『  釣り人  』   

 

 

 

 

 

「 ―  でも ぼくは行くから。 」

「 !  まあ そうですか。    どうぞご自由に。

 わたしは買い物に行って来ます。 今晩のオカズの材料、買ってこないと。 」

「 ・・・・  ! 」

さすがに温厚なジョーも むっとしたらしい。

黙って彼女をみつめたが ぷい、と席をたち出ていってしまった。

そして彼女もソファに座ったまま じっとその姿を見送っていた。

 

 ― バタン ・・!  玄関のドアが 多少乱暴に閉った。

 

「 ( ふん )  夕食のお買い物に行ってまいりますわ。 」

フランソワーズは極上の笑顔を 固まってるギャラリーに ― 博士と大人に向けた。

「 あ ・・・・あ ああ ・・・  き 気をつけて ・・・ な ・・・ 」

「 ・・・ ひゃあ ・・・ あ いや どうもせえへんで?  あ 〜〜 行っておいで。 」

「 はい、 イッテキマス。 」

彼女はとても優雅に会釈をすると いつもと少しも変わらない落ち着いた足取りで

リビングを出ていった。

 

  ―  バン ッ !!!    ほどなくして玄関のドアが 悲鳴を上げた。

 

「 ・・・  おお コワ 〜〜〜〜 ・・・・  オナゴはんを怒らしたらあかん、て ・・・ 」

「 ・・・だなあ〜〜 大人よ ・・・ 」

「 へえ ほんまですなあ〜〜  おっとワテはジョーはんを追いますワ 

 そもそも今日の釣り約束は ワテがさそったものやさかいに。 」

「 ああ  そうか〜〜 そしたら ジョーのこと! ヨロシク頼むよ 張大人。 」

「 へえ。 ほな、いってきます。 車の準備、 しやはるはずやけ ・・・ 」

大人もわさわさと座を立った。

「 ま ・・・ あの朴念仁になんとか一匹でもエモノが掛かるように祈っておるよ 」

「 そりゃワテもおなじでっせ。 特注のエサ撒いて お魚はんらにお頼みしたいくらや。 」

「 はっはっは ・・・ 幸運を祈る! 」

「 おおきに。  ほな 行ってきますワ。 」

「 汝の安全なる航海を祈る! 」

大人はまるまっちい手をぴらぴら振って あたふたとリビングを出ていった。

「 ま ・・・ 頑張ってくれたまえ・・・ 」

バサリ と新聞を広げつつ博士は独り言した。

ほどなくして まずは軽いオープンカーの音が そして しばらくしてから四駆が出発してゆく

車輪の音がギルモア邸の前の急坂を下り遠ざかっていった。

 

 

  ガ −−−−−  

 

モーター・ボートは軽快に海面を疾走してる。

「 この辺りでいいかなあ  大人? 」

ジョーは試案しかねる面持ちで 相棒に訊ねた。

「 なにネ? 」

「 あの ・・・ だからさ、 釣り糸を垂れる場所だよ。 」

「 それ 言うんやったら 釣り場 でっせ。  ふ〜ん ・・・? ここは湾の中やさかい

 どこでん、ええのんとちがいまっか? 」

「 そ そうかな・・・  今日はさ。 どうしても! エモノを持ち帰りたいんだ。 」

「 は〜〜ん ?? 」

「 な なんだよ? 釣り人ならあたりまえだろう? 」

「 ジョーはん? そりゃ ・・・ あんまりでっせ。 」

「 ??? そ そうかな?  あ ・・・ 釣った魚はまた海に返せってこと? 」

「 そやなくて!  あんさん、 < 釣り人 > ゆうのんはな 魚を釣りあげる人 いう意味でっせ?  」

「 ウン 知ってるけど・・・? 」

「 そやったら。 そないなことは一匹でん 釣り上げてから言いなはれ。 」

「 ―  ハイ。 」

「 あと な。  下らん意地はらんと。 無心になるこっちゃ。 釣ってやる〜〜 デカイやつ、

 オオモノ釣ってみせびらかしてやる〜〜  ほいで見返してやる〜〜〜・・・ 思てたら 

 釣りの神さんに好いてもらえへんで。 」

「 ・・・ そ そう ・・・? 」

「 そや。  フランソワーズはんを喜ばそう、 美味しお魚 食べさしてあげたい ・・・

 て願うて 釣りなはれ。  ええな! 」

「 ・・・ はい。 」

ジョーはがくん・・・とアタマを垂れると従容と釣り糸の準備を始めた。

 

     ・・・ ったく。  この坊 ( ボン )はぁ〜〜〜

     嬢やのこと、好いとってのはみえみえやのに 

     ええかげん はっきり言うたらええやんか!

 

     ま。 仲良しケンカ〜 ちゅうとこかいな。

     こりゃ 釣りの神さん ヤキモチ焼きはるでぇ 

 

大人は こそ・・・っと溜息を吐き 海面を眺めた。

今日は風もなく凪いだ海で ―  これで釣れなかったら ・・・

 

     坊 ( ボン ) ・・・ アンタ、お魚はんの恨み、買うてんのかもなあ

 

 まあ ともかくその日は一般的な ・ 釣り日和 だったのである。

 

 

 

 

きっかけは ほんの些細なことだった  ―  と思う。

そんなあやふやな記憶しかない、という事自体が証明しているようなものだ

  ・・・ ごくくだらないことが原因だったのだ ということを。

 

 ― そう ・・・  実に珍しいことなのがだが。  ジョーとフランソワーズはケンカをしたのである。

 

もっとも ・・・ 現場に居合わせ 不幸にも <聞き役> となってしまった張大人にいわせれば

「 喧嘩やて?  へえ よう言わんワ。 ありゃ ただの <犬も喰わない> やで。 」

「 しかしだな、大人。 その後に釣りにマドモアゼルは参加しなかっのだろう? 」

「 はいナ。  ジョーはんのエモノをまっとったら 日ィが暮れる、 言わはってなあ〜 」

「 日が暮れる ?  ぷ・・・!  いやあ またマドモアゼルもキツイことを ・・・

 いやいや ・・・ 真実だけに boy にはカチン、と来ただろうなあ。 」

「 そうなんや〜 ほいでな、 ジョーはんが オオモノ釣ったかて、ウチにはよう持って帰らへん、

 大人とこの店に回す、言わはってなあ。 」

「 ふむふむ  ・・・・  で? 」

「 アトはもう 売り言葉に買い言葉や。  フランソワーズはんは 生きてる魚なんぞ アタシは

 よう捌けへん、言いよる。  ジョーはんは アンタには関係あらへん、て言い返してなあ・・・ 」

「 わははは 〜〜〜 あの二人でもそういうくだらないコトで口論するのか〜〜

 いやあ〜〜〜 天下の009 も 奥方の前では <ええかっこしぃ> なんだなあ。 」

「 ブリテンはん。  ジョー君らぁはま〜だ 独身 でっせェ 」

「 いやいや もういい加減で 長い・長い・長過ぎる春 にピリオド! を打たんとな。  」

「 そやなあ  ・・・  あいや〜  まあそいで、そんな訳で、やなあ。

 フランソワーズはんは 湖での釣りには行かん、ということになったんだワな。 」

「 ふんふん ・・・ それで? 」

「 ジョーはんはなあ そんでも行く! 言わはってな。

 フランソワーズはんもむか〜〜と来はって もう知らん〜〜〜って 」

「 わははは・・・ ふんふん それで? 」

「 ほんでもって ― ワテはジョーはんと出発してん。

 けどなあ、初めての釣り場やし、 あんまし期待せえへんといてや、とマドモアゼルの耳に

 こそっと言うといたんや。 」

「 ほうほう   で  成果は。 」

「 いやあ〜〜 なんちゅうか ・・・ ジョーはんて、トクベツな才能あるんとちゃうやろか。 」

「 ??  釣りの才能 かな。 」

「 うんにゃ!  < 魚に嫌われる才能 > や! 」

「 へえ〜〜・・・・またしても ボウズかい?! 」

「 ワテはそこそこやった。  まあまあの場所やったけど ―  一匹も! ゆうのんは

 ・・・ 最早 天才 やで。  あれは ・・・ 」

「 ワッハッハッ〜〜〜〜 !!! 」

「 ほいでもご本人はえろう真剣にあっちこっち釣り場を変えたり エサを吟味したり

 努力しはってんけどなあ。   まあそれがことごとくパアやったさけ・・・ 

 ち〜とばかし気の毒になったわなあ ・・・ 」

「 ふうん そんなこともあるのかねえ。  で 帰りにまた魚屋に寄ったってわけかい。

 それで マドモアゼルのご機嫌はいかに? 」

「 それが や。  ワテらの方が早うに帰ってきましてん。 坊 ( ボン ) はほっとしよって・・・

 買うた魚は こそ・・っと冷蔵庫に突っ込んどきましたで。 」

「 お〜 よかったな。   ん? それじゃ ・・・ マドモアゼルはまだご帰還じゃない? 」

「 はいナ。  ガレージにも車はあらへんかった。 」

「 ふうん ・・・ いや なにか別に用事でもできたのかもしれんし ・・・ 遠くの店まで足を

 伸ばした とか ・・・・ ちょいと気紛れをおこした とか ・・・

 そうだ、たまにはのんびり ・・・ 一人でカフェにでも入っているのかも ・・・ 」

グレートは そわそわ・・ 時計を見たりしている。

「 何ネ? 」

「 いや ・・・ マドモアゼルはなにか言っていたかな? 」

「 何か・・・って何ネ? 」

「 だから 今日は遅くなる、 とか 友達に会う とか ・・・ 」

「 うんにゃ。 なんも言ってぇへん。  夕飯のお買い物に行く、言ってはっただけや。 」

「 そうか ・・・ あ、 帰りに道路 ( みち ) が渋滞しておるのかも ・・・ 」

「 あんさん、このど田舎で そないなこと、あるわけないやろ? 」

「 いや しかし。 道は空いてはいても事故というものは往々にして起こるものであるし ・・・ 」

「 ほな どないせい、ちゅうねん?  」

「 いや  ・・・・ ま とりあえずTVで交通情報とか調ようじゃないか。 」

グレートは 手元のリモコンを操作した。

「 え〜〜〜 ニュース ニュース ・・・っと ・・・・  お??? 」

「 今度はなにネ !!   」

「 あ  いや ・・・・ ほら このニュース ・・・ 皆 可愛なあ〜〜〜  とりどりの宝石だなあ。 」

「 なになに ?   ・・・・ ひゃあ〜〜  キレイな姉ちゃんばっかや〜〜〜 

 どっこの御人らやねえ・・・? 」

「 さあなあ ・・・ うん?  ・・・ ああ こりゃ フィギュア・スケート界の祭典だな。 」

「 ??? さいてん ってなに?? 」

 ・・・・ うん?  なんだって?  違ったみたいだぞ・・・   え・・?? 」

「 だから ナニか、て訊いてるやんか ・・・ なんやて  ゆくえ不明 やて?? 」

「 ああ ・・・・ へえ ・・・ こんな美女ばっかがねえ? 」

「 皆 一緒にどっか行きはったん違うのんか 」

「 子供じゃあるまいし ・・・ 」

「 ほな ・・・ お菓子あげるよっておっちゃんと一緒においで言われて付いて行った・・・とか? 」

「 大人 〜〜  ・・・ いや その線は濃厚だな。 」

「 へえええ?? 冗談でっせ? 」

「 いや、 冗談じゃないぜ。  オトナはお菓子じゃないモノで  釣られる  ぜ? 」

「 あは〜〜ん ・・・  誘拐、言うてはるのんやな。 」

「 ・・・ 拉致 ・・・ か。 」

「 イヤな言葉や ・・・ 」

「 うむ ・・・ 」

拉致の果てに我が身に降りかかったことに思い至り、 二人のサイボーグは暗澹とする。

 

  ―  バタン ・・・   リビングのドアが少し乱暴に開いた。

 

「 !? なにネ!?  ・・・ ああ ジョーはんか。 なあ あんさん、聞いてはるか?  

 フランソワーズはんの 」

「 ― フランソワーズは? 」

珍しくも ジョーが他人の言葉を無視し、割って入った。

「 それ ワテが聞いてるやんか! 」

「 あ ・・・  ごめん ・・・ でも フラン ・・?? 」

ジョーはきょろきょろと部屋中を見回している。

「 ジョー。 オヌシ、なにか聞いているか? 」

「 なにか って。 」

「 だから その ・・・ マドモアゼルの本日の予定 とか さ。 」

「 ? なにも。  だって夕飯の材料の買出しに行くって言ってたじゃないか。 」

「 ああ。 それは我輩らも聞いておるよ。  で ―  まだ帰っていない。

 特にここに連絡もない。 だから ジョー、オヌシが彼女の予定を知っているかと思ったんだが 」

「 !  知らない。 ・・・ 車、 戻ってなかったけど。 なにか予定があるのかと 」

「 そやから! だ〜れも知らん ちゅうてんのや。 」

「 ― !! 」

 

   ―  バンッ !!!!     バタンッ !!!

 

リビングと玄関のドアが ほぼ同時に物凄い勢いで閉った。

「 ジョー???  ・・・ あれ  探しに行ったのか。 」

「 そやな。 ふん ええとこ、あるやんか。 」

「 ふふん、結局は相思相愛ってヤツで  ― っと 今はそれどころじゃないな。

 おい ちょいと博士に伝えてくるぞ。 」

「 頼んまっせ〜 ワテはもうちょい情報収集や。 」

グレートは博士の書斎に、 大人はリビングの天井からGPS対応の機器を降下させた。

 

 

 

「 ― なんだって? もう一度、言ってくれ。 」

アルベルトは電話を持ち直し、無愛想に繰り返した。

「 だから ・・・ 今すぐには動けないんだ。 」

「 それはわかった。 俺は何故か、と聞いているんだ。  こちらで事件と遭遇してな、

是非ともグレートの協力を 」

「 だから〜〜〜 こっちは取り込み中なんだ〜〜〜 」

彼は思わず顔を顰め 電話を耳から離した。

「  ― あのなあ。  俺の耳も フランソワーズほどじゃないが、聴力は強化されているんだ。

 普通の声で十分だ! そしてきちんと論理だてて話せ! 」

「 だから〜〜〜〜 そのフランソワーズが帰ってこないんだ〜〜〜 」

「 ・・・ なんだと?  ジョー ・・・ お前ら、ま〜た痴話喧嘩でもしたのか。 」

「 ち 痴話・・・って〜〜 ちがうよ!  ぼく達 そんなんじゃ ・・・  いや!

 そうじゃなくて!  買い物に出かけたきり ・・・ うん、車は途中で乗り捨ててあったんだ・・・

 うん ・・ 海に近い辺鄙な道で ・・・ 」

「 わかった。  ジョー、博士と代われ。 」

「 え。 だから〜〜 今 捜索に出る相談中で 」

「 いいから 代われ。 」

「 ・・・わかったよ。  博士〜〜〜〜 」

「 ! ・・・ったく〜〜 ・・・ アイツ、本気でパニック起こしてやがる ・・・ 」

アルベルトはますます渋面し 電話を耳から遠く離した。

「 ― アルベルトか? 」

落ち着いた <いつもの博士の声> が 淡々と聞こえてきた。

 

    あ ・・・ やっと日常にもどった ・・・

 

アルベルトは ほっとしてやっと本題に入り話始めた。

「 博士?  すいません、わざわざ ・・・ どうもジョーのヤツ、まったく要領を得んので 」

「 ああ  もうずっとオーバーヒート気味でなあ ・・・ 生身なら血圧急上昇 ― ようするに

 アタマに血が昇っている、というところじゃ。 」

「 ふん? なんか フランソワーズがどうかしたのですか。 」

「 そうなんじゃよ。  帰りが遅すぎる、と心配しとったんじゃが・・・ 」

「 ??  」

「 ・・・ 拉致・誘拐の線が濃厚じゃ。 」

「 ・・・ やはり、ですか。 」

「 やはり とは? そちらでも何か事件があったのか。 」

「 はい。 俺が直接関与したのはヴィーナス像です。 」

「 は??? ヴィーナス像 ???? 」

「 ええ。  美術評論家の友人と旅をしていまして ―  贋・ヴィーナス像事件に

 ぶちあたりましてね。 是非 グレートの協力を頼みたくて電話したのですよ。 」

「 ほう〜〜 ・・・ それで ジョーが一方的に喚きたてた・・・というわけだな? 」

「 ははは 大当たりです。  それに 今 別に方面の展開もありましてね。 」

「 別の方面 ? 」

「 はい。  当地域で有名なミス・コンの入賞者がごそっと 姿を消しましてね。

 どうも ― 拉致・誘拐の線が濃い。  そちらでも同様の事件がありませんか? 」

「 拉致・誘拐事件か? ふむ ・・・ おお ちょっと待ってくれ。 気になるニュースが ・・・ 」

博士はごそごそ 誰かと話をしている。 アルベルトはじりじりする思いで

受話器を握りなおしていた。

「 ―  よう? アルベルト〜〜 」

「 ? あ  グレート〜〜 」

目的の人物がダイレクトに登場した。

「 早速だが。 最短のルートでそちらに行くぞ。 今 どこだ。 」

「 パリだ。 ルーブル。 」

「 よし、すぐにコチラを発つよ。 」

「 なんだ?  フランソワーズがどうの・・・とジョーが喚いていたが いいのか。 」

「 ふん。 あのな〜 アルベルト。  今回の拉致・誘拐事件 や 贋作置き換え事件 は

 どこかで繋がっているはずだ。   実はな、こっちでも 美女たちが複数行方不明さ。

 ああ もちろん、我らがマドモアゼルもその中に含めたい。 」

「 そうか! ダンケ、グレート!!  で  ・・・ よし、 そっちの後ろでウロウロ・・・

 喚いている張本人を電話口まで引っ張ってきてくれんか? 」

「 お〜らい♪    ・・・ お〜い ジョー? 」

「 アルベルトッ !!! 」

間発いれずに ジョーが電話口に割り込んできた。

「 あの! わかってくれたかい?? これからドルフィンをだして捜索に出るよ!

 ごめん、 君の方の事件を応援できないんだ〜〜  」

「 ジョー。 ドルフィン号の行き先は ―  エーゲ海だ。 」

「 え〜げかい??? 」

「 そうだ。  まずは一番にグレートを飛行機にのせろ。 そしてお前はドルフィンで

 大人と一緒に飛んでこい。 途中でピュンマを拾え、連絡は付いてるから。 」

「 ちょ ・・・  ドルフィン号はフランソワーズの捜索に使うんだってば。 」

「 だ〜から。  今度の事件は ― 全部繋がってる、と見た。 」

「 全部?? 」

「 ああ。  これは 美女釣り だ。  発進準備して待機しててくれ。  」

「 あ!!  アルベルト〜〜〜 」

 通話は挨拶ヌキで切れてしまった。

「 な〜〜んだよ〜〜〜 ! 」

「 ジョー? それじゃ 我輩はすぐに発つ。 駅まで四駆、借りるぞ。 」

何時の間にやら ぱりっと身支度をしたイギリス紳士が立っていた。

「 うわ??  グレート?? 」

「 じゃあ 時間がないから ― 」

「 ジョーはん!  グレートはんをナリタまで送って行きなはれ。

 加速装置ならあっと言う間やろ? 」

大人が二人の間に ずい!っと割り込んできた。

「 え 〜〜〜〜 ??? 」

「 おお それはいい。  グレート、服はこの加速対応の鞄につめて行けばよいよ。 」

博士まで どんどんコトを運んでいる。

「 忝い!!  では我輩は ― ネズ公にでも化けて〜〜  これなら軽いだろ? 」

「 え え ええ??? 」

ちょん、とジョーの肩に白鼠がのっかった。

「 ほらほら はよ〜〜〜 ドルフィンの整備はワテに任せなはれ。 

 坊 ( ボン ) がナリタへ行って帰ってきぃはったらすぐに出発 やで〜〜 」

「 おお それがよいな。  では ジョー頼んだぞ。 」

ジョーの回りでジョーだけを置き去りにしてまさに加速装置で ・・・ コトが進んでゆく。

当の本人が まだオタオタしている間に お膳立ては完了してしまった。

「 ほな。 」

「 頼むぞ。 」

「 チュ〜〜 」

 

「 ・・・・ くそ〜〜〜  加速そ〜〜〜ち!!!! 」

 

赤い特殊な服を纏った茶髪の青年は ヤケッパチ気味に叫ぶと ― 白鼠をポケットに

突っ込み なにやら鞄を小脇に抱え  ―  ふ・・・っと宙に消えた。

「 ほな ワテは準備しまっさ。 」

「 頼むぞ、大人。  もっとも整備は完璧だと思うがの。 」

「 ほっほ ・・・ 管轄はフランソワーズはんやな、 そうでっしゃろなあ〜 」

「 うむ。  常日頃からの備えが大切じゃよ。 」

「 はいナ。  慌てはったんは 坊 ( ボン ) ひとり、 やった ・・・ 」

いかに最強のサイボーグ、といえども 所詮は18歳のオトコノコ。

緊急時には人生経験の差が実に如実に現れる ― とうことなのかもしれない。

 

 

 

 

 

   シュ ・・・ッ !     白衣のオトコがドアの前に立っていた。

 

「 失礼します、 司祭様 」

ノックと同時に オトコは挨拶をした。

「 ? なにか。  ドクター・ヘル。 」

「 司祭様。 お耳に入れたいことが ・・・ 」

「 今頃 なにか。  もうすぐ総統が視察に見えるのだが。 」

司祭、と呼ばれた女性は 長いローブを翻し振り向いた。

飛び抜けた美貌だが ― 冷酷そうだ。

「 どうしても緊急にお耳にいれなければ ・・・と思いまして。  サイボーグです。 」

「 ??? なんのこと?  拉致してきたオンナたちに処置をしていたのだろう? 」

「 はい。 その中に  ―  まあ ご自身の目でご覧ください。 」

白衣のオトコは にやり、と笑って大仰にアタマを下げた。

「 ??? 」

女性は渋々立ち上がり 彼に案内されて部屋を出ていった。

 

  ― ここは エーゲ海の外れ ・・・ 北ギリシア近くの海域に浮かぶ孤島

 

一見 無人の島だが ・・・ その地下には広大なある施設が出来上がっていた。

島の存在は勿論海図などには載っていない。

 

 

  コツ コツ コツ ・・・・

 

地下の広大な施設の中を白衣のオトコは女性の前に立って進んでゆく。

「 だから ― 何があったのか。 」

「 司祭様。   ・・・ 裏切りモノの ゼロゼロ・ナンバーサイボーグ共のことはご存知かと 」

「 ああ。 我がBG団を裏切り まんまと逃げ果せたヤツラのことね?

 前総統を倒し ―  少なからず我らの存在にダメージを与えていった奴ら ・・・ 」

「 はい。 アヤツらを一網打尽にするチャンスが ― 転がり込んできました。 」

「 ! なんだって? ! 」

「 ・・・ 拉致してきた美女共の中に  ゼロゼロ・ナンバーの一人が。 」

「 ― それを早く言いなさい。 どこです!? 」

「 こちらへ。 」

二人の足取りは 突如速くなり程なくして突き当たりのドアの前に到着した。

 

 室内は滅菌スペースが区切られていて 関係者以外は中二階からガラス越しの見学となる。

拉致されてきたと思しき多くの女性たちが 麻酔で眠らされ横たわっている。 いずれも若く美しい。   

その中に  ―  ひときわ目を惹く美女がいた。

「 ・・・ アレ か。 」

「 はい。  平凡な医者には生身の人間と区別が付かんでしょう。 

 実に精巧な<作品>です、口惜しいがさすが ギルモア ・・・ 

「 ふん。 それがなぜお前にはわかるのだ? 」

「 私は 第二次サイボーグ計画の生き残りですので ―  計画の挫折により、この辺境に

 飛ばされた・・・というワケでして 」

「 ふん。   ・・・ で アレが ゼロゼロ・ナンバーサイボーグ? 」

「 はい。 視聴覚強化型サイボーグ  003。 」

「 ・・・ 美女狩りに遭っただけある・・・ 美しい女性だ ・・・ 」

「 はい。  この 003を囮にして残りのメンバーズを誘き寄せ一気に ! 」

「 ・・・ いや ・・・ それでは芸がないな。  」

「 は? 」

「 面白味に欠ける、 ということよ。  」

女司祭は 件の亜麻色の髪の美女をしげしげと見詰めている。

「 ふうん ・・・ そうね、お前は大層美しい・・・ その肌に触れてみたいわ 

 そして その手で  仲間達を仕留めてみせてくれるかしら? 」

「 ・・・ 司祭様 ・・・ 」

「 ふふふ ふふふ 同士討ちの血祭りほど 壮絶な見ものはないわね。

 この女には美女たちに埋め込むシステムをレベルアップして試行するよ。  

 そしてその形状は  そうね ・・・  」

彼女は少し考えていたが やがて二言 三言、白衣のオトコに囁いた。

「 ・・・ これは  ・・・ 御人がお悪いですなあ〜〜 司祭様 くくくく ・・・・ 」

「 ふふふ ふふふ ・・・ 美を愛し護るこのワタクシがアフロディーテ なら

 お前は ワタクシを愛し護る・女神 その名は アテネー ・・・ 」

「 アテネー?  おお 愛と英知の女神ですな。 」

「 そうよ。 そしてワタクシ、アフロディーテの愛人となるのよ。

 アテネー ・・・ ふふふ ふふふ  そうね、そう呼びましょう。 」

「 では ―  早速施術を。 」

「 期待しています。  ふふふ ふふふ ・・・ヤツらと闘わせて アテネーが勝てば 

 この島はただのリゾート基地ではなくなるわ。 

 アテネーの闘いぶりをお見せすれば 総統も甚くお気に召すでしょうねえ。 

「 私も 長年独自に開発してきたコントロール装置を試すことができます。

 これさえ完成すれば どんな人間でも洗脳は簡単 ・・・

 我々もこの島も ― BG団の重要拠点となること、請け合いです。 」

「 ふふふ ふふふ ・・・ お前もワルですね ・・・ ふふふ 」

「 ははは ははは  お互い様でございますな、司祭様 」

二人は 低く笑いつつ見学スペースを出ていった。

 

 

   

グレートをパリに送り、 中一日置いてサイボーグ達ドルフィン号で出発した。

ジョーの焦燥は大変なモノだったが 闇雲にエーゲ海に向かったところで 何も出来ない、と

他のメンバーズから強硬に意見され、 彼は渋々待機に同意した。

 ところが ―  肝心のグレートとの連絡は 次の日にはぷつり、と途絶えてしまった。

「 ほら〜〜〜 だから 〜〜 」

「 煩い。 ―  今揃うメンバーだけで十分だ。 出撃するぞ。  ピュンマ レーダー と

 ソナーを任せる。 」

「 了解。  ジョー、 とりあえず第一目標の座標を君のコンソールに送るよ! 」

「 了解!  」

全員揃ったわけではないが サイボーグたちは久々のドルフィン号での出撃に

胸を高まらせていた。 

 

 

    コ −−−− ・・・・・  シュ ・・・・・・・ ・・・・・ ・・・・!

 

ドルフィン号は 上空でエンジンを切ると あとは慣性でそのまま滑空し海面へと降下していった。

「 クソ〜〜〜 こんなトコに隠れていやがったのかあ〜 

 レーダーも 時には目くらましにひっかかるもんなんだね〜 」

「 ふん。 大当たりだな。 それでグレートからの連絡は? 」

「 あ ・・・ ちょっと待って。 え〜と・・・ もうちょっと接近してくれるかな。 」

機が滑らかに海面に着水するのを待って ピュンマは捜索の範囲と密度を最高レベルにした。

「 ・・・ ふ〜ん ・・・ っと     きた!  間違いない、 敵のアジトはここだよ ! 」

「 もう少し詳細な情報を聞いてくれ。 」

「 了解。 ・・・・ うん?  ・・・ こちらドルフィン号 ・・・・ やあ グレート! 

 今 どこ?  え?  ・・・ うん ・・・ うん ・・・  そうか!  了解〜〜〜 」

ピュンマはぱっと明るい表情になり、いったん通信をきった。

「 アルベルト!  皆〜〜 グレートから詳しい座標を送ってきたよ!

 今から皆の補助脳に直接転送するよ! 」

「 わかった。    ―  よし、上陸だ。  」

「「 了解〜〜〜 !!  」」

「 ・・・・・・・・ 」

パイロットを務めてきた御仁は 先ほどからひと言も発しない。

「 ?  おい?? ジョー! 聞いてるのか!? 」

「 ・・・・・・・・・・・ 」

ジョーはピュンマの隣に移りじ〜〜〜っとソナー受信機に耳を寄せている。

「 おい。 ジョー!    009!! 」

「 ・・・・・・ 」

「 ジョー ・・・! 」

堪りかねてピュンマが つんつん・・・と彼の肩を突いた。

「 ・・・ ちょっと邪魔しないでくれる、 ピュンマ。 」

ご当人にじ〜〜〜〜っと宙に目を据えたまま・・・ ソナーの音に集中している。

「 ジョー!  上陸だよ! 」

「 ・・え?  あ ・・・・ うん・・・ 」

ジョーはようやく ソナーとレーダーから離れた。

「 ―  上陸するぞ。 」

「 あ 〜 了解。   ・・・ う〜〜ん  フランソワーズの返信が全然拾えないんだ・・・

 彼女の波形ならすぐに判るんだけど 〜〜 」

「 ―  おい!?  聞こえているのか! 」

「 あ?  う うん、アルベルト。  これから上陸するんだろ? 

 う〜〜ん ・・・ この島に彼女、居るのかなあ・・・・?  全然反応がないんだ  」

「 だから〜〜〜 やっとグレートからの通信を拾えたんだよ!

 これから 突入して救助するんだ。 」

「 え!? フランソワーズもここに  ・・・ 拉致されているのかい!?? 」

 

  「「「  そうだよッ !!!!  」」」

 

「 そうか!!! くそ〜〜〜〜!!! 許せない!!  行くぞ!!! 」

 

最強のサイボーグはごく短時間で がんがんにヒート・アップすると 先陣を切って

上陸作戦を開始した。

 

「 おい ・・・ なんだよ アレ〜 」

「 ・・・ ま。 今のアイツは最強だから 」

「 そうだね〜 ・・・ 安心してくっついて行こうか ・・・」

「 せやせや。  ワテら 金魚のウンコと同じや〜〜 」

 

ひそひそ・こそこそ言いつつ、サイボーグ達は密かにドルフィン号を後にした。

 

 

 

 

    カサリ ・・・・   紗とレースだらけのカーテンの奥で 白い肢体が揺れている。

 

「 ・・・ う  ・・・あ   ああ ・・・・ 」

「 うふふ うふふ ・・・ 本当にキレイな子ね ・・・ どう、この肌  ここもステキね?

 ・・・ほら ほら ほら ・・・ 」

「 ぅ ・・・ く ・・・ くぅ 〜〜〜〜 」

「 ・・・ うふ うふ ・・・ そら ここも ここも ・・・ 」

「 ・・・ く  〜〜〜〜・・・・! 」

「 ねえ ?  こんなにいい気持ちになったの、初めてでしょう? 

 さあ アテネー ・・・ これからもずっとこうして ・・・ワタクシとこの島を護るのよ。 」

「 ―  はい。  司祭様  」

「 だ め。  」

白い指が つん、と桜色に上気した頬を突いた。

「 ・・・ え ・・・? 」

「 うふふ ・・・ アフロディーテ と呼んで ・・・ 」

「 え ・・・ でも ・・・ 」

「 ふふん ・・・ 呼ばないなら  お仕置きが必要ね? 」

「 ・・・?   ・・・・ ッ ! 」

長く伸びた爪が < アテネー > の白い宝珠に赤い筋をつける。

「 ・・・ つ ッ ・・・! 」

「 うふふ?   こんなくらい、なんともないのは知っていてよ?  

 でも ・・・ これは  どう? 」

女司祭は その赤い筋にちろちろと舌を這わせてゆく。

「 ・・・ う ぅ 〜〜〜   ぁ    あ   ああ ・・・・ 」

< アテネー > の白い肢体は仰け反り、亜麻色の髪がリネンに乱れ広がる。

次第のピンク色を増してゆくその身体は 白桃の実よりも瑞々しく華やかだ。

「 ふ ふふふ  いい眺めだこと。  アテネー ・・・ お前は本当に美しい ・・・ 」

「 し ・・・ しさ ・・・・ !  アフロディーテ様  ・・・ どうか おゆるし を ・・・ く ぅ ・・! 」

「 ふふふ ふふふ どうしようかしらねえ?  」

 

   ヴィ −−−−− ・・・・・

 

枕元で 控え目にアラームが鳴った。

「 ち。 無粋な ・・・ 」

女司祭は 手を伸ばしなにやらマイクロ・モニターに目を落とした。

「  ・・・ ふん。  やっとお出ましかい。  大事な仲間をほっぽらかして

 なにを今頃のこのこと ・・・ 」

「 ・・・ う ・・・  アフロ ・・・ディ  テ ・・・ 」

女司祭に組み敷かれ アテネーは苦悶と恍惚が入り混じった顔をみせている。

「 なあに♪ 私の可愛いミツバチちゃん ・・・ ああ なんて素適な顔なのかしら。

 さあさ アナタのお仕事の時間だわ〜〜〜 」

「 ・・・ 仕事 ・・・? 」

「 そうよ。  ワタクシの美の帝国に侵入者があったの。

 ― 即刻 排除せよ。  ワタクシと美と ・・・ この島を護るのがお前の使命よ、アテネー 」

「 は。  承りました。 」

アテネーは臥所から立ち上がり、 惜し気もなくその白い肢体を露わにする。

「 ― 美しいわ ・・・   さあ これを。  ヤツらの防護服より数段上をゆく衣裳よ。 」

「 ありがとうございます。 」

彼女は 白いギリシア風の衣裳を身につけた。

裾は短く切れあがり、足には革サンダルをはく。 二の腕には黄金の飾り輪が光り、

亜麻色の髪が掛かる額には 宝玉をあしらったサークレットが輝く。

「 ― 準備は整いました。 」

「 よし。  それでは 行きましょう。  おいで。 」

「  は。 」

同じくギリシア風なローブの裾を靡かせて女司祭、 いや アフロディーテ が進んでゆく。

その傍らには 亜麻色の髪のアテネーがしっかりと寄り添っていた。

 

 

 

   ヴィ −−− ヴィ −−−− ヴィ −−−− 〜〜〜!

 

鳴り響く警報音を掻い潜り、 赤い特殊な服のオトコたちが侵入してきた。

「 こっちだ!  グレートからの脳波通信をキャッチした! 」

「 オッケー!   ぼくは彼を救出にゆく! 」

「 ほっほ ・・・! 美術品の搬出はワテにお任せやで〜〜〜 」

「 よし。  では一丁 派手にやるか〜〜〜 」

 

   ズガガガガガ −−−−−!!!!  ドカ −−−− ン ッ !!!!

 

アルベルトの右手が火を吹いた。

「 ふん ・・・ ここはどうもリゾート施設、というか 福利厚生施設 ・・・とでもいうところか??

 といってもロクでもない < 厚生 > なんだろうがな。 」

「 だろうね〜  おら〜〜〜 どけよ〜〜!! 」

守備体制は貧弱で サイボーグ達はあっという間に施設の中枢部に迫った。

「 ふん。 これじゃスカールが泣くぜ??  さ〜て もう一丁〜〜 」

「 アルベルト!  グレートと合流したよ!  ・・・ ねえ フランソワーズは!?!? 」

ジョーから泣きそうな脳波通信が飛び込んできた。

「 ― ジョー〜〜〜 ヴォリュームを下げろ! 」

「 ・・・あ  ご ごめん ・・・ 」

「 ジョー? 彼女、 ・・・ そっちにいないのか!? 」

「 いないよ〜〜〜  キレイな女性達がわんさといるフロアは見つけたけど 〜〜 」

「 俺は知らんぞ? 」

グレートからも通信が割り込んできた。

「 そんな 〜〜〜〜 」

  その時 ―

 

    「 そこなオトコ。  わらわの美の帝国から即刻出てゆけ! 」

 

神殿を模した建物の奥から 白いローブ姿の女性が現れた。

「 む ・・・!  誰だ!? 

「 ここは 我らがブラック・ゴーストが誇る美と快楽の島。 

 裏切り者のゼロゼロ・ナンバーサイボーグどもよ、 お前らの墓場に相応しいだろうよ! 」

「 な なんだと!?? 」

「 わらわは アフロディーテ!  さあ ものども、そして12神たちよ、侵入者を駆逐せよ! 」

 

  ゴォ  −−− −−− ン ・・・・

 

鈍い音がしてぐらり、と足元が揺れた。

「 なんだ?? 地震か? 」

 ズン ・・・ ズシン  ズシン ・・・ なにか非常に大きな物体が接近してくる。

「 なに??  ・・・ せ 石像だよ?? 」

「 ?? 」

ピュンマが指す方向には 土煙の中から巨大な石像が姿を現していた。

「 石像やて??  アホな〜〜 アヤツら、動いとるやんか〜〜〜 」

「 ち。  石像に模したただの巨大ロボットだろう。  ただの木偶だ! 」

「 そうだね。 皆 レーザーで一斉射撃だ! 」

「「「  おう〜〜 ! 」」」

 

   バリバリバリ 〜〜〜〜〜・・・・!  ヴィ −−−−−− ・・・・!

 

サイボーグ達のスーパーガンが火を吹いた。

石像ロボットは案外頑丈に立ち回っていたが なにせ動きが遅い。

サイボーグ達の敵ではなかった。

 

   ガガガガ −−−−−!!!  ドカ −−− ン ・・・!!

 

12神とは名ばかり ・・・ ジョーが加速装置を駆使し翻弄し、アルベルトがトドメを刺した。

「 ふふん ・・・ これであとは 」

「 そうだね〜 あの ・・・ ひらひらな女さ。 」

「 ・・・でも その前にフラン〜〜〜 」

「 ジョーはん? ちょいと口、閉じていなはれ! 」

「 さあて。  ここいらで降参してもらえると手間が掛からんのだが? 」

アルベルトは ニヤリ、と笑い白いローブの女に右手を向け狙いをつけた。

 

「 − く ・・・!  ふん。 殲滅するのはお前らだ! 」

「 わたしにお任せください。 」

女の後ろから 爽やかな声が聞こえた。

「 ・・・?  まだ誰かいるのか? 

「 ?? 」

「 ―  あ〜〜〜〜  あの声は !?? 」

ジョーが 皆を押しのけて飛び出した。

 

   と。 すんなりした脚をみせ、白い衣裳の女性が現れた。

 

       「 わたしは アテネー。   裏切りモノ共 ―  いくぞ! 」

 

 シュ −−−−− ・・・・!   彼女のボウガンが炸裂した。

 

「「「「  ふ フランソワーズ 〜〜〜 !!! 」」」」

「 我が名はアテネー。  アフロディーテ様の愛人にして守護神。 

 我々を邪魔することは許さない。  さあ わたしが相手だ! 」

アテネーは 白い衣裳をひらひらさせて ― まっすぐにサイボーグ達を睨み据える。

「 ・・・ うわ〜〜〜 ・・・ おっかない〜〜 」

「 ひゃあ〜〜〜  キレイな脚やなあ〜〜 あ ・・・いや その ・・・ 」

「 おい! 油断するな。  ― 彼女は 本気だぞ! 」

 

「 ― ぼくが。  ぼくが相手だッ 」

 

「「「  ジョー  〜〜〜 !!!   」」」

ジョーはアテネーの正面に踊り出た。

「 こい! ぼくが相手になってやる!  」

「 ほう ?  面白い。 我が名はアテネー。  行くぞ! 」

「 ・・・ うわ ・・・ッ ! 

アテネーの狙いは驚くほど正確だ。 ボウガンで確実にジョーを追い詰めてゆく。

「 あ ・・・また当たりよった ・・・ 」

「 うん ・・・さすが003だねえ・・・ 目も耳もフル・パワーで使われたら逃げられないよ。 」

「 ジョーはトドメをさせないからな、端っから劣勢だ。 」

 

  シュ −−−− !!   ヴィ −−−− ・・・・!

 

アテネーはレーザーガンも使い始め ― ジョーはたちまちマフラーを半分飛ばされ ・・・

ボウガンで脚を地に固定されてしまった。

「 ・・・ く ・・・! 」

「 あら 残念。  さあ 今度はマフラーだけじゃ済まさなくてよ?

 ふふふ ふふふ  アフロディーテ様? 今 ・・・ 裏切り者を血祭りに。 」

「 ほほほ ・・・ さすがにアテネー、 見事ですね。

 さあ 勝利の前にちょっとご褒美を  ―  おいで。 」

「 ・・・ アフロディーテ様 ・・・ あ ・・・・ んんん 」

「 んんん 〜〜〜♪ 」

美女二人は ジョーの目の前で  ― それはそれは濃厚なキスを交わした。

 

「 うひゃあ ・・・・ 」

「 ・・・ ごく。 」

「 ― バカなヤツら ・・・ 」

 

 

                     ぶち     

 

 

ゼロゼロナンバーたちには ジョーの理性の安全装置がぶっ飛ぶ音が聞こえた。

 バリバリバリ −−−−・・・!!!  ジョーは渾身の力以上でその身を地から起こした。

「 〜〜〜〜 くそ 〜〜〜〜〜! 」

「 ?  おや お前。 まだ闘う力があるというの? 」

「 ほほほ アテネー?  もうお遊びはオシマイの時間のようよ? イッキに ・・・ 」

「 はい、 アフロディーテ様 。  」

アテネーは 再びジョーと向き合った。

 

  シュ ・・・・!   ジョーの姿が消えた。

 

「 な・・?  ふん 加速装置 ね。 ふふふ そんなことしても無駄よ。

 わたしにはレーダ−・アイとソナー・イヤーがあるわ。 お前の位置など すぐに 」

アテネーが姿勢を立て直した途端 ― 一陣の旋風が彼女を包んだ。

 

「 ?? な なに?? きゃ  きゃあ〜〜〜   」

 

 ポン ポン  ポ −− ン ・・・!  旋風の中から煌く腕輪とサークレットが放りだされてきた。

そして ―  次の瞬間 ・・・ 失神した <アテネー> を抱いたジョーが姿を現した。

 

「  これは ―  ぼくの だから!   返してもらうよ! 」

 

「 お〜〜 ジョーはん! ようやった〜〜〜 」

「 よし! 総攻撃だ! 」

「 よ〜し ・・・ うん、ドルフィンを呼んだよ! ほら! 」

 

    バリバリバリ 〜〜〜〜〜 ・・・・  スガ −−−−−− ン ・・・!!!

 

BGの <福利厚生>の島 は その守護神を名乗った女とともに海に沈んだ。

 

 

 

 

 

「 え ・・・ また 釣れなかったのかい?? 」

玄関のドアを開けたピュンマが 呆れ顔をした。

「 ・・・ そ そんなに大声で言うなよ ・・・ 」

ジョーは消えいりそうな声で ぼそぼそ言っている。

エーゲ海から帰って 今日こそは! と ジョーは単独で釣り船を出したのであるが。

「 は〜ん ・・・ やっぱし坊 ( ボン ) は釣りの神さんに恨まれとるんや。 」

「 え〜〜 なんで〜〜 」

「 なんで て・・・ あんさん、 最高のオオモノを一本釣り、しよったやんか! 」

「  ― へ!?  」

「 あは  ・・・ そうそう。 一番最後にやって来てねえ〜〜  ぼ〜っとしていると思ったら

 まんまと < 釣って > 行ったよねえ〜〜 」

「 ふふん ―  お前はな、釣りの運は使い果たしたのさ。 」

「 ・・・もう ・・・ 皆ったら〜〜 」

笑い転げる仲間達の間で フランソワーズが真っ赤になっている。  

「 もう ・・・ やだわ ・・・ ねえ ジョー? 」

「 ??? オオモノって・・・   ぼく ・・・ 釣りは全然ダメなんだけど?   」

  ― 最強のサイボーグは 一人、きょとん、としていた。

 

 

 

 

******************************     Fin.   *****************************

 

Last updated : 04,09,2013.                             index

 

 

 

***********   ひと言  **********

原作・あのオハナシの おちゃらけ版?? 

いやいや 百合小説 じゃないですぅ〜

ジョー君がちょっと残念なヒトかも ・・・。 

ごめんね ・・・