『 孤島の幻影 』
「 ・・・ ジョ− !! 」
「 やあ・・・ しまった! 見つかっちゃったな。 」
ジョ−は駆け寄ってくるフランソワ−ズに、口とは裏腹に爽やかな笑顔を向けた。
船を出さなければ交通手段などまったく無い島にジョ−は単独で − それも仲間にも内密で −
上陸していたのだ。
「 だけんど、おみゃあサン。 あの島にはだ〜れもおらんよ?
妙ちくりんな研究所みたいなモンがあったけんど、5年くらい前に火事だしてよォ
それっきり無人島だぁ。 」
彼が頼んだ船の船頭はあきれ顔をしていた。
「 ええ、知ってます。 ちょっとその <研究所> のことで調査したいことがあって。
本当にずっと無人島ですか? 」
「 ああ。 あそこに渡るにゃ、船以外に手だてはねえがよ。
この近辺のモンで あの島に船ェ出したのはオレが初めてでねえかなあ。 」
「 ・・・ そうですか。 それじゃ・・・ 明日の今頃、もう一度ここに来てくれませんか。
もしその時に ぼくがここにいなかったらどうぞそのまま引き返してもらって結構です。 」
「 そうかね。 まあ ・・・ 気をつけるこった。 もっともカモメがいるくれえでよ、
な〜んもおりゃせんが。 」
・・・そうだといいのだけれど。
ジョ−は心の中で答えて、引き返してゆく船に大きく手を振った。
「 ・・・ さて。 どう出るのかい? いったいどんな < 復讐 > とやらを準備しているのか・・・ 」
波に浸食され 半ば朽ちかけている防波堤からジョ−はその島に上陸した。
「 とりあえず ・・・ あの研究所跡に行ってみるか。 」
ジョ−は切り立った崖に沿って 島の内部に上って行った。
グワ ・・・・ !! ガラガラガラ ・・・・!!
途中まで登った時、突如崖の上から大岩が崩れ落ちてきた。
「 おっと! 」
ジョ−は素早く崖にぴたりと身を寄せ、落ちてくる瓦礫をやり過ごした。
「 ・・・ ふん。 この程度では ぼくは殺せないぜ。 」
海に落下した岩石を見下ろし、ジョ−は呟いた。
そして 再び島の内部目指し歩き始め ・・・ ひとまず、平坦な岩棚に出た途端。
「 ・・・ ジョ− −−−−! 」
同じ赤い防護服姿の仲間が 手を振って駆け寄ってきたのだ。
「 フランソワ−ズ ・・・ ! 」
「 探したわ! ・・・ 黙って出て行ってしまうのですもの! 」
「 ・・・あ ・・・ ごめんごめん。 きみ達に迷惑をかけたくなかったんだ。 」
「 迷惑だなんて! ひと言、言ってくれたらよかったのに・・・・
急にいなくなってしまう方が余程心配してよ。 本当に ・・・ どんなに ・・・ 」
フランソワ−ズは息を弾ませ、ジョ−の手を握った。
「 うん・・・ごめん、本当にごめん。 でもこれはぼく個人の問題だからさ・・・ 」
「 そんな! わたし達は仲間でしょう? こんな危険なミッションを一人で抱え込まないでちょうだい。
どれだけ心配したと思っているの? 」
「 ・・・ ごめんってば。 泣かないでくれよ・・・ 」
「 な・・・泣いてなんか ・・・ 」
パタパタパタ ・・・・ フランソワ−ズの足元に大粒の涙がこぼれ水玉模様を描きだす。
「 ふうん? それじゃ ・・・ これは雨かなあ? 」
「 ・・・ ジョ−の ・・・ 意地悪! 」
「 あははは・・・ だから、ごめんってば。 ・・・ね、機嫌なおして・・・ 」
ジョ−は彼女の肩を引き寄せ流れ落ちる涙にも構わず白い頬に口付けをした。
「 ・・・ ジョ− ・・・ 」
「 ヤツは − フリ−ドキン教授は蛇みたいに執念深いオトコでさ。
きみ達にも危害を加える恐れがあるからね。 それが一番心配だったんだ。 」
「 まあ・・・ ! そのヒトがジョ−を狙っているの? 」
「 そうなんだ。 ・・・ 実はこんな手紙が届いて・・・ 」
「 ・・・ 手紙? 今時珍しいわね。 」
「 ほら・・・ 」
ジョ−は防護服の内ポケットから一通の手紙を出し、拡げて見せた。
「 読んでいいの。 」
「 勿論。 多分、ヤツはぼく達全員を巻き込む魂胆なんだろうな。 」
「 ・・・・ まあ ・・・ 復讐 ( しかえし )ですって??
このヒト、いったい何をしたというの? え・・・ この日付・・・ 」
「 うん、もう・・・かれこれ5年も前になるかな。 この差出人、フリ−ドキン教授ってのが
この島に研究所を持っていたんだ。 ヤツはそこで・・・ 今でいうバイオ・ハザ−ドの
開発をしていたのさ。 」
「 バイオ・ハザ−ド・・・! 細菌兵器ね? 」
「 ああ、そうなんだ。 当時としては画期的発明だったらしい。
しかも ヤツはそれを営利目的 − 金儲けに使おうとしていたのさ。それも全く個人的な、ね。」
「 ・・・ 酷い! それで ジョ−はその研究所を破壊したのね。 」
「 そうだ。 放っておくわけには行かなかったからな。 」
「 それで・・・ 5年も経ってからジョ−に復讐を・・・? 随分執念深いヒトねえ・・・・ 」
「 うん。 だから ・・・ どんな危険が待っているかわからない。
それにコレはぼくが勝手にやったコトの後始末だからね。 皆に迷惑をかけるわけには・・・ 」
「 ストップ! 迷惑なんかじゃない、って言ったでしょう?
皆 ・・・ 心配して。 ジョ−がいなくなったって・・・ 方々捜して。
そうしたら、あんなメッセ−ジが届いたでしょう、皆で必死に探してやっと見つけたの。 」
「 ・・・ ごめん。 皆を巻き込みたくなかったんだ。 」
「 もう・・・! 本当に怒るわよ? ・・・・ ねえ、皆? 」
「 ・・・ ええ ??? 」
「 ・・・ おう! フランの言うとおりだぜ。 」
「 あ! 君たち・・・! 」
岩屋の影から ぬ・・・っと赤い服をまとった男達が姿を現した。
「 突然いなくなってよ。 もう ・・・ こいつなんか大変だったんだぜ? 」
「 ・・・ジェット ・・・ 」
「 んな、今さら恥ずかしがるなって。 なあ、ジョ−? 」
長身の赤毛が真っ赤になって詰め寄ってきたフランソワ−ズのオデコをちょい・・・と突いた。
「 だって・・・ あんな知らせが来れば誰だって ・・・ 」
「 あんな知らせ? 」
「 おいおい、 じゃれ合いもいい加減にしろ。 それでジョ−。 いったい何が起きたんだ? 」
「 ・・・ なにがって? それにしても、どうしてきみ達ここがわかったのかい。 」
「 お〜っと、ジョ−? それは我輩の方が聞きたいぞ? 重大事件が起こった、
この島に全員集結せよ・・・ってメッセ−ジを飛ばしたのはお前さんだろうが。 」
「 え??? 何だって? 」
「 そ、そうよ。 わたし達・・・・ それで大急ぎでここにやってきたのよ。
ああ、ともかくジョ−はこの島にいるんだ、って・・・ そうしたら・・・ 」
「 さあ、ジョ−? 僕たちに説明してくれよ。 いったい何が起きたんだ。 」
「 ピュンマ・・・・ そうか! アイツ・・・ こんな姑息な手を・・・! 」
「 ジョ−? 本当にどうしたの。 」
仲間達に取り囲まれ、ジョ−は呆然と突っ立ったままだ。
フランソワ−ズはそっと寄り添って彼の腕を引いた。
「 ・・・ フランソワ−ズ ・・・ そうか、そうだったんだ。 うん ・・・ 実はね。 」
ジョ−は全員を手近な岩場に案内した。
海も島の上部も見渡せるので、万一なにかあっても安全だろう、と思われる場所だ。
「 ・・・ そうだったのか! なるほどな。 」
「 ああ、アイツか! ・・・ フリ−ドキン教授、頭脳明晰だが陰険なヤツだったな。
うん、まさに蛇みたいに執念深いところがあったからなあ。 」
「 そうだね、いかにもアイツが企みそうなことだよ。 」
ジョ−から経緯を聞き、メンバ−達は一様に頷き 吐息をついた。
「 そうアルな。 坊主憎ければ袈裟までも・・・ってこの国の諺通りアルね〜〜〜 」
「 本当にそうね。 さっきジョ−が教えてくれたけど・・・ 元々は自分の利益、つまり
私利私欲のために細菌兵器を開発していたのでしょう? 」
「 うん、そうなんだ。 その研究所を破壊したぼくに仕返ししようとして・・・
それできみ達全員にも危害を加えようとしたらしい。 」
「 ・・・ 卑怯モノの典型だ。 」
「 皆を巻き込んでしまって ・・・ 本当にすまない。 」
「 そいつは もう言うなって。 」
恐縮するジョ−に、仲間達は快く協力を約束しひとまず散開して島中を捜索することになった。
「 ・・・ アルベルト・・・! 待っていたのよ。 ああ・・・ ありがとう・・・ 」
「 フランソワ−ズ。 」
ドアを開けるなり、フランソワ−ズは玄関先に立つ銀髪の男に走り寄った。
「 知らせを貰って飛んできた。 ・・・ 他の皆は? 」
「 国内組はもう詰めてもらっているわ。 海外からはあなたが一番よ。 」
「 そうか。 ・・・ 全員揃い次第、ドルフィンを出そう。 」
「 お願いね! ・・・ ああ、 ごめんなさい、こんなトコで立ち話して・・・
どうぞ。 どうぞ入ってちょうだい。 」
フランソワ−ズはドイツからの仲間を招きいれた。
「 ・・・ ふん。 しかし、本当なのか。 」
「 わからない。 わからないからこそ・・・ こうやって皆に集まってもらったのよ。 」
「 ・・・・・・・ 」
「 わたしだって! 信じたくなんかないわ。 そんな ・・・ そんな ・・・!
でも 全く連絡はとれないし、黙って出ていってしまったのも事実なのよ。 」
「 ふん ・・・ ともかく、その届いた <知らせ> とやらを見せてくれ。 」
「 ええ。 ああ、その前に荷物を・・・ 」
「 いや。 こっちが先決だ。 」
「 ・・・・ そうね。 じゃあ・・・リビングに来て。 グレ−トと張大人が検索を始めているわ。 」
「 そうか。 そんなに心配するな、フランソワ−ズ。
・・・・性質 ( たち ) の悪いイタズラに決まっているさ。 」
「 ・・・ でも ・・・ 」
「 お前、そんな風に思っているのか? アイツが ・・・ 俺達の中で最強のアイツが
そんなに簡単に ・・・ って。 」
「 そうね。 まず、わたし達が信じなければ。 ええ、絶対に無事だわ。
わたし達が今なすべきことは早急に援護するための対策をたてること、ね。 」
「 さすが003だ。 ・・・ よお! 」
アルベルトはニ・・・っと笑い、仲間の待つリビングに入っていった。
大丈夫。 必ず見つけ出して・・・ 救助・・・ううん! 援護するから。
仲間達全員が集結したんですもの。 ・・・ええ、絶対に無事よ!
009が死んだ ・・・ なんてウソかイタズラに決まっているわ!
フランソワ−ズはぶるん、と頭を振り目尻に残った涙を振り飛ばした。
「 午後にはアメリカ組が、夜にはピュンマが着くわ。
さあ・・・! 美味しいお茶でも入れて、一息つきましょう。 」
「 ハイな! ワテがお茶菓子を用意しまっせ。 腹が減っては・・・ってホントあるよ! 」
フランソワ−ズと張大人の明るい声に、仲間達はみな愁眉を開いた。
「 あの時さ ・・・ 」
ジョ−は、彼女の髪を指に巻いたり口付けしたり・・・柔らかなその感触を愛おしむ。
亜麻色の髪は 時に金の煌きを放つ指輪にもなり、冷たい甘さを放ち彼を楽しませた。
「 ・・・ あの時 ・・・? 」
「 ウン。 あの ・・・ 砂漠の都市でさ。 きみが・・・ いや、きみとそっくりのロボットが
ぼくの目の前で ・・・ 爆発したとき。 」
「 ああ ・・・あの、コンピュ−トピア・・・? 」
「 そう。 どうして判らなかったのかな。 いくらそっくりでもロボットなのに・・・ 」
ジョ−は一房、亜麻色の髪を自分自身の頬に押し付ける。
「 ジェットにさ・・・ 呆れられたんだ。 よく確かめもしないでわあわあ騒ぐなって。 」
「 ・・・ あら。 <騒いだ>の? ・・・ ジェットはもっと・・・ちがう風に言ってたけど? 」
「 ・・・ ちぇ・・・ 」
「 残念でした、ちゃ〜んと聞いてるわ。 アイツよ〜 わあわあ泣いてたんだぜって。 」
「 あ! わあわあなんて・・・ ただ ・・・びっくりしてさ。 だって目の前だよ。 」
「 ・・・ びっくりした、だけ? 」
イタズラっぽい光を湛え 青い瞳がじっとジョ−を見上げている。
ジョ−は半身を起こし・・・ そして彼女の裸体を抱え込み再びベッドに倒れた。
「 ・・・ このォ・・・ オシャベリは口はこうして・・・塞いじゃうぞ〜 んんん ・・・ 」
「 や ・・・・ だ ・・・ んんん んん ・・・ 」
「 ・・・ ホントはさ。 すご・・・・いショックだったんだ。
いまだに 時々夢にみる。 そして自分の声で目が覚めて・・・ほっとするよ。 」
「 ・・・ ジョ− ・・・ そのロボットも<わたし>だったのよ。 きっと・・・
わたしにそっくりな姿で ・・・ きっと心も似ていたんだわ。 だから ・・・ あなたを庇って
ううん、あなたを巻き込みたくなくて、離れていって爆発したのよ。
もし・・・ わたしだったら 」
「 し。 そんなコト、言うな。 そんなコト、考えないでくれ。 」
ジョ−はフランソワ−ズの唇にぴたり、と指を当てた。
「 ぼくは ・・・ ぼくが絶対にきみをそんな目に遭わせはしない! この身をかけても・・・! 」
「 ジョ−・・・・ 」
白い指が そっと唇の封印を外し、桜色の唇がそれを熱く包んだ。
「 ・・・ わたし ・・・ わかるから。 どんな状況でも ・・・ ジョ−のこと、わかるから。
ううん、<見える>からじゃないわ。 わたしには ・・・ わかるの。 」
「 ・・・ わかる ・・・? 」
「 ええ。 どんな時だって。 ジョ−は・・・ ジョ−ですもの。
そうね・・・理屈じゃないの。 わたし自身も説明はできない・・・でも、わかるのよ・・・ 」
「 ・・・それじゃ もっと近くにくっついて・・・ ぼくをもっと確かめて。 」
「 ・・・ あ ・・・・ ん ・・・・! 」
ジョ−は そのまま彼女の手を押さえ、全身で覆いかぶさった。
「 ・・・ く ・・・ ええ ・・・ どこでも ・・・ いつでも ・・・ ジョ−は ・・・ ジョ ・・・− ・・・ 」
「 ・・・・・・・・・ 」
熱い波に呑み込まれつつ・・・フランソワ−ズの言葉の切れ端を ジョ−は吐息とともに
拾っていた。
あれは・・・ いつだったろう。
ほんのつい最近の夜だった、とフランソワ−ズは淡く頬を染めた。
ええ! そうよ。 わたし、わかるから。
待っていて。 きっと・・・ 必ず・・・! 見つけ出すわ。
ドルフィン号の舷側の窓から 003はじっと飛び去ってゆく海面を見つめていた。
コクピットでは 全員が集中して探索と航行に当たってる。
久々の全員でのミッション、視線はいやでもメイン・パイロット席を向いてしまう。
ここにはいつだってヤツがいなくちゃ。
ああ、そうさ。 あのセピアの髪とちょっと困ったみたいなセピアの瞳が ココにみえなくちゃ。
俺たちのミッションにはならないんだ・・・!
誰も口にはしなかったが、同じ想い・同じ視線がコクピットの中に充ちていた。
ドルフィンは 飛ぶ。
微かな振動とエンジン音を遠くに響かせ、 <いつもの> 操縦者を捜しに
空飛ぶイルカは 悠々と波飛沫を蹴散らせていった。
「 この島で間違いないか。 」
「 うん。 ここに記されている位置どおりなら・・・ 確かにこの島だよ。 」
「 ・・・ はん? 岩だらけの愛想のない島だな。 海図にも載ってないんだろ。 」
「 まあね、極秘の研究所を建てるには絶好の地だろうね。 」
「 ふん・・・! しかし、こんな<通知>、誰が信じるかってんだ。 」
「 姑息なテだな。 俺達を誘き寄せようって意志がミエミエだ。 」
「 ・・・ でもあのヒトが ・・・ こんな、いかにもわざとらしいテを使うかしら・・・ 」
「 マドモアゼル? これぞあの・・・陰険教授のテなんだ。 わざと我輩らの疑念を引き起こし・・・
誘い出す。 裏の裏を読んでいるってわけさ。 」
「 ・・・ でも ・・・ 」
「 アイツの考えそうなことだ。 ・・・心配するな。 」
アルベルトは ぽん、とフランソワ−ズの肩に手を置いた。
「 それよりもアイツがここ・・・ 自分の本拠地でどうでるか・・・ 」
「 そうね。 ええ、耳も眼も最高レベルにしているから ・・・ あ! 」
「 なんだ? ・・・・?!」
「 ・・・ 見て・・・! 」
フランソワ−ズの鋭い悲鳴に 全員がドルフィンのスクリ−ンに注目する。
まだかなり遠いが、岩だらけの島が前方にはっきりと映り・・・ やがてアップ画像になってゆく。
朽ちかけた堤防跡のほか、岩しか見えない島はどうみても無人島なのだ。
しかし。
「 ・・・ って ・・・ マジかよ ? 」
サイボ−グ達の間にさっと緊張感が走り、全員が臨戦態勢を取った。
彼らが身構え息を詰めて見つめるその先には ・・・
「 ともかくドルフィンを着けよう。 あの・・・堤防でいい。 」
「 了解 ・・・ ! 」
無骨な孤島にむかって ドルフィン号はしなやかにカ−ブを切って着水した。
「 よし。 上陸だ。 」
「 ・・・ 大丈夫か。 」
「 上がってみなければわからん。 ・・・ アチラさんがどうでるか。 お手並み拝見とゆこう。 」
「 はん! そんじゃ・・・行くぜ! 」
「 う〜む。 攻撃は最大の・・・って事を実践するか。 」
「 どこぞのお国じゃないアル。 ニセモノは いらへんで! 」
「 ・・・・・・・・・ 」
サイボ−グ達は一様に無表情なまま岩場におりたった。
シュ ・・・・ ッ !!!
聞き慣れた足音とともに彼らと同じ赤い特殊な服を纏った人影が彼らの前に立った。
「 ・・・ みんな! いったいどうしてここに?! 」
「 ・・・ 009 ・・・! 」
彼らの中で<最強>のメンバ−、009の姿が現れた。
「 そいつは・・・ こっちが聞きたい。 」
アルベルトがひどく抑揚のない声で応えた。
「 どうしてここがわかったのかな。 黙って出てきたんだけど。
ああ、003、君が探索したのかい。 」
「 ・・・ いいえ。 」
フランソワ−ズは一歩も動かずに、じっと009を見つめたままだ。
「 あれえ・・・ 皆どうしたんだ? 変だぞ。 ・・・ もっともそんなコトはどうでもいいが。 」
「 なんだとッ! 」
「 ・・・ 僕の仲間は ここにいる。 」
009はさっと手をあげた。
ざ ・・・!
彼の背後からぞろり・・・と人影が現れた。 赤い特殊な服を纏い黄色のマフラ−を靡かせ・・・
7人の戦士が並び立った。
009は 彼らに向かって穏やかに話しかけた。
「 なあ、皆。 どうやら君達のニセ者が現れたようだよ? これはモンダイだよね。 」
「 このォ! どっちがパチもんだって?! 」
「 おい。 」
いきり立つ赤毛をアルベルトが制した。
「 ほう? これはこれは・・・ お揃いでお出ましですか。 ご苦労なこって。 」
「 ふ〜ん・・・・ アンドロイドかい、それともクロ−ンかな。 」
「 ・・・ ピュンマ、 機械体じゃないわ、全員。 多分クロ−ンね。」
「 なるほどね。 どこかで僕たちの細胞を手にいれたんだな。 髪の毛一本からでも
クロ−ンとして再生できるって聞いたよ。 」
「 それで・・・ わたし達全員に復讐 ( しかえし ) をするというの? 」
「 う〜ん?? しかし、放置してはおけんな。 ・・・ いくぞ。 」
「 おう! 」
岩場だらけの海岸で 同じ服を纏い同じ姿・同じ顔をした者達同士の闘いが繰り広げられた。
「 ・・・ ふん。 コイツら、似せたのは形 ( なり ) だけか。 」
硝煙が収まったとき、アルベルトは少々憮然としていた。
「 そのようだね。 僕の方も完了さ。 」
防護服から海水を滴らせ、ピュンマが海から上がってきた。
「 ・・・ あまり気持ちのイイことじゃなかったわ。 」
「 そりゃ ま・・・ そうだが。 自分自身を ・・・ 」
「 グレ−トはん。 言わぬが花、ちゅう言葉を知られへんのんか。 」
大人は防護服に散った煤を払っている。
「 ・・・ 自分の始末、自分にしかできない。 」
ぼそり、とジェロニモは言ったが、流石に口調には苦味があった。
「 あれ? <アイツ>は? 」
ピュンマがきょろきょろと周囲を見回した。
「 あん? ・・・ いねェ。 逃げられたか!? 」
「 ・・・ シッ! 船の音がするわ。 ・・・ この島に向かってきている! 」
「 なんだって? 」
「 普通の船よ、地元のだわ。 船頭らしいヒトと ・・・ あ!! ジョ ・・・?? 」
「 ・・・ 隠れろ! 」
赤い服の集団は <残骸> を始末しあっというまに姿を消した。
ほどなくして 一隻の小船が現れ − その舳先にはセピアの髪を風に揺らせ男が立っていた。
「 ・・・ ジョ− ・・・ ! 本当によかったわ・・・ 」
「 フランソワ−ズ・・・? 」
フランソワ−ズがぴたりと彼に寄り添ってきた。
二人で岩場から島の中央を目指して歩きだし、ジョ−は周囲を油断なく警戒していた。
「 そんなに心配してくれたのかい。 」
「 だって・・・ ! あんな・・・ 」
「 あんな? 」
「 え・・・ いえ、だって ・・・ 黙っていなくなっちゃうんですもの。 誰だって心配するわ。 」
「 だから、ごめんってば。 ヤツの性格を考えると、こうするしか方法はないと思ってさ・・・・ 」
「 それでも。 やっぱりひと言、相談して欲しかったわ。 」
「 ・・・ ごめん。 本当にわるかったよ。 」
「 もういいわ。 とにかく、今は皆で協力しなくちゃ。 」
「 うん。 そして今度こそヤツを仕留めなくてはな。 」
二人の視界から 仲間達の赤い服が遠ざかってゆく。
「 たのもしい仲間達・・・! 」
「 うん、そうだね。 」
やがてジョ−はフランソワ−ズと共に切り立った岩壁を登り島の中央部に出た。
周りの崖に直接の海風を遮れられるのだろう、そこには思いのほか豊かな緑が広がっていた。
時折吹き抜ける風に草地がざわざわと音をたてる。
その中を ジョ−とフランソワ−ズはゆっくりと進んでいった。
「 ・・・ なにか見えるかい。 」
「 ううん・・・ なにも。 この島には本当になんにも無いわ。 ・・・ああ、なにか・・・
建物の残骸みたいなモノがあるけど・・・ もうほとんど朽ちてるわ。 」
「 ヤツの研究所の跡さ。 」
「 あなたが破壊したところね。 ・・・ でも その<細菌兵器>は・・・・? 」
「 大丈夫、ちゃんと安全に始末したよ。 」
「 そう! よかったわ。 」
「 なんだか・・・ 平和すぎてかえって気味が悪いなあ。 」
「 ・・・ そう ・・・ そうね・・・ 」
カラスらしい黒い鳥が 叫び声を上げ飛んでいった −−− その直後に・・・
ガラガラガラガラ −−−−−− !!!
「 うっ! 来たなッ! 」
崖の上から 大きな岩が固まりとなって二人に向かって落下してきた。
「 危ない ・・・! 」
それが。 < 皮切り > だった。
「 ・・・・?! どうしたんだ?? なにが ・・・ あったんだ!? 」
たった今、戦闘は終った。
その時 ・・・ ジョ−はほんの少しだけ息を弾ませ、半ば呆然と佇んでいた。
彼の周りには 誰もいない。
同じ赤い服を着た < 頼もしい仲間たち > はことごとく彼自身の手で斃された。
ある者は仲間の炎に焼かれ、 ある者は水に沈み、 そしてまたある者は宙に散った。
彼らは次々とジョ−の前に現れ、無言で攻撃を仕掛けてきたのだ。
はじめ、戸惑っていたジョ−も 次第に本気で応戦し始め・・・
やがて 気がついた時、かつて彼が共に過し共に笑い共に ・・・ 闘った<仲間>達は
皆、無言のまま破滅していった。
「 ・・・・・・ 」
ジョ−は険しい表情であちこちに倒れている赤い服に包まれた骸を見つめている。
「 ・・・ み、皆・・・ 催眠電波とか・・・そんなモノで操られていたのではないかしら・・・ 」
彼の後ろでフランソワ−ズが震えていた。
「 ・・・ みんな ・・・ 死んだ ・・・ の ? 」
「 ああ。 」
「 どうして!? どうして殺したの? ジョ−! だって皆仲間なのに!
操られていただけよ、そうでしょう?? 殺すことなんか・・・ なかったじゃない。 」
「 いや。 ・・・ 彼らは <仲間> じゃない。 」
「 ・・・・え ・・・ 」
ジョ−は静かに振り向くと す・・・・っとスーパーガンの照準を合わせた。
そう ・・・ 彼が愛し・彼を愛している・ 彼のオンナに。
「 ・・・ ジョ− ・・・! なにをするの?! 仲間なのに! 」
「 いや。 彼らは、そしてきみも。 仲間じゃない。 」
「 ・・・ 仲間じゃない? あなたのことを襲ったから?
だって ・・・ 操られているだけよ、本心じゃなかったのに。 それを ・・・ あなたが・・・ 」
「 言っただろう? ・・・ 彼らは仲間、いや <サイボ−グじゃない> 」
「 ・・・ え ・・・ 」
ジョ−のス−パ−ガンはぴたり、とフランソワ−ズを狙ったままだ。
「 弱すぎる。 一番初めに005とやりあったとき、すぐにわかった。 」
「 ・・・ 弱い? 」
「 ああ。 それに、闘い方がちがう。 」
「 それは ・・・ 本来の彼らとは違った状態だったから・・・ 」
「 いや。 本当の彼らは闘う武器を身体の <中> に持っている。
きみの言う < 頼もしい仲間たち > は皆ニセモノだ。 」
「 ・・・・・・ 」
「 そうだ。 そして − きみもだ、003 ・・・ 」
ジョ−はス−パ−ガンのトリガ−に駆ける指に力をいれ・・・
「 ジョ− ・・・!後ろ!! 」
フランソワ−ズの叫びとほぼ同時にジョ−は振り向きトリガ−を引いた。
そして
・・・・ ガラ ・・・ッ !
岩場の陰から 赤い服を纏い黄色いマフラ−をゆらせ、セピアの髪の青年が
つんのめり 転がってきた。
・・・ こめかみに小さな焦げ跡があり、すでに息はしていなかった。
「 ・・・ やった・・・ 」
「 ジョ− ! 上よ! あのヘリにフリ−ドキン教授が乗っているわっ! 」
「 サンキュ、003. ああ、きみは本当にホンモノなんだね。 」
「 当たり前でしょ! ほら、気をつけて! ああ・・・・! 小型爆弾を投下するつもりよ。 」
「 おっとォ〜〜 ここは俺に任せな! 」
「 ・・・ ジェット??! 」
後ろから威勢のよい声が響き同時に軽いジェット音がして 長身の赤毛が空を昇ってゆく。
「 ふん。 地上からだって充分さ。 ・・・ おりゃ! 」
銀髪の男が膝を上に向け ミサイルを発射した。
「 ほっほ・・・・ なんやけったいなモンが落っこちてきますな。
ほんならワテがお先に始末いたしまひょ。 」
ゴウ・・・・! 紅蓮の炎が地上から吹き上がりばらばらと落下してくる爆弾は空中で弾け散った。
「 あ〜あ ・・・ 海にまでおとすなって。 誤爆もいいとこだな〜 ちょっと処理してくるね。 」
落下物が漂う海面に、しなやかな姿が飛び込んでいった。
「 危ない。 003、こっちへ 」
寡黙な巨躯の持ち主は ひょい、とフランソワ−ズをそのがっしりとした肩に座らせる。
「 あら。 ありがとう、ジェロニモ。 」
「 ・・・ き、きみ達 ・・・!? 」
倒れ伏していた<仲間>達は次々に平然と起き上がり、手際よく作業を分担してゆく。
空中からこちらを伺っていた小型ヘリは あっという間に撃ち落とされ、
操縦していたマッド・サイエンティストもともに爆発し、砕け散った。
「 は〜ん! これでスッキリしたぜ。 」
「 余計な手間をかけさせやがって。 」
「 ・・・ きみ達 ・・・ まさか、ニセモノじゃ・・・・ いや、クロ−ンじゃないのか? 」
ジョ−はまだ身構えていた。
つい ・・・ ほんの数分前に自らの手で斃した、と思った<仲間>達は
何事もなかったかの顔つきでごく自然に振舞っているのだ・・・!
「 ジョ−? おぬし・・・ その目をよ〜く使って見給えよ。
いいかな、ニセモノはこんな芸当ができたかね? 」
グレ−トの姿が一瞬ブレたと思うと ・・・ 次の瞬間、<島村ジョ−>がそこに立っていた。
「 ・・・・! 」
ブン ・・・ と微かな機械音と共に<島村ジョ−>は消え、スキン・ヘッドの中年男が笑っていた。
「 ニセモノは 飛んだかよ? 」
赤毛はアッという間に垂直上昇した。
「 お〜・・・・ いい天気だぜ〜〜〜 」
「 おい。 降りて来い。 撃ち落すぞ? 」
鋼鉄の右腕が火を吹き 銀髪がにやりと口の端を持ち上げ笑った。
「 あぶねえな! オッサン〜〜 ! 」
「 早く降りてこい。 どうだ、わかったか、ジョ−。 」
「 ・・・ しかし。 さっき、確かにぼくはこの手で ・・・ きみ達を ・・・ 」
「 あははは・・・ 我輩の演技指導はたいしたモノであるな!
サイボ−グ諸君は気代の名優でもあったらしい。 ははは、ジョ−よ、芝居だよ。 」
「 し、芝居〜〜〜??? 」
「 そうやで、ジョ−はん。 ワテらの演技もまあまあやったアルな♪ 」
「 ひどいなあ・・・ ひと言、言ってくれればよかったのに・・・ 」
「 そやけどなあ。 敵を騙すにはまず味方から、言うやおまへんか。 」
張大人ののんびりした声に サイボ−グ達は皆声を上げて笑った。
岩場の多い孤島が なんだか急におだやかな緑の島に見えてきた。
空はぐん・・・と晴れ上がり、上天気、付近にはカモメの姿もみとめられる。
「 あ・・・・ なんだか気が抜けたよ・・・・
ねえ、大人 ・・・ ちょっと釣りでもして行かないかい。 」
「 ほっほ。 そりゃええなあ。 ほんで、今夜はここで大BBQ大会でもしまひょか。 」
「 あ、いいね♪ ぼく達の釣り上げた獲れ獲れ魚で盛り上げよう。 」
「 ・・・ ジェット。 買い物を頼める? 」
「 あん? いいぜ、野菜とかパンとかか? 」
「 いいえ! お肉に・・・ そう、魚もお願い。 」
「 お? 肉はいいけどよ、魚はジョ−達が釣るんだろ。 」
「 ・・・ あてになんかなるもんですか。
今まで一回だって< 獲れ獲れ魚 > を見たことってないもの。
こんな絶海の孤島でお腹を空かせているのはまっぴらだわ。 」
「 あは♪ 了解〜〜 」
「 ひどいよ〜〜〜 フランソワ−ズ〜〜〜 」
またまた陽気な笑い声が 青空に響いていった。
「 ・・・・・ だって すぐわかるもの。 ジョ−は ・・・ ジョ−だって。 」
「 だからさ。 どうして・・・ 」
「 ・・・ あ、もちろん<眼>なんか使っていないわ。 」
「 わかってるって・・・ でも・・・さ。 」
ジョ−は腕を伸ばし、傍らに寄りそうフランソワ−ズの頬に手を当てた。
「 いつかもそんなこと、言ってたけど。
ぼくは ・・・ あの島できみが能力 ( ちから ) を使うまでわからなかった・・・ 」
「 ・・・ ジョ− ・・・・ 」
あの島から帰り仲間達もそれぞれの祖国に戻っていった。
ギルモア邸ではまた いつもと同じ − 平凡な普通の − 日々が流れている。
博士と眠ってばかりいるイワンと。 ジョ−とフランソワ−ズはそんな穏やかな毎日が
とても嬉しかった。
「 どうしてって言われても・・・・ わたしにもわからないの。
でも・・・・ あの時・・・ わたし達、みんなクロ−ンの自分自身と対峙して・・・・
<009>は姿を消してしまったの。 だから<009>を誘きだすためにも
あんな芝居をしたのよ。 」
「 ・・・それは ・・・ わかるけど。 ぼくはもう少しできみを撃ってしまうところだった・・・ 」
「 仕方ないわ、ジョ−。 もう そんなに気にしないで・・・ 」
ジョ−はばさり、と仰向けにひっくり返った。
「 ・・・・ それでも、さ。 ふん ・・・ それじゃ ・・・ 今度あんなコトがあっても
見分けがつくようにしなくちゃな。 」
「 え・・・? 」
「 もっと よ〜〜くきみのコトを知らなくちゃなってことさ。 」
「 どういうこと? 」
「 ・・・ こういうこと・・・さ! 」
ジョ−は起き上がると がば・・・っとフランソワーズを抱き寄せた。
「 きゃ・・・ ヤダ、急に ・・・ 」
「 いやいや・・・ ミッションに間違いがあったら困るから。
これからぼくは ・・・ この身体をよ〜〜〜く探求することにするよ♪ 」
「 ・・・ な ・・・ なにを ・・・ きゃ ・・・ 」
ジョ−は桜ん坊みたいな彼女の唇をからしっかりと彼女自身を<探求>し始めた。
新しい年の始め、温暖なこの地域とはいえまだまだ春も遠い頃だが
二人の寝室には一足はやく情熱の暑熱で一杯になっていった。
*************
Fin. ************
***** おまけ for
お正月 *****
都心に近い繁華街、映画館の前で一組のカップルがさっきからもめている。
ちらちら振り返るヒトもいるのだが ご本人達はそれどころではないようだ。
「 え・・・ わたしは 『 愛と哀しみのワルツ 』 がいいの。 」
「 ・・・ それって ・・・ ? 」
「 ええ! あのね、今季最大のラヴ・スト−リ−なんですって♪
ハンカチを二枚、ご用意ください、っていうのがキャッチ・コピ−なのよ〜〜〜 」
「 ・・・ ラヴ・スト−リ− ・・・う〜〜ん、そのテのって・・・( 客席、オンナノコばっかなんだよな〜 ) 」
「 なあに? 」
「 いや、なんでも・・・ なあ、こっちのが面白そうだよ〜〜 ほら。 」
「 ? 『 サ−キットに賭けろ! 』 ??? あのう、もしかして自動車レ−スのはなし? 」
「 そうなんだ! サ−キットに散った天才レ−サ−のドキュメントも兼ねててね!
臨場感たっぷりの全館音響ばっちり!の新タイプのフィルムさ。 座席にも振動が伝わってくるって! 」
「 ・・・ ソレって・・・ ( 単にウルサイってことじゃないの? ) 」
「 え、なに? 」
「 ・・・ ううん、なんでもない。 ねえ、やっぱり 〜〜 」
「 『 愛と哀しみのワルツ 』 にしましょ! 」
「 『 サ−キットに賭けろ! 』 にしよう! 」
・・・・ ・・・・・・・・
同時・二重唱となり ― 二人はじっと見詰め合っていたが。
フランってさ、 ものすご〜〜〜くガンコなとこ、あるんだよな・・・
ジョ−ってばムキになると もうお子ちゃま丸出しなのよね〜〜
「 ・・・ もういいよ。 帰ろう。 」
「 そうね。 」
ぷつっと言葉を切ったきり ジョ−とフランソワ−ズはぴたりと口を閉じてしまった。
並んで歩いているけれど 二人の間には微妙な隙間がある。
・・・ なんなんだよ〜〜 フランって普通のオンナノコとは違うって思ってたのに!
なによ、なによ〜〜 誘ったのはジョ−の方じゃない?
きみの好きなものでいいよ・・・くらい言えなの??
コツコツコツ・・・・
・・・ カツカツカツ ・・・
足音までもが自己主張し、二人は同じ思いで ・・・ 怒っていた。
お正月の華やいだ街中、どのカップルもみんな楽しそうである。
それなのに・・・・
ジョ−とフランソワ−ズは新年早々そっぽを向いてむくれあっているのだ。
「「 ただいま ・・・ 」」
岬の突端にあるギルモア邸、不機嫌モ−ドのまま二人は帰り着いてしまった。
「 ・・・ あれ。 誰もいないのかなあ。 」
「 変ねえ。 ただいま帰りました〜〜 博士? イワン〜〜 ? 」
「 年賀状、来てましたよ〜〜 」
二人はスリッパを鳴らしてリビングのドアを開けた。
「 博士〜〜?? ・・・研究室かしら。 あ? 」
「 ・・・ え? ああ、手紙かな。 」
「 うん ・・・ え? 」
「 なんだって・・・ あれ! こんなモノ、この家にあったんだ? 」
リビングの真ん中ではソファが片寄せてあり そこにふかふか蒲団のかかったコタツが鎮座していた。
そして その上にメモが一枚。
「 これ、なあに。 」
「 ・・・博士とイワン、出かけちゃったよ〜〜 コズミ博士を誘って張々湖飯店だって。
え、なに。 どうかしたかい。 」
「 これ。 この ・・・ 家具はなあに。 」
フランソワ−ズは博士の置手紙よりも初めてみる家具の方がずっと気になる存在らしい。
「 こ ・ た ・ つ さ。 え〜と・・・スイッチは・・・? ああ、これか。
ふふふ・・・・ フランソワ−ズ? コ−トを脱いで手を洗って〜 うん、そうだな、
みかんを持ってきてくれる。 」
「 みかん??!! 」
「 そう、あ、それも籠に山盛り、がいいなあ。 」
「 そんなにみかんが食べたいの、ジョ−? 」
「 いや・・・ でも大切な小道具なんだ。 」
「 小道具??? 」
ますますワケがわからず、フランソワ−ズの眼はまん丸でいある。
「 ぼくは熱いお茶でも淹れておくよ。 」
「 ・・・ え、ええ ・・・ わかったわ。 」
すごい上機嫌のジョ−をリビングに残し、フランソワ−ズは首を傾げ・傾げ 二階に行った。
「 ・・・ きもち ・・・ いい 〜〜 」
「 だろ ・・・? 」
「 うん ・・・ ほっこり・ぽかぽか・・・ イイカンジ。 」
「 みかんは? まだこんなにあるよ。 」
「 ・・・ うん ・・・ もうひとつちょうだい。 」
「 うん。 あ、剥くね〜 」
「 ありがと。 ジョ−。 新年から ・・・ こんなコトでいいのかしら ・・・ 」
「 いいさ。 ・・・ なんにもしない のが日本のお正月なのさ。 はい、剥けたよ。 」
「 ありがと。 ふうん ・・・ そうねえ・・・喧嘩するよりもずっといいわね。 」
「 ああ。 ずっと いいよな。 」
ふふふ ・・・
・・・ うふふふ ・・・
コタツの上で見つめあい。 コタツの中で手を握りあい。
ギルモア邸の元日は穏やかに − 甘〜〜〜く過ぎていった。
************ Fin. **********
Last
updated : 01,01,2008.
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***** ひと言 *****
あの原作自体、オ−ル・カラ−でフルキャスト〜♪ おまけに何気に仲良し93〜
でも ジョ−君はフランちゃんを撃っちゃう〜〜(;_;) ってサ−ビス精神旺盛?ですよね〜
お正月ですから、妄想の方もフルキャストでがんばってみました♪
( ・・・あ! イワン〜〜〜忘れた・・・!! )
お年玉??ってことで 93ののほほん・お正月小噺をしっぽに付け足しです♪
こたつ・みかん♪は日本の冬の定番ですよね〜〜 (#^.^#)
・・・ こらこら! コタツの中でなにやってるの?? (^_^;)