『 くっきー ・ サブレ ・ ビスケット 』
カラカラ カラ ・・・
スーパーの中を買い物カートがゆっくりと通ってゆく。
押しているのは カートのハンドルから半分しか出ていない 茶髪のアタマだ。
「 うんしょ ・・・っとぉ〜〜〜 」
彼はほっぺをちょいと染めつつ カートを操る。
ぱたぱた・・・ 軽い足音が寄ってくる。
金髪の女性がカートのところに駆けてきた。
「 すばる! ねえ ホットケーキ・ミックスが安いわ! 買う? 」
「 ううん、 いらない 」
「 あ そう? ふ〜〜ん ・・ あ ねえ 見て!
< かんたん・くっきーのもと > ですって 買う? つかえそう? 」
「 ううん。 いらない 」
「 そ う・・・? じゃあ ・・・ あれはどう?
< 水を入れて混ぜるだけ > ですって! 買おうか? 」
「 ううん。 いらない。 お母さん。 薄力粉 と 強力粉。 二つ かって 」
「 はくりき・・・? 」
「 あ〜〜 ・・・ わかんないか ・・・ いつもの! こむぎこ、かって。
あの赤と黄色の袋の 」
「 あ いつものね はいはい ・・・ うんしょ 」
どん どん。 カートに1キロ袋がふたつ、入った。
「 え〜〜と あとはなにが必要かしら? お砂糖は? ミルクとか卵とか 」
「 おさとう も ぎゅうにゅう も。 たまごもみんなれいぞうこにあるよ。 」
「 あ そうだった? じゃあ ・・・・ あ チョコは?
すばるのすきなチョコ、買おうか? 」
「 ・・・ こんかいのには チョコ、いれない。 」
「 あ そう? じゃあ ・・・ お野菜売り場に回ってくれる? 」
「 いいよ。 ・・・ 僕 ぴ〜まん も せろり も いらないからね 」
「 あら お母さんは必要なの。 あの赤いのと緑のピーマン 買いましょ。
チキンを炒めると美味しいわ。 セロリも煮込むといい味なの。 え〜と
あとは トマト トマト〜〜〜っと 」
「 おか〜さん そろそろ次にゆきま〜〜す〜〜〜 」
「 ちょいまち! わ〜〜〜 キャベツが安いわっ おひとりさまいっこかぎり
だって。 すばる! すばるも一個 もって ! 」
ずむ。 彼にも中くらいのキャベツが押し付けられた。
「 わお ・・・ おか〜さん、はやく帰ろう。 僕 はやく作りたい〜 」
「 え? ああ そうね それじゃ 帰りましょうか。
さあ〜〜 すばる、こっちに乗って。 お母さんがレジまで押すわ 」
とん、と息子を荷台の下に立たせると ―
「 さあ 行くわよ 〜 」
「 わ わぁ おぉ〜〜〜〜〜 」
カラカラ ゴ −−−−−−−−−−−− !!!
金髪のオクサンは ものすごい勢いで買い物と息子を積んだカートを押していった。
おか〜さん ってば ・・・ ぼうそうぞく だあ〜〜〜
さらさら ・・・ ぴん。 さらさら
ぷっくりした手が きっちりきっちり粉を計ってゆく。
「 う〜〜ん ・・・・と。 ことしはなんまい、作ればいいかなあ〜?
おと〜さんってば どんくらい < おれい > がいるのかなあ う〜ん 」
あ・・・ 室温にしておかなくちゃ・・・と 彼は冷蔵庫からミルクのパックを
取りだす。 キッチン・テーブルには もうちゃんとたまごがパックをあけて
ならんでいる。
「 ことしは強力粉 すこし まぜてみよっかな〜〜 あと おさとう、たっぷり☆ 」
このくらいかな〜 と 慎重に計量してみる。
「 ふふふ〜〜 げんかいに挑戦! かな うふふふ〜〜 」
「 す〜〜〜〜ばる〜〜〜〜〜 できたァ〜〜〜
」
バンッ !! キッチンのドアを跳ね開け〜〜すぴかが入ってきた。
「 すぴか。 ― これからつくる。 」
「 な〜〜んだ〜〜〜〜 ね〜 出来たら アタシ、 味見するよ? 」
「 ・・・ あまいよ? 」
「 え 」
「 あまいよ。 いつもの塩味・ばじる風味 や れもん味・きゃらうぇい風味
は つくらないから 」
「 え〜〜〜〜〜〜 いつもの、つくってよぉ〜〜〜 」
「 これ、お父さんの ありがとう・くっきー だもん。 僕のいつもの味。
それよか すぴか。 < ありがとうメッセ―ジ > 書きなよ〜〜
お父さんのかわり 」
「 あ そだそだ〜〜 なんか厚いかみ、ある? 」
「 う〜〜ん と ・・・? あ この箱、うらがわ つかう? 」
すばるは お菓子の空き箱を持ってきた。
「 あ〜〜 うん それでいいや。 えい えいっ 」
ばりばりこわして広げるた。
「 えっと・・・ あとは〜〜っと ・・・ 」
リビングの棚から マーカーの束を持ってきてすぴかは裏側に
なにか書き始めた。
ありがとうございました。 ちょこ のおれい です
ちょこ ありがとうございました。
素直で丁寧な筆跡、 すぴかはさらさらと書いてゆく。
「 かいてる? 」
「 うん どう? 」
「 あ い〜ね〜〜 僕 それ 切るね 」
「 さんきゅ〜〜 で もって しまむらすぴか・すばる
しまむらすぴか・すばる〜〜〜 ・・・っと 〜〜 」
書き上がったメッセージの下に すぴかは自分と弟の名前を書いてゆく。
「 すばる〜 くっきー にこれ、つけて 」
「 うん。 おか〜さんにわたすね 」
「 たのむ〜〜〜 で さあ〜〜 ばじる味 と きゃらうぇい味〜〜〜
おっねがいしまあ〜〜す〜〜〜 」
「 わ〜〜〜ったよぉ 最後ので 焼くからあ 」
「 さんきゅ♪ アタシ、カードさあ、 リビングにおいとくね
ここだとよごれちゃうでしょ 」
「 お さんきゅ。 あとでおか〜さんにわたすよ〜 」
「 うん。 あ アタシのくっき〜も〜〜
」
「 わ〜かってるって。 あ あらいもの、やってくれる? 」
「 ・・・ えんりょしとく。 ほんじゃ たのみまあすぅ〜〜 」
すぴかは ぶんぶん手を振ると 画用紙を持って出ていった。
「 ・・・ ふ〜ん ジャマっけだからいないほうがいいもんな〜
さあて ・・・とぉ 」
彼は 小さな手には大振りなボウルに粉を入れ バターを手際よく
< 切り込むように > 混ぜ始めた。
― やがてキッチンの中から いい〜〜〜〜香が漂い始めた。
毎年、二月のあの日、 ジョーは 山ほど! チョコをもらって帰る。
フランソワーズと結婚してからも 二人の可愛い子供たちが生まれてからも
それは一向に変わることがないのだ。
島村夫人は 溜息をつきそれを受け取る。
「 ごめん ・・・ 」
「 いいのよ ジョーのせいじゃないもの 」
「 う ん ・・・ でも ごめん 」
「 いつもと同じ で いい? 」
「 うん 頼む。 ほんと ごめん・・・ 」
「 ・・・・ 」
彼女は彼の頬の軽くキスをおとすと、そっとぱんぱんの紙袋を部屋の隅に置いた。
山盛りのチョコは 本体は全て福祉施設に寄付する。
そして 三月のあの日に すばるのお手製クッキー と すぴかの御礼カード で
< お返し > となるのだ。
いかに 島村ジョークン に 御執心でも息子と娘からの御礼 がくれば
熱も冷めるはず・・・ と思っていたのだが ・・・
え! これ 島村さんのムスコさんと娘さんが?
きゃ〜〜〜 かわい〜〜〜〜〜
う わ ・・・ 激うまよぉ〜〜〜
わ〜〜 アタシも欲しい! 来年はアタシも贈る!
予想外? の反応で 二月のあの日のチョコ は一向に減らないのである。
フランソワーズのため息も 一向に減らない。
ご機嫌ちゃん なのは ― 父親譲りの茶髪の少年。
ふんふん ふ〜〜〜〜ん♪
すばるはハナウタまじり で洗いモノを始めた。
「 火加減 りょうこう〜〜 っと。 あとはオーブンに任せて〜〜 」
かちゃ かちゃ かちゃ ・・・ シンクの中はあっという間に片付いた。
「 あ そだ そだ 次ので しお味とれもん味 だな〜〜
う〜んと あ そだ そだ アレ 書くんだった〜〜〜 」
すばるはキッチン ・ テーブルの前に座った。
「 じゆうちょう でいっか。 ・・・・っとぉ〜〜 」
彼は鉛筆をにぎり ちょいと考えただけでコツコツ〜〜 なにかを書きはじめた。
しばらくして ほわ〜〜〜ん ・・・・ いい香りがしていきた。
「 お。 ちょうどいいじかん 〜〜〜 」
ぱっと立ち上がるとオーブンの前に駆けてゆく。
「 う〜〜ん ・・・? あ いいかんじ〜〜 これはおとうさんの御礼用☆
で もってぇ 僕もおれいにするもんね 〜 」
チン。 キツネ色のクッキーが ほわんほわん〜〜焼き上がった。
「 よし・・・っと。 こっちにうつして ・・・ 冷やす。
で こっちのテンパンは っと 」
新しいタネを 並べ始めた。
< おかえしの日 > の前の夜のこと ―
「 あら ジョー まだ寝ないの? 」
フランソワーズは キッチンにいる夫に声をかけた。
いつも遅い夜食のあと、彼は自分が使った食器をきっちり洗うのだ。
「 あ うん ・・・
」
「 ね 洗いモノならわたしがするから。 お疲れでしょう? 」
「 あのね ぼく、家事をやると気分転換になってさ、 疲れとかとれるんだ〜
なんかこう〜〜〜 詰まってる時には アイディアも浮かぶしね 」
「 へえ・・・ 編集者の意外な素顔〜〜 」
「 かもな〜〜 あ 先に休んでて ・・・ きみだって明日 早いだろ 」
「 まあ ありがとう。 お休みなさい 」
「 ん ・・・ 」
ちゅ。 温かいキスがジョーの唇に降ってきた。
「 うふふ ・・・ 御休みなさい 」
「 うん ・・・ 」
彼はひらひら手を振ると キッチン・テーブルの前にたった。
「 さて。 これから 〜〜 真剣勝負だぞ 」
目の前には 所謂自由帳からはぎとった紙がいちまい。
そこには くっきり鉛筆で 大き目な字がならんでいる。
< くっきー のつくりかた > しまむらすばる
「 え・・・っと まずは 材料 か え???
こな ぼうるいっぱい たまご さんこくらい さとう いっぱい
べ〜きんぐぱうだ〜〜 ちょっこし、 ぎうにう ちょぼちょぼ
ばたー おか〜さんにもらう
・・・こ これで クッキーをつくるのか ?? すばるは・・・? 」
ジョーは しばし呆然としていたが ともかく材料を準備しよう・・と
キッチンの中を右往左往し始めた。
「 ・・・ う〜〜〜〜 ・・・ < こな > って 小麦粉のことだよな?
ボウルって 大・中・小 あるんだけど〜〜〜
たまご。 ・・・ さんこくらい。 < くらい > ってど〜いうことだあ?
さとう いっぱい。 たくさん の意味か? 一杯 の意味か??
ベーキングパウダー ・・・ ちょっこし? ほんのちびっと か・・・
ばたー おか〜さ〜〜ん どのくらい息子に提供してるんですかぁ〜〜
う〜〜〜 超難解レシピだあ〜〜 ・・・ う〜〜〜 」
半分ベソをかきつつ ジョーはでっかいボウルの中身を ぐりぐり〜〜と
混ぜ合わせるのだった。
「 おか〜さん・大好き味 って言ってたけど ・・・ ふつうの味と
なにか違うのかなあ ・・・ トクベツなものが入ってるわけでもなさそう・・・
しっかし! ・・・ この材料で クッキー、 楽々作っているんだもんなあ ・・
すごいよ まったく ・・・ すばるのヤツ ・・・ 」
ぶつぶつ〜〜〜 言いつつ ジョーは深夜のクッキ―作りに精をだすのだった。
― さて 少し時間を遡る。 < おかえしの日 > の数日前のこと。
「 あの さあ すばる。 お父さんからのお願いがあるんだけどぉ 」
「 え なに〜〜 」
ほわいと・でー の前に 珍しく早く帰宅したジョーは 息子の側に座った。
「 おと〜さんの?? なになに〜〜 」
「 あの さ。 教えてほしいんだ 」
「 ?? 」
「 すばるはクッキー 作るの、とても上手だろ? 美味しいし可愛いし 」
「 えへへ〜〜〜 おいしいよね〜 僕もそうおもう〜〜 」
「 うん お父さんも大好きさ。 それでね ・・・・
そのクッキーの作りかた ・・・ お父さんにも教えてくれないかな 」
「 おとうさんに?? おとうさん、くっきーつくるの?
あ そういうおしごと? 」
「 仕事じゃないんだけど ・・・ お父さんも すばる みたくに
美味しいクッキーを作って おれい にしたいんだ。 」
「 あ おれい は僕とすぴかがたんとう、だよ? いっつも
毎年〜〜 おとうさんの ちょこの御礼 でしょ 」
「 うん ・・・ いつもありがとうね ・・・
御礼もらったヒト達とて〜〜〜も喜んでいるんだ 」
「 えへへ・・・ 僕もうれし〜〜 」
「 で さ。 お父さん ・・・ お母さんに おれい したいんだよ
」
「 おか〜さんに? ふうん〜〜 」
「 すばる だって お母さんに くっき〜 あげるだろ? 」
「 うん! とくせい〜〜 」
「 そっか〜〜 おとうさんもな すばるのマネ したいんだ 」
「 おと〜さん が 僕のまねっこするの? 」
「 そう! イイコトは真似っこしなくちゃってお父さんは思うんだ。
それで クッキ―の作り方、教えてください。 」
「 いいよ でも ふつ〜だよ? 」
「 ふつ〜? 」
「 ウン。 ふつ〜のつくりかた。 」
「 そっか〜 それじゃさ、 レシピ を書いてくれないかい。 」
「 れしぴ? 」
「 そ。 なにとなにを使う、とか その材料の分量とか。 いつもすばるが
作っているクッキーに必要なもの、書いてください。 」
「 ふつ〜のものばっかだよ? ウチのキッチンにあるもん ばっか。
あ こなはね〜〜 この前 たくさん買ってきたからいっぱいあるよ 」
「 そうなんだ? でもね おとうさん、< すばるのクッキー > 作ったこと
ないからさ、 分量と作り方、書いてください 」
「 おっけ〜〜 僕のじゆうちょう に書いとくね 」
「 ありがとう! そうだ、お父さんが作ったクッキー、 すばるも
たべてくれるかい 」
「 うん♪ たのしみにしているよ〜〜 おと〜さん 」
ぽん ぽん ・・・ ジョーの息子はジョーの腕を軽く叩くと に・・・っと笑った。
翌朝 ジョーが起きてきた時 ( コドモ達はもうとっくに学校に行っていた )
リビングの机の上には 紙っきれが一枚、置いてあった。
「 ふぁ〜〜〜 ・・・? お? 」
おとうさんへ くっきーのつくりかた しまむらすばる
「 あ もう書いてくれたんだ〜〜 サンキュ〜〜〜 すばる ♪
えっと ・・・? 」
ジョーはソファに座ると その紙切れを熱心に読み始めた。
・・・ こ 今晩、 がんばる ・・・!
彼は かた〜〜く決心をし ― それがその夜の彼の大奮戦となるのだ。
さて < おかえしの日 > 当日のこと。
「 お帰りなさい ジョー 今日は少し早く帰れたのね 」
「 ただいま〜〜 うん たまにはね 」
「 お疲れ様・・・ 」
ちゅ。 < ただいま > の熱いキスは二人のオアシスだ。
「 お夜食、すぐに温めるわ。 そうそう 今日はね オヤツもいっぱいあるの 」
「 オヤツ? 」
「 そうよ リビングのテーブルの上にあるから好きなの どうぞ 」
「 へえ・・・? お〜〜〜 」
テーブルの上には ジョーでも知ってる有名店の高級クッキー やら
本場・フランス製のマカロン やら おっしゃれ〜〜な箱に入ったプチ・ガトー なんかが
たくさんならんでいた。
「 へえ〜〜 すっげ・・・デパ地下とかで 買ったのかい 」
「 うう〜ん チョコのお礼ですって 頂いたのよ、今日。 バレエ団で
」
「 え。 ・・・
ふ ふ〜ん ・・・ ってことは・・・
きみ そんなにたくさんチョコ
配ったわけ?
そのぅ 二月に さ 」
「 え ? いいえ
すぴかと一緒につくった トリュフ チョコ の余りをね
あげただけよ。 ふふふ〜〜
すっご〜く大好評〜 だったのよ〜
すぴかは上手に作ったわ 」
「
ふ 〜 ん ・・・ あ あの さ 」
ゴソゴソ 〜〜〜 ジョーは リビングのサイド・ボードの中から包みを取りだした。
「 あの
これ。
ぼくからデス。 二月の御礼です。 」
「 あらァ〜〜 」
「 これ・・・ ぼくが
すばる にレシピを教わって
作ったんだ … 」
「 まあ …
」
「 お母さんが大好き味
だって教わったよ。 どうぞ! 」
「 ま〜 嬉しいわあ〜 メルシー ジョー〜〜〜
ね 一緒に食べましょうよ? 美味しい紅茶、淹れるわ 」
「 お いいねえ〜〜 大人のティー・タイム ♪ 」
二人は わくわくしつつお茶の用意をした。
「「 では いただきます 」 」
ポリリ。 カリリ。
「 ・・・・ う ・・・ ★ ( あ ・・・ ま〜〜〜 )」
「 あらァ〜〜〜 おいし〜〜〜〜 」
激甘なクッキーに ジョーは絶句し、フランソワーズはにっこりした。
「 こ ・・・ これ お母さんが大好き味 かあ ・・・ 」
「 うふふ〜〜 おいし〜〜〜 わあ〜〜 」
「 ・・・ アイツの甘党は母親譲りか ・・・ 」
「 え なに? 」
「 いえいえ 〜〜 なんでも ・・・ 」
「 あ そうだわ〜〜 すばるが これはすぴか用だよって言ってたのもあるのよ。
アレも食べてみましょ 」
「 すぴかの分じゃないのかい 」
「 すぴかはちゃんと食べてたわ。 たくさん作った〜〜〜っていってから
わたし達も味見 しましょうよ 」
「 お いいねえ 」
「 もってくるわね 」
テーブルの上には こんがり焼けたクッキーが山盛りだ。
「 ・・・ う〜〜 ま〜〜〜〜 ! 」
「 お おいし〜〜わね〜〜〜 」
すぴか用の 塩味キャラウェイ風味 と レモンバジル味 は
絶品〜
「 すっげ〜な〜 アイツ … ! 」
「 ほっんとね〜〜 将来パティシエかしら 」
「 さあ なあ〜 ・・・ なんにせよ、好きなモノ、夢中になれるモノを
みつけてくれれば それでいいさ。 」
「 そう ね。 クッキーでもサブレでも ビスケットでも ・・・ 」
「 うん うん ・・・ すばるはすばるの すぴかはすぴかの 道を 」
「 ・・・ ね? 」
「 うん ・・・ 」
ポリリ。 カリリ。
甘ぁ〜〜いはずのクッキー、二人にはちょっぴりしょっぱかった・・・。
そして やはり < おかえしの日 >、 ここでも ―
「 しまむらさ〜〜ん
」
カチャ カチャ カチャ。 ランドセルを鳴らしオトコノコが駆けてきた。
「 ? なに〜〜 わたなべくん 」
すぴかは 校門のところで立ち止まった。
「 すぴかちゃん。 あ あの ・・・ これ。 おれい。 」
「 おれい? 」
わたなべ君は きっちり折った厚紙の箱を差し出した。
表には折り紙で折ったお花がいっぱい貼ってある。
「 ウン。 二月にちょこ もらったから。 これ おれい。
僕 つくったんだ。 」
「 わ〜〜〜 カワイイ箱〜〜 上手だね〜〜 わたなべ君 〜〜 」
「 は 箱だけじゃないよ。 なかみも・・・ あの ね!
お母さんじゃなくて 僕が作ったから! はいっ 」
ぽん。
わたなべ君は小箱をすぴかに渡すと さささ・・・っと走っていってしまった。
「 あ ・・・ わたなべく〜〜ん ・・・
・・・ これって もしかして < おかえしの日 > ? 」
きゃわ〜〜〜♪ すぴかは小箱をきゅう〜〜っと抱え込んだ。
「 たっだいまァ〜〜〜〜 」
「 お帰りなさい。 あら いいこと あった? 」
玄関で お母さんはすぐに気が付いた。
「 えへ♪ これ〜〜 もらったんだ〜〜 わたなべクンから〜〜 」
「 まあ そうなの? ・・・ あ もしかして < おかえしの日 >? 」
「 ぴんぽ〜〜ん♪ はこ も なかみ も わたなべクンがつくったんだって!」
「 まあ ステキねえ〜〜 ね お母さんにもみせて? 」
「 うん♪ 手、洗ってくるから・・・ 持ってて、おか〜さん! 」
「 はいはい ・・・ 」
バタバタバタ〜〜〜 すぴかはバス・ルームに駆けていった。
上手に作った小箱の中には カサ・・・っとドロップ・クッキー が
入っていた。
「 わ あ ・・・ 」
「 まあ カワイイわねえ〜 あら レモンのいい香り・・・ 」
「 ほんとだ! 」
「 ね すぴか。 食べてみたら? 」
「 え ・・・ 」
「 せっかくわたなべ君が作ってくれたんだもの。 食べてごらんなさい 」
「 う うん ・・・ 」
すぴかは ひとつ、そうっと持ち上げ ほんのちょっこし、端っこを齧った。
「 ・・・ おいし ・・・ あまいけどレモン味で おいし〜〜 」
「 まあ よかったわねえ〜〜 」
どうやら わたなべクンのお母さんは すぴかの辛党を知っていて、たっぷり
レモンの皮を摩り下ろしていれてくれた ・・・ らしかった。
「 さいこ〜〜〜 ♪ おいし〜〜〜〜 わたなべく〜〜ん ♪ 」
すぴかは 跳ね飛びたいくらいに大喜びの大にこにこ〜〜だ。
そんな娘のピンク色のほっぺをながめつつ フランソワーズも心から嬉しかった。
ふふふ ・・・ やっぱりすぴかも オンナノコ。
うふふ この笑顔については ジョーには黙っていた方が いいわね〜〜
こうして 三月の < おかえしの日 > は笑顔満載で終わった。
そして。 すばる君人気 は ―
おね〜さん おか〜さん オバサン達の間で ますますヒート アップ☆ した らしい。
**************************** Fin.
***************************
Last updated : 03,13,2018.
index
*************** ひと言 ***************
例によって なんてことないハナシですが☆
二月の ちょこ話 と 対で お読みくださいませ