『  肖像画    − ポ−トレイト −  』

 

 

 

 

パタン ・・・

奥へと続くドアがかるく軋んで閉まった。

応対に出てきた無表情な小女は彼らをそこに留めたまま、ドアの向こうに姿を消した。

サイボ−グ達は無意識のうちに身構え、周囲を警戒する。

 

  あら。 この空気 ・・・ わたし、知っている・・・?

 

天井の高い吹き抜けに近い玄関ポ−チで、フランソワ−ズはぴくり、と身体を震わせた。

それは 決して恐れや嫌悪の情ではなく、むしろほっとする感覚だった。

ぴりぴりと張詰めていた神経が その空気の中で自然と潤びてゆく。

 

  だめ!油断をしては ・・・ だめよ。 ・・・ 003!

 

彼女の理性は懸命に身体全体を引き締めようとしたが、あまりの心地よさに

次第にその役目を放棄し始めていた。

 

  ・・・ そう、こんな色合いだったわ。 こんな香りがしたわ。

  街並みも お家の玄関も・・・ みんな みんな・・・

 

もう決して思い出すまいと心に決めていた光景が 目裏に浮かび上がる。

長年押し込めてきたゆえになお一層鮮明になりフランソワ−ズの心の中に広がった。

 

  わたしの ・・・ 住んでいた家、暮らしていた街 ・・・ そう、生きていた時代・・・

  みんな こんな風に ・・・ 優しかったわ・・・・

 

「 ・・・ 随分と年代モノの屋敷だな。 」

 

  ・・・ え ・・・?  あ、いけない!

 

アルベルトの声に 辛うじてフランソワ−ズの理性は目を開けた。

「 左様・・・ ビクトリア様式に近いな。 建築当時、この国では珍しかったのではないか。

 ごく初期の西洋建築だろう。 」

「 ああ。 」

「 明治の初めってことかな。 歴史で習ったかもしれないよ。 」

「 ・・・ ア−ル・ヌ−ヴォ−も入っているわ。 ほら。 」

フランソワ−ズは階段の手すりを指差した。

艶やかなマホガニ−が優美な曲線を描き階上へと連なっている。

「 いずれにせよ・・・ 相当な資産家の屋敷だな。 」

「 ああ。 ここの土地も広大だった。 」

「 ・・・ し。 だれか 来るわ。 女性よ? ・・・ この屋敷のヒトかしら。 

 さっきドアを開けてくれたヒトじゃない。 ・・・ ここの女主人 ・・・ ? 」

「 ・・・・・・・ 」

アルベルトは 黙ってフランソワ−ズを後ろ手に庇う場所に立った。

グレ−トは 逆に一歩進み出、ジョ−は ・・・ 所在なさ気にフランソワ−ズの横に来た。

 

 

コツコツコツ ・・・

軽やかな靴音が近づき、やがてよく磨き込まれた彫刻つきのドアが開いた。

 

  ・・・・ !!

 

一瞬、部屋の空気が凍りつき、固まった。 誰もが呼吸を忘れた。

 

「 ・・・ お待たせいたしました。 」

 

澄んだ声音とともに、一人の婦人が姿を現した。

床までの長い裳裾が さわさわと淡い衣擦れの音をたてる。

古風な衣裳を纏ったその女性は ゆっくりと彼らに視線を当てた。

 

「 ・・・ ようこそ。 わたくしが只今、この屋敷の主人ですわ。 

 なにか ・・・ お知り合いの方を探していらっしゃるとか? 

「 これはこれは ・・・ お美しいマダム・・・ 

 突然不躾に伺いまして ・・・ 申し訳ござらぬ。 」

グレ−トは 目敏く彼女の左手に指輪を認め、慇懃に腰を屈めた。

「 拙者は グレ−ト・ブリテンと申します。 この者らは拙者の年若い友人達です。

 我々はある御人の消息を求めておりまして・・・ご明察の通りです、美しい方。 」

「 ・・・ ミスタ−・ブリテン? お友達の方々も・・・ もしお宜しければお茶でも如何。

 そろそろティ−・タイムですし、この季節には暖かい飲み物は欠かせません。 」

「 おお〜〜 これはありがたき幸せ・・・。 諸君、どうだな? お誘いをお受けしようではないか。 」

満面の笑みで グレ−トは背後のアルベルト達を振り返った。

 

「 ・・・ ああ。 俺に異存はない。 ゆっくり話を伺おう。 」

「 お邪魔ではありませんか?  急に ・・・ ごめんなさい。 」

「 ぼ・・・ ぼくは 皆がいいなら、それで・・・・」

それぞれの風貌と同じく、てんでな応答にその女性はにこやかに微笑んだ。

 

「 それでは ・・・ 奥へどうぞ。 なんのおもてなしもできませんけれど・・・ 」

 

どうぞ、と差し伸べられた手は白くしっとりとした艶やかさを湛えていた。

 

 

 

「 おや。 これはマイセンですね。 」

「 ええ。 よくお判りになりましたわね。 このセットは特注品で

 普通のマイセンとは見かけがすこし違いますの。 」

「 ・・・ 故郷 ( くに ) のものは意匠がちがっていても判ります。 」

「 まあ、独逸の方ですの? 

 主人が仕事であちらに参りました時に 気に入って特に職人に焼かせました。 」

「 ほう・・・ 素晴しい逸品ですな。 う〜ん ・・・ こちらもフォ−トナム・メイソンの

 ・・・ 特注・一番摘み、ですか。 

グレ−トは精巧な茶器を取り上げ紅茶の香りを存分に楽しんでいる。

「 はい。 イギリスのお方ですか? ・・・ そんな気がしておりました。 」

「 ・・・ ご慧眼、恐れ入ります。 」

和やかな空気が落ち着いた雰囲気の応接間に満ちている。

くすんだ壁紙はオダリスク模様でところどころに使われている金泥が 時折にぶく光った。

誰もがゆったりと肘掛け椅子に身を沈め、ゆるゆると流れる時を楽しんでいた。

 

「 ・・・ あの。 ティ−・タイムの最中に不躾ですけれど・・・

 わたし達がお訊ねしたこと・・・ 教えていただけませんか。 」

今まで口を閉ざしていたフランソワ−ズが控え目だが、はっきりとした声音で口を挟んだ。

「 あら・・・ ごめんなさい、お嬢さん。 わたくし、皆さんとのお茶が楽しくて・・・

 つい忘れてしまっていましたわ。 ・・・ ああ、でもお客様って本当に久し振りですの。

 はしたないですわね、はしゃいでしまいましたわ。 」

ごめんなさい、とこの屋敷の女主人はフランソワ−ズに微笑みかけた。

 

「 いえ・・・ 。 わたしも、わたし達もつい・・・ 長居をしてしまいました。 

 あの ・・・ こちらに・・・ ? 」

 いいえ、と女性は首を横に振った。

背の中ほどまで梳いてながしてある髪がふわり、と彼女の肩口で揺れる。

古風だがきちんとした服装に、あまり髪形があっていない。

この服装には、夜会巻き風に髪を結い上げるのが普通だろう。

自分のよりもすこし濃い亜麻色の髪を フランソワ−ズはじっと見つめた。

 

「 確か・・・コズミ博士、でしたね。 あいにく・・・ そういう方はいらっしゃいませんわ。 

 こちらには全然お寄りにはならなかったようです。 召使に確かめてみましょうか。 」

「 あの ・・・ どうぞお気を悪くなさらないでください、奥様。

 コズミ博士はわたし達の恩人で ・・・ 

 あの方はどうも騙されて強引に連れ去られてしまったらしいのです。 」

「 ・・・ まあ、なんということ・・・ 」

「 その後・・・ コズミ博士の研究室に忍び込もうとしたオトコを取り押さえて

 ソイツから 博士はこちらに拉致している、と聞きだしたのです。 

 どうもお仕事の関係で博士の発明を強奪しようとしているらしいのです。 」

「 ・・・ ひどい。 どうして・・・ そんな酷いコトにこの邸の住所をつかったのかしら。

 ご覧のとおり・・・ ここはわたくしと召使達しかおりませんわ。 」

「 ・・・・ あのお・・・ 」

その時まで 黙っていたジョ−が ごく自然な口調で言った。

「 こちらのご主人は? お留守なのですか。 」

 

  ・・・ ジョ− ・・・ !  それを訊くのは 失礼だぞ・・・!

 

一瞬、ほんの一瞬この邸の女主人は頬を強張らせたが、すぐに柔らかな微笑みを唇に結んだ。

「 ええ。 外地に行っておりましてね。 手紙はしばしば来るのですけれど、

 忙しすぎてなかなか帰ってくる暇がないようですわ。 」

「 そうなんですか。  随分と立派なお邸なのに・・・とても静かだから・・・ 」

「 ええ、ずっと昔に夫の父が建てさせたそうですわ。

 あの・・・ よろしかったら屋敷内をご案内しましょうか。 皆さんもご自分の目で

 確かめられれば ・・・ ご安心でしょう。 」

夫人は微笑んだまま、腰を浮かそうとした。

「 あ・・・ マダム、それはあまりにも無礼というもの。

 貴女様のお言葉によもや間違いはありますまい。 」

グレ−トは座ったままだったが、彼の言葉は夫人を落ち着かせるのに充分だった。

夫人は素直に再び腰を下ろした。

「 俺たちこそ・・・ 長居をしてしまい申し訳ないです。

 久し振りで故郷のものを目にできて・・・ 感激しました。 ありがとう。 」

相変わらず、ぶっきらぼうだがアルベルトの言葉には浮ついた響きがないだけに

聞くものの胸に沁みとおる。

「 余計なことを聞いて・・・ ごめんなさい。 お茶、美味しかったです。

 あ・・・サンドイッチも。 」

ジョ−の屈託のない口調に 夫人も自然と笑みを浮かべている。

 

「 それでは ・・・ わたし達、他を当たることにいたしますわ。

 ご馳走様でした。 素敵なティ−・タイム、ありがとうございました。 」

「 あら・・・ もう? ・・・ お礼を申し上げるのはわたくしの方ですわ、

 綺麗なお嬢さん。 」

「 いやいやこちらこそ、久方ぶりに本当のティ−を賞味させて頂きました。

 では ・・・ これにて失礼をいたします、 マダム。 」

グレ−トは夫人の手を取り慇懃にお辞儀をした。

 

 

外に出ると、すでに日は没しかけ西の空を茜いろに染めていた。

「 あら。 もうそんな時間かしら。 わたし達・・・ ずいぶんと長く

 あのお邸にいたことになるわ。 」

フランソワ−ズが 手首を覗き込み、首をかしげた。

「 そんなに長くはなかったはずだぞ。 お茶の一杯や二杯飲む時間だった。 」

「 ええ ・・・ でもね。 この門を入る時にはまだお日様は高かったわ。

 ほら、あの窓・・・ 二階の窓が反射していたもの。 」

「 ・・・ふむ? 中は 別の時間ってことか。 」

アルベルトは自分の言葉に憮然とした表情だ。

「 さあ・・・? あ ・・・ 」

「 どうしたね、マドモアゼル? 」

「 ・・・ え? あの・・・ ううん ・・・ なんでもないわ。 」

グレ−トに声をかけられ、フランソワ−ズは振り向いて眺めていた邸から視線を戻した。

 

   ・・・ ご主人からお手紙が届いたのかしら。 

 

ミッション中の習慣で 後方確認のつもりで使ってしまった<眼>は 

窓辺の椅子で 手紙を読む夫人の姿を捉えていた。

夕陽に染まる優しい影が フランソワ−ズのこころにも懐かしい想いを映し出していた。

 

   そう・・・ わたしも。 あんな風にお兄さんからの手紙を読んでいたっけ。

   ふふふ・・・ もっともこんな立派なお邸で、じゃなかったけど。

 

懐かしいアパルトマン、パリの下町の夕暮れ時 − ふ・・・っと涙で視界がぼやけてしまった。

 

「 絵があったね。 」

ぽつりとジョ−が口を開いた。

「 ・・・ 絵 ?  どこに。 」

「 あの玄関ホ−ルの横。 ちょっと廻廊みたいになってて・・・ 何枚か絵が掛けてあったよ。

 一番手前に あのヒトの絵があった。 」

「 旧い屋敷ではよくそんな風に一族の肖像画を飾っているもんだ。 」

「 ふうん ・・・ そうか。 ・・・ そう・・・ でも・・・ ? 」

「 ジョ−。 なにか気になるの? 」

アルベルトの答えを信じないわけでもあるまいが、ジョ−は曖昧に頷いている。

「 うん。 気になるっていうか・・・ あのヒトの絵なんだけど。 」

「 おお、さぞかし美々しく描かれていたのであろうな。 元が美人だから画家も描き甲斐が

 あったことだろうよ。 」

「 ・・・うん。 綺麗だなって思ったよ。 思ったけど・・・ 」

「 だから。 なにが どうしたんだ! 」

歯切れの悪いジョ−の言葉に アルベルトがキレかかっている。

「 ジョ−? なにかおかしなトコロでも見つけたの。 なにか・・・書いてあったとか? 」

くすくす笑ってフランソワ−ズが助け舟を出した。

「 ・・・ あ、 フラン・・・ うん ・・・ その絵ね、確かにあのヒトを描いたものなんだけど

 随分と古いカンジだったんだ。 ほら・・・ 学校の校長室なんかに掛けてある絵とは

 ちょっと違ってね。 」

「 確かに彼女の肖像画だったのか。 よく似た先祖かもしれんぞ? 」

「 うん、でも ・・・ 着ている服が同じで、髪形もあんなカンジだったよ。

 皆に伝えようかなと思ったけど・・・ 脳波通信をヤバいかなって思ったんだ。 」

「 俺たちの周波数をヤツらは知っているからな。 多分、この件はBGが噛んでいる。 」

「 ええ。 でも・・・あのヒトは ・・・ 普通の人間よ。 どこにも ・・・ 改造された痕跡はないわ。 

 100%生身の女性だわ。  ただ ・・・ 」

「 ただ?  なにか気になる点でもあるのかな、マドモアゼル。 」

「 ええ ・・・ あの、ただ、どうしてかしら。 あのヒトの心臓の鼓動はとてもゆっくりなの。

 ううん・・・ 医学的なことはわからないし、普通の生身の身体なんだけど・・・ 」

「 ふうん? あの絵となにか関係があるかもしれないね。 

 普通さ・・・ 写真だよね? わざわざ油絵を、それも旧い絵を飾るかなあ? 」

「 わざわざ古びた風に見せる画法もあると聞くがな。 

 ともかくあの邸は怪しい。 だいたいの内部構成はわかったから日没を待って

 再度潜入しよう。 」

「 了解。 中に入ったら拙者はネズミになろう。 」

「 ホンモノと出会わないように気をつけてね。 あ、飼い猫ちゃんは居ないようよ? 」

「 ご配慮、忝い。 マドモアゼル。 」

一行は一旦街中に戻り、夜の訪れを待った。

 

 

ギルモア博士とともにBGの基地から脱出してきた9人のサイボ−グ戦士達を

博士の旧友・コズミ氏は 快く受け入れてくれた。

自身の邸を提供してくれ、当面彼らがこの島国で生活してゆけるよう心を砕いてくれている。

彼自身、かなりの業績を持つ科学者でどうもそちら絡みの組織からの

所謂産業スパイたちに狙われているらしかった。

・・・ もっともご本人は悠々としたもので・・・

諸君らが居てくれるから、安心だ  ―  とおおらかに笑っていたものだ。

 

そのコズミ博士が何者かに誘拐された。

 

 

「 ・・・ ちょっと。 ジョ−、もっとぴったりわたしに寄り添ってちょうだい。 」

「 え・・・ う、うん・・・ 」

「 昼間の大通りを歩いてるんじゃないのよ。 恋人同士が密かに・・・って設定なの、

 一目を避けてコソコソしてるほうが <らしい> し、あの邸の周りをうろついても怪しまれないでしょ。 」

「 ・・・ う ・・・ うん ・・・。 それじゃ ・・・ 」

ごめんね、と呟きジョ−はフランソワ−ズの腰に手を回した。

「 そうそう ・・・ そんなカンジ。 あ ・・・ 誰かくる ・・・

 ああ ・・・ アルベルトとグレ−トね。 」

「 ぼくは ・・・ あっちのが ・・・ 」

「 なあに? 」

「 なんでもない・・・! 」

ジョ−はぶんぶんと首を振り、あっちの方がよかったんだ・・・と続きをぶつぶつと口の中で呟いた。

 

ビ−グル犬を連れた銀髪の男性が角を曲がってきた。

ジョ−は一瞬彼の方を見たが、その後方にも人影を認めすぐに彼らから視線をそらせた。

わんっ! わんわわんっ!!

「 こら。 大人しくしろ、・・・ アンドロメダ。 」

 

・・・ アンドロメダぁ?? どうしてそんな名前になるんだよ?

ジョ−は笑いを誤魔化そうと 何気に咳払いなどしていたが・・・

 

   ・・・ うわ ・・・っ!

 

すぐそばのいい匂いがする柔らかい身体が ・・・ ぐい、とジョ−の身体に押し付けられた。

ジョ−は僅かに前髪をゆらしただけだったが、 その陰でたら〜りと脂汗がながれ落ちる。

 

「 きゃあ・・・ 怖いわ〜 」

「 ・・・だ ・・・ 大丈夫だよ ・・・ ぼぼぼ ぼくがいるから ! 」

 

・・・ くす・・・っ

なんだ〜 この大根め!

・・・ わはははは ・・・ わん!

 

ジョ−の強化された聴覚が あまり聞きたくない呟きをイヤでもキャッチする。

 

おい? しっかりしろよ! 俺たちは邸の周りをもう一周りしてくるからな。 

ジョ−? もっとソフトに寄り添ってよ!

わんわんわわん〜♪ 次は飛びかかってやろうか、少年よ。

 

皆澄ました顔をして、 ジョ−にはてんでに<ダメ出し>が飛ぶ。

 

・・・ 了解・・・!!! それじゃ あのヒトが行ったら潜入開始するよ。

 

アルベルト達の後ろから来た若者はヘッドフォンをつけ夢中でメ−ルを打っていたので

そんな<騒ぎ>には まったく気づかずに行ってしまった。

 

「 ・・・ な〜んだ・・・ 」

「 さ! 今のうちよ。 随分暗くなって来たから丁度いいわ。 」

「 う、うん・・・・。 じゃあ ・・・えっと 玄関は・・・ 」

「 ・・・ジョ−? 玄関から 忍び込むつもり? 」

「 ・・・あ ・・・。 じゃあ さ。 あの ・・・ ぼくに掴まってくれる? ジャンプして塀を飛び越えるから。 」

「 いいわ。  ・・・ これでいい? 」

「 ( ・・・ うわ ・・・! )  う、うん・・・じゃ ・・・ はッ?! 」

 

フランソワ−ズを抱いて地を蹴ろうとしたその瞬間、ジョ−は目の端に老人の姿を捉えた。

 

  ・・・ ごめん! フランソワ−ズ ・・・!

 

 

ざわざわと夜風に邸の樹々がゆれ、色づいた葉が散ってゆく。

秋の陽はつるべ落とし・・・

まさにそんな言葉がぴったりの宵は 恋人達には絶好の隠れ家にもなるようだ。

 

「 ・・・ ふん、道端で・・・節操のない! 」

近頃の若いモンは・・・ とぶつぶつ行って老人は見てみぬ振りで行過ぎる。

大きな邸の塀際には ・・・ 固く抱き合って熱く唇を重ねている青年と乙女が一組。

はらり、と木の葉がひとひら、青年の茶色の髪に落ちた。

 

「 ・・・ ゴメン・・・ あの ・・・ とてもイヤだった・・・? 」

「 ・・・ え ・・・ う、ううん ・・・ あの ・・・ 」

( 初めて ・・・ ジョ−との初めてのキス・・・  )

「 あの・・・ 怒らないで?  ほんと、ごめん! 」

「 ・・・ ううん ・・・ ううん ・・・ ジョ−。 」

「 フランソワ−ズ ・・・ あ ・・・あの・・・ もう一回 ごめん! 」

「 ・・・ あ ・・・! 」

 

やっと離した細いしなやかな身体をジョ−は 再び引き寄せ

・・・ たった今、押し付けた唇に 今度は少々強引に割って入った。

 

  ・・・ これは ・・・ ミッションじゃないから・・・ね?

 

  ・・・ ジョ− ・・・ !  ええ、 ええ ・・・ ああ ・・・

 

ほんの一点での触れ合い、ちろちろと触れ合う舌先が

フランソワ−ズの眼裏で 固く冷えていたものを一気に熱くし ・・・ 爆ぜさせた。

 

( ・・・おい?! 何やってるんだ? こちらはとっくに潜入したぞ? )

( 恋人達よ? 愛の時間はそろそろ終わりにしてくれ〜〜 )

 

「 ・・・!  ぼ、ぼく達は ・・・ そのゥ ・・・ 別に そんなんじゃ・・・ 」

( しっ! ジョ−・・・ 声を立てないで。 通信回路を開いて。 )

( ・・・あ 、ああ 。 ごめん・・・ )

飛び込んできた脳波通信に ジョ−は慌ててフランソワ−ズますます抱きしめてしまった。

 

( それでね。 申し訳ないのですが・・・ は ・ な ・ し ・ て! )

「 あ、あああ ご、ごめん 〜〜〜 ! 」

 

・・・ったく。 世も末じゃ。

角を曲がり際に、ちらりと振り向いた老人は まだ抱き合っている恋人達を

遠くに認め、 苦々しい溜息を吐き捨て去っていった。

 

 

「 よし。 いくよ。 」

「 了解。 」

首っ玉にかじりついたフランソワ−ズを片手で抱き、ジョ−は軽く地を蹴った。

二人はふわり・・・と宙に舞い、そのまま大きく弧を描いて邸の敷地内に着地した。

 

「 ・・・ と。 大丈夫? フランソワ−ズ。 」

「 ええ。 アルベルト達は ・・・ あ、あの樹の上だわ。 」

「 え・・・ どこ。 うわっ!! 」

「 きゃあっ! 」

ジョ−が頭上の樹を振り仰いだ途端に二人の足元がずるずると崩れ落ちた。

いや・・・ 地面が二人を引きこもうとしている。

足掛かりがなにもないので さすがのジョ−も加速しても抜け出すことができない。

フランソワ−ズを抱き上げているのに精一杯だ。

 

「 フラン? 大丈夫か! ぼくに掴まって・・・ そうだ、ぼくを踏み台にしてあの樹に 飛びうつるんだ! 」

「 なに言ってるのよ、ジョ−? あなたこそ ・・・ ほらわたしの肩に足をかけて! 」

言い争う間にも二人の身体はずぶずぶと地に引きこまれてゆく。

「 呼吸、できる? きみの身体、持ち上げるから・・・ 」

「 ジョ− !! バカなことはやめて・・・! 」

 

「 おい〜〜 お二人さん? いい加減いちゃいちゃするのはやめてくれんかね。 」

「 ふん。 ほらよ、・・・ ジョ−、これに掴まれ。 」

二人の目の前にひらり、と長いマフラ−の端が落ちて来た。

「 あ・・・ ! 007! 004〜〜! 」

 

「 ・・・ったく。 なにやっているのかと思えば・・・! 」

引っ張り上げてもらった樹の上で、アルベルトはじろりとジョ−を一瞥した。

「 ・・・ あの ・・・ ありがとう・・・ そのゥ ぼく達な別にそんな・・・ 」

「 オレは何も聞いちゃおらんぞ。 ふん。 」

「 ・・・ぁ ・・・! 」

「 まあまあ・・・若いモンには若いモンの事情ってのがあるさ。 」

グレ−トはからからと笑い、荷物を放ってよこした。

「 ほれ、防護服。 マドモアゼル? 背を向けております故、小生らの陰でお召し替えをどうぞ。 」

「 ・・・ ありがとう・・・! 」

ボロ布みたいな雲から 満月にはまだ幾日か足りない月が歪な顔を覗かせた。

「 急げ。 早くコズミ博士を救いださねば。 」

アルベルトの銀髪が月明かりに煌いた。

 

 

 

「 ほら・・・ ここ。 」

「 ・・・? ああ、あの肖像画があるところね。 」

「 うん。 これって、あのヒトだよね? 」

「 ・・・ ええ、 そうだと ・・・ ・・・ !? 」

ジョ−の示した肖像画の前で フランソワ−ズの足はぴたりと止まってしまった。

「 ・・・・ フラン ? 」

フランソワ−ズは ただじっとその絵を見つめていた。

 

月明かりだけに照らされた邸内は まったく物音がしなかった。

庭の樹から屋根へ・・・ そして破風窓をこじ開けて彼らは潜入したのだが、

まったくなんの反応も、防犯ベルすら鳴らない。

「 少しおかしくねえか。 」

「 ・・・ああ。 無防備すぎるな、いや、わざわざご招待頂いているのかね。 」

「 ふん・・・ 気に喰わんな。 」

「 マドモアゼル? なにか・・・ 見えるかな。 」

「 どうかしたか。 手がかりが見つかったのか。 」

「 ・・・ よく 判らないんだけど。 あの・・・ ここの絵がなにか気にかかるらしいんだ。 」

ジョ−がぼそぼそと口を開く。

「 おお、これが例の麗しのマダムのポ−トレイトであるな。 」

「 ・・・ ふん ・・・? 」

アルベルトも黙って凝視している。

不自然なほどに静まりかえった古風な洋館の片隅、これまた古風な肖像画の前で

奇妙な赤い服を纏った4人が 立ち尽くしていた。

 

 

− 突然天井のシャンデリアに灯が点った。

 

ヨウコソ。 ミナサン ・・・ ワタクシハ 0012。

ミナサンハ ワタクシノ虜 ・・・ ! モウ 逃ゲラレナイワ、 ホホホホ・・・・

 

高声が響き渡り ―  <お祭>が始まった。

 

 

 

 

「 ・・・ なんてこった・・・! 」

「 うむ ・・・ 酷い。 許せんな。 ヒトの想いをその死後も利用するとは! 」

家全体からの総攻撃にさんざんに弄られ、手玉にとられ続けた。

0012と名乗ったサイボ−グは この邸そのものだったのだ。

なんとか その中枢部を探り当て破壊し、

あちこち裂けたり焼け焦げをつくった防護服で彼らは崩れゆくその部屋に辿り着いた。

 

古風な意匠を凝らした婦人室の一角に 不似合いなメカニック・ブ−スが据えてある。

そこに ・・・ あの女性が横たわっていた。

夥しいコ−ドが枕元でトグロを巻き、彼女の頭部には多くの端子が装着していた。

寝顔は穏やかで 艶やかな頬は今にも瞳を開き起き上がるのではないかと思わせる。

しかし  彼女の胸はひそ、とも動いてはいない。

 

ズン ・・・ 重い衝撃とともに足元の床がぐらり、と傾ぎ始めた。

漂う煙が一層濃くなり、鼻を突く臭いが混じりだす。 

 

バチ・・・っ! バチバチ・・・!!

 

点滅していた灯りが落ちた。

「 出よう。 もう ・・・ ここには用はない。 」

「 ああ。 ・・・ 彼女には気の毒なことをしたな。 」

「 ・・・ なんの関係もないヒトを・・・! 酷いよ・・・ ひどい。 ・・・フランソワ−ズ?! 」

「 ・・・・・・ 

「 マドモアゼル?? どうした、今更もう ・・・ 」

 

フランソワ−ズはひと言も口を開かず、ス−パ−ガンを取り上げると

夫人の頭部を覆っている装置を撃ちぬいた。

 

バチバチバチ ・・・!! ぴぴぴぴぴぴぴーーーーー

火花が烈しく飛び、警告音がけたたましく鳴り響く。

 

「 003。 彼女はもう・・・何もできない。 0012は壊滅したんだ。 」

「 ・・・ だから、よ。 」

「 なに? 」

「 だから・・・ だから! 彼女を解放してあげなくちゃ!

 BGに利用された ・・・ 残留思念は彼女だけのものなんだもの。 」

「 ・・・・・ 」

 

バシュッ! バシュッ! バババババ ・・・ !!

 

突如ジョ−のス−パ−ガンが火を吹き、あっという間に完膚なきまでに夫人に取り付けらていた

装置を吹き飛ばした。

 

「 ・・・ ジョ− ・・・ 」

「 きみが ・・・ 望んでいたから。 」

「 ・・・ ありがとう ・・・ 」

 

ずずずず −−−− バキバキバキバキ ・・・・

 

邸全体が軋み始めた。 古風に見せかけその実全てコンピュ−タ−で制御されていた

ハイテク・ブ−スは中枢機能を破壊され ただの屑鉄の塊に戻りつつあった。

 

「 出よう。 このままでは邸の巻き添えを喰うぞ! 」

「 ・・・うん。 もう これであのヒトを邪魔するモノはないね。 」

「 ・・・・ そうね。 」

「 おい、急げ! 」

サイボ−グ達は崩れ始めた壁を伝って邸から逃れ出た。

 

 

歪な月はほとんど東の空に傾きかけていた。

夜風は次第におさまり始め 星々は彼らが潜入する前と代わらず煌いていた。

 

夜明け前の空の下、人喰い屋敷は誰にも知られずに崩壊してゆく。

   

脱出の足を緩め、ふと振り返った時・・・・

フランソワ−ズは窓辺に二つの影を、 二人の抱き合う姿を はっきりと見た。

古風な服装の男女が しっかりと寄り添い熱く唇を重ねていた。

 

   ああ・・・ あの人が待ち焦がれたいたひと・・・ 帰ってきたのね、

   彼女を 迎えにきてくれたんだわ。

 

「 ・・・ よかったね。 」

「 ・・・ ジョ−? 」

振り向くと、ジョ−のセピアの瞳が優しく彼女に注がれていた。

「 あのヒトの待っていた人・・・ ご主人かな、きっと 迎えにきたんだ。 」

「 え・・・ええ、 そうね。 そう・・・ 

 待っていたのは ご主人の方かもしれないわ。 」

「 そうか・・・彼女がBGに利用されて ・・・ なかなかご主人の許へ行けなかったんだろうね。 」

「 ・・・ そう ・・・ 可哀想なヒト達・・・ 」

ねえ? とフランソワ−ズは向きなおりジョ−をみつめた。

 

「 あのね。 わたしは・・・待たないわ。

 わたしは 一緒にゆくの。  もう 一人取り残されるのは ・・・ イヤ。 」

「 もう 誰もきみを一人にはしないよ。 

 それに・・・ <一緒に行こう>ってぼくに言ってくれたのは きみだよ。 」

「 ・・・え ? 」

「 ふふふ・・・ あの時、あの島で。 ぼくは ・・・ きみを信じた。」

だから・・・ とジョ−は屈託なく満面の笑みを浮かべた。

 

「 さあ 行こう。 」

 

差し伸べられた手を フランソワ−ズはほんのちょっと為らたってから 握り返した。

 

「 ええ。 行くわ。 あなたと、ジョ−と 一緒に。 」

 

 

「 お二人さん、邪魔して悪いんだがな。 ・・・ いい加減にして次の行動に移れ! 」

「 あはは・・・ 無粋ですまんが。 ミッションも頼む。 」

「 あ・・・ ご、ごめん。 」

後ろから声がかかった。

「 0012が最後に トウキョウノ0013・・・と言っていたが 信用できるか? 」

「 う〜む、しかし今はそれしか手がかりがないな。 」

「 うん・・・ じゃあすぐに追いかける。 

 ぼく、先に行くから ・・・ 皆に連絡を頼むね。 」

「 あ、 おい? 」

「 ちっ、気の早いヤツだな。 」

 

小さなつむじ風をのこし、ジョ−は赤い一筋の風となり ・・・ 走り去った。

カラン・・・と彼の風煽られて小石がひとつ、フランソワ−ズの足元に転がってきた。

 

    ・・・ ジョ−。 わたしも 行くわ。 

 

「 あ〜あ もう行っちまった。 」

「 ま、ここはヤツに任せて・・・ 俺達は装備して出直そう。 」

「 左様・・・ しかしな。 あまり後味のよい結果ではないなあ。 」

グレ−トは今や完全に廃墟と化した邸をあごでしゃくった。

「 ・・・ あの絵 ・・・ 肖像画、な。 あれがキイだったな。 」

「 ああ。 シャ−ロック・ホ−ムズ氏。 」

ふふん・・・とアルベルトが鼻先で嗤う。

「 おぬしは どこで気が付いたかね。 」

「 サインの下の年月日さ。 それに忙しいと称する御仁がわざわざ手紙・・・というのも

 あまりにも古めかしすぎる。 」

「 ふふん・・・ 流石だな。 我輩はあのご婦人の服装だな。

 あれは ・・・ 髪形は解せないが、あの服は半世紀以上前のものだ。

 いくら懐古趣味でもちと、妙だ。  マドモアゼル? おぬしもなにか見つけていたな。 」

「 ・・・ええ。 あのサイン、画家のサインよ。 

 わたし ・・・ 描いたヒトを ・・・ 知っていたの。 」

そうか・・・とアルベルトは呟き、グレ−トは何も言わずにぽん、とフランソワ−ズの肩を叩いた。

 

「 さ。 我らは一旦コズミ邸に戻ろう。 そして 出撃だ! 」

 

 

 

 

部屋中に満ちていた熱い吐息は 今は穏やかな息遣いにかわっている。

ぴたりと身体を寄せ合っていた二人が ゆるやかに動きだす。

淡い常夜灯が 揺れる影を壁に映し出していた。

 

「 ・・・ねえジョ−・・・  ちょっと教えて欲しいの。 」

「 うん? ・・・ なに。 」

フランソワ−ズは手を伸ばし、ベッドサイドに放り出してあったグラフ誌を取り上げた。

ジョ−の読み止しが拡げたままだ。

「 この ・・・ 国立新美術館って・・・ どうやって行ったらいいのかしら。 」

「 え? ああ・・・ これね〜 つい最近オ−プンしたんだ、東京ミッドタウンの近くでさ。

 ・・・ ね? 一緒に行こうか。 」

「 まあ、本当? 嬉しいわ。 」

「 なにか 見たいものでもあるの。 さっきから気になってたみたいだね。 」

「 ・・・ ええ。 あの、この絵画展・・・ 」

白い指先がある画家の遺作展のインフォメ−ションを指している。

 

  − 【 ロベ−ル・A・マルタン 遺作展  肖像画の美 】 

 

「 知ってる画家? フランスのヒトだね。 」

ジョ−の問いにフランソワ−ズは答えずに しばらくじっと彼を見つめていた。

「 ・・・ ジョ−、覚えてる? 随分前のことだけど。

 あの ・・・ 人喰い屋敷。 」

「 人喰い屋敷?  ・・・・ あ! ああ、あの 0012 ・・・? 」

「 そう。 あそこに絵が、肖像画があったでしょ。 ジョ−が一番初めに見つけたわね。 」

「 うん。 あのちょっと古風なポ−トレイトだろ。 」

ジョ−の指がゆるゆるとフランソワ−ズの髪を愛撫する。

「 ・・・ そうよ。 わたし ・・・ あの画家を知っていたの。

 彼 ・・・ 背に流した髪が好きだった・・・

 あの絵、あのマダムの肖像画ね・・・ わたしのスケッチとちょっと似ていたわ。 」

「 そうなんだ? それで きみは気が付いたの。

 その ・・・ あのマダムはとっくに過去のヒトだって・・・ 」

フランソワ−ズはうなずき、ジョ−の胸に頬を寄せた。

そして ・・・ ぽつぽつと独り語りみたいに話始めた。

 

「 彼 ・・・ ロベ−ルはね、近所に住んでいた幼馴染なの。

 美術学校の学生で ・・・ わたしがバレリ−ナを目指していたのと同じに

 彼も似顔絵描きのバイトをしつつ、芸術家を夢見ていたわ。 」

「 ふうん ・・・ え、きみのスケッチって・・・ え・・・? 」

思わず顔を覗き込むジョ−に構わず、フランソワ−ズは語り続ける。

「 モンパルナスにアトリエを構えて スケッチ旅行に行って・・・ いつか個展を開いて・・・

 そんな夢をよく話してくれたの。 」

「 ねえ・・・ フラン? きみ、その彼のモデル ・・・ やったの? 」

「 きみのデッサン、・・・ させてくれる?って言ってた。

 お兄ちゃんに見つかるとウルサイでしょ、よく留守にささ・・・っと描きに来てたのよ。 」

「 ・・・ ウルサイって・・・どうして?? ねえ、フランソワ−ズったら〜〜! 」

ジョ−は今や真剣な面持ちである。

 

「 ・・・ それで、ね。  初めて頬やオデコ以外のキスをしたの。 」

「 ・・・ え ・・・! 」

「 ねえ ・・・ ロベ−ル・・・

 貴方も わたしを待っていた・・・? 

 そう・・・ そうなのよ、ジョ−。 

 きっと、そんな彼の描いた肖像画が ・・ わたしに教えてくれたのかもしれないわ ・・・ 」

 

「 フラン! フランソワ−ズ ・・・! きみをね、待っていたのは ぼく なんだ。

 それにね ! 」

ジョ−はがば・・・と跳ね起きて もう一度彼の恋人をしっかりと抱き締めた。

「 フラン! きみを ・・・ きみのこの肢体を賞賛していいのはぼくだけだからね! 」

 

  ・・・ ジョ−。 そうね、あなただけ、ね・・・

 

ジョ−の柔らかなセピアの髪に顔を埋め、フランソワ−ズはほ・・・っと吐息をつく。

 

あの日から ずっと ・・・ これからも。

わたしは このヒトと共に生きてゆくわ。

 

わたしは ・・・ もう独りじゃない。

 

 ジョー ?  いつも一緒ね。 」

 ずっと一緒だろ、 フランソワ−ズ 」

 

遠い日のミッションは恋人達の熱い夜の糧となった。

 

 

*******   Fin.   *******

 

Last updated : 04,03,2007.                            index

 

 

****  ひと言  ****

平ゼロでもアニメ化になったあの原作のお話の一部分を

捏造してみました。  <フランちゃん参加型・ミッション話> のつもりが・・・

なんだか回顧談みたくなってしまったです〜〜 ( 泣 )

0012は 平ゼロ設定が好きなので も〜まぜこぜ話でありました・・・ ははは (^_^;)

よ〜するに。 二人は<あの頃>から らぶらぶし始め??ていた・・・ことにしたのでした。

駄文、お付合いありがとうございました・・・