『 鬼 』
コツン ・・・・ コツ ・・・・ コツ ・・・ン
なにやら鈍い音が 日差しいっぱいの縁側から聞こえてきている。
半分だけ開け放した障子にはうらうらと早春の陽が映り暮に張り替えたばかりのその白さが一層際立つ。
チュン ・・・ ! チュン チュン ・・・
縁先で雀がのんびりパンくずを啄ばんでいた。
縁側には三毛猫が丸まっているが 庭先ではどうぞご自由に・・・と雀をみても動きもしない。
そんな飼い猫の姿にこの家の主は 穏やかに笑う。
鷹揚なのか 横着なのか。 ふぉふぉ・・・・ 飼い主に似て暢気なヤツじゃよ。
訪ねてくるものは いつの間にかそんなこの家の主のペースに乗せられてしまうのだ。
温暖な地域の昼下がり、早くも春の空気がすこしばかり漂っている。
・・・ コツン ・・・
また ひとつ、鈍い音が続きそれと一緒に ―
「 あ! まった〜〜 待ってくれ。 その一手〜 待った! 」
「 ふぉふぉ・・・ 待った なし、じゃ。 」
「 う〜〜〜 長年の友じゃないか。 たかが将棋の一手、待ってくれてもいいじゃなか〜〜 」
「 だ〜め。 勝負の世界は厳しいのじゃ。 ほい、 王手。 」
コツン ・・・・
「 あや〜・・・ また負けてしまったのう。・・・・ ははは・・・・ 」
「 ふぉふぉふぉ・・・・ 次の機会には囲碁に勝負を換えるかのお〜 」
「 おお いいなあ。 うん アタマは使っておらんとどんどん錆び付いてしまうからなあ。 」
「 違いない! たまには二人で錆落とし、と行きますかな。 」
老人達は 将棋板をはさみ のんびりと渋茶を啜る。
駒を指す音にも鋭さは無い。
談笑する白髪の老爺が二人 ― よく見れば片方は異国のお人だが、ゆったりと丹前を着こなし
すっかり地元に馴染んでいるらしい ― どこの街中でもよく見かけるありきたりな光景だ。
―だが。 そう、この二人が 超 のつく天才であり各々の分野では
今だに他の追随を許さない大御所 ・・・ などとは誰も思ってもみないだろう。
どこにでもいる平凡な老人 ― 当の本人たちはそれで充分に満足していた。
「 ときに。 御宅のお若い人達は元気かな。 」
「 おお、お蔭様で ・・・ ほとんどが故国に戻って行ったよ。
やはりなあ。 なにがあっても故郷がいちばん、というところじゃろう。 」
「 ほっほ ・・・ そうかもしれんなあ。 じゃ、一緒におるのはあの茶目の坊やだけか。 」
「 茶目? ・・・ ああ、ジョーのことじゃな。 うん 彼と赤ん坊と。
あと でこぼこコンビがヨコハマで店を構えておるよ。 中華飯店なんだ、
よかったら一度 顔をだしてやってください。 」
「 おお、おお よろこんで。 ほう、 それはそれは・・・ 楽しみじゃのう・・・・
で。 ほれ・・・ 青い目のお人形さんはどうなすった。 やはりお国に戻ったのかの。 」
「 青い目のお人形・・・ ? ああ、ああ。 いや 彼女はなワシらと一緒に暮らしておるよ。 」
「 ほう? ・・・ この地がお気に召したのかな。 花の都のご出身のようじゃが。
ワシらの若いころはなあ 憧れの地 だったものだがのう。 」
ふらんすへ行きたしとおもへども ふらんすはあまりに遠し
この家の主は目を閉じて そんな古い詩の一節を諳んじる。
「 ほう・・・ なかなか趣のある詩じゃなあ。
ああ、そうなんじゃ、本人もしばらく考えておったが。
思うところがあったのじゃろうな・・・この国も気に入ったらしいのでな。
一緒に住みたい、と言ってくれての。 ワシも赤ん坊も助かっておるよ。
ははは ・・・ 例の茶目君が一番喜んでおるかもしれん。 」
「 ほっほ それはそれは。 ・・・ 仲良きことは美しき哉、ということじゃな。 」
「 違いない。 ・・・おお、そうじゃ。 君に教えてもらいたいことがあるんじゃった!
そうそう・・・すっかり忘れて 勝負にのめりこんでしまったよ。 」
「 おお、 なんですかな。 私にわかることなら何なりと。 ・・・その前に茶を入れ替えようかの。
そうじゃ そうじゃ・・・ 美味い茶菓子があったはずじゃ。 」
よっこらしょ・・・と白髭を震わせ、この家の主は立ち上がる。
「 いやあ・・・ どうぞお構いなく。 」
「 いやいや・・・ 共に食したほうが美味いからのう。 」
彼は案外身軽に座敷の奥に入ってゆき、やがて熱い土瓶と菓子鉢を持って現れた。
「 ほい、熱い茶に入れ替えよう。 」
「 おお これはありがたい。 日溜りは温かいが空気はすぐに冷えてくるからな。 」
「 うむ。 ガラス戸を閉めようか。 まだまだ寒さが厳しいが・・・ なに、もうすぐ暦に上では春じゃよ。
ああ、 ほれ。 この豆を撒けば春がやってくる。 」
「 ・・・ 豆 ? 」
「 ああ。 これじゃよ。 節分会にな、撒くんじゃ。 茶受けに食ってもなかなか美味い。 」
「 ほう ・・・? 」
菓子鉢の中には茶饅頭の他にちいさなマスもいくかあり そこに大豆が盛られていた。
ポリ ・・・ カリリ ・・・コリ コリ ・・・
ご老人達、 歯もお達者とみえて小気味のよい音が聞こえ始めた。
「 ・・・ さてさて お訊ねの件を承ろう。 」
「 忝い。 あのなあ。 この国では 付け届け が必要なのかな。 」
「 ・・・ は? 付け届け ? 」
「 そうなんじゃ。 ほれ、 うちの息子や娘をどうぞ宜しくお引き回しのほどを。
つきましては コレはほんのご挨拶代わりです、お収めください・・・ というアレさ。 」
「 ・・・ ギルモア君。 きみは随分とわが国の習慣に詳しいのう。
まあ・・・ それは時と場合によると思うがな。 いったい何があったのかね。 」
「 ほう。 ケース・バイ・ケース、ということか。 ― 実は なあ。
例の 青い目のお人形サン がの。 先日、 報告してくれたのじゃが・・・ 」
「 ・・・ ふむ? 」
冬の日溜りで 老人たちの話がのんびりと続いていた。
「 それでね。 今回のオーディションには・・・ 落ちました。 当然なの、全然脚が動かなかったもの。
自分では練習したつもりだったけど。 ・・・ふふふ現実は厳しかったわ。 」
「 え ・・・ああ、そうなのか。 残念だったね、フランソワーズ。 」
香りたかいお茶を淹れつつ 彼女は頬を染め報告した。 声音は明るく弾んでいる。
むしろお湯の追加を運んできた少年の方が残念そうな声をだした。
「 そうか。 まあ、また別の機会を狙ったらどうだね。 焦ることはない。 」
博士も 残念だったがつとめて明るく答えた。
「 はい。 ・・・それで、ね。 そこのバレエ団の主宰者の方が・・・
今回のオーディションの役は無理だけど。 よかったらレッスンにいらっしゃい、って誘ってくださったの! 」
「 え・・・ そ、そうなんだ? 」
「 ・・・ ほう ? それはまた 別のチャンスそ掴んだな。 」
「 はい! あ・・・ あの。 それで。 わたし、レッスンに通ってもいいでしょうか。 」
頬を紅潮させつつ 碧い瞳の少女は共に暮らす二人に尋ねた。
何回かの激しい闘いの後。 サイボーグ達はやっと追われる身から開放された。
― そして
街外れの岬の突端に ギルモア博士は一軒の洋館を建てた。
海に近いとなにかと便利なのと ― 彼らは BGの本拠地とも思える基地を壊滅させたが
油断はまだまだ禁物なのだ。
緊急時には退避の意味もあって海に近いことは安全策であり必須条件だった。
そして もうひとつ。
ギルモア博士の旧友、コズミ博士の邸が それほど遠くない場所にあったから・・・
岬の一軒家 で彼らは静かに暮らし始めていた。
ほどなく彼ら ― 老人と眠ってばかりの赤ん坊 そして茶髪の若者と金髪碧眼の美少女 ・・・ の
生活は ほぼ安定してきた。
皆 それぞれ自分のペースで日々を送るようになったが 共に囲む食卓やティータイムは
やはりほのぼのとしていて、彼らの楽しみの一つとなっていた。
そんなある日 ― 彼女は碧い瞳を輝かせ報告したのだ。
また 踊りの世界の戻っても いいか、 と・・・
「 もちろんじゃよ。 存分になんでもやりたい事をやるといい。 」
「 きみの夢だったんだろ? すごいよ〜〜 最高のチャンスじゃないか。 」
「 ・・・ え いいの? あの、食事の仕度とかお洗濯とか・・・お家の事、手が回らなくなるかも・・・ 」
「 やだな、そんなこと。 ぼくが手伝うし忙しい時にはぼくに押し付けてくれよ。
うん、今までなんでもかんでもきみにやってもらってて ごめん! 」
「 うむうむ・・・ワシらは全面的に協力するぞ。
おお そうじゃ! 完全 仕上がり・折り畳み機能つき・洗濯機! うん、それを開発するぞ! 」
「 まあ ・・・ 博士 ・・・ ジョー・・・ ありがとう! 」
フランソワーズは ぱっと立ち上がると二人に身を屈めアタマを下げた。
「 あ・・・ ヤだなあ・・・ そんなことして。 頑張れよ〜〜 ねえ、博士。 」
「 そうじゃよ、フランソワーズ。 ウチのことは心配するな。 」
「 はい! ・・・ ありがとうございます・・・ 」
「 時に ・・・ そのバレエ・カンパニーの規則書 などはあるのかな? 」
「 ・・・ き 規則書 ですか?? 」
「 左様。 お前はそこのメンバーになるわけだろう? 契約書とかあるのではないか。 」
「 あ・・・ まだプレフェッショナルなメンバーではないのです。
まずは レッスン生から。 ええ スクールとは違うのですけど・・・ 」
「 ほう? まあ 郷に入っては郷に従え、というからな。 なるほどなあ・・・
それで お前は何時から通うのかね? その ・・・ カンパニーに? 」
「 はい、週明けからでもいらっしゃい、と言われているのですが。 あ・・・いいですか? 」
「 勿論じゃ。 よし。 初日はワシも一緒に行くぞ。 」
「 ・・・ はい? あ、なにか都心にご用がおありなんですか? 」
「 おお、あるよ。 お前の 保護者 として、そのカンパニーの代表者に挨拶しておかねば。
この国は 伝統もあっていろいろ独特なしきたりも多いらしいからなあ・・・
うん、明日、コズミ君によく聞いておく。 だから安心をし。 」
「 ・・・は ・・・ はい ・・・ 」
「 よかったね〜〜 フランソワーズ。 それじゃ ぼくが車で送って行くよ。 住所を教えてくれる? 」
「 ジョー。 ありがたいが・・・ これから彼女が毎朝通う道じゃ。
同行してしっかりと確かめておきたい。 フランソワーズ、ここからはバスと電車と。 あとはメトロかい。 」
「 え ええ、そうです。 でも・・・本当にご迷惑じゃ・・・? 」
「 迷惑などと・・・ お前は ― お前達はワシの大切な ・・・ その・・・家族じゃから。
しっかりお前の夢への出発をバック・アップさせておくれ。 」
「 ・・・ はい! ありがとうございます。
あ、そうだわ。 お土産があったの。 すぐに持ってきますね。 」
彼女はパタパタとキッチンに駆けていった。
「 わあ・・・ よかったねえ・・・ あ、博士。 帰りは迎えに行きますから。駅から連絡してください。 」
「 ありがとうよ。 そうじゃ、ジョーよ? お前も 考えておけよ。 」
「 はい? ああ、そのカンパニーまでの道順ですか? 」
「 いいや。 お前自身のことじゃよ。
ジョー。 お前のやりたいことは何かね。 できる限り力を貸すぞ。
ようく考えておいてくれ。 なに、急ぐことはない、じっくりとな。 」
「 は・・・はあ ・・・・ 」
ジョーは なんだかぼう〜っとした顔で モジモジしている。
「 なんじゃ、情けないヤツじゃなあ。 おい? そんなことじゃ・・・ 彼女の嫌われるぞ? 」
「 ・・・ え?! 」
博士の耳打ちに 茶目の青年は耳の付け根まで真っ赤になった。
ほほう・・・・ やっぱりその気があるんじゃな。
・・・ ちょいとカマをかけてみたのだが・・・ ふふふ 良いことじゃ・・・
「 これ・・・ 美味しそうな苺、みつけたので買ってきました。
あら? ジョー、どうしたの? 顔が真っ赤よ。 暑いのかしら・・・ 」
フランソワーズはキッチンから戻ってきて、目を見張っている。
「 え!? あ・・・あ ううん ううん! 暑くなんかないよ、うん! 全然! 」
「 そう? だってそんなに汗かいてるじゃない? それじゃ・・・冷たい飲み物の方がよかった? 」
「 あ!? え・・・あ ううん ううん! 汗なんか掻いてないよ、 全然! 」
「 ・・・ 可笑しなジョーねえ・・・ まあいいわ。
さあ お茶にしましょう。 ね? この国には真冬でもこんなに美味しそうな苺が食べられるのね。
なんとなくもう春が来たみたいで 嬉しいわ。 」
「 ほう・・・ なかなか綺麗じゃなあ・・・ うん、この国はほんにフルーツが豊かじゃのう。 」
「 わあ〜〜 美味しそうだね! 」
ガラスの器に艶やかな赤が並んでいる。
博士もジョーも 大粒の深紅の宝玉みたいな苺に大喜びだった。
「 それじゃ さ。 来週からのフランソワーズのスタート、おめでとう〜〜ってことで 」
ジョーがティーカップを高く差し上げた。
「 ははは・・・・ お茶で乾杯かい? まあ、それもよかろう。
それじゃ・・・フランソワーズ ! 頑張りたまえ! 」
「 うわぁ・・・嬉しい! ありがとうございます。 」
三人は紅茶で乾杯し、 大粒の苺の味と香を楽しんだ。
「 ― 博士。 あの・・・ぼく。 」
「 うん? なんじゃ、ジョー。 」
「 ぼく ・・・ あの、さっきのことですけど。 」
「 さっきの? ああ、お前のやりたいこと、か。 」
「 はい。 ぼく、勉強したいんです。 機械工学の基礎、というか ・・・
あの・・・ すこしでも博士のお手伝いができるようになれたらな、と思って。 」
「 まあ ジョー。 すごいわ。 」
「 いや ぼくは高校もまともに出ていないけど。 でも もっと勉強したい。
だからまず 基礎から始めないと・・・ 」
「 ジョー。 本当にそれがお前の希望なんじゃな。 」
「 はい! 」
「 よしよし・・・ ちょいとコズミ君にも相談してみよう。
なにかツテがあると思うぞ。 大学でも専門学校でもいろいろ選択肢はある。 」
「 はい、お願いします。 フラン、ぼくもきみと一緒に スタートさ。 」
「 そうね。 一緒に 新入生 ね。 」
二人は笑顔を見合わせ ますます明るい笑みを浮かべている。
・・・ ほう? この二人・・・ ますますいい雰囲気じゃないか。
こりゃ・・・お互い 内心意識しあってる・・・という事かもしれんなあ・・・
若者たちを見守りつつ 博士は内心にんまりとしていた。
「 フランソワーズ? それじゃ・・・ワシはこれで帰るからな。 」
「 あ・・・ 」
博士は廊下の角から顔を覗かせ、スタジオの前に立っていた彼女に一言、声をかけた。
レッスン前、ダンサー達がスタジオへ次々と入ってゆく。
フランソワーズはなにやら泣き顔と笑顔の間、みたいな表情で入り口の前に立っていた。
ブルーの稽古着に白いニットを羽織り ほんのちょっと・・・震えているのかもしれない。
「 ・・・ 博士 ・・・! 」
ぱたぱたと彼女が駆け寄ってきた。
「 うん? なんじゃな、そんな情けない顔をして? 」
「 え・・・ あ・・・ なんだか急に 恐くなってきて・・・
わたし。 こんなことして・・・いいのかしら。 クラスに付いてゆけるかしら・・・って・・・ 」
「 おいおい? 心配性のお嬢さんや。 そんな顔はおよし。
なんだって やってみなくてはわからんだろう?
ああ、あの主宰者のマダムにな。 よ〜くお願いしておいたからの。
その・・・なあ。 いろいろ事情があってしばらく踊りから遠ざかっておった、とな。 」
「 まあ・・・ ありがとうございます! 」
「 うん、うん。 それじゃ・・・ 頑張るんじゃぞ。 ああ帰り道はわかるな? 」
「 はい。 」
「 じゃあな。 ・・・ 楽しんでおいで。 」
博士は ちょん・・・と彼女の頬を撫でるとそのままスタスタを出入り口向かった。
「 ― いいお父様ね。 あなたのことが心配で仕方がないのね。 」
「 ・・・ あ ・・・ 」
このカンパニーの主宰者の老婦人が にこにこと後ろに立っていた。
「 あ・・・は、はい・・・ 」
「 私も久し振りでね、あなたの国の言葉でおしゃべりができたわ。
ふふふ・・・年代が同じだと 懐かしくてね。 ありがと、お父様に宜しく伝えておいて。
さ! あと10分でクラス、はじめますよ! ストレッチはいいの? 」
「 は、はい! ・・・ あの、宜しくお願いします! 」
「 はい、頑張りましょうね。 フランソワーズ。 」
フランソワーズは ぴょこん!とお辞儀をすると急いでスタジオに入った。
この日から彼女は再び踊りの世界に戻っていった。
「 ただいまァ ・・・・ あら。 いい匂い・・・ 」
バタン ・・・ 玄関のドアが閉まった。
ジョーはキッチンのガス台の前から 大声で答える。
「 お帰り〜〜 フランソワーズ! ごめん、今 手が放せないんだ〜 」
「 ジョー? どこ・・・ ああ キッチンね〜 」
「 うん! ・・・あ・・・いけね! 煮い立ってきた〜〜 えっと えっと・・・ 次は??
え〜と・・・ アクをとる?? アクってなんだ??? 取る・・・ってどうするんだ??
うわ〜〜 吹いちゃうよ〜〜〜 」
「 ・・・ ジョー どうしたの? あら。 」
フランソワーズがキッチンを覗いた時、ジョーは鍋をガス台から持ち上げたが
それきりどうすることも出来ず、そのままウロウロしていた。
ピンクのフリルが一緒に揺れて借り物のエプロンがなんとなくよく似会う。
あら。 ・・・・ ふふふ・・・ なんだか可愛いわねえ・・・
フランソワーズはしばらく目をぱちぱちさせ、キッチンでの騒ぎを見つめていた。
「 あ フランソワーズ! ねえねえ・・・ このあと、どうしたらいいのかな。
アクを取る って なに? ・・・あ・・・ 」
バサ・・・!
広げてあった雑誌がジョーの足元に落ちた。
「 あ〜〜 どうしよう。 これ、借り物だし・。・・ えっと 次はどうするんだっけか・・・ 」
「 ジョー、落ち着いて。 まずはガスを切って。 お鍋を置いたらいかが。 」
「 え??? ガス? ・・・ あ、 ああ そ、そうか・・・ 」
かちん。 ・・・ やっとガスが消えた。 彼はそ〜〜っと鍋をガス台に戻す。
「 はあ 〜〜 吹かないですんだよ〜〜 ありがとう! フラン。 」
「 なにもしてないけど・・・ あ、ほら 雑誌。 あらこのレシピで作っていたのね。 」
フランソワーズは床から雑誌を拾い上げ、ついでに側に転がっていたジャガイモも回収した。
「 ・・・ ねえ、じゃがいも、入れた? 」
「 え!? じゃがいも・・ う〜んと・・・・え〜・・・ あ、入れた! でもどうして? 」
「 ほら、零れ球。 薄目に切って入れておけば? 」
ぽとり、と一個、皮を剥いた<零れ球>がジョーの手に落ちた。
「 え。 い、今から? だって生煮えにならないかな。 」
「 大丈夫よ、薄く切れば火の通りも早いでしょう? 」
「 あ! そ、そうか〜〜 うん、フランって凄いなあ・・・ 家事万能だね! 」
ジョーはもう大にこにこである。
お褒めの言葉は嬉しいけど。 ・・・・うわ・・・ キッチン、めちゃくちゃかも・・・
フランソワーズはにっこり笑顔の下に そっと溜息を飲み込んだ。
「 ねえ、ジョーが晩御飯、作ってくれたの? 嬉しいわ〜〜 お献立はなあに。 」
「 うん! あのぅ〜〜 一応 シチューなんだ。
簡単ですぐに出来るって。 簡単でも美味しい作り方の載った雑誌、貸してもらったんだ。 」
「 まあ、そうなの? ・・・あら〜〜美味しそうだわ〜〜 」
フランソワーズはお鍋の中を覗きんだが 本当にいい匂いが漂ってきている。
ぐ・・・ きゅる きゅる 〜〜
あ・・・やだ・・・ フランソワーズはあわてて 自分のお腹をきゅっと押さえた。
「 そ、そうかな? あのさ! アクってなに・・・ あれ?なんの音? ガスは 止めたよなあ? 」
ジョーは真剣な顔でガス台を覗き込んだり鍋の中を見たりしている。
「 ・・・ ジョー。 あの・・・ 今の、わたしのお腹が鳴ったのォ・・・ 」
「 え・・・あ。 ご、ごめん ・・・! あ・・・あの・・・ 」
ジョーの方が真っ赤になっている。
「 ・・・う、ううん。 わたしこそ お行儀悪いわね・・・ あの でもね! でも! 」
「 え うん? 」
「 わたし! すご〜〜くお腹、空いているの! もうぺこぺこ ・・・
ジョーのシチュウ、早く食べたいわ! アク取り、するから。 ジョー、洗い物、お願い? 」
「 うん! 了解! 」
腹の虫に助けられたのか・・・ 二人は仲良く夕食の準備を続けていった。
「 ・・・うわ〜〜 これ、美味しいわ〜 」
「 え、そ、そうかな。 本当かい。 」
「 うん ・・・ これは美味い。 ジョー、すごいぞ。 」
ジョーの力作・シチュウと 裏の畑から摘み取ってきた新鮮野菜サラダ。かりかりバゲットに炊きたて御飯。
ほかほか食卓を前に歓声があがった。
「 へへへ・・・そうですか? 一応・・・レンジでチン・・・じゃないんですケド。
簡単レシピっての見て 作って。 ・・・ あ うん、結構イケるな〜〜 」
最後に本日のシェフがおそるおそる 力作 に口を付けた。
「 そうよ、美味しいわ〜〜 ねえ、博士。 」
「 ああ。 はやりじっくり時間をかけて作ったものは違うなあ。 うん、本当に美味いぞ〜 」
「 ・・・ あは。 ほ、本当だ・・・ これ、美味しいなあ。 」
しばらくは 美味しい うん いい味・・・! と感嘆の言葉だけが食卓に響いていた。
「 すっごく美味しいわ〜 ジョー・・・ ありがとう! ジョーだって学校があって忙しいのに・・・ 」
「 ううん ・・・ まだそんなに忙しくないし。 ぼくもちゃんと料理、作れないとな〜って思ってさ。 」
パリリ・・・と胡瓜を齧りつつ ジョーは相変わらずにこにこしている。
「 きみもさ、レッスン頑張っているんだもの。 ぼくもちょっとはな。 」
「 ほう? 随分殊勝な心がけじゃのう、ジョー? いいことじゃよ。
それで フランソワーズ。 お前の方はどうなのかな。 頑張っておるようじゃが・・・ 」
博士はにこにこ顔で 二人の様子をそれとなく聞いている。
フランソワーズは 毎日 <ぼろぼろになって> 帰宅、 遅い日には玄関からバスルームに
直行し そのあともそのままベッドへ直進していた。
「 ええ ・・・ もうた〜〜いへん! 出来ないこと ばっかりで・・・自習してるんですけど・・・
それにね、春にはSchool Performance もあるから・・・大変・・・! 」
「 それって・・・ 舞台なの? 」
「 そうねえ、舞台のジュニア版みたいなものかしら。 レッスン生は全員出演しなければならないの。
レッスンで一緒のコに聞いたらね、 日頃苦手だな〜って思ってる踊りが回ってくるのですって。
だから とにかく もう・・・大変なの。 」
大変 大変 ・・・といいつつ、フランソワーズの頬はほんのりピンクに染まり、瞳はキラキラ輝いている。
「 ほう・・・? それはなかなか厳しいな。 しかし うん、しっかりした教育方針だぞ。 」
「 ふうん ・・・ 苦手を克服しなさいってことなのかあ。 」
「 そうみたい。 舞台で踊る!ってなれば普通のレッスンよりも熱心に練習するでしょ?
ああ でもねえ・・・苦手なものは苦手だから・・・大変 ・・・! 」
ふむ? ウチのお姫さんはなかなか頑張っているようじゃな。
・・・ この坊主はどうかのう・・・
博士はにこにこと二人の若者たちを眺めている。
「 ふうん ・・・ すごいねえ。 それで毎日練習してるんだ? 」
「 そうなの。 わたし、 落ちこぼれだから・・・ もう必死! あ、ジョーは? 学校、どう?
大学の聴講生って レポートとかあって大変なんじゃない? 」
「 ウ〜ン 多分ね。 新しい学年はまだ始まらないからさ、今は特別講座に通っているんだ。 」
「 ・・・まだ始まらない? どうして。 」
「 ?? あ! そうか〜 あのね、日本の学校は四月に新しい学年がスタートするのさ。
今は丁度学年末試験の最中か 春休みが始まった頃なんだ。 」
「 へえ・・・・ そうなの? わたし、学校ってどこでもみ〜んな九月からかと思っていたわ。
でも、ジョー、もうすぐ新学期で丁度よかったわね。 」
「 うん。 特別講座もね、結構受講生がいて賑わっているんだ。
ぼくも ついて行くのに大変だよ! 高校で習った数式とかす・・・・・っかり忘れているし。 」
「 おやおや。 ジョー? しっかり励まないとフランソワーズに負けてしまうぞ? 」
「 え・・・ ああ、そうですねえ。 うん! 頑張ります。 」
「 キャンパス・ライフも楽しいんじゃない? お友達もできるわね。 」
「 そうだね〜 このシチュウもね、特別講座で一緒のコに教わったんだ。 」
「 ・・・ え? シチュウ・・? あ、あのレシピの載っている雑誌を教えてくれたの? 」
「 うん、料理の本とか図書館にあるかなあ・・・って聞いたら。 女の子がこの雑誌を貸してくれたんだ。
島村くんって 料理好きなんだ〜?ってね。 」
「 ・・・ そう・・・ 」
「 買ったばっかの雑誌なのにね、 簡単レシピだから大丈夫よって。持っていっていいよ〜って。
ほ〜んとうに助かっちゃったよ! あ! あの雑誌〜〜 汚さなかったかなあ。 」
ジョーはあたりをきょろきょろ・・・ 先ほどキッチンで広げていた雑誌を捜している。
「 キッチンのテーブルに置いてあるわ。 ジョーのかと思って・・・ 」
「 あ ありがとう〜〜 よかったあ。 早速お礼言わなくちゃ。
あ! ねえフランソワーズ? こういう時って。 なにかお礼ってしたほうがいいのかな。 」
「 お礼・・・って? 」
「 だからさ、サンキュ ・・・・とか うん、ちょっとしたメルシ の気持ちさ。 」
「 それなら。 ちっちゃなチョコとかボンボン ・・・あ、キャンデイはいかが? 」
「 あ! そうだよね。 ありがとう、フランソワーズ。 」
ジョーはずっとにこにこ顔だ。
ほう? コイツも年相応な笑顔が出てきたかな。
うん ・・・ 二人とも 一番楽しい年代だものなあ・・・
博士はそっと溜息を飲み込む。 自分の愚かな願望のために彼らの人生を滅茶苦茶にしてしまった。
とても償えることはできないけれど、 せめてなんとか・・・
彼らに 普通の生活 を取り戻してやりたい。
できるかぎり協力し 手を貸してやらねば。 博士は心中深く頷くのだった。
夕食の後は ジョーがなかなか巧みにコーヒーを淹れた。
「 ・・・ ほう? ジョー、お前 上手くなったな。 」
博士は一口啜り、おや・・・と顔を上げた。
「 え、そうですか? えへへ・・・前にアルベルトに教わった方法を思い出して淹れたんです。
ぼくがインスタントをごちょごちょやってたら 怒られちゃって・・・
コーヒーくらいちゃんと淹れろ! って。 無理矢理教えられたってカンジだったけど。 」
「 ・・・ あら 本当・・・美味しいわ。 ミルク入れていい? 」
「 うん どうぞ? あは・・・アルベルトじゃないから怒らないよ。 」
「 ふふふ < コーヒーはブラックだ! > が持論ですものね、彼。 」
「 そうそう。 ぼくがどばどばミルクと砂糖を入れたら眉間に縦ジワで怒るんだ。 参ったよ。 」
「 ねえ? わたしも オ・レがいいわ。 でも これ・・・本当に美味しい・・・
今日のディナーは み〜〜んなほっんとうに美味しかった♪ 」
「 え〜そうかな〜 えへへ・・・なんか嬉しいなあ。 ありがとう、フランソワーズ。 」
「 やだ、お礼なんて。 あ ・・・ ねえ、ジョー。 学校がある日ってランチはどうしているの。 」
「 え? ああ ・・・学食ってわかるかな、構内に学生向の食堂があるんだ。 たいていそこで食べてる。
コンビニで弁当買ったりもできるよ。 」
「 そう? ・・・ あの、よかったら ランチ・・・作るわ。 <お弁当> っていうのよね?
わたし、自分の分もあるから 全然手間じゃないの。 ね、よかったら・・・あの。 持っていってくれる? 」
「 え。 ・・・ い、いいのかい? だって朝、忙しいだろ? 」
「 忙しいのは皆同じでしょ。 そのかわりサンドイッチとかだけど・・・いいかしら。 」
「 わわわわ・・・ 本当? 本当にいいの? うわ〜〜 感激だなあ。
ぼく、 家から弁当を持ってゆくって憧れだったんだ。 うわ・・・ すっごく楽しみ〜〜 」
ジョーはもう ・・・ 満面笑顔でフランソワーズをじっと見つめている。
「 あら ・・・ あんまり期待されちゃうと困るけど・・・
でもジョーが持っていってくれれば嬉しいわ。 ね・・・ このシチュウ、また作って? 」
「 うん! 勿論。 今度はちゃんと アク も取るからさ。 任せといて! 」
「 すごく美味しかったの。 ジョーと・・・あ、あの 皆で晩御飯って本当に素敵ね。 」
「 そうだよね。 さ〜てと。 さささっと後片付け してくる。 」
「 あ、手伝うわ。 」
「 ありがとう〜〜 やっぱさ、手際はきみの方がずっといいもんな〜 」
「 あら 慣れているだけよ。 ジョーみたいに丁寧にきっちりやってないし・・・ 」
「 二人でやればすぐだよね。 」
おやおや・・・ お姫さんの方も こりゃかなり意識しておるなあ?
ま ・・・ こういうコトはお膳立てさえしておけば なるようになる、か・・・
博士もコーヒーを楽しみつつ・・・若者たちの会話も楽しんでいた。
他人 ( ひと ) の想いにはのう・・・ 後から気がついても無駄なんじゃ。
・・・ 実際はそんなコトのほうが多いがな
あの時 気づいていれば ・・・ もっと気を回していれば・・・と思ってももう遅すぎる・・
このコ達には そんな思いはさせたくないものだ・・・
美味しいはずのコーヒーの最後の一口が 急に苦くなった。
博士はそっと・・・ 溜息を散らし遠い思い出を記憶の奥に再び仕舞いこんだ。
せめて お前たちは ・・・ お互いの想いに気がついておくれ。
三人で囲む夕食は 次第にそれぞれを <家族> として近づけてゆく・・・
そして 誰もが自然に夕食の席を楽しみにするようになっていった。
「 島村く〜ん! ねえねえ この前の授業のノートなんだけど 〜 」
賑やかな声がジョーの後ろから響いてきた。
― もっとも お昼時の学食なので 春休みでそんなに混んではいなかったが
特に目立つというほどでもなかった。
「 あ ヤマダさん。 ・・・ 丁度よかった! この前は雑誌・・・ありがとう! 」
「 島村くん ・・・ノートなんだけど、ねえコピーさせてもらえる? え・・・雑誌? 」
駆け寄ってきたのは今時の女子学生、 ジョーの隣にすとん、と腰かけた。
「 うん。 これ・・・ありがとう、物凄く助かったんだ。
ジョーはごそごそとバッグの中から袋を取り出した。
「 なんだっけ? ・・・ あ、< 簡単・美味しい・レシピ > か。 」
「 うん。 このレシピさ、本当に美味しかった! ウチですご〜く喜んでもらえたんだ。
あ・・・ あの。 これ・・・お礼! 」
「 え〜〜 やだ〜〜 お礼なんて。 え〜いいのォ? あ、チョコだ♪ ありがとう♪ 」
「 この雑誌 今度からぼくも買うよ。 レシピをもっと増やさないとさ。 」
「 ふうん? 島村くんっていつも夕食、作るの? あ、一人暮らしの自炊? 」
「 いつもじゃないけど。 家は今、皆忙しいから。 ぼくが夕食担当することが多いんだ。
え〜と? なんだっけ ノート? 」
「 あ! そうなんだけど。 この前のさ〜 コピーさせてもらえる? 」
「 うん、いいけど。 字、きたないよ? 」
「 いい、いい! わ〜助かった〜 アタシさあ、あの教授の単位落として。 この特別講義が補講なの。
ここでアウトだったら マジ進級ヤバイのよね〜 あ、島村君は? 」
「 ふうん。 ぼく? ああ ・・・ ぼくはまだ聴講生だから。 」
「 え。 そうなの? 違う科なのかな〜と思ったわ。 工学部のさあ。 」
「 うん 四月から 一応工学部機械科の聴講生になるんだ。 あ、 ノート 今 コピーする? 」
「 わ〜ありがとう。 ・・・ 美味しそうなお弁当だね。 」
「 おいしいよ〜〜 食べる? 」
ジョーは相変わらずにこにこ・・・サンドイッチをひとつ差し出した。
「 いいよ、いいよ。 お料理上手なんだ、島村くんって・・・ 」
こりゃ 今時の草食男子??と 彼女は興味深々な様子だ。
「 ううん、これはぼくじゃないよ。 ふら・・・ いや、 朝 ついでだからって作ってもらったんだ。 」
「 へ ・・・ええ? あ、じゃあ ちょっと貸して? 今 コピーしてくるから。 」
「 うん いいよ。 はい これ。 」
「 サンキュ ・・・! すぐだから! 」
女子学生は ジョーのノートを借りると生協にあるコピー機へ駆けていった。
「 ヨーコ! あ、 誰のノート? 」
「 あ レイコ〜〜 これ、これ! あの・島村君のだよ〜〜 」
「 え! 借りれたの〜 わ〜〜〜 ねえねえ あの茶髪・イケメン君と話 した? 」
「 うん。 ・・・ 彼ってさ。 同棲とかしてるの? 」
「 え・・・・さ、さあ?? でも多分一年か二年でしょ、 違うんじゃないのォ? 」
「 ・・・それじゃ 猛烈なマザコンなのかなあ・・・
すっげ〜お料理上手なママが ばっちり仕切っている・・・とか? 」
「 う〜ん?? 謎だよね。 興味ある〜〜 」
「 うん! あ、そうだ・・・あのさあ? 」
「 ・・・ うん?? ・・・あ、 それいい、いい♪ 乗った〜〜 ! 」
今時の女子学生たちはひそひそと謀議に耽っていた。
「 ただいま〜〜 あ? 今日はフランの方が早かったんだ・・・ 」
ガチャリ ・・・と オート・ロックが開き ジョーが玄関ポーチに入ってきた。
上り框に フランソワーズのパンプスを見つけたらしい。
途端に彼の声が明るくなった。 すぐに靴の主がぱたぱたと駆け出してきた。
「 お帰りなさい ジョー あら ・・・ すごい荷物ねえ。 講義の資料かなにか? 」
「 ううん そうじゃないんだけど。 あ! ごめん〜〜 夕食の買い物、忘れてた・・・ 」
「 大丈夫よ、今日はわたしが担当するつもりで帰りに商店街、寄ってきたの。 」
「 そっか〜〜 さすが〜フラン! ありがとう! 」
「 ねえ、それ。 少し持つわ? ・・・ あら 雑誌? 」
「 あ、ありがとう。 うん、雑誌がほとんどかな〜 あとコピーとか。 綺麗な本もあるはず・・・ 」
ジョーは両手いっぱいに資料と思しき紙類を抱えているのだ。
「 ふうん? ・・・ これ、女性誌みたいだけど・・・? あ、持つわよ・・・ 」
「 そうなんだ。 今日ね、講義が終ったあと・・・ ヤマダさんとかコマツさんが・・・
簡単レシピの特集だからって。 持ってきてくれたんだ。 」
「 ・・・ これ ・・・ぜんぶ? 」
「 うん。 簡単晩御飯 とか ランチとか。 30分でできます、とか ・・・ いろいろ。
せっかく貰ったからさ う〜んと研究しなくっちゃね。 」
ジョーは雑誌類を抱えたまま なんだか嬉しそうにリビングに入ってゆく。
ふうん??? コレを ジョーに、ねえ。
・・・ な〜んか 下心みえみえっぽいわねえ・・・
フランソワーズもチラチラみれば <手作り・愛情弁当♪> <おうちで簡単フレンチ> とかの
コピーが目につく。 いかにも美味しそうな写真も満載である。
「 お友達なの? その ・・・ なんとかさんたち。 」
「 え? う〜ん・・・友達っていうか。 ノートのコピー、させてもらったお礼よ、って言うんだけどね。 」
「 ふう〜ん ・・・・ お礼、ねえ? 」
「 うん。 ねえねえ、今度は何を作ろうか? あ! オムライスだって!
へえ〜〜 ああいうの、家でも作れるのか〜〜 ふうん ・・・? 」
ジョーはリビングで 山ほどの<資料>を積み上げ片っ端から読み始めている。
「 あ あら。 ジョーってばオムライス、好きなの? それじゃこんどランチに作るわよ? 」
「 ・・・ え? ああ ・・・ うん ・・・ そっか〜 これはまずひき肉を炒めるのかあ〜 」
「 ?? あら、 オムレツ? ・・・へえ〜〜中にひき肉を入れるの?? 」
「 ・・・・そっか〜 ふうん ・・・最後に水溶き片栗粉、か。 ふうん ・・・ 」
「 まあ 中華もあるの? 簡単中華なら わたしでも出来るわよ? 」
「 ・・・ え? ああ、そうだねえ。 ・・・お♪ パンケーキ・ランチ、かあ〜〜 ふうん・・・ 」
ジョーは完全に <資料> に没頭していて、彼女の言葉などてんで耳に入っていない。
「 あ・・・・それじゃ わたし。 晩御飯、作ってくるわね。 」
「 え? あ ああ。 お願いするよ〜 ・・・ あ、そうか! パプリカなら彩りが綺麗だよなあ・・・ 」
ふん。 お料理はオトコ心をゲットする最大の武器って本当ね!
・・・ ママンが言ってたわ・・・ 上手な料理人は一生失業しないのよって。
そうよね、 そうなんだわ。 ・・・ ようし ・・・!
雑誌に埋没しているジョーをほったらかし フランソワーズはさっとキッチンに飛び込んだ。
やがて ―
タンタンタン タンタンタン ・・・・
小気味のよい音が響きだした。 彼女はキャベツの千切りを始めている。
オムライスがどうのこうの・・・って言ってたわね? うん ・・・ 決めた!
「 ジョーォ? ねえ ・・・ ジョー? 」
「 ・・・ そっか〜 うん、ここでニンニクが効くんだな! え? あ、なに、フラン? 」
ジョーはやっと雑誌の山から顔をあげた。
フランソワーズがキッチンから顔だけ覗かせている。
「 あのね。 明日も学校に行くでしょ? ごめんなさい〜〜 明日は忙しくて・・・
お弁当、作れないのよ・・・ あのぅ・・・がくしょく? で食べてくれる? 」
「 ああ、いいよ〜 毎日大変だもの、忙しい時は作ってくれなくてオッケーさ。 」
「 ありがとう! ね? きっとがくしょく で食べてね? 」
「 ? うん いいけど? あ。 きみもさ〜疲れた日とか言ってくれれば車で迎えに行くからね。
なだっけか・・・? すく〜る なんとか・・・って舞台、もうすぐなんだろ? 」
「 School Performance ね。 ええ でも来月だからまだ・・・ でも嬉しいわ♪
バッテバテの時にはお願いしちゃうかも♪ 」
「 うん! 任せて。 バレエ・カンパニーの場所はちゃんとチェックしてあるからさ。 」
「 頼もしいわあ〜〜 あ、もうすぐ御飯よ。
今日はね〜〜 とんかつ に挑戦したの♪ ふふふ・・・きゃべつの千切りも たっぷりよ 」
「 ええ?? うわ〜〜〜 うわ〜〜〜 感激だなあ〜〜 」
ジョーは 雑誌の山から抜け出し満面の笑顔でキッチンに入ってきた。
ふふふ・・・ これこれ。 この笑顔よ〜〜
ママン? わたし お料理頑張るわ〜〜
「 ねえ? きゃべつの千切り もうちょっと手伝って? わたし、揚げ物を始めるから。」
「 うん! わあ〜〜 美味しそうな匂い〜〜 」
ジョーはジュウジュウと音の立つ中華鍋の側で 嬉々としてキャベツの千切りを始めた。
「 あのう・・・ がくしょく ってここですか? 」
「 ・・・あ〜? お♪ い、いえ〜す! ひや いず がくしょく! 」
「 ありがとうございました。 」
「 あ ああ・・・・ ( げ♪ か〜わい〜〜♪ ) ゆ〜あ〜うぇるかむ ・・・ 」
真っ赤になりぼ〜〜っとコチラを見つめている男子学生など 目もくれず・・・
彼女はとっとと目の前のホールみたいな建物に入っていった。
まさにお昼時なので 春休みとはいえ結構混雑している。
うわ・・・ なに、これ。
・・・ ちょっと反則だけど・・・ <眼> つかっちゃお・・・
あ。 いた・・・!
金髪碧眼の美女は ほんの少し呆然と学食の入り口に立っていたが すぐにすたすたと入って行った。
学生達があちこちに群れて声高に喋っていたり、無心にばくばく食べていたり、している。
女子学生の高い笑い声も混じってなかなか賑やかだ。
「 ねえ〜〜 島村く〜ん♪ 学食って珍しくない? 」
「 そうよねえ〜 今日はさあ あの美味しそうなお弁当じゃないんだ? 」
「 うん。 今日は 忙しいからって。 」
「 ふうん ・・・ ねえねえ またノート、コピーさせてくれる? 島村君のノートってぇバッチリでさあ。
もう完璧!ってかんじ〜〜 」
「 え。 いいけど。 でも 読めるかなあ〜〜 」
「 読める、読める! ねえ? 今度外にランチに行かない? 」
「 あ・・・ ヨーコ、ズルイ! アタシも一緒する〜〜 」
「 え・・・ あの ・・・ あれ??? 」
「 ジョー? ここに居たのね。 はい、ランチ。 急いで作ったから届けにきたの。 」
す・・・っと 彼の目の前にアイボリー・ホワイトのコート姿が立っていた。
「 わあ〜・・・ 今日は忙しいって言ってたのに・・・ ごめんね〜〜 なにかな? 」
「 ふふふ・・・ ジョーの好きなオムライスよ。 ちょっとオムレツ風になっちゃったけど。 」
「 え ・・・ どれどれ? うわ・・・すご・・・ 」
ジョーは お弁当箱一杯に詰まった オムレツ風オムライス に息を飲んでいる。
左右から覗き込んでいた女子学生たちは眼も口もまん丸だ。
「 気に入ってもらえるといいのだけど。 ・・・ あ、お弁当箱、ちゃんと持って帰ってきてね?
ああ 今晩はねえ ミート・ボールと白菜の中華風、のつもりよ? 」
「 ・・・ これ! すご〜く 美味しい・・・・!! ふわふわオムレツの中に うわ〜〜 」
「 あら よかったわ。 じゃあね。 」
「 ・・・だ ・・・れ? 島村くん・・・ 」
「 あ! お姉さんでしょう? ちょっと島村くんに似てるもの。 こんにちは〜お姉さん!」
女子学生たちはやっと解凍したらしい。
「 え・・・ お姉さんって・・・ ぼく達は そのう〜〜・・・ 」
「 ぼく達?? きゃ〜〜 やっぱりカノジョなのお?? もしかして・・・同棲中? 」
「 そ、そうじゃなくて。 ぼく達はそんなんじゃないんだ ! 」
あ。 ヤバ・・・・!
ジョーは自分自身の声の大きさに一瞬びくり!として慌てて口を押さえたが。
突如現れた金髪碧眼の美女の微笑みは凍りつき ― そのままスタスタと帰って行ってしまった。
・・・ やべ〜〜 聞こえちゃったよ・・・・ うん、絶対に。
「 ・・・ あ ・・・ あの! そんなんじゃなくて 本当は本当にカノジョってわけで・・・ 」
ジョー自身もワケのわからない言葉が口からこぼれでてしまう。
う〜〜〜 ど、どうしよう〜〜 ぼく、壊れちゃったのかな・・・
いや! そんなコト、どうでもいいんだ! フラン!! フランソワーズ・・・!
ごめん、<そんなんじゃないんだ〜〜 >
「 あ あの! さよなら! こぴーしに行こう、また今度! 」
まだ眼も口もまん丸にしたままの女子学生たちを置いて、ジョーは慌ててランチを収拾し
学食を飛び出した。
加速・・・ ってダメだよ〜〜 うわ〜〜 フラン??どこだ??
両手にランチ・ボックスを後生大事に抱え ジョーは大学の構内を駆け抜けていった。
「 ・・・ なんなの、アレ? 」
「 さあ・・・ そんなんじゃない ってなに? 」
「 意味不明。 ナゾの弁当男子だね〜 島村君ってさあ。 」
「 うん。 あ、ノート、コピれたからいいけどさあ・・・ 」
女子学生たちは呆然と茶髪君を見送っていた。
「 フラン〜〜!! フランソワーズ!! あの、ごめんッ!!! ・・・ あれ? 」
玄関のドアを蹴破る勢いで ジョーは帰宅したのだが・・・・
昼下がりのギルモア邸の中からは 鳩時計の振り子の音が聞こえるだけだった。
「 ・・・ フラン〜〜〜・・・ まだ帰ってないのかなあ・・・
あ、そうだ! 博士〜〜 博士! うわッ! 」
バン ・・・!
リビングのドアが開き、今度は博士が飛び込んできた。
「 何事かね?! ジョー・・・ ああ お前か・・・ 」
「 博士!! フランソワーズは? 帰ってませんか?! 」
「 フランソワーズ? いいや。 あのコは今日はほれ・・・午後からだとか言っておったぞ?
レッスンの前にお前に弁当を届けてゆく・・・ともうかなり前に出かけたぞ。
ありゃ。 ジョー、お前、落ち会えなかったのかい。 」
「 い いいえ! 弁当は ほらこれ! 滅茶苦茶美味しくて・・・ それで
カノジョ で 姉さんで。 そんなんじゃないって言っちゃったんです〜〜 」
「 ・・・??? ジョー。 お前 ・・・どこか不具合があるのか? 」
「 ! そっか! 稽古場に行ったんだ! あ、それじゃ博士! 」
バン・・・!
再び玄関のドアが盛大な音とともに閉じられた。
「 ・・・ なんじゃ、アイツ。 ふむ・・・やはり近々徹底したオーバーホールが必要じゃな。 」
― くそ〜〜〜 加速装置・・・は使えないからなあ・・・!
ジョーは歯噛みをしつつアクセルを踏んだり放したり・・・いらいらと運転をしていた。
「 うう〜〜〜 ・・・・っと! ここで違反切符なんか切られたら大変だよな・・・・
落ち着け〜〜 落ち着け! あ ・・・ あの信号を・・・ 」
ようやっと流れ出した車の列から抜け出し ジョーの車は裏道に入っていった。
「 ・・・え〜と ・・・ 青山二丁目? ・・・う〜ん・・・・ あ! あれだ! 」
目指す建物をみつけ、ジョーはひとまず門から離れて車を寄せた。
「 ・・・べつにさ。 こっそり行くこともないんだけど。 あ・・・なんて言えばいいのかな。
ふ、フランソワーズ ・・・さん、お願いします。 ぼく ・・・ 家のモノです ?? うう〜ん ・・・
これじゃますます不審者だよなあ・・・ 」
ジョーはひとり ぶつぶつ言いつつ、アイアン・レースの門を通りおそるおそる中に入った。
へえ? 蔦が建物を覆ってる・・・ クラシカルな雰囲気だなあ。
・・・ あ! 誰か 来る! ・・・ど、どうしよう??
慌てる必要もないのだが ジョーはすっと柱の影に身を寄せ気配を殺した。
開けっ放しの入り口から出てきたのは ― 長身の男性と金髪碧眼の美女・・・
・・・ふ、フランソワーズ・・・!
「 ・・・だからさ。 そんなに焦らなくていいよ。 」
「 ごめんなさい。 わたし・・・失敗ばっかりしてて・・・ お休みまでしちゃって・・・
パ・ド・ドゥなのに・・・ 本当にごめんなさい、最低ですよね。 」
「 いいよ〜まだ日にちはあるし、誰だって都合の悪い日はあるもの。
それよかさ、もっとこう〜 気楽に構えなよ。 」
「 気楽に・・・? 」
「 そ。 明日は上手くゆくかもしれないな〜って思ってみれば?
君、ブランクがあるって聞いてるけど、そんなのすぐに取り戻せるさ。 」
「 そ・・・そうかしら・・・ 皆に迷惑かけてばかり・・・ 」
「 皆 に? 」
「 ・・・ え。 あ ・・・ あの・・・ ジュンさん、貴方に・・・ 」
「 僕としては全然迷惑なんかじゃないよ。 新人と組むって誰かな〜〜って思ってたら
こ〜んな素敵な美人で 超ラッキーって思ってるよ? 」
な、なんだァ・・? コイツ ・・・ フランと踊るのか??
ジョーはジリジリと柱の陰から身を乗り出してきていた。
「 え・・・ そ、そんな・・・ でも わたし。 ジュンさんに申し訳なくて・・・ 」
「 ね? お茶でもどう? リラックスしてさ。 僕も君とお喋りしたいし。 ね、いいだろ。 」
「 え・・・ あの ・・・ あ・・・ 」
「 この先にな、いい雰囲気のカフェがあるんだ〜 ね? ほらほら・・」
「 あ ・・・ 」
男性はフランソワーズの手を引いてどんどん歩き始めた。
・・・・ う ・・・ くそ ・・!
「 フランソワーズ ! む 迎えに来た よ ! 」
「 ??? ジョー ??? 」
「 だ、誰だ、君は??? 」
突然 飛び出してきた茶髪ボーイに二人は思わず足を止めた。
「 あれ、フランソワーズ、知ってる人かい? ・・・・ああ! 弟さんかな? 」
「 え?! あ・・・ あの ・・・ ジョー は・・・ 」
「 ジョー君っていうのかい? うん、なんとなく雰囲気が似てるね。
君〜〜 姉さんをちょっと借りるよ、いいだろ? 」
ジョーは一瞬 息を詰めていたが ― だん!と大きく踏み出すと青年の前に立った。
「 こんにちは。 ぼくは! 弟じゃないです。
彼女は ― ぼくの彼女、です! さ、帰ろう、フランソワーズ。 さようなら!」
「 あ ・・・ジョー ・・・ あ・・・ お、お先に失礼します 」
ジョーはむんず!と彼女の手をにぎるとずんずん門を出ていった。
コツン ・・・・ コツ ・・・コツン ・・・
ギルモア邸のリビング、そのテラスに近い日溜りから 鈍い音が聞こえてきている。
午後の陽射しの中 老人が二人、のんびりと将棋板を挟んでいた。
「 ふむ・・・・? おや御宅のお若い方々はどうしたのかな。 」
「 うん? ・・・ ああ、喧嘩でもしたのかの? 一緒に帰ってきたのじゃが・・・
ずっとああやって・・・ 座ったきりだんまりと続けておるのじゃ。 」
「 ほう・・・? ・・・どれ、年寄りが出しゃばるかな? 」
客人の老人はよっこらしょ・・・と立ち上がりリビングの奥に入っていった。
― ソファのこっちの端とあっちの端に。 茶髪の青年と金髪碧眼の少女が俯いて座っていた。
「 ほい、お嬢さんや。 これは土産です。 茶目の坊や? 豆まきにでも使ってほしいの。 」
「 はい? あら ・・・ これ?? 」
「 え・・・ あ。 これって 節分の豆 ですか? 」
客人の声に 二人はやっと顔を上げた。
「 そうじゃよ。 これで・・・いろんな鬼を追い払いましょうな。
そうして ― 春を迎えようじゃないか。 ん? 」
「 え ・・・ お、鬼 ですか? 」
「 そうじゃよ。 節分にはな、こうして豆を撒き、トシの数だけ豆を食って。
自分自身の身の内の鬼も追い出すといいのじゃ。 ふぉふぉふぉ ・・・まあ、伝統行事に過ぎんがの。 」
「 鬼・・・ 自分の鬼 ・・・? 」
カリリ・・・ カリ カリ ・・・
白い指が豆を摘まみあげ 珊瑚いろの唇に運んでゆく。
カリ ・・・ カリリ ・・・ポリ ・・・
「 ふ、フランソワーズ?? そんなに食べなくていいんだよ・・・ 」
「 ・・・わたし。 本当のトシの分だけ食べて ・・・ お、鬼を ・・・ 嫉妬の鬼を追い出すわ! 」
「 ・・・ 嫉妬の鬼?? 」
「 そうよ。 わたし。 ・・・ ジョーの お友達に嫉妬したわ。
皆 本当の19歳で 本当の女の子で ・・・ ジョーと並んで話して・・・
わたし・・・ おばあちゃんなのに ・・・ みっともないわね・・・! 」
「 フラン! やめろよ! 」
ジョーの手が白い指をきっちりと掴んだ。
「 やめろよ・・・ そんなこと、言うなってば。 ぼくこそ・・・あの彼にヤキモチ妬いたのさ。 」
「 ・・・ ジョー ・・・ 」
カツン ・・・ カツ ・・・カツ・・・・
またしてものんびりした音が響き始めた。
「 ・・・ァ〜〜 ちょ、ちょっと待った! 」
「 だ〜め。 ・・・あ、いや。 ここは待つかの。 この勝負、長引かせんとなァ? ギルモア君や。 」
「 うん? ・・・ ああそうじゃな。 奥の熱々ムードに水を注しては・・・なあ? 」
「 それでは この一手は預かり、ということで。 」
「 忝い。 それでは ・・・ 改めて ここに・・・ 」
カツン ・・・ カツ
老人達の勝負はまったりと続いて ― 部屋の奥では。
・・・・ ほやほやの恋人たちがやっとキスを交わしていた。
明日は立春 ― 春が そこまでやってきている。
************************ Fin. ************************
Last updated
: 02,02,2010. index
************ ひと言 **********
やたら意味深なタイトルですが・・・・ いえ、なに、もどかしいカップルの
もどかしい話 なのでした♪
はい、平ゼロ設定、 まだ初期です。 二人でモジモジしあっている頃・・・かな?
季節小話として お楽しみ頂ければ嬉しいです。
<島村さんち> とはまた別の平ゼロ・カプ話・・・
もしかしたら もうちょっと続けたい・・・かもしれません(^_^;)
ご感想の一言でも頂戴できましたらものすご〜く嬉しいです。
どうぞよろしくお願いいたします <(_ _)>