『   春や昔の ― (2) ―  

 

 

 

 

    ひゅるん −−−−−

 

柔らかい風が 吹き抜けて行った。

やっと頭上を見上げる余裕が出来たが ― 目に写るのは

 ・・・ ほう〜〜〜っと広がる薄い水色の空だった。

ぽかり ぽかり と 白い雲が浮かぶ。

ジョーは しばらくの間 ただぼ〜〜っとそんな空を眺めていた。

 

     ―  ああ ・・・ 

     空はいつもの通りだよね ・・・?

     う〜〜ん  いいな  春って感じで さ

     チビ達とハイキングとか ゆくかあ〜

 

     ?  あ れ ・・・?

 

     まだ 春じゃないはずだよなあ

     さっき 寒いって  やば〜〜って思ったじゃん?

     トレーナーだけで 素足に庭サンダルで

     失敗した って 言ったじゃん 自分〜〜

 

     ― ここは  どこなんだ??

 

「 ・・・ あ  ・・・ あの 」

「 ああ 大丈夫のようですね  よかった ・・・ 

 ここのシート素材は 滑りやすくてね。 転ぶヒトも多いので

 おいおい変えてゆく予定です  まあ できれば、ですがね 」

ジョーに 声をかけてくれた人物は静かに笑った。

 

     あ ・・・ このヒト 普通の人 だよね?

     なんかユニフォームみたいの 着てるけど・・・

 

     ― 聞いてみる か・・?

 

「 あ のう〜〜  シツレイですが ・・・

 こちらを そのう〜〜〜 管理をしている方ですか 」

「 はい?  ああ 私はこの地域全体の担当です。

 一応 市の公園地域に指定されているんで ね 」

「 ・・・ 公園 ちいき ・・・? 」

「 そうです。 ああ やはり外国からいらしたのですね〜〜

 ここは出入りは自由ですが なにもありません。

 ミュージアムとか スタジアムもないんです。 」

「 は あ ・・・ そう なんですか ・・・ 」

「 自然の大気と太陽光を楽しむには 最高ですけどね〜〜

 散歩とかはご自由にどうぞ。 海辺の方にもゆけますよ。

 あ  帰りは下までおりればモノレールの駅があります。

「 あ どうも・・・ありがとう ございます 」

「 じゃ また転ばないように気をつけてください〜〜 」

「 ・・あ  ど〜も ・・・ 」

 

管理担当 というヒトは 手を振って笑顔を残し

ちょいと変わった自転車風な乗り物で 去っていった。

 

「 ・・・ 公園 だって?  

 だって ここは。 この下はウチの土地で 邸があるんだぞ?

 そりゃ 裏山は市の土地だったけど・・・

 荒れ放題で だ〜れも使ってなかったじゃないか 」

 

自分の目で調べるしかない、とジョーは 009としての感覚にスイッチを

切り替えた。

 

   シュ 〜〜〜〜〜   超視覚と超聴覚のレンジを広げてゆく

 

003ほどではないが 009にも常人を遥かに超える視聴覚が

搭載されている。

「 ・・・ ん〜〜〜〜  なにも  ない ????

 いや 木や崖や ああ 海もあるけど ―  構造物やヒトが

 ・・・ いない ・・? 」

耳に入ってくるのは 風の吹き抜ける音 鳥たちの囀り そのバックに

たえず聞こえる潮騒の音 ・・・ だけだ。

「 だれか  だれか いないのか?? 」

次第に彼は 得体の知れない恐怖にかられ じっとしていられなくなった。

「 だれか〜〜〜 いませんかあ〜〜〜  

 お〜〜〜い  お〜〜〜い  ・・・ 」

 

      トン トン トン −−−−

 

初めて見る硬質な階段を 降りると  ― すぐ下には < ウチ > の

裏庭が広がっている  はず。

 

        そうさ モノ干し場があってさ。

        家族のシャツやらシーツ や タオル ・・・

        チビ達の服やら靴下やらパンツが 翻ってて。

 

        その向こうには 温室と畑があるんだ。

        温室の中には イチゴ が生っててさ

 

          ―   ・・・ え ・・・?

 

「 ・・・・??? 」

眼下には  荒地が 手つかずの荒野に草たちが繁茂して 広がっていた。

「 ・・・ ウソ だ  ろ ・・・? 」

ジョーは 震える足取りで その荒地に踏み込んだ。

 

  ガサ ガサ  ゴロン ・・・

 

草群には 思わぬ岩角が隠れていたり朽ちた鉄と思われるモノが顔を出していたり。

歩くだけなのだが かなり注意が必要だった。

 

   立ち入り注意  危険  ―  そんな立て札が隅に立っていた。

 

「 だって  ここは!  ぼくの ぼく達の・・・!

 ぼくとフランが チビ達と暮らしている ウチ だぞ 」

あまりの驚愕のためジョーは 怒りの気持ちまで湧き上がってきてしまった。

「 ・・・ 落ちつけ ジョー。  ここが本当に その・・・ ウチの土地か

 よく調べるんだ。 似たような土地かもしれないじゃないか 」

彼は慎重に その荒地に足を進めていった。

 

 ― そこは 確かに あの土地 だった。

視覚聴覚ではなく 身体全体の感覚で覚えている。

ここは裏山に続くところで 右手には洗濯モノ干し場が 

その先には 温室とハーブ畑。

そして 大きな樫の木の向うには  ― ちょいと古びた洋館がある はずなのだ。

 

     ジャリ  ジャリ グズグズ  ・・・・

 

足元でなにかが壊れる音がしたが  あまりに朽ちすぎていて

それがなんだか判断ができない。

それでも目を凝らし雑草とぼこぼこした瓦礫の間に ようやっと確認できたのは

 ・・・ 敷石の名残と赤さびた鉄柵の残骸 と思しきモノ。

しゃがみ込んで 指先で手繰り寄せれば ― ぼろぼろと崩れてしまった。

 

     ―   ウソだ!!  こんなの、まやかしだっ

     誰かが 偽装したんだ

     これはきっと 手の混んだ 騙し討ち だ!

 

     ・・・ だけど  なぜ??

 

     少なくとも 今は戦闘中じゃなかったはず。

     なんだって そんなコトをする必要がある??

 

     ― というコトは。

 

     ・・・ これは  もしかしたら。

     現実  なの  か ・・・?

     

しばし呆然としていたが やっと思考が戻ってきた。

「 そうだ ・・・ あの入口があるはずだ!

 緊急避難用の ・・・ !  」

カンを頼りに 足先で荒地を探した。

瓦礫やら石ころが 容赦なく足に当たり素足を攻撃してくる。

「 ・・・ いて!  ああ なんだって庭サンダル なんて

 履いてきたんだ??  防護ブーツ じゃなくてもせめて普通のスニーカー

 だったらなあ ・・・  お? 」

 

      ガツン。  ―  あった!!!

 

ジョーは 座り込み 探り当てた取っ手を引いた。

 

     ガ ・・・ グシャ ・・・

 

「 ! あ  ああ ・・・ なんてこった・・・ 」

やっと見つけた地下格納庫に抜ける非常用の入口も 錆び付き朽ちてしまっていた。

「 ! いや ここは 脳波通信で暗証番号を送れば開くはず ・・ 」

 

   ・・・・  ・・・・  ZZZZZZ ・・・

 

彼が何回試みても  −  なんの反応も なかった。

自分自身の内部機関が故障しているのか とも疑ったが

それはどうも杞憂のようだった。

「 見えるし 聞こえる ・・・ 遠方でも。

 だけど 脳波通信に応えが返ってこないんだ ・・・! 」

 

 ― そう ・・・  サイボーグ009 は その機能も搭載された機関も

全て正常に起動してる。

ただ その < 呼び掛け > に応えるモノが いない。

 

     この下は  格納庫に通じていて ・・・

     非常用のメンテナンス・ルームがあって。

 

     地下にはドルフィン号が < いる > んだ!

     そして そのまま海中に発進できる

 

     そうさ ぼくらの最後の砦 ・・・ 

 

彼の足の下には 大きな空洞らしきモノは存在しているようだが

そこに入ることも 外から確かめることもできない。

 

     ボスン ボスン ・・・ 庭サンダルの下で地面は鈍い音がした。

 

「 ああ ・・・ 内部も朽ちてしまったのか ・・・? 」

いつもの朝 ついさっきから ― どれほどの時が 経ってしまったのだろうか 

「 ウソだろ ・・・ これは  悪夢  だ ・・・ 」

ぺたん ― ジョーは荒地に座り込んでしまった。

ため息も もう出なかった。  

ここが 皆で暮らした場所 なのだろうか。

仲間達と暮らし そして 彼自身の家族を得たかけがえのない家。

ジョーが初めて ウチ と呼べる所が あった場所。

 

 ―  いまは ただの荒地 に戻っている。

 

     風を感じるし 太陽も温かいよ  ね?

     遠くに波の音も 聞こえる・・・

 

     ― ってことは。  まやかし じゃないんだ。

 

 パタン   彼あ荒地にひっくり返った。

 

     ・・・ ああ 空が ・・・ 青い ・・・

 

薄水色の空に ぽかり ぽかり 雲が浮かんでいる。

おそらく それは晩冬 というか 早春の空。

 

   ね〜〜〜 おと〜さ〜〜〜ん  たんぽぽ さいてる〜〜〜

 

   おと〜さ〜〜ん  ありさん がいるよぉ〜〜〜

 

   ねえ ジョー 見た? 裏山の梅が満開よ〜〜

 

そんな声があちこちから聞こえてくる ― はずの季節。

「 温かくなったら お弁当もってピクニックって ・・・

 みんなで約束してた  よなあ 」

あんなにも心躍る季節だったのに。

 

   ジャリ。 庭サンダルが瓦礫の中に半分 潜る。

 

「 ・・・ 海岸はどうなっているんだ?

 そうだ 海から格納庫入れるんじゃないか? 」

彼は一縷の望みを感じ 起き上がった。

「 とにかく。 このままじゃダメだ。

 なんとか ― この状況から ぬ 抜け出す方法は ・・・ 」

 

    ガサ ガサ  −−− 

 

海岸の方に出てみよう と 荒地を突っ切り 

< ウチ > の敷地を越えて行った。

坂の天辺、 かつて ギルモア邸の門があったところに立てば

 

「 ―   ・・・ ああ ・・・・ 」

 

眼下にはずう〜〜〜っとなだらかな平原が広がり 遠くには

モノレールによく似た交通機関が見えた。

 

「 ! 海岸通り商店街 とか あの辺りの宅地は どうしたんだ?

 な  んにも ない ・・・ 」

 

早春の陽射しが照らす中 そこはただただ明るく広く ― そして静かだ。

宅地もなく なにかの工場や公共施設らしき建造物もみえず

かといって農地もなく目立つ大きな木々もない。

 

  ただ ただ 平坦なつるつるした感じの地が広がっている。

 

「 ・・ 目が  いや アタマがヘンになってきたのか ・・・

 ぼくは ・・・ いったい ・・・ 

よろめきそうになる足を 踏みしめつつ海岸の方まで進んで行った。

 

   あ ・・・ 海 だ・・・ 海は あるんだ ・・・?

 

崖っぷちに近いところまで 公園風に整備されていた。

なにかの石碑がひとつ、ぽつん と海に向かって残っていた。

「  ・・・ こんなもの なかったぞ??

 なんの石碑なんだ?  ・・・ なにも読めない 」

表面は時の経過と風雨にさらされ かすかな凹凸しかわからない。

しかし周囲には軽く柵が設けてあり フラワー・ボックスなども

設置されている。

「 これは ― なにかの記念碑 なのか ・・・

 こんなトコにあっても 忘れてはいないよ ってことなのか 

裏側に周ってみたが 手掛かりらしきものは皆無。

建立当初は なにか刻みつけたあったのだろう。

「 ・・・ ん ・・・? 」

彼は しゃがみ込んでそのうすくなった凹凸を指で撫でてみた。

 

   ・・・?  ・・・ wi ・・th  ・・   Lo  ve ・・?

 

「 愛を こめて  か。

 ・・・ だれかの墓碑だったのかなあ ・・・

 ってことは この地に誰かが住んでいた ってことか ??

 ― いや。 ただの岬守り、 灯台みたいなものかもしれないし 」

石碑は太陽の光で ほんのりとだが温か味を感じられた。

彼にはそれが 石碑の微笑 かのように思えた。

「 ・・・ ありがとう ・・・

 君が そこにいてくれるってことは やっぱりここは

 

   ―  ウチがあったんだ! ぼくの ウチ が !  

 

  ぽた   ぽた ぽたぽた ぽた −−−

 

彼の足元に涙が水玉模様を描き始めた。

「 ん ・・・ ここがどこか いつなのか  わからない けど。

 でも ぼくにはウチが 家族が 妻子が ちゃんといたんだ!

 そうさ  ここで それはそれはシアワセに暮らしてた ・・・ 」

 

    カタン カタ  カタ   カタ −−−

 

庭サンダルは 乾いた音を立てつつ この履き手を かつての裏山と思しき場所まで運んできていた。

「 ・・・ ああ ・・・ ここ 裏山 だよなあ ・・・ 」

そこには比較的 緑が多く、整地された平地に低木がしょぼしょぼと生えている。

「 そう だ ・・・ チビ達の木登り を監視しなくちゃ って

 ここまで来たんだった ・・・ それで  なんか足をとられて

 ・・・ 転んで ・・・   あれは 夢 だったのかなあ 」

 

  ぼすん。  見なれない低木の側に腰を下ろした。

 

「 ― そっか あの滅茶苦茶に幸せで笑って笑って愛していた日々は

 ・・・ ぼくの夢 だったのかも ・・・

 ぼくが欲しくて欲しくて仕方がなかった日々だもの ・・・

 うん ・・・ きっと憧れすぎて 夢、みちゃってたんだな 

 

    ふう〜〜〜〜   

 

空を眺め 足元の貧弱な緑を見て 少し先からの潮騒を聞いて。

ジョーは なんだかお腹の底から ふわり と浮き上がる気分がしていた。

「 は  あ  ・・・  きもち いいなあ ・・・・

 ―  ここで  朽ち果てても   ―  いいや ・・・ うん 」

 

ジョーは日溜りに座り込むと膝を抱え ― 目を閉じた。

 

「 博士。  あの装置を 使ってもいいです  よね ・・?

 ずっと除去してもらおうか と思ってたけど  ―  今は  ・・・ 」

 

      すぴか  すばる そして

 

        ぼくの フランソワーズ  ・・・

 

      今  皆の側に ゆく から  ね

 

「 待っててくれる よね?  仲間たち  ・・・  博士 ・・・

 そうさ  クビクロ ・・・ 皆 待ってて ・・・ 」

 

      ゆっくりと009の全てをoffにしていった 

 

 

 

 

   おと〜〜さ〜〜〜〜〜ん  おと〜さん ってばあ〜〜〜

 

   すぴか〜〜  おと〜さん ねてる〜〜

 

遠くで そんな声が聞こえた。

「 ・・・あは ・・・ 最後は 一番シアワセな夢 を見られるのかなあ ・・・

 神様 ・・・ ありがとうございます ・・・ 」

ふと 幼い日の信仰が ごく自然にそんな言葉をつぶやかせた。

 

     どうん〜〜〜〜〜  あははははは〜〜〜〜

 

     きゃははは 〜〜〜〜  むぎゅうううう〜〜〜

 

「「 おと〜〜〜さ〜〜〜〜〜ん  」」

 

     うわ ???  おおおおおお〜〜〜〜〜〜

 

温かくて 柔らかくて 愛しいモノがふたつ、 ジョーの膝に飛び込んできた。

 

「 ・・・ す  すぴか??   すばる??? 

「 おと〜〜さ〜〜ん  ねたらダメだよぉ〜〜〜  」

「 かぜ ひきますよって おか〜さんがいうよぉ〜〜 」

 

   え あ あは   あはははははは       うわああああ〜〜〜〜

 

ジョーは 両腕を広げ彼のなによりも大切なタカラモノをふたつ、

思いっ切り抱きしめるのだった。

 

「 すぴかぁ〜〜〜   すばるぅ〜〜〜〜 

「 あれえ おと〜さんってば どうしたのぉ〜〜 」

「 おと〜さん ・・・ ないてるの? 」

 ぺち ぺち ぱふん。  小さな手がジョーの頬にふれ

そして まあるくてあったかいほっぺが ふたつ、ジョーの顔に押し寄せた。

「 ・・・ あ  ああ  うん  

「 ねえ ねえ おと〜さ〜〜ん 」

「 なんだい すぴか 」

「 アタシね〜〜 おと〜さん だいすきィ〜〜〜 」

「 ぼ 僕も〜〜〜 おと〜さん だいすき〜 」

 

   うん  うん うん ・・・・

 

ジョーは もう涙を拭うこともせず我が子を二人抱きしめて

ぼろぼろ・・・涙を流し続けた。

さすがに チビ達も妙な顔をし始めた。

 

「 おと〜さんってば。  ねえ なんで泣いてるの〜 」

「 ・・・ な 泣いてなんか  い ないよ 」

「 え〜〜〜 そう〜〜?  ほっぺ ぬれてるよ? 」

「 そ そうかな ・・・ 」

「 そ〜だよ〜  あ おと〜さん どっかいたいの? 」

「 あ おと〜さん ころんだ?  

チビ達は本気で父親を心配し始めた。

「 ・・・ あ  ご ごめん ね・・・

 大丈夫、なんともないよ〜〜〜 」

「 そお〜〜?? だって ないてるよ? 」

「 あ は ・・・ あ〜〜 実はね〜〜

 さっき お父さん、転んじゃったんだ〜〜  

 庭サンダルが引っ掛かっちゃってさ。  ずてん って 」

「 あ それで イタイの おと〜さん 

 イタイの イタイの とんでけ〜〜〜〜  」

すばるが 手を伸ばし父の髪をなでなでしてくれた。

「 ・・・ ありがと〜 すばる〜〜〜 

 うん ・・・ もう大丈夫だよ  すぴかとすばるがいてくれるから 」

「 えへへ〜〜〜 そう? 」

「 うん  もう平気さ 

「 ふうん・・・?   あ ね ! あの木 ! のぼってもへいきだよね 

「 僕も!  すぴかとのぼりたいな〜 

「 あ ・・・ そうだったね  あの木を調べに来たんだったね 」

「「 そ〜だよ〜〜〜 」」

「 おと〜さんってば やぶの前でねてるんだも〜〜ん 

 ねえ あそこ・・・ けむし のおうち だよ? 」

「 ありさんのおうちもあるよ 」

「 ・・・ げ★ 」

ジョーはあわててジャージのオシリを払ったり トレーナーの裾を

めくってみたりしている。

「 あは で〜〜もね〜〜 いまはまだみんな とうみん だよ?

 さむいも〜〜ん 」

「 あ ・・・ そか ・・・  よかった ・・・ 」

「 ね〜 おと〜さんってば 木 みて! 」

「 あ うん うん 」

ジョーはチビ達に両手を引っ張られ 裏山 ― いつもの薮と雑草だらけの

裏山だった! ― を 歩きまわった。

 

 

 ― しばらくして。

 

「 あの木は。 ひとりづつ登ること。 いいね? 」

ジョーは重々しく言った。

「 ・・・ すばるといっしょだと だめ? 」

「 すごく年取った木なんだ。 今はちゃんと立ってるし

 葉っぱも繁ってて根も張ってる。 

 だけど 二人で登ったら絶対安全って言えないな。 」

「 ひとりだったら いい? 」

「 静かに登ること。  登って騒がないこと  」

「 アタシ 木の上でさわだりしいないよ〜〜 」

「 約束できるかい 」

「「 できる!! 」」

ジョーとすぴかとすばるは 三人指切り をした。

「 じゃ〜 そろそろお昼ごはんにしよ〜か〜〜 

ジョーは に・・・っと笑ってコドモ達の顔を見る。

「 あ!  うん!! 」

「 おひる〜〜〜 」

「 あ おか〜さん おしえ だよ? 」

「 うん おでかけ したよ? 」

「 知ってるさ。  今日のお昼ごはんはお父さんが作る! 」

得意満面な顔で ジョーはチビ達を見たのだが。

 

      「「 ・・・ え 」」

 

すぴかもすばるも ものすご〜〜く真剣な顔で固まっているのだ。

「 『 え  』 ってなにかな〜〜 」

「 ・・・ おと〜さん  アタシ かっぷめん でいいよ 

「 僕がつくる!!!  たまごさんど と ジャムさんど つくれる!

 すぴか〜〜 あつい ぎうにう・こうちゃ つくれるよね? 」

「 え あ ・・・ うん。 この前 おじいちゃまにおそわったんだ!

 おと〜さん アタシたちがごはん、つくる! 」

 

      「「 ね〜〜〜〜〜  」」

 

「 あ そ そうかい? それじゃ ・・・ お父さんは二人のお手伝い、

 してもいいかなあ 

「「 うん!!! 」」

「 それじゃ かえろ〜〜〜 それで手を洗って ― お昼ごはんだあ♪ 」

「「 わああ〜〜〜い  」」

 

  ― それから 三人で手を繋いで いろ〜んな歌を歌いながら家に戻った。

 

 

  

   かちゃ。  たまごサンドとジャムサンドがお皿に並ぶ。

 

   ことん。  ぎうにうこうちゃ の湯気が上がるカップも一緒だ。

 

「 おと〜さん おひるごはん で〜す 」」

すぴかとすばるは 得意顔でジョーの前に食器を並べた。

「 うわ〜〜〜 すごいなあ〜〜〜〜  二人とも〜〜 」

「「 えへへ 〜〜〜 」」

実際 すばるはちゃんとゆでたまごを作りマヨネーズとちょっぴり

醤油を垂らし 食パンに挟んで ― たまごサンド を作った。

盛大にいちごジャムとチーズをパンに乗せて ― ジャムさんど を作った。

すぴかも ぐらぐら沸かした牛乳を紅茶に入れて 

( ジョーはハラハラしたけれど ) 熱々・ぎうにうこうちゃ を淹れた。

 

「 それじゃ〜 はい よいしせいになりましょう。 」

「 てをあわせてください。 それでは  」

   「「「  いただきます    」」」

 

「 ん〜〜〜〜〜 おいし〜〜〜〜〜 

 すばる〜〜〜 たまごサンド さいこ〜〜〜 

「 えへへ・・・ すぴか〜〜 あつあつ・ぎうにう〜〜

 おさとう いっぱいだあ〜〜 」

「 ・・・ うん うん  ・・・ おいし ・・・ な ・・・ 」

「 あれえ〜〜〜 おと〜さん またないてる〜〜 」

「 ・・・ おと〜さん ・・・ あの キライなあじだった? 」

二人は ごはんを放りだしジョーの両側に寄ってきた。

「 ・・・ あ ご ごめん ごめん ・・・ 

 と〜〜〜〜ってもおいしいよ 〜〜〜

 美味しすぎて ・・・ お父さん 涙がとまんないんだ ・・・ 」

 

ジョーは 両手で我が子達を抱き寄せつつ また泣き笑いするのだった。

 

      おと〜さん ・・・ ヘンだよ 

      

      ウン すぴか。 おか〜さんに いう?

 

      うん、すばる。 おじ〜ちゃまにも いおう。

 

      ウン!!!

 

すぴかとすばるは真剣な表情で 父親を < 観察 > していた。

 

Last updated : 02.07.2023.             back    /      index    /    next

 

*********   途中ですが

なんのこっちゃ??? な ハナシにみえますが・・・

続きます〜〜〜  ( 誰もよみにこないけど )