してくる! 」
「 はあ??? おいあの人の専攻を知っているのか? 」
「 それを今から聞いてくるのさ! 先に行ってくれ〜〜 」
クロフツの返事も待たずに アイザックは駆けだした。
「 ? なんだァ 〜〜 アイツ。 さっきの人って誰だ? ・
・・・ ああ アイツか。 ・・・しかし彼女の専攻は確か理論物理学畑のはずだぞ??
なんだっていうんだ?? 俺たちの現在のテーマには無関係だろうが。 」
本当に妙なヤツだ ・・・ とぶつぶつ言いつつ、クロフツは行ってしまった。
― 青年が同じ年頃の女性の後を追って行ったこと に関してはまったく無関心だった
「 ・・・ おおい お〜い ・・・ 待ってください! 」
「 ? ・・・・ 」
足音高く走ってくる青年に 女性は少しばかり眉を顰めた。
余計なことに時間をとられたくなかった。
「 待って・・・ください! 」
「 ・・・ あの。 ご用件はなんでしょうか? 」
やっと彼女が立ち止まり、 振り返った。
「 はあ はあ ・・・ あの! 少々聞きたいことが あって・・! あ 僕は ― 」
「 K棟 チームのギルモア博士ですね。 」
「 ! そ そうです。 なんだ、ご存知でしたか。 」
「 貴方の論文はいくつか拝読していますから。 あの それで御用は?
多分 お役には立てないと思いますが。 専攻がちがいます。 」
「 いや。 そんなこと、ないですよ。 」
青年はなぜかきっぱりと言い切った。
「 ??? 」
「 このところずっと あの廊下ですれ違っていましたよね! 」
「 ・・・ はい。 季節が雨期に近くなったので道を変えました。 」
「 ああ やっぱり。 これは ― 運命です。 」
「 ・・・ 運命 ??? ずいぶんと非論理的なことをおっしゃいますね。 」
「 あはは・・・そうですか? まあいいや。 僕はアイザック。
ああ もうご存知でしたな。 で 貴女は? 」
「 ・・・ 私?!? 」
「 そう。 見事な黒髪の方。 なんとお呼びすればいいのですか 」
「 ・・・ マノーダ。 ジュリア・マノーダ です。 」
片頬を長い黒髪で隠した彼女が やっとアイザックをまっすぐに見つめた。
― ・・・ ! この瞳は ・・・!
彼は 棒立ちになってしまった。
どうやら青年はまともに心を射抜かれた ・・・ らしい。
「 まあ〜 ・・・ くふふふふ ・・・・ 」
フランソワーズは古いソファの上で身体を折って笑っている。
「 お? な なんだね、そんなに可笑しいかな? 」
「 ええ だって。 博士ったら〜〜 すごく積極的なんですもの・・・
わたしだったら、 いえ どんな女性だってびっくりして・・・引いてしまいますわ。 」
「 お? そんなものかなあ。 」
「 そうですよ〜 で その方は ・・・ 」
「 うん ・・・ 彼女の専攻は理論物理学で当時のワシの研究テーマとは
直接関係はなかったんじゃが ・・・・・ ワシは強引に彼女に頼みこんだのさ。 」
「 まあ ・・・ それで? 」
「 うむ。 なんとか協力の約束は取り付けたのじゃ。
実際、公平に見て、彼女はワシなんぞよりずっと優秀な物理学者じゃったからの。 」
「 まああ・・・ それで それで?? 」
「 ― それで まあ ・・・ なんというか。
さんざん拝み倒して 共同研究者 にならせてもらったわけさ。 」
「 博士〜〜〜 すごい! すごい〜〜 」
「 こらこら・・・凄いとはどういう意味かな? 」
博士はぽん、とフランソワーズの頭に手を当てた。
「 それをこれからお話してくださらなくっちゃ・・・ 」
「 ふふふ・・・ お前も心憎いことを言う ・・・ まあ それで じゃなあ 」
「 ・・・ はい? それで?? 」
「 それで ― ワシらはお互いの研究テーマの掘り下げに熱中して ・・・
そうなんじゃ あの日もこんな雨の日で ・・・ 彼女の涙が な ・・・ 」
やはりその日も 窓の外はそめそめと灰色の雨が落ちていた。
しかし 頭脳集団にとってそんなことはどうでもよかった
・・・いや 雨などに気づく人はほとんどいなかった。
「 ― なるほどなあ ・・・ 毎回のことだけど、君の着眼点はすばらしな! 」
「 そう? ・・・ ふふふ 不思議だわ。 」
「 ? なにが、かい。 」
「 私自身 いえ 私の心が よ。 アイザックに褒めてもらえると なんだかとっても嬉しいの。
お世辞でもいいの、なんだか ・・・ とっても嬉しいわ。 」
「 おいおい・・・ お世辞なんかじゃないぞ? 」
「 それなら ・・・ もっと嬉しい わ ・・・ 」
「 君は ― ステキ だ・・・ 」
「 私。 そんなんじゃないわ・・・ 私 ・・・ 」
彼女はぷい、とそっぽを向くと 窓辺へ寄っていった。
「 ジュリア? どうしたんだ? 俺 なにか気に障ること、言ったかい?? 」
「 いいえ いいえ ・・・ そんなこと、ないわ ない ・・・わ ・・・
アイザック。 あなたこそ・・・素敵な方だわ ・・・ 」
「 ジュリア ・・・ 君の口からそんな言葉が出るとは ・・・ 」
「 私だって! ・・・ 私だって ・・・ 人間よ。 女なのよ 」
「 ごめん、そんな意味で言ったのじゃないよ。
ジュリア。 俺は君を研究者として尊敬している。 」
「 ・・・ 尊敬? 」
「 ああ。 尊敬し感服さえしている。
そして一人の素晴しい女性として ― 愛している。 」
「 ― ! アイザック ・・・! い いけないわ そんな軽はずみなことを ・・」
「 なにがいけない? 何が軽はずみなんだ?!
俺たちはずっと一緒にすごして来たじゃないか。 」
「 あのね。 ・・・ この ・・・ 傷。 貴方 この片面の傷、知っているでしょう? 」
ジュリアは片頬に掛かる黒髪の上から指し示している。
「 ・・・ それは・・・ しかしそんな傷は表面的なものだろう?
気になるのなら すぐに整形外科で ― 」
ジュリアの片頬 ・・・ 黒く輝く髪が覆うその下、彼女の顔の右半分は酷い火傷の痕がある。
ここの誰もが気づいてはいたが わざわざ言い立てるものもいなかった。
頬の傷跡は 彼女の研究成果になんらのマイナスにはならなかったから・・・
だから 彼女が今更そんな傷を気にしている、とは思えなかった。
そんな風にしか考えられないことを 変わっている、と思う人もないのだ。
「 ダメよ、 ダメなの。 これは この傷は ― 私の贖罪の印 ・・・ 消してはいけないの。 」
「 贖罪?? 」
「 そうよ。 この傷はね、 私が弟を殺した罪の証なのよ。
私の悪戯心が弟の命を奪った証拠なの。 」
「 ・・・ 弟さんの? 」
「 ええ。 ほんの子供のころよ。 私は火薬を悪戯していて・・・ 暴発したの。
側で遊んでいた弟は ・・・ まだ4歳だった弟は ・・・ 巻き添えで死んだわ。
私が 殺したのよ。 」
「 じゃ ・・・ その傷はその時の? 」
「 ええ。 暴発で火傷した痕よ。 だから 私の罪の証。
一生 もってゆかなければいけない。 」
「 罪 だって? 」
「 そうよ。 ・・・ よく見て アイザック。 この傷を 見て。
私 とんでもない人間なのよ。 ・・・ ほら! 」
ジュリアは頬を覆う黒髪を 払いのけた。 そこには ―
ぽと ぽと ぽと ・・・ 大粒の涙が彼女の頬を伝い足元におちる。
「 ・・・ ジュリア。 もう いい。 」
アイザックはそっと ・・・ 彼女の頬に触れ涙をぬぐった。
彼女はぴくり、と震え、身体を引こうとした。
「 ジュリア! 」
「 ― ! アイザック? な なにを ・・・ 」
彼はそのまま彼女を抱きしめ ― 熱く唇を重ねた。
「 ・・・ すまん 驚かせて ・・・ しかし 俺の気持ちはウソじゃない。 」
「 ・・・・・・・・ 」
「 この痕 ・・・ 俺が治そう。 弟さんも姉さんの笑顔を望んでいると思う。 」
「 ・・・ そうかしら ・・・ 」
「 ああ そうに決まっているよ。 君はもう・・・十分に贖罪してきたさ。 」
「 ・・・ でも ・・・ 」
「 あとは俺が全部引き受けてやる。 整形が気が進まないのだったら人工皮膚はどうかな。 」
「 人工皮膚? 」
「 そうだ。 ほら 俺の新しい研究テーマ、サイボーグの実験体用に開発してるヤツさ。
あれを応用すれば ・・・ この傷痕は綺麗にカバーできる。 」
「 そ そんなことをしても いいのかしら・・・ 」
「 いいさ。 そして明るい笑顔をみせてほしい ― 俺に ・・・ 」
「 まあ ・・・ でも ありがとう ・・・アイザック。 」
「 ・・・ それで ・・・ その方に人工皮膚を? 」
「 ああ。 ・・・すまんな、フランソワーズ。 こんな話になってしまって・・・ 」
博士は語りすぎた事を少し後悔していた。
この時に彼が研究に熱中していたテーマ ― サイボーグの開発 ー の結果が
フランソワーズたちゼロゼロナンバー・サイボーグたちなのだから。
「 え ・・・ ああ どうぞお気になさらないで・・・
その方には・・・ その、純粋な医療行為だったのでしょう? 」
「 そうじゃな。 火傷で真皮まで傷つき変色していた部分を治療したのじゃ。
火傷の痕は普通自分自身の皮膚移植をするのじゃがな ・・・ 彼女の場合は
損傷が深いのと年月が経ち過ぎていて ・・・ 生体では不可能じゃった・・・ 」
「 そうですか ・・・ それで もとに? 」
「 ああ。 普通の若い女性の頬に戻ったよ。
包帯が取れて 初めて鏡を見たときの ― 彼女の笑顔は 忘れられんなあ 」
博士は目を細め ・・・ 遠い日を懐かしむ。
「 そうでしょうねえ ・・・ 女性にとって顔は やっぱり特別な意味がありますわ。
どう理屈をつけたところで 美しくなりたい と思いますもの。 」
「 おや。 こんなに美人なお前でもそんなことを言うのかい。 うん? 」
博士は愛おしそうに フランソワーズの頭をなでた。
「 美人だなんて・・・ でも 女の子は誰だって綺麗でいたいんです。
それを ・・・ 贖罪のために火傷の痕を消さないなんて・・・
きっと深く 深く傷ついていらしたのですわね ・・・ 身体も心も ・・・ 」
「 うむ ・・・ ワシはなあ・・・ ほんに鈍感で学問バカじゃったワシには 彼女のそんな
複雑な心の内を理解してやることができんかった・・・ 」
「 え? だって ・・・ 人工皮膚で綺麗に治ったのでしょう? 」
「 ああ。 元の・・美しい顔を取り戻してから 彼女は時には明るい笑顔を見せるようになった。
ワシはな。 あの頃の学問以外なにも知らなかった愚か者は ・・・
それで彼女自身も全て オッケー、と思い込んでいたのだよ。 」
「 ・・・ それは ・・・ 」
「 ああ。 おめでたいヤツと笑っておくれ。
その後 ワシらは 共同研究者 として研究を続け やがて同じ目標に向かった ・・・ 」
博士の声は どんどん低くなってゆく。
「 ― 同じ 目標 ・・・? 」
「 そうだ。 」
「 え。 プロジェクトに参加してくれるのかい!? 」
「 ええ 喜んで、というよりもどうぞ参加させてほしいわ。 その・・・いいかしら。 」
ジュリアにしては珍しく言葉を濁した。
「 いいも悪いも・・・ 君が参加してくれたら鬼に金棒・・・俺たちの研究は驚異的に
グレード・アップするよ! 」
「 じゃ 決まり ね。 あ わたし お砂糖はいらないわ。 」
「 うん ・・・ おっと〜〜〜 ほい、と・・・・ 」
アイザックは案外器用にコーヒーをサイフォンから注いだ。
「 トースト、ひっくり返したほうがいいぜ? 」
「 え? あ ・・・! ァ〜・・・・ こっち側 焦げちゃったわ・・・ 」
後ろにあるストーブに乗せたパンをジュリアは摘み上げた。
「 あは・・・ ふふふ・・・ 今週で何枚目 かい〜〜 」
「 ・・・ もう忘れたわ。 あ〜〜 料理ってなんて難しいのォ〜〜〜 」
「 トーストは料理、じゃないと思うな〜 」
「 え? なあに、アイザック。 」
「 いえ なんでもありません。 いいさ いいさ 焦げてる面を下にして食えばさ 」
「 ?? 裏にしても焦げてることに変わりはないわよ。 」
「 そりゃそうさ。 でも 気が付かないで食えるだろ。 」
「 まあ〜〜あ 随分と非論理的な思考ね。 」
「 あはは・・・ そうか? いいじゃないか。 こうして二人で ― んん 」
「 あ ・・・ もう〜〜〜 んんん 」
青年は くい、と彼女を抱き寄せキスをした。
「 こうやってさ ・・・ 研究室で実験しつつ食事が摂れるってのも最高だよなあ〜 」
「 トーストとコーヒーと ・・・ チーズとジャムだけだけど・・・ 」
「 それで十分さ。 オカズは君の新しい論理の展開だ。 」
「 ふふん。 言ったわね? ― でも寝るのはここじゃァいやよ 」
「 ふ〜ん 俺はどこだっていいさ。 君という最高の羽根布団があるから♪ 」
「 ・・・! もう ・・・ アイザックってば ・・・ 」
林立する実験器具の中、まことに殺風景な蛍光灯の灯の下 ― 二人の若い科学者は
熱く そして 甘い視線を絡ませあう。
「 論理といえば ねえ アイザック。 新しい提案があるのよ、私。 」
「 提案って あのテーマについて、かい。 」
「 そうよ。 これはずっと検討していたことなのだけれど。
人工皮膚の件よ。 例の塩基配列変化するヤツ で 」
「 ふむ・・・? 」
齧りかけのトーストを片手に ジュリアは新案を解説し始めた。
アイザックは熱心に耳を傾けつつコーヒーに砂糖を加えぐるぐる ぐるぐる・・・かき回し続けていた。
― 二人は 共棲を始めていた。
科学者たちの住居は それぞれ十分に広い場所が提供されていた。
研究目的だけのために < 合宿 > 風に同じ住居に寝起きする人達もいたし、
夫婦者もいくらかはいた。
そんな中で 二人が共棲していても気がつく者もほとんどいなかったし、気づいたところで
あれこれ言う輩もいなかった。
二人は ― 最高に充実した日々を送った。
互いに好敵手と認め、互いの才能を尊敬しあう相手と同じ研究に打ち込む。
丁々発止と議論を戦わせることもあるが それもよい刺激だった。
そして たとえ実験器具の合間での食事であっても 愛する人との一時はまた格別だ。
「 ― この方向で突き進めてみる、か。 」
「 当然でしょ。 アイザック、あなたともあろう人が何を躊躇っているの。 」
「 う うん ・・・ よし。 それでは ― 行くぞ。 」
「 オーライ。 その言葉を待っていたわ。 」
「 ありがとう、ジュリア。 君のその言葉が背中を押してくれたよ。 」
「 じゃ ― 改めて。 よろしく。 」
「 おう。 」
すっと差し出された白い手を 青年は きゅっと握った。
彼らの研究はまさに日の出の勢いで進められてゆき、ついにはスポンサーの ― つまりは
この大規模ラボの統括経営者・ブラック・ゴーストによって正式に採用された。
もっとも当の二人はそんなことはあまり気にしなかった。
彼らの目標はあくまで研究開発の完成 ― 完璧なサイボーグ戦士をうみだすこと、だった。
「 よし。 これで選出タイプは決まりだな。 」
「 そう そうね 」
アイザックとジュリア ― この黄金のコンビは絶好調だった。
互いに補い合い切磋琢磨しつつ 二人の<研究>は 留まるところを知らず発展していった。
「 あとは ― 個別の設定をより緻密にすることだ。 」
「 そう ね。 そしてそろそろ実験体を探したほうがいいわね。 」
「 うん。 さすがにマウスとは違うからなあ。 」
「 ・・・ ええ 」
「 よし。 これは俺たちの専門外だからな。 統括本部に相談してみる。 」
「 それがいいわね ・・・ 」
ずっとハイテンションの青年は 文字通り地に足が付いていなかった ・・・ のかもしれない。
絶好調の日々はずっと続くのだ、と彼は信じて疑わなかった。
しかし フェイントは思わぬところから掛けられた。
「 な なんだって?? 休暇 ァ ??? 」
相変わらず実験室でお茶を飲みつつ 彼女は ごく当たり前の事柄みたいに言った。
「 そうよ。 もう承認ももらったわ。 」
「 ・・・って どのくらいかい。 3日? 一週間か。 」
「 ― 一年間 」
「 !? い 一年だって?? おい、バカも休み休み言えよ?
今 俺たちのプロジェクトに一年の延期をしろ、というのか!? 」
「 いいえ まさか。 サイボーグ戦士開発計画 は現在のままだわ。 」
「 ? だって君、 一年間の休暇をとるって言ったじゃないか! 」
「 ええ 言ったわ。 休暇を承認されたのは 私。 」
「 き 君 ・・・だけ? なぜ!? なぜなんだ? そしてどうして本部は承認したのだ!? 」
「 アイザック。 そんなに大声、出さないで ・・・ 頭に響くわ ・・・ 」
ジュリアは本当に不快そうにコメカミを押さえている。
「 あ・・・ ああ すまない。 しかし 君、 顔色悪いぜ? 」
「 ・・・そうね。 休暇は休暇でも 療養休暇だから・・・ 」
「 療養 ?? 病気なのか!? そんな・・・ ちっとも・・・
いや! 病気ならばここのラボでは超先進の医療開発が行われているじゃないか。 」
「 私、モルモットになる気はないわ。 ともかく一年。
それが過ぎたら戻ってくるわ。 」
ジュリアは 話を打ち切る風に立ち上がった。
「 ジュリア! ・・・ 俺のこと、飽きたのか。 」
「 アイザック。 戻ってくる、と言ったでしょう? お馬鹿さんねえ・・・ 」
ちょん、と啄ばむみたいなキスを落とし、ジュリアは研究室を出ていった。
「 ― それが ワシらの・・・ワシと彼女の日々の終わり、じゃったか・・・ 」
ギルモア博士は深い深い溜息をもらす。
「 ・・・ その方・・・戻っていらっしゃらなかったのですか・・・? 」
「 いや。 ちゃんと1年後、戻ってきたよ。 」
「 よかった・・・ でも ・・? 」
「 出かける前にはこけていた頬も元にもどり、少しふっくらして・・・元気そうじゃった。
身体的には健康になったのだと、思うよ。
しかし 彼女の方針は ・・・ いや ワシの考えが変化していた、ということかの・・・ 」
自嘲めいた淋しい微笑みが博士の口元に漂う。
「 まあ ・・・ 博士? あの間違っていたらごめんなさい。
あの・・・ もしかしてその方は身ごもっていらしたのではありませんの? 」
「 ― な なんじゃ と ・・・?? 」
ギルモア博士は心底驚いた様子でフランソワーズをまじまじと見つめていた。
・・・ 思い出話が 今突然に思いもよらぬ局面を見せはじめた。
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updated : 04,03,2012.
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********* 途中ですが
・・・・ 続く ・・・ かも???
恋物語 だってイロイロあり。 私的には 死に逃げはナシ★