『 ないしょ話 』
ヤツは間に合ったのだ、と皆は言うわ。
二人は流れ星となって その輝きをあまねく地上に降り注いだ。
だから。彼はわたしのもとへ 還ってきたのだ、と。
.....でも...。
ーねえ ジョ−。
みて、こんなにキレイな 落ち葉をひろったわ。
いちょう に もみじ に...大きいのは 柿。 オレンジ色の実も キレイね。
『日本の秋は紅葉がきれいなんだよ』
わたし マロニエ以外も見分けられるようになったのよ。
--- あなた が いない ---
ーきこえる? フランソワ−ズ
今年は 紅葉がキレイだね。
僕は かぜになって 木々の葉を散らそう
きみの まわりに 彩錦をかざるために。
--- ぼく は ここに いるよ ---
ーねえ ジョ−。
ほら、冷えるとおもったら。 雪、よ。初雪。
雪の朝はとても好き。まわりの音がすいこまれるように し...んとして。
あなたの鼓動も あなたのぬくもりも いつもよりよくわかるの。
雪のにおいは あなたのにおい。
--- あなた が いない ---
ーきこえる? フランソワ−ズ
冬景色はさみしいから。
僕は 風花になって 銀のモ−ルを掛けてまわるよ
きみの 髪に項に舞い降りて溶けてゆくために。
--- ぼく は ここに いるよ ---
ーねえ ジョ−。
ああ、若葉の緑があんなに濃くなったわね。
多すぎる思い出をかかえきれないみたいに 花吹雪が舞っていたっけ。
木の下闇も濃くなって 漏れるひかりがゆれているわ。
あなたの姿が 見え隠れしていた いつものあの並木路。
--- あなた が いない ----
ーきこえる? フランソワ−ズ
もえたつ木々の葉のあいまから ゆれる金の髪がみえるよ
僕は 木漏れ陽になって 纏わり付くよ
きみを 極上の光でつつみこむために。
--- ぼく は ここに いるよ ---
ーねえ ジョ−。
波は 寄せては返すのに。
潮は 引いても また 満ちるのに。
樹々は 葉を落としても 春には 新たに芽吹くのに。
星々は 巡り廻って ふたたび ここに姿をみせてくれるのに。
あなたが いない。 あなたが いない。 あなたが いない。
あなた だけが いないわ!
わたし こわいの、あなたのいない未来(あした)が。
わたし こわいの、あなたのいない地上(ここ)が。
わたし こわいの、あなたのいない私が.....
ーきこえる? フランソワ−ズ
海が 引いてもやがて満ちる様に。
木々が 枯れ葉を散らしてもやがて若葉が萌え出る様に。
僕は かぜとなり ゆきとなり ひかりとなって
きみの 傍にもどってくるよ。
きみの ほほえみ きみの こころ きみ自身があるかぎり
僕は 永遠にきみのもとへ 還ってくるよ。
ぼくは ここに いるよ。
僕は いつまでも いつまでも きみのそばに いるよ。
.....ジョ−..... ここに あなたは いるのね....
.....フランソワ−ズ.... ここに ぼくは いるよ....
アイツは間に合ったのだ、と仲間は言う。
二人は流れ星となって 地上(ここ)にその光をそそいだ。
だから。彼は 君の元へ還ってきたのだ、と。
......そうね..... あなた方は、 あなたは ここにいるわ.....
ジョ−....いつまでも いつまでも あなたと いっしょね。
*** FIN ***
後書き by ばちるど
ヨミ編後日談です。 生還説、採っていません。
使い古されたコトバですが、「哀しみは時が癒すのだろうか・・・」がテ−マかな?
Last update : 9,22,2002