『  きたかぜ ぴ〜ぷ〜 』

 

 

 

 

 

 

 

    ひゅう −−−−−− ・・・・   ひゅるひゅるるる ・・・・

 

冷たい風が裏山から一気に吹きぬけて行った。

「 ・・・ きゃ ・・・ 」

フランソワーズは物干し台の前で 思わず首を竦めてしまった。

ここは家の裏庭、海風は家の陰になり直接当たらない。

しかし裏山から時によると旋風が降りてくることがある。

早春には春一番、 そして冬場には ― 今みたいな木枯らしとなるのだ。

邸自体はまことに住み心地よく設計されているが、庭は大自然に勝つのは無理らしい。

 

冷たい風に煽られて洗濯物たちはぴらぴら派手に舞っている。

「 ・・・ つっめた〜〜い・・・ 指先の感覚がなくなってしまったわ・・・ 」

白い指を擦り合わせ 息を掛けるがなかなか感覚がもどらない。

「 イヤね〜・・・  はやく干し終えなくちゃ。 」

きゅ・・・っと指先をエプロンで擦って、彼女は手早く洗濯物を干し始めた。

 

 

海沿いの街外れの崖っぷち、その上の台地に少し古びた洋館が建っている。

そこにはガイジンさんの若夫婦と白髭のご隠居さん、そして日焼けしたお転婆娘と

おっとりにこにこ・・・な息子が住んでいた。

子供達は双子だそうで毎朝仲良く地元の小学校へと駆けて行く。

美人な若奥さんは地元商店街で買い物をし、ご隠居さんは煙草屋の爺さんと碁敵同士だ。

若旦那も時にはガイジンの友達も連れてきたり ― ようするに ごく普通な家族 ・・・ と思われている。

 

  ― カタン ・・・

 

「 おお〜〜 さむい さむい ・・・・ 」

若奥さんはお勝手口からキッチンに飛び込んで 洗濯籠と洗濯ばさみのカンをバスルームに放り込んだ。

リビングに駆け込み、その真ん中に鎮座まします   コタツ  に滑り込む。

 

「 ・・・ よ・・・っと。   ああ〜〜〜 ・・・・ 天国だわァ〜〜 」

 

フランソワーズはコタツの天板にほっぺたを付けて幸せそう〜〜に呟いた。

両手はしっかりコタツの中・・・ 悴んでいた指がじんわ〜〜〜・・・と解凍してゆく・・・

「 あ・・・ いい気持ち〜〜   ・・・ああ コレって最高ね♪ 

 ああ ・・・ 日本人と結婚してよかった ・・・ 日本に住んでよかった ・・・ 」

天下のサイボーグ003は 至福の想いでうっとりと瞳を閉じた。

 

   コタツ。   そう、 この文明の利器は現在ギルモア邸のリビングを占拠している。

 

「 ・・・うふ〜〜ん ・・・・ シアワセ・・・ ああ 身体中がほぐれてゆくわ・・・

 あ。 そうだ! ここにポアント、いれておけば柔らかくなるわよねえ・・・うふ 今度やってみよ♪ 」

フラソワーズは夢見心地でつぶやき、お気に入りの<家具> をなでなでした。

もちろん、この地に来て初めて知った。

まだ 結婚する前 ― そう、恋人同士にもなる前 ・・・ 茶髪のじゃぱに〜ず・ぼ〜いが教えてくれたのだ。

 

  それは ・・・ やっぱりこんな風に木枯らしが吹く日だった。

 

「 ううう〜〜〜 なんという寒さ!  おいおい、ヒーターを強くしてくれ〜〜 」

「 アイヤ〜〜・・・ こないに寒いお国やったんか〜〜 ニッポンは〜〜 」

グレートと大人がバタバタと駆け込んできた。

二人は買出しに郊外の大型ショッピング・モールに行ってきたのだ。

ああいう場所ならば さまざまな人が出入りするのでガイジンの二人組みも目立つことはない。

案の定、二人は立派に買出しの役目を果たしてきた ・・・ のだが。

<寒さ> は計算外だったらしい。

「 あ〜 お帰り、 お疲れ〜〜。 うん、今設定を上げるよ。 」

ピュンマが本を置いてソファから立ち上がった。

「 えっと ・・・ 二人が温まるまで設定温度 〜28℃くらいにしておくかな〜 」

「 へっ!  軟弱モンめ〜 こんくらいの気温、NYじゃァ プール日和さ! 」

赤毛ののっぽは相変わらず真紫の半袖Tシャツなんぞでコークのペットをラッパ飲みだ。

「 ふん。 風の当たらんトコロで寝っころがってたヤツに嘴を挟む権利はない。 」

ぴしゃり、と言い切りドイツ人は ポットの湯の残量を調べた。

「 むう。 その通りだ。  熱い飲み物、淹れる。 」

寡黙な巨人はのそり、とキッチンに向かった。   その時 ・・・

 

   ―  ドン ドン ドン ・・・・   ガタ・・・!

 

大きな音がして リビングのドアに何かがぶち当たった。

「 な? なにごとだ?? 」

グレートが飛び上がった。   

「 あれ?  ジョーはどうしたのかな? 」

  ―  ガチャ ・・・

ドアが開いて  四角い木目調のテーブル板のようなモノが姿を見せた。

どうやら脚もついているらしい。

「 あん? なんだァ?  テーブルなら もうあるじゃんか。 」

「 そうだが ・・・ うん?  ジョー ・・・? 」

テーブル板と一緒に 茶髪の青年が入ってきた。

「 ね! 皆!  イイモノがあったんだ!   冬の必需品さ! 」

彼は一見 < ただの> テーブルを自慢そうに示した。

「 ど〜こが必需品なんだ?  普通のテーブルじゃないか。

「 普通の、じゃないだんな これが。  え〜と・・・・? そこのガラスのテーブル、退けてくれる?

 そうだな〜 ソファももっと壁際に寄せて・・・ 」

珍しくジョーはメンバーズにてきばきと指示をとばす。

「 う〜ん ・・・ 下に敷くものと掛け布団がいるな。  ねえねえ フラン〜〜

 納戸になにかないかなァ〜 」

ジョーはすたすたキッチンに入っていった。

「 ・・・ んだァ? アイツ〜〜〜 ? 」

「 ふむ? これは ・・・ なんだ。 」

「 ナニって〜 ただのテーブルじゃね?  オッサン、老眼かよ。 」

「 こりゃ・・・ただのテーブル じゃないよ。  ほら・・・ コードが付いているよ?

 それに これ・・・ これは・・・? 」

ピュンマはしげしげとテーブルの下部を覗き込んでいる。

「 ま、  boy の仰せのままに・・・そのテーブルを退けてソファを引いておくとするか。 」

「 アイヤ〜〜 なんだかトキトキしてきたアルネ! 」

オトコ達は首をひねりつつ、ガタガタ家具をうごかした。

 

「 ん〜〜 それじゃ 古い絨毯、使って。  掛け布団は・・・ 厚手の毛布でもいい? 」

「 できれば掛け布団がいいんだけど・・・ とりあえず、オッケー。」

「 そう? ・・・じゃ、 納戸に入っているから持ってきてくれるかしら。 」

「 うん いいよ。 じゃ ちょっと待っててね。 」

フランソワーズがジョーとジェロニモを従えてキッチンから出てきた。

ジェロニモはお茶のワゴンを押している。

ジョーは納戸の奥から絨毯と毛布を持ち出してきた。

「 ジョー。 おめェ ナニやってんだ? 

「 ああ 寒いだろうとおもってさ。  皆で温まれる暖房器具さ !  」

「 ジョー、 古い絨毯と毛布・・・ こんなに大きなのでいいの? 」

「 うん、さんきゅ、フラン♪  さ〜 これでいっかな♪ 」

ジョーは <ただのテーブル> から伸びているコードをコンセントに差し込んだ。

 

     「  こたつ  さ。  皆はいれるぞ〜〜〜 」 

 

全員 「 こ  た  つ ?? 」

「 ・・・なあに、 それ。 」

「 うん、日本の暖房器具さ。 ほらほら〜〜 みんな入って 入って〜〜 」

「 入る・・・って こう〜〜っともぐりこむのか? 」

「 ・・・ アイヤ〜〜 ・・・ 中は熱うてかなわんワ ・・・ 」

大人がもぞもぞ這い出してきた。

「 あれェ〜 大人、潜りこんじゃダメだよ。  ・・・ こうやって ね? 」

ジョーはぱさり、と毛布を持ち上げるとほっこりと炬燵に脚をつっこんだ。

「 な〜んだ、こうやって入るのか ・・・  お?・・・ いいなあ〜 程よい温度ってか〜 」

「 ふん ・・・ おい! ドでかい脚、引っ込めろ! 」

「 はん! ヤなこった〜 オレ様の脚が長過ぎるのさ! 」

「 オイ。 動くな。 温気が抜ける。 」

 ― ワイワイがやがや ・・・  8人の仲間たちはなんとか炬燵に収まった。

「 へえええ ・・・ なんか・・・すごくいい感じに温かいんだけど〜〜 」

仲間うちでは寒がりなピュンマは 目を細めて天板に両手を当てている。

「 ふん ・・・ 俺には高温すぎ・・・いや、そうでもないな。 」

「 ね! なぜか皆にいい温度なんだよ、炬燵って。   

 ・・・ あ! いっけな〜〜い!  忘れちゃダメじゃん〜 」

突然、 ジョーが立ち上がった。

 

   おい!   ・・・ 寒いがな〜   暖気が抜けるよ!   こらァ〜〜

 

非難の集中効果線が ジョーに突き刺さる。

「 博士〜〜 ギルモア博士も呼んでこなくちゃ! 」

「「「 ええ〜〜〜   ・・・ これ以上、入れるのか〜〜  」」」

「 入れるさ!  それが炬燵のフシギなんだ〜 

ふんふんふん〜〜〜♪ ハナウタ交じりにジョーは博士の書斎に行ってしまった。

 

  そして  博士も無条件で炬燵住民?となり ・・・ リビングは大賑わいとなった。

ぎゅうぎゅうなはずなのに 一人加わってもキツいこともなく・・・ 皆は手前勝手に過す。

読書するもの  タブレットで原稿を打つもの  居眠りに大昼寝  紅一点は編み物 と様々だ。

「 ・・・ あったかいわねえ・・・ 脚がいいきもち♪ 」

「 ふふふ  あ ほら、みかん。  炬燵で食べると美味しいよ? 」

「 あ ありがとう ・・・  ほんとだわ〜  おいしい♪ 」

「 だろ? どうしてかなあ〜 よくわかんないけど・・・ 昔っから炬燵にみかんは付き物なんだよ。 」

「 ふうん ・・・ ああ おいしいわあ〜  ・・・ やだ あっと言う間に一個食べちゃった・・・ 」

「 ふふふ・・・こうやってザルとかに盛って どん! と置くのがいいのさ。 」

「 うふふふ ・・・ あったかいわ〜 」

「 ・・・ぅ うん ・・・あは・・・ 」

いい匂いのする身体が はんなりジョーに持たれかかってくる。

「 あは ・・・ ( う ・わ・・・〜〜  炬燵の中で あ 脚が あしがあしがあしが・・くっつく♪) 」

「 あ〜ん?? ジョー〜〜 おめェ 熱いのかよ? 」

「 え!? そそそそ そんなコトは 〜〜 」

「 って 顔 真っ赤じゃん。 」

「 あら ほんと。 どうしたの、風邪? 」

「 いいいいい いや その あの〜〜  」

「 ??? 湯当たり・・・じゃなくてコタツ当たりしたのか?? 」

「 熱、あるの? ・・・・ ん 〜〜  やっぱり熱いわよ、ジョー 」

突然、隣の美人が彼のおでこにおでこで突撃して ― いや、 おでことおでこを合わせたのだが。

「 ・・・ い  いいいい いや ・・・ ( ひゃ〜〜〜 ♪ ) 」

「 ・・・ あ。 ひっくりかえっちまいやがった〜〜 」

ジョーは  ― 自分自身の熱に <中って> しまった・・・らしい。

 

まだ仲間達が どことなくぎこちなかった頃  ― コタツは全員の距離をイッキに縮めてくれた。

 

 

 

   ・・・ それでもって。

 何回かの倒壊、焼失の後 ― 今も崖っぷちには一軒の洋館が建っている、というわけだ。

 

今年の冬は 例年になく寒い日々が続く。

冬でも温暖な地域なはずのこの地方も 北風が吹き昼間でも気温が低い。

「 ただいま〜〜 さっむ〜〜〜いいィィィィィィ〜〜〜 お母さん〜〜 」

「 ・・・・ さ さむ ・・・・ うっく ・・・ おかあさ〜〜ん ・・・ 」

子供達は 寒さでほっぺを真っ赤にして駆け込んできた。

いつもならすぴかは晩御飯の前まで外で跳ね回り、 すばるもしんゆうとJRなんかを

眺めにゆくのだが ・・・ 今日はまだ明るいうちに帰ってきてしまった。

「 あらまあ あなたたち、随分早いのねえ。  」

「 だって〜〜 寒いだもん! 」

「 さむい〜〜 お手々がいたいよ・・・ 」

「 じゃあ エアコンの温度を上げましょうね。  今、オヤツ、持ってくるから・・・

 ちゃんと手を洗ってウガイしておくのよ、いいわね 」

「「 はあ〜〜い 」」

 

      やれやれ ・・・ でもそんなに寒いのね?

      ふうん ・・・ じゃ 熱々のミルクティでも淹れておこうかな

 

フランソワーズは温度設定を上げるとキッチンに入った。

夕食の準備を進めつつ、 ちっちゃなマグ・カップ二つにミルクティを注ぐ。

「 え〜と すばるのはお砂糖入り。  すぴかはシナモン〜〜 っと。

 さあさ 二人とも? もうすぐ晩御飯だからこれで暖まっててね。   あら? 」

トレイにカップを乗せてリビングに戻れば ―

「 やだ。 アタシがさきにすわったんだもん。 」

「 かわりばんこ〜〜 かわりばんこにしよ〜よ〜〜 」

「 やだったらやだ。  あ〜〜 おさないでよっ! 」

「 だってかわりばんこ、してくんないんだもん。  」

「 だってアタシ、さきにここにいたもん。 あっち いってよ! 」

「 やだ! はんぶんこ、しろよ〜〜 」

「 や だ ! えい、あっちいけ〜〜 」

「 やだ!  あ いたいぃ〜〜〜 」

双子が 彼女の娘と息子がソファの上で険悪なおしくらまんじゅうをしていて

弟の方はすでに涙目なのだ。

「 ・・・ あなたたち〜〜 どうしたの?  いったいなにをやっているの? 」

「「 あ おかあさん〜〜〜  あ!? それ なに〜 ?」」

たった今までむくれて泣きそうになっていたのに、 二人はもう笑顔になって

母の側にとんできた。

「 ミルクティよ、はい、 どうぞ? 」

「 うわ〜〜い♪ 」

すぴかは ぽん、とソファから飛び降りと母からほかほか湯気ののぼるカップをもらった。

そして またまたさっきの場所に収まった。

「 あ〜〜〜〜 ずるい〜〜ずるい すぴかア〜〜 」

カップ片手にすばるもソファに駆け戻り姉とごりごりやりあっている。 

「 ああ  すばる! ミルクティがこぼれるわよ〜 」

「 ・・・ あ〜〜  う  うう うぇ 〜・・・・ 」

「 あ〜 泣き虫すばるだあ〜 ほっんと アンタってすぐ泣くね!や〜い 泣き虫〜 」

「 ち ちがわいっ! 」

「 あ〜〜 いったア〜い・・・ ぶったらぶたによくにてるぅ〜♪ や〜〜い 

 ぶひぶひぶひ〜〜の すばる〜〜 」

「 ち ちがうもん ちがうもん〜〜 」

   「  こ〜ら。  やめなさい、二人とも。 

母は溜息をつきつつ だんごになりかけていた姉弟の中に割ってはいった。

「 けんか しないの。  ソファ、広いでしょう? もっとはなれて座ったら? 」

「 や! 」  「 やだ! 」

「 どうして。  そんな狭い場所に二人でいること、ないでしょ。 」

「「 だって。  ここがいちばんあったかいんだもん! 」」

「 え ・・・    あら ほんと。   ・・・ ? ・・・ ああ ・・・ 」

フランソワーズは すぴかが死守していた場所に立ち すぐに理解した。

そこはエアコンの送風口に一番近い場所なのだ。

「 ふうん ・・・ ねえ、 そんなに寒いの? 二人とも。 」

「 さむぅ〜〜い〜〜〜 」

「 ・・・ そうねえ。 リビングは広いから中々温まらないわねえ・・・ 

 あら? お父さんみたい、 ちょっと待っててね。 」

チャイムが鳴る前に 母は玄関に飛んでいってしまった。

 

「 ・・・ すばる、おいでよ。 」

「 うん ・・・ すぴか。 ぶってごめん ・・・ 」

「 アタシも ごめん ・・・ 」

ケンカを続ける気にもならず、二人はくっつき合ってソファに収まった。

 

 

 

  ― 長いキスのあと、二人はほっとした顔でみつめあった。

「 ただいま ・・・ やあ ウチの中は温かいな〜 」

「 ジョー。 お帰りなさい、お仕事、お疲れ様 ・・・

 あら・・・ 外は随分冷えているのね。  ジョーのくちびる、冷たかったもの。 」

「 うん・・・ クルマを使えば温かいんだけど・・・ 不経済だからね。 」

「 本当にご苦労さま・・・ さあ 温かいお食事が出来ているわ。 」

「 ああ〜〜〜 シアワセ♪ 」

ジョーとフランソワーズは互いに腰に腕を回しあいつつ、リビングに戻ってきた。

「「 お帰りなさい〜〜 お父さんっ! 」」

子供たちが飛びついてきた。

「 ただいま〜〜 すぴか すばる〜〜 」

「 わあ〜いいい〜〜 お父さ〜〜ん 」

ジョーは双子を両腕で抱き上げて大にこにこだ。

「 ま〜あ やっとケンカやめたのね〜 」

「 え ケンカ? 」

「 そうなのよ〜  ソファのこの場所をねえ・・・ 」

ジョーは双子を抱き上げたまま 細君の話を聞いていた。

「 な〜んだ お前たち   そんなことでケンカして? 」

「 ・・・ だって〜 ココがいちばんあったかいんだもん 」

「 あったかいんだもん〜 」

「 ああ 今日は寒いからなあ ・・・  」

「 そうなのよ。 ヒーターの温度を上げてもなかなか温かくならないし。

 でもあんまり設定温度を上げるのも・・・もったいないでしょ? 」

「 まあなあ   う〜ん ・・・・  」

ジョーは双子と一緒にソファに座り込んだ。

「 うわ〜い ・・・ あったかいね、お父さん♪ 」

「 あったか〜い・・・みんなで ぎゅ♪ だあ〜 」

子供たちは父親に纏わりついてご機嫌ちゃんだ。

「 ・・・う〜ん ・・・ あ! そうだ そうだ! いいものがあるんだ〜〜 そうだよ!

 確か・・・納戸 ・・・ いや 屋根裏かなァ   うん 捨ててはいないはずだ。 」

ジョーは子供たちの間から 立ち上がった。

「 あ〜〜 お父さん どこゆくの。 」

「 うん ちょっと・・・・ いいもの、捜してくる。 

 お前たちはお母さんのお手伝い、してなさい。 」

「 あら そうね。 それじゃ・・・二人ともお皿をだして?

 あ その前に手を洗ってきて頂戴ね。 」

「「 は〜〜い 」」

「 ジョーったら・・・なにをもってくるつもりなのかしら。

 旧式のストーブとかかしら・・・ あれも結構温かいのよねえ・・・ 」

フランソワーズはちらり、と天井に視線と向けた。

「 それにしても、この寒さが続くなら何か対策を考えなくちゃ 」

「 おか〜さ〜〜ん ! 手、 あらった〜〜 」

「 僕も 僕もぉ〜〜 」

どたばた双子たちが戻ってきた。

「 ああ はいはい・・ それじゃ ・・・ お皿を出してもらおうかな・・・ 」

「 あったし! いっちばん!!」

「 ぼ ぼくも ぼくも 〜〜〜 」

「 こら〜 ちょっと待ってちょうだいったら! 」

フランソワーズも子供たちを追いかけて小走りでキッチンに戻った。

 

 

 

「 よ〜し・・・  みんな 来てごらん〜〜 」

リビングでがたがた家具を動かしていたジョーが 家族を呼んだ。

「「 なに〜〜 おとうさん 〜〜 」」

 

    でん。    島村さんちのリビングに 大きなコタツが鎮座した。

 

「 ほうら ・・・ これでどうだい。 あったかいだろう? 」

「 うわ・・・ なに これ?  ベッド? 

「 ・・・ わんこのお家? 」

すばるはコタツ布団をもちあげて中をしげしげ見ている。

「 こらこら・・・ そこを開けたら寒くなるよ。 これはね ― 」

「 ジョー?  あら  こたつ。   懐かしいわねえ〜〜 」

フランソワーズが顔をだし、 にこにこしつつすた・・・っとコタツに入った。

「「  こ た つ ? 」」

「 そうよ。 こたつ。 この国の暖房器具なの。と〜〜ってもあったかいのよ〜〜

 ほらほら・・・ふたりとも? お母さんみたいに入ってごらんなさい。 」

ジョーが子供達に説明する間も無く フランソワーズがコドモたちに教えてしまった。

「 ああ 温かいわあ〜 ・・・ ね どう? すぴか すばる? 」

「 う わああ〜〜〜〜・・・ ねえねえ お母さん、 あしのゆびがじんわ〜り・・・ 」

「 ・・・ あったかい〜〜 もぐってもいい? 」

「 あら もぐったらねえ、逆上せてしまうから ・・・・ こうやって  ほら・・・ 」

フランソワーズは天板にほっぺをつけてみせた。

「 う・・? ああ ・・・・ ほんわ〜〜り ほかほか・・・・ 」

「 でしょ? いい気持ちよねえ・・・  天国 天国・・・ ♪

 あら?  ジョー。 そんなとこに突っ立ってないでコタツにはいったら?」

「 ― あ  ああ  うん ・・・・ ソウシマス。 」

ジョーは大人しく コタツに入った。

 

      ・・・・・・!   ・・・・〜〜    ・・・・♪   ・・・☆ ☆ ☆ 

 

しばし  リビングには4人の満足は溜息しか聞こえなかった。

その日から 島村さんち の主役はリビングのコタツになった。

 

 

 冬の朝 ― 海辺の地域でも霜が降り厳しい寒さが続いた。

「 ほら〜〜 はやくゴハン食べて〜 すぴか  すばる! 」

「 おか〜さん アタシ コタツで食べる 〜〜 」

「 はいはい ・・・ じゃ こっちに置くわよ。  すばる〜 はやく起きて!! チコクしますよ! 」

「 ・・・ お母さん〜〜 」

 ― もぞもぞもぞ    コタツの中からすばるが這い出してきた。

「 ?! すばる?? 」

「 おかあさん〜 ・・・僕のクツシタ〜〜 かたっぽ どっかいっちゃったア〜 」

「 どっか・・・って すばる、クツシタをどこに置いたのよ? 」

「 僕ぅ〜 ・・・ くつした、あっためよ〜とおもって ・・・ コタツの中・・・ 」

「 まあ! もう〜 おかあさんが捜すから すばるはゴハンたべて! 」

「 ・・・ はあ〜い ・・・ 」

フランソワーズはばさっとコタツ布団の一辺をもち上げた。

「 あ〜〜 おかあさん さむい〜〜 」

向かい側で トーストをかじっていたすぴかが文句を言った。

「 ちょっとがまんして。  え〜と・・・・?  あ ほら あそこに・・よいしょ・・っと.

腕を伸ばし、クツシタと思しき布をひっぱりだした。

「 はい すばる クツシタ・・・ って あら?? 三足ある?? 」

「 ― お早う〜〜 ううう 寒いねえ 今朝も・・ 」

ジョーが ごしごし手を擦りつつリビングに現れた。

「 うは〜・・・・ 門の前、掃除してたら ・・・ 風がつめたくて ・・・ 

彼もまっすぐにコタツに滑り込んだ。

「 ・・・ うほ〜〜〜 ・・・・ 極楽 極楽 ・・・ 」

「 おとうさん。 ごくらく ってなに。 」

トーストをかじっていた娘が真顔で尋ねた。

「 あ?  おはよ〜 すぴか。 ごくらく ってのは ・・・ う〜ん ・・・

 そうだなあ 天国の日本版さ。 」

「 ふうん ・・・ 」

「 そのうち学校で習うさ。  ん? あ〜 フラン、靴下、ありがとう〜 」

ジョーは細君の手から自分の靴下を引き取った。

「 ― ジョー。 これ・・・ あなたの? 」

「 うん? ああ そうだよ。  朝なあ暖かいのが履きたいな〜と思って

 昨夜コタツに入れておいたのさ。  な〜 すばる? 」

「 うん! ね〜 お父さん♪ 」

「 ずっる〜〜〜い〜〜 」

「 すぴかは ぱんつ、いれてたじゃないかア〜〜〜 」

「 !?  すぴかさんっ! 」

「 お〜っとぉ〜  ごちそ〜さまア  」

すぴかはお母さんのキンキン声を回避すべくコタツから離脱した。

「 すっばる〜  さきにゆくよ〜〜 」

すぴかはさっさとリビングを飛び出していった。

「 もう〜〜〜 すぴかったら〜〜 」

「 まあ いいじゃないか。  それよか すばる、急げよ? チコクするぞ〜 」

「 あ う うん、おとうさん ・・・ むぐ 〜〜 」

すばるは大急ぎでパンを口に押し込んだ。

 

 

  ―   はあ ・・・ やれやれ ・・・

 

チビっこ台風が坂道を駆け下り、カメラだの資料を持ってわたわたジョーが追いかけてゆき。

ギルモア博士に朝のお茶を淹れ。  ・・・ フランソワーズはやっと一息ついた。

そして ・・・ 彼女のほっこりコタツに入ると天板にオデコをつけたのである。

「 ・・・ははは ・・・ お前もコタツの虜だなあ・・・ 」

博士が、 博士もしっかりコタツ・ファンなのだが ― 向かい側で笑っている。

「 え ・・・ ふふふ・・・そうですわね。 コドモたちのこと、叱れませんわ。 」

「 ほんになあ〜 この温かさは他に比べるものがないものなあ。

 熱過ぎず、冷えはせず・・・皆がへばりつくのがよくわかる。 」

「 ええ そうですよねえ。  ああ いい気持ち・・・ 」

「 しかし ま、ここから出られなくなる・・・という点が欠点だな。

 他の仕事がすべて疎かになってしまうし ・・・ 」

「 ふふふ・・・ ほんとう。  根が生える ってこういうこと、言うのかしら? 」

「 ははは ・・・ ほんにこのお国は奥が深いよのう。  

 さ。 ワシは書斎に戻るぞ。  明日までにコズミ君に渡すデータを纏めんとな。 」

「 はい。 寒いですからちゃんとヒーター、使ってくださいね。 」

「 了解じゃ。 」

よっこらしょ! と博士は掛け声をかけ、コタツから離れた。

「 さあ〜て ・・・ わたしも仕度しなくちゃ。  今日は教えもあるし・・・

 そうそう うふふ〜 ・・・ コタツの中に入れておきましょ♪ 」

フランソワーズもえいや!とコタツを出た。   彼女も戦闘開始! なのだ。

 

 

 

 ・・・ その冬は本当に寒かったのだ。 天気予報では霜だの雪だの低温注意報だのに忙しく

空気がカラカラなせいもあって流行風邪が蔓延していた。

 

   カッ カッ カッ −−−−!

 

ブーツの音も高らかに、金髪美人が急坂を駆け上がってくる。

両手にスーパーの袋をもち、肩からは大きなバッグが掛かっていた。

「 ・・・ ふうう〜〜〜  ああ重い! 半分はデリバリー・サービスに頼んだけど・・・ 」

彼女はぶつぶつ言いつつも ひょい、と重そうな門の扉を開けた。

「 よい・・・しょ。 え〜〜と 今晩は餃子鍋 でいいわよね。 

 餃子はすばるが手伝ってくれるでしょうし ・・・ お野菜、いっぱいいれて ・・・

 あとは魚屋さんで特売だったエビ♪  」

がしがしがし ―  元気な足取りが玄関まで続く。

 

  ―  がちゃ ・・・

 

「 ただいま〜 ・・・ ふう  重かった ・・・ 」

どさり、とレジ袋を玄関に置き  コドモたちに手伝わせようと思ったのだが。

    ・・・・・・・・・・・・

「 ??  誰もいないの? お靴はちゃんとあるのに ・・・ 」

玄関の上り框には ちっちゃなスニーカーが二組、 まあまあなお行儀で並んでいた。

「 ヘンねえ・・・・ウチにいるのなら おやつ〜〜って飛んでくるのに・・・・ 」

よいしょ、と荷物を持ち上げて―

「 すぴか〜  すばる?  いるのでしょう〜 お手伝い、お願い! 」

「 ・・・ ( すばる、 あんた行きなよ ) 」

「 ・・・・・ ( すぴか 行けば ) 」

ごにょごにょした声が消えこるだけで 双子たちは一向に出てこない。

「 うん、 も〜〜〜 ・・・ 」

 

     た だ い ま ― !!

 

「「 おかえりなさい〜〜  おかあさん   おやつ!  」」

混声二部合唱がフランソワーズを迎えた  ・・・ コタツの中から。

「 おか〜さ〜ん  おかえりなさい〜 おせんべい、 ほしい! 」

「 おか〜さん〜〜  僕ぅ〜 ちょこ! 」

「 ・・・ はい、ただいま。  なあに、あなた達。 コタツに入りっぱなしなんでしょう? 」

「 おかあさ〜ん、 アタシたち、宿題やってる〜 」

「 うん、しゅくだい〜〜 」

すぴかは腹這いになってノートになにか書いていて、すばるは仰向けに寝転んで

教科書を読んでいた。

「 なにやってるの、もう〜〜 二人ともお行儀の悪い! 」

お母さんはぷりぷりしている。

「 え〜 でもあったか〜いよ〜・・・ もうすぐ書き取りもお終い♪ 」

「 ぼくも〜  ・・・うん、九九 カンペキ〜〜♪ 」

二人ともほっぺもピンクになってにこにこご機嫌だ。

「 まあ ・・・   でもねえ、ちょっとはお外で遊んでいらっしゃい

 その間に お母さん、ここをお掃除したいのね。  」

「「 ・・・ え〜〜〜〜〜  」」

「 ほらほら〜〜 コタツのスイッチ、切りますよ。  かち。 」

「「 え〜〜〜〜 ・・・・ 」」

「 はい、遊びに行く前に、この食料品をキッチンに運んでちょうだい。 」

「「 ・・・・ は〜い ・・・  」」

フランソワーズは さ・・・っとコタツ布団を取り上げた。   ガラっとテラスへの窓も全開だ。

ついでにキッチンから室内用のホウキも持ってきた。

「「 ・・・・ ちぇ〜〜〜 ・・・ 」」

「 ほうら・・・ 掃き出すわよ〜〜  さっさっさ〜〜 ああ おおきなゴミがあるわねえ?

 まあ 二つもあるわ?   ざっざっざ〜〜 」

「 きゃははは 〜〜〜 アタシ ゴミ〜〜〜 くりん くりん 〜〜 」

母のホウキにじゃれつき すぴかはでんぐり返しを始めた。

「 うきゃあ〜 ・・・ 僕、 ゴミじゃないってばああ〜 」

すばるは慌てて起き上がった。

「 ほらほら ・・・  二人とも〜 これ、キッチンに運んでね。 」

「「 はあ〜い ・・・ 」」

子供たちは ずこずこ半分引き摺りつつ、買い物袋をキッチンに持っていった。

「  ― やれやれ ・・・ あ〜あ ・・・ ゴミだらけじゃないのォ〜  」

さ・・・っとゴミを掃き出す。

「 ? あら やだ、すぴかの筆箱じゃない?  これ ・・・ すばるの下敷きねえ 

学用品だけじゃなく、 すぴかの縄跳び とか すばるの秘蔵の模型 とかも・・・

そう、コタツをどかせた跡には 点々と <遺留物> があった。

「 まったく〜〜 学校から帰ってコタツに直行したんじゃないの?

 あ〜〜 すぴかのソックス!  ってことは今はだしなのね! 」

丸まったソックスを拾いあげ 母の眉毛はきりきり・・っと釣りあがった。

「 っとに〜〜 すぴか! すぴかさんっ くつした、履きなさ〜い!! 」

 

 

  ― 結局 お説教もお手伝いもコタツの中 になった。

「 は〜い〜〜  ちゃんとそっくす、はきます〜〜 」

すぴかは餃子の皮をつまみ上げ 言った。

外で跳ね回るのが好きな彼女、 冬でもいつもソックスだけなのだ。

いつもは家の中でも裸足でいる。 

しかし さすがのこの冬は寒いらしく、家でもスックスを履いていたのだけれど・・・

コタツの中に脱ぎ捨ててあった。

「 本当にわかったの? 」

フランソワーズは餃子の中身をスプーンに取り、皮の上に乗せた。

「 だから は〜い〜 って言ったもん。  お家の中でもそっくす、はきます〜 」

「 よろしい。   ― で 今はちゃんと履いていますか。  」

「 ― う〜〜〜  ぎょうざ、おいしいよね〜 」

「 す ぴ か さん。 」

「 すぴかってば〜 あし、つるつるだよ 〜〜 」

「 あ! すばるっ! 」

餃子の皮を上手にひだをつけて閉じてから すばるがゆっくり言った。

「 だって〜 いて! すぴかってばアシのチョキでつねってくるんだもん〜〜 」

「 す すばるだって つんつんおやゆびきっく してくるじゃん! 」

「 チョキでつねるからだもん! 」

   ―  もごもご・・!  もぞもぞもぞ〜〜〜 !

コタツの中で双子の足が 果てしなき闘い を繰り広げている ・・・らしい。  けど、

二人ともコタツの外では な〜〜にもしてません? って涼しい顔をしている。

「 ほ〜ら! 中でごそごそしない。  足じゃなくて手を動かして。

 餃子 つくりたい〜〜って言ったのはあなた達でしょ。 」

フランソワーズは<中身> をスプーンで掬う。

中身の入ったボウルは温まると困るので断熱材の上に置いてあるのだ。

「 餃子なべ にするのよ、たっくさん作らなくちゃ。

 おじいちゃまもお父さんも 大好きなんだから。 」

「 アタシだって だ〜〜〜いすき だよ、お母さん! 」

「 僕も 僕も〜〜〜 

「 はいはい ・・・  ああ すぴか、大好きなニラ、い〜〜っぱい入っているわよ。 」

「 うわお〜〜♪  あ ・・・ 温室のニラ? 」

「 そうよ〜 元気でいっぱい生えているからね。 」

「 うわ〜〜いィ♪ おかあさん、 おかあさん、 ら〜ゆ、ある?」

「 ええ ええ 張伯父さんから戴いたのがちゃんとあるわよ。 」

「 うひひひひ〜〜  あ〜〜 ばんごはん〜〜 楽しみ♪ 」

「 ・・・ ジャムぎょうざ つくる?  お母さん ・・・ 」

すばるがこそ・・・っと母のエプロンを引っ張る。

「 あ〜 ・・・ う〜ん お鍋にはいれられないから ・・・ 今日は杏仁豆腐でがまんして。 」

「 ・・・ ウン。 じゃ こんど、こんど! じゃむぎょうざ、作ってね! 」

「 はいはい。  ほ〜ら 二人ともがんばって。 

 あらら・・・すぴかさん、そんなにぎちぎちに詰めたらだめよ、皮が破けちゃう。 」

「 あ ・・・う  うん ・・・ 」

「 まあ すばる、上手ねえ・・・ ヒダヒダがフリルみたい♪ カワイイわあ〜 」

「 えへへへ ・・・  おいしいよね〜きっと 」

すばるはチラ・・・っと姉を見る。 すぴかはふん!とそっぽを向く。

「 あらまあ ケンカしないの。  さ〜あ もうちょっとよ〜 」

「「 は〜〜い  」」

すぴかもすばるもいいお返事をして新しい餃子の皮を摘まみ上げ ―

   ごそごそごそ ・・・  もぞもぞもぞ〜〜〜  コタツの中では壮絶なバトルが繰り広げられ・・・

「 まあ すぴかさんも上手 上手〜〜 やっぱりオンナノコね♪

 あら すばる、とってもカワイイわ、いいわねえ 〜 」

お母さんはご機嫌で残り少なくなったボウルの中身を寄せ ―

「 ふんふんふん〜〜♪  んん?  ??

 

          いったぁ〜〜〜〜いい  ・・・・!!

 

突然 ちっちゃなチョキがフランソワーズの脹脛を抓りあげ、細い爪先がツンツン突撃してきた。

「「  あ〜〜〜 ・・・!! ( お お母さんの脚だったんだ〜〜〜 )  」」

「 いたたたた・・・ ちょっと! な なんなの〜〜 

「「 お おかあさん !! すぴか or すばる じゃなかったんだ〜〜〜 」」

コタツの中での姉弟バトルはどうも標的を誤認してしまったとみえる。

すぴかとすばるは大慌てでコタツから180°反転離脱した。

 

「 すぴか! すばるっ  あなた達 何てことしてたの!! 」

 

「 わあ〜〜〜 に にげろ 〜〜  」

「 わあ〜〜  ・・・! 」

 

 

 

その日、 ジョーは約束どおり晩御飯に間に合う時間に帰宅した。

「 ― ただいま〜 ・・・  」

玄関のドアを開け ― 彼はあれ?とおもった。

家中がやけに静かなのだ。

 

      あれ。 なにかあったのかな ・・・?

      ・・・ いや 晩御飯のいい匂いはするし 

      TVの音も聞こえるな ・・・

      いつもと同じ ・・・ いや ちがうな〜

 

そう、チビたちの声 ― すぴかの甲高い声やすばるののんびりした声 ・・・

その合間を縫ってフランソワーズの こら〜 とか だめ! の声  も聞こえない。

やけに し ------ん としているのだ。

 

「 ?? ただいま〜〜  フラン?  すぴか  すばる? 」

ジョーはもう一度、少し大きな声で言うとリビングのドアを開けた。

 

「 あ〜〜〜 お父さん ッ 」

「 おとうさ〜〜ん ・・・ 」

子供達が駆け寄ってきた。

「 ジョー! お帰りなさい・・・ ごめんなさい、気がつかなくて ・・・ 」

彼の愛妻が極上の笑みを浮かべて迎えてくれた。

「 いや・・・ 食事の仕度で忙しいんだからな ・・・  うん? 」

 

     ―  あれ  ?   なんか ちがう  な ・・・

 

彼はリビングに入って妙な違和感を感じた。 いつもの場所が ― 妙に広いのだ。

「 ??  なんか ・・・ 足りない かも・・・? 」

あれ そういえば、いつも何処に座っていたっけ? とジョーは突っ立ったままだ。

「 ジョー? 手を洗っていらして。 今夜は熱々の 」

「 あ!  こたつ!!  フラン、コタツ、 どっか行ったのかい? 」

細君の言葉は ジョーの耳をパス・スルーしてしまったらしい。

「 ・・・ はい。 」

「 はい・・・って・・・ コタツ! 壊れちゃったのかい?? 」

ふと見れば さっきまで纏わりついていたコドモ達も消えてしまった ・・・ いや、

双子はちんまりソファの上にくっついて座っていた。

「 すぴか すばる ・・・ 」

「 お父さん〜〜 ここに二人でくっついてると、いちばんあったかいのォ〜〜 」

「 あったかい〜〜 」

「 おいおい フラン。 コタツ、ほーむ・センターにでも修理頼んだのかい?

 コタツくらいぼくが直せるよ。  」

「 いえ。 コタツは壊れていません。 コタツは  お納戸です。 」

「 え!?  ど どうして??? 」

「 皆がコタツに寝泊りするようになったら困りますから。

 さあさ 晩御飯ですよ〜  はい、熱々の餃子鍋よ、食卓について。 」

「 ・・・ ・・・ 」

「 ・・・ ・・・ 」

すぴかとすばるはくっ付いて座ったまま顔を見合わせている。

 

     ・・・ さむいよね ? ごはんのテーブルのとこ。

    

     うん すっごく。  僕、まどのとこだから すごくさむい・・・

 

「 ほらほら二人とも?  ジョーも、どうぞ。  ああ 博士をお呼びしてこないと・・・ 」

フランソワーズだけが賑やかに喋っている。

「 ・・・ なあ フラン。 やっぱりコタツ ・・・ 」

 

   ―  ガチャ ・・・

 

リビングのドアが開いて博士が入ってきた。  

「 あら博士。  今 お呼びしようと  ―  どうなさったの? 」

「 あれ ・・・ 博士。 風邪ですか 」

「 ・・・ グズ ・・・ はは・・・面目ない、どうもなぁ〜 グス・・・ 」

博士はぶあつい半纏を着てぐるぐるに襟巻きをしていた。

「 わぁ〜〜・・・ おじいちゃま! 寒くない? ほら・・・すぴかがお手々こすったげる! 」

すぴかが飛んできて博士の手を握った。

「 ぼ 僕も!  僕のほっぺ、あったかいよ〜〜 」

すばるも自分のまあるいピンクの頬に博士の手を当てた。

「 おお おお  二人も ・・・ ありがとうよ ・・・ へ へ  へ〜〜〜〜っくしょん!! 」

 

    「「  コタツ!  だそう!  だしましょう!  」」

 

 ― そして。 10分後には再びリビングの真ん中には  でん! とコタツが座を占めた。

「 ・・・ うわ〜〜 あっつぅ〜〜〜 ・・・ 」

「 あちち・・・ う〜〜ん ウマイ! これで風邪が治るよ。 」

「 あち! う〜〜ん  うまい! 」

「 これ すぴか!  あなたは 美味しい でしょ。 」

「 僕ぅ〜〜 美味しいなあ〜 」

「 すばる、お前はウマイっていえよ。 」

・・・ 晩御飯は熱々の餃子鍋。  皆でコタツに入って大汗かいて双子の力作をいただいた。

皆 ほっぺがぽう〜〜っと赤くなった。

「 博士、 風邪の具合はどうです? 」

「 うむ うむ ・・・ チビさん達特製の餃子で治ってしまったよ。

 しかし どうして仕舞い込んでいたのかね?  皆 お気に入りじゃのに・・・ 」

「 ええ。 お気に入りすぎて ― 」

フランソワーズはコトの顛末を説明した。

「 ・・・ですからね  皆 コタツから離れないですもの ・・・ 」

「 ははは ・・・まあ その気持ちもわからんではないな。  今年はほんに寒いしなあ。 」

「 でしょ!? おじいちゃま〜〜 」

「 すぴか。   でもあんまりだらしないでしょう? 」

「 う〜ん ・・・ ぼくもついつい・・・コタツに噛り付いちゃうもんなあ。

 コドモたちのこと、叱れないな。 」

「 ・・・ それは  わたしだってコタツ、 大好きよ。 でも ・・・ 」

「 ふんふん  それならな、ワシがイイモノを付けるぞ。 」

「 いいもの? 」

「 ああ。  簡単で大昔からあるモノ  ―  タイム・スイッチ さ。

 毎日オフにする時間を決めておく。 自動的に切れればコタツからも出やすいだろう? 」

「 あ ・・・ な〜るほど ・・・ 」

 

    そして 再びコタツは  島村さんち  の一員となった。

 

「 ・・・ ジョー? 」

「 うん ・・・ なに。 」

「 ・・・うふふ ・・・ なんでもなぁい♪  ぴと♪ 」

「 ふふふ ・・・ ぴと〜・・・ 」

子供達が寝静まった後  ―  ジョーとフランソワーズはコタツで大っぴらにいちゃくちゃしている。

   誰かさんは 脚がぴと・・・・っと押し付けられてきても もう真っ赤にはならなくなった・・・

 

       しっぽり ・・・ やっぱりコタツはいいよ (わ) ね〜〜〜

 

木枯らしぴ〜ぷ〜 吹く日でも 島村さんち はいつもあったか ぽっかぽか♪

 

 

 

 

******************************     Fin.    ********************************

 

Last updated : 01,31,2012.                              index

 

 

 

*************  ひと言  *************

例によって   島村さんち  設定です。

【 Eve Green 】 の めぼうき様  からの拝借です<(_ _)>

毎日 毎日 あんまり寒いのでこんなオハナシになりました〜〜