『  あした浜辺を  』

 

 

 

 

 

   §  きのう   ―  hier  ―

 

 

 

  海は ―  嫌いだった。

 

いや・・・ もともとは好きとかキライ、とか思えるほど海とは親しんではいなかった。

パリ生まれのパリ育ち ― 海は遠く、写真や映像で見るだけ。

一番身近な < 水 > は セーヌだった。

それでもごく小さな頃 家族で夏のバカンスに海辺地方へ行ったことがある。

海辺に近いコテージを借り、家族でひと夏を過した。

父も母も軽装でのんびりと田舎暮らしを楽しんでいた。

アルヌール家の兄妹も 自然の中で伸び伸びと遊びまわる。

「 お兄ちゃ〜〜〜ん まって ェ〜〜〜  」

「 や〜だよ〜〜  のろまのファン〜〜〜 」

「 あ〜〜〜ん  まって まってェ〜〜 」

腕白ざかりの少年だった兄に よく置いてきぼりを食らった。

彼は親譲りの金髪を揺らせ海岸に掛けてゆき 海に突進していた。

 

「 ・・・ お兄ちゃぁ〜〜ん ・・・ え ェ ェ ・・・・ン・・・ 」

 

浮き輪にはまったまま 妹は浜辺をうろうろするだけだった。

「 ・・・ ファンも うみ ・・・ はいりたい ・・・ 」

一人で海に入ることは両親からきつく戒められていたので 彼女は砂地に座り込んで兄を待っていた。

 ・・・ ジリジリと 真夏の太陽が真っ白な幼い肌を焼く ・・・

「 ・・・ あ あつい ・・・ おみず、さわっちゃダメ?  お兄ちゃん ・・・ 」

だんだんアタマがぼう・・・っとしてきた。 手脚はひりひり痛む。

咽喉はカラカラでひりつき声もでない。   ・・・目の前が すう〜っと暗くなった・・・

 

「 ファン!!  ファンション!!! しっかりするんだ〜〜 」

 

兄の声が耳元でがんがんきこえ  つぎの瞬間アタマの上からざばり、と水が落ちてきた。

「 ・・・  あ  お お兄ちゃ ・・・ 」

「 ああ 気がついたね よかった よかった。  さあ ほら、飲みなさい。 」

「 ・・・ ん ・・・?  んんんん 」

大人の声がしてグラスが唇に押し付けられた。

  ・・・ すこし甘くて冷たいものがとろとろと口に入ってきた。

「 ファン!  ファン 〜〜〜 」

兄の泣きそうな声が耳元でがんがん聞こえる。

「 よ〜し・・・ じゃあね、家までこのタオルを掛けてゆきなさい。  」

大きなタオルが、 それはひんやり冷たくてすこし重たかったのだが、 彼女の赤くなった肌を包む。

「 ・・・ きもち いい ・・・ 」

「 そりゃよかった・・・  さあ 君はこの子のアニキなのかい?

 だめじゃないか! こんな小さな子を炎天下の砂浜の放り出しておくなんて!

 いいかい、下手したら死んでしまうんだぞ。 」

「 ・・・ ご ごめんなさい ・・・ 」

だれか大人のヒトに兄はかなり厳しく叱られているらしい。

「 ・・・ お お兄ちゃん ・・・ アタシ げんき  ・・・ 」

「 ファン 〜〜 ! 」

「 おおおや・・・ アニキ想いな妹だねえ・・・ さあ おぶってあげなさい。 」

「 − はい。 」

冷たいタオルを撒きつけたまま、彼女はゆらり、兄の背中に乗った。

「 家はどこかい。 送ってあげよう。 」

「 すぐ・・・そこにコテージです。  僕、ひとりで妹をおぶって行けます。 」

「 そうか? じゃあ ・・・ このメモをパパに渡すんだ。 」

そのヒトは さらさらとなにか書き付けると背中の妹に渡した。

「 はい これ・・・しっかり持って帰ってパパに見せないさい。 」

「 はい ・・・ おじさん。 」

「 ようし。 じゃ アニキは責任を持って妹をつれて帰れ。 いいな。 」

「 はい。 」

兄はこっくん、と頷くと妹を背負ったまま歩き出した。

 

   「 ・・・お兄ちゃん ・・・ 」

   「 ファン。  きもち わるいのか。 」

   「 ・・・ ううん ・・・ 」

   「 のど かわいたのか。 」

   「 ・・・ ううん ・・・  」

   「 じゃあ どうしたんだ!? 」

   「 ・・・ ううん ・・・ どうもしない ・・・  いいきもち ・・・ 」

   「 しっかりつかまってろ〜 ! 」

 

よいしょ!と妹を揺すりあげると 兄はしっかりした足取りで砂浜を横切っていった。

 

 

あの日、浜辺で熱中症になりかけたことは はっきりとは覚えていない。

ものすごく暑くて 目の前がぼ〜っとしてきて ・・・ 次にはっきりと気がついた時には兄の背中にいた。

激しく揺さぶられながらも とても安らかな気持ちだった ・・・

 

    どんなピンチでも  お兄ちゃんが助けてくれる・・・・

 

心地好い安心感はしっかりと妹の意識に染み通りいつしか固く信ずることになった。

それは 大人になってからも少しも変わることはなかった  ・・・ そう、 < あの日 > も。

 

 ― 夏の日、兄は 多分 ・・・ 父や母から大目玉を喰ったのだろう。

なぜなら 翌日から少年はず〜〜〜っと妹の相手をしていた。

浜辺で砂の城を作ったり、 浅瀬で水遊びをしたり ・・・  腕白少年には物足りない夏だっただろう。

でも 妹にとって空と海の、そして 兄の瞳の青に彩られた輝ける夏の思い出なのだ。

 

 

やがて バレエを始めてからはすっかり海とは遠ざかってしまった。

しかし空と兄への憧れは 少しも色褪せずに心の奥底に秘めていた。

 

 

「 ねえ お兄ちゃん 」

「 ・・・ ん〜〜〜  なんだ 〜〜 」

兄は相変わらず食卓の前で新聞を広げ その中からくぐもった声で答えるのだ。

久し振りに海外勤務から帰国、我が家でも食事だというのに、妹の顔をしっかり見ようともしない。

「 だから ―  ねえ ちょっとこっち! 」

わたしはぐい、と兄のクラバットをひっぱった。

「 うわわ・・・ おい〜〜 やめろ やめろってば ・・!ファン! 」

「 だ〜から。  仕事の話よ!  今度のオーディションなんだけど 」

「 あ〜〜わかった わかった。  受けたらいいだろう? チャンスなんだし。 」

「 いいだろう?って そんな簡単に言わないでよ。 

 受かるかどうかわかんないし。 もし もしもよ? 受かったら 引越しだわ。 」

「 ふ〜ん で どこだ? そのカンパニーの所在地は ?  スイスかイタリアか? 」

「 ・・・ ううん ・・・ カナダ なの。 」

「 ほう?  ・・・ うん、まあ遠くの親戚のウチってカンジだな。 」

「 うん。  けど 受かれば、のハナシよ。 」

「 でも 行くんだろ? 」

親譲りの、 そして妹と同じ色の瞳がじっと見つめている。

「 ―  ん。 」

同じ色の瞳が きっかりと見返し、答えた。

「 よし! その意気だ。   次の休暇の時にちょっと遠出するか。 」

「 遠出?? なんで。 どこへ? 」

「 ふふん、 お前の就職祝い だ。  そうだな〜 海、見にゆくか 」

「 え  海 ???  うわあ・・・・ 何年ぶりかしら 」

「 俺もさ、地上に立って海を見てみたいのさ、  たまには な。 」

「 そっか〜 お兄さんはいつも空から見てるものね。 」

「 ああ。  ・・・ ま 大昔の借りを返さんとな〜 ファン。 」

「 大昔の借り?    あ! あの、わたしが海岸でひっくりかえった時ね。 」

「 そうさ。  俺とじゃ不満だろうけど、ちょいとのんびりしようぜ。 」

「 いいわね!  じゃ ・・・ 約束 ね? 」

「 おう。  約束だ。 」

 

   カチン − 兄妹はコーヒーの残るマグカップを合わせ  に・・・っと笑った。

 

遠い思い出となったけれど 海は兄妹の懐かしい記憶だった。

海って ・・・ 嫌いじゃない かも ・・・ 妹は思っていた。

 

  しかし    約束は  果たされなかった。

 

  ―  妹が次に海を見たのは   ・・・・   本当の彼女自身を奪われた後だった。

 

 

 

 

 

    §  きょう  ― aujourd`hui ―

 

 

 

    海は   ―  キライだった

 

 

「  ・・・ ここに ・・・ 住むの・・・? 」

フランソワーズは足を止め、 ぽつりと呟いた。

「 え?  なに?   ほら 行くよ、フランソワーズ  」

一番後ろを歩いていたジョーが 振り返り手招きしている。

「 ・・・ ジョー ・・・ 」

「 早く来いよ〜  うん ちょっと不便だけど でもいい場所だよね。 」

「 ・・・・・・ 」

彼女はのろのろと歩きだした。  ジョーが歩調を合わせ隣に来てくれた。

「 ぼく達はさ  ほら、街中に住むわけにはいかないだろ? 

 ここなら ・・・ 普通の暮らしが出来るよ。   ね? 」

「 ・・・  でも どうしてここなの。 」

「 ああ  コズミ博士が便宜を図ってくれて、この辺鄙な土地を購入できたんだって。

 この上に家を建てよう!  楽しみだね? 」

「 ・・・ え  ええ ・・・ でも  なぜ海の側なのかしら 」

「 え?  ・・・ ああ。  あのさ、ここの崖の下がかなり深くなっていてね。

 ドルフィン号が出航できるようにするって。 」

「 ・・・ また ・・・ 闘うというの? 」

「 そんな日が来ないことを祈るけど。  もしもの時を考えておかないとな。 」

「 ・・・ そう  そうね ・・・ 」

「 うん。 じゃ ・・・ 行こう。  ぼく達の家を造ろうよ。 」

「 ・・・ ジョー ・・・ 」

差し出された大きな手 ―  そこに白い手がおずおずと置かれた。

 

    きゅ ・・・!

 

「 ― 行こう。 」

「 ん。 」

二人は 仲間たちからずっと遅れてゆっくりと長い坂道を登っていった  ― しっかりと手をつないで。

 

 

海の側に住むのは あまりよい気分ではなかった。

はっきり言えば 海はキライで見たくもない。  

 決死の想いで脱出してきたのは四方を海に囲まれた<檻> だったのだから。

長い 長い年月、 海は彼女を閉じ込めてきた。

その檻をなんとか突破し、 自由の身を取り戻したのだ。

とりあえず住むことになったのが  ―   こともあろうに 海っぱただった。

「 ・・・ 皆が決めたことだもの。  仕方ないわね ・・・ 」

彼女は心の中で溜息をつき そっと唇をかんだ。

 

そんな彼女の想いなどお構いなく、ほどなくして彼らは崖っぷちの上に邸を建て ― 彼らのホームとなった。

「 ここは皆の家 ( ホーム ) じゃ。  いつでも帰ってきておくれ。 」

故郷に戻ってゆく仲間たちに ギルモア博士はそう伝えた。

その家には 博士とイワン、そしてこの国出身だというジョーが住むという。

「 きみは?  きみもパリに帰るのかい。 」

「 わたしは  ・・・  ここに置いてください。  ゆくところがないの ・・・ 」

「 そうか〜 うわあ 嬉しいな〜 フランと一緒だ♪ 」

「 おお おお ありがとうよ ・・・ 賑やかで楽しいのう。 」

ジョーは屈託のない笑顔をみせ、博士もイワンも喜んでいた。

 

   崖っ淵の館で 4人だけの静かな生活がはじまった 

 

海の音が四六時中聞こえるのには閉口したが ― そのうちに馴れてしまった。

「 フランソワーズ〜〜〜 ねえねえ なにか袋、ないかなア〜 」

ジョーがテラスから呼んでいる。 

彼はこのところ熱心に庭を掘り返したり石ころを避けたりしているのだが・・・

「 ・・・なあに。  袋? 何に使うの? 」

「 うん 花を植えたんだけどさ。  海からの風除けにしようかなとおもって。」

「 まあ 何を植えたの? 」

「 マリーゴールド。  花屋で安売りしてた♪ 」

「 あら いいわねえ ・・・ 見にゆくわ。 」

キッチンの裏口からツッカケを履いて庭に回った。

庭 といってもまだフェンスで囲ってあるだけの荒地なのだが ・・・ テラスの脇に花壇らしきものが出来ていた。

そこに ぽしょぽしょと苗が植えてあり、濃いオレンジ色の花が見え隠れしている。

「 ・・・ えへへへ ・・・ どうかな。 」

「 可愛い・・・ ジョーって庭弄りが趣味? 」

「 え ・・・ 趣味ってか・・・前からやってみたいなあ〜っておもってたんだ。 」

「 ふうん。 ねえねえ ・・・ フェンスの側にぐる〜っとなにか樹を植えない?

 そうすれば少しは海風避けになるとおもうわ。 

「 あ そうだね!  う〜ん なんの木がいいんだろう?  」

「 調べてみましょうよ。 コズミ先生に伺ってもいいし。 」

「 そうだね〜  うん、木を植えて。 そうだなあ ここも芝生とか植えたいな。 」

「 そうね そうね。  あ ・・・ このコ達にお水 あげなくちゃ。 」

「 うん ・・・ 今 汲んでくる。  あ 今度、ここにも水道を伸ばそう。 」

「 それがいいわね。  ねえ ここが芝生になったらお水を撒いて・・・素敵だわ♪ 」

「 ・・・ あ  ・・・ うん 」

「 あら なあに。 」

こちらをじ〜っと見ている彼に フランソワーズは首をかしげた。

「 あ ううん いや ・・・ きみの笑顔、いいなあ〜って思って ・・・ 」

「 え ・・・ あ やだ・・・ 」

気がつけば いつの間にか笑っていた。  無防備に笑顔をみせていた・・・

ずっと ずっと・・・忘れていたことだ。

「 すごくステキだよ〜〜 えへ ・・・ きみの笑顔見れて得しちゃった♪ 」

「 まあ ジョーったら〜〜 」

「 あは! 水、 汲んでくるね〜〜 」

ジョーはぱっと裏庭へと駆け出していった。

 

    ・・・ もう ・・・ ジョーってば。

    あ ・・・ でも 久し振りに笑った かも ・・・

 

        わたし  笑えたのね ・・・ また 笑うことができたの ね

 

両手をそっと顔に当ててみる。

頬がすこし、熱い。  唇の端がやわらかく持ち上がる。  瞳が 潤む ・・・

 

    笑ってる ・・・わたし 笑っているんだわ・・・!

 

「 もって来たよ〜  水〜   あれ? どうしたの? 」

「 ・・・・・・ 」

ぴっちゃ ぴっちゃ!  派手に水滴をたらしつつジョーはバケツ一杯の水を運んできた。

「 目にゴミでも入った?   博士に 」

「 ・・・ あ いいの  なんでもないのよ。 ・・・ちょっとお日さまが眩しかっただけ・・・ 」

「 そうかい? じゃ テラスに入ってなよ。 水遣りはぼくがやる。 」

「 だ 大丈夫。 わたしにもやらせて? 」

「 もちろん〜〜   こっちの端からでいいかな〜 」

「 そうね ちょっとづつ ・・・  」

二人は並んで水遣りを始めた。    お日さまが とても温かかった ・・・ とても ・・・

 

 

少しづつ手を加えてゆき、 家の前の空き地はだんだんと <庭> らしくなっていった。

時折 訪ねてくる仲間たちの手も借りた。

「 え・・・ 地面を掘る?? 草なら勝手に生えてくるよ? 」

「 うむ〜〜 芸術家の手にスコップは ちと似つかわしくないと・・・ 」

初めはぶつくさ言っていたのだが ―

「 この種、蒔く。  この地にも根付くだろう。 」

「 アイヤ〜〜  コレ、植えてんか。 ハーブは新しいのんがええ。 」

「 ・・・ 気候が違うが。 風除けになるだろう。 」

彼らは この地に来るたびに だんだんと故郷の木や草花を携えてくるようになった。

庭弄りが楽しい、というよりもそんなことを出来る時間を 楽しんでいたのだろう。

  ― やがて ・・・

フェンスに沿って櫟の生垣ができ 門の脇には姿のよい松が鎮座している。

芝生はまだ庭中を覆っていないが 花壇はあちこちにできた。

  ふんふんふん♪     ・・・ 彼女はご機嫌で如雨露で水を撒く。

朝晩の水遣りは彼女の仕事になったが 楽しみが広がった。

「 あら ・・・ もう芽が出てきたわ〜〜 」

庭は確実に彼女の、そして住人達の拠り所になってきていた。

博士は盆栽から庭木の剪定へ、と趣味の幅をのばし、 ジョーは球根を植えることを覚えた。

フランソワーズは  ― 気がつけば唇に笑みを浮かべていた。

花壇な庭中に散らばり、水遣りだけでも大仕事になってきているが苦にはならない。

今朝もあちこちで発見が続き、 彼女はご機嫌だ。

 

  ワンワンワン  ・・・・ ♪   お〜〜い 待てよ〜〜

 

海の方から賑やかな声が登ってきた。

「 うふふ?  ご帰還のようね。  オヤツの用意、しなくちゃ。 」

急いで水遣りを終えると 彼女は如雨露をもって母屋にもどる。

「 咽喉が渇いているでしょ? クビクロにもミルクをあげなくちゃ・・・ 」

「 ただいま〜〜 フラン 〜〜   」

 ワンワン  ワンワンワン 〜〜〜!

キッチンに向かう途中で 賑やかな声が追ってきた。

「 まあ ご機嫌ね。  えっと・・・ ミルクとジョーには  コーラ! 」

 

「 それで どこまで行ったの? 」

「 うん ・・・  下の海岸線をず〜〜っと東に行ってさ ・・・ 」

ジョーはテラスに腰をかけ ぐ・・・っとコーラの瓶を傾ける。

  ぺちゃぺちゃぺちゃ ・・・

彼の足元では 大きな茶色毛の犬が 美味そうにミルクを飲んでいる。

「 え ・・・あの岬の方まで行ったの?  すごい 〜〜 」

「 いや、そんな気はなかったんっだけどさ〜 クビクロがどんどん走っていっちゃってね 」

「 ふうん 元気がいいのねえ 」

「 良すぎるよ〜  あのチビっこがこんなに大きくなるとはなあ〜 」

「 そうね  あのチビちゃんが・・・ 」

  くうん〜〜〜 !  クビクロがミルクの皿から顔をあげ 甘え鳴きをした。

「 あは・・・ チビじゃないよ ってさ。 」

「 うふふ・・・本当にお利口さんねえ ・・・ 」

フランソワーズはごしごしと茶色毛の犬を撫でてやる。  犬は気持ちよさそうに目を閉じている。

「 な 今度散歩に行かないかい?   ・・・ その・・・ 一緒に ・・・ 」

「 あら 嬉しいわ♪  一緒に走りましょ、ねえ クビクロ? 」

  ― わんっ ♪

「 ・・・ え  あの そのぅ〜〜 ぼ ぼくも 一緒に・・・ 」

「 うふふふ ・・・ わかっているわ。  岬の先まで行きましょう 三人で。 」

「 ・・・ あ うん♪♪  うわ〜〜い  クビクロ〜〜 楽しみだなあ? 」

  わん わわわんん〜〜〜♪♪

日溜りのテラスで 皆 ― フランソワーズも 声を上げて笑った。  崖上の家には笑みが溢れるよういなった。

 

   ―  そんな頃     その家を捨てた 

 

犬は前の冬に死んだ。  ジョーが自身の手で始末をした。

その頃から 彼はひとりでぽつん、と海をみつめている時間が多くなってきた・・・

崖の上の邸は新たな敵の攻撃でめちゃくちゃになった。  

そして  彼らはある夜に密かにその地から離れた ・・・

「 さようなら  ・・・  また 海の側で暮せる日がくるのかしら・・・ 」

遠ざかってゆく地をながめつつ フランソワーズはひっそりと呟いていた。

   ・・・ 海はまた 遠い存在になってしまった 

 

    

      

  ―  キ キィィ −−−−− 

 

耳障りな音をたて さびついた門が開いた。

「 ・・・・ おお〜〜  門は残っているなぁ なんとか・・・ 」

「 家はどうね?   アイヤ〜〜 なんもあらへんなあ〜 」

「 出発前にやられちまったからな。 」

「 また 造ればいい。 」

「 そうだよ。  土地があるんだ、 なんだってできるさ。 ねえ博士。 」

「 うむ  そうじゃな。  再建するぞ。 」

「 お〜〜 待ってましたっ  そんじゃざっとでも片付けるか。 」

「 おうっ! 」

オトコ達が数人、 瓦礫の中で動き回り始めた。

てきぱきと仕事を進め あっという間に家の土台らしきものが現れた。

「 よ〜し・・・ これが見つかればしめたものだ。 」

「 うん そうだね。  前回 きっちり整地しておいてよかったよね。 」

「 ははは。  こんなこともあろうかと、 かい、 ピュンマ。 」

「 そうさ〜  その通りだよ。  それで今度の邸の設計図は? 」

「 おう、博士が共用PCに落とした、と言っていたぞ。 」

「 さすが 早いね!  それじゃ僕が段階毎に分割アップするよ。 」

「 頼んまっせ ぴゅんまはん。   厨房はワテにしっかり見さしてや。 」

 

「 ・・・ 皆 ・・・ 少し休憩して? 」

 

明るい声が届き、大きなカートを引いてフランソワーズが現れた。

「 お茶と ・・・ ちょっとスナックやケーキを持ってきたわ。 」

「 おお〜〜 忝い〜〜 」

「 すまんな 003。 」

「 ハイハイ ワテがやりまっせ。 フランソワーズはん、そこに掛けてまっててェな。」

大人が飛び出してきて カートのハンドルを受け取った。

「 あら ・・・ ありがとう、大人。  お湯が足りなくなったら 」

「 ハイナ。  ワテがひと吹きしまっさ。  さ〜さ みなはん、手ェ 洗うてや〜 」

仲間たちは工具を置き、 残っていた水道を使い手や顔をあらっている。

「 アイヤ〜〜  こりゃエエわ〜〜 スコーンにサンドイッチ、お握りもあるやんか 」

「 ・・・ 皆さんの口に合うと嬉しいのだけど・・・ 」

「 合う 合う〜〜  このカツサンド、頂きます〜♪ 」

「 我輩は こちらのロースト・ビーフサンド 〜 」

邸跡の土台で車座になり、 < ティータイム > がはじまった。

フランソワーズもコーヒーの紙コップを手に付き合っていたが ふ・・・っと波の音に気がついた。

海の側に居ながら 今の今まで気に留めていなかった。  いや、気を回す余裕がなかったのだ。

 

     ・・・・また 海の側に住むのね ・・・

     いいわ。   イヤなことは全部海に捨てるから 

     そうよ、 全部 全部捨てて ・・・ 

     哀しみも苦しみも  涙は すべて・・・

 

海の中で絶望の涙を流した記憶は まだ生々しい。

今でも夜明けの夢で 魘される。  嗚咽で目がさめ 夢であったことにほっとする・・・

それでもまだ安心できず、 足音を忍ばせメデイカル・ルームに向かった。

 

     ・・・  ジョー ・・・・?

 

医療機器のメーターが低く点滅する中で 彼が眠っている。

ゆっくり上下する胸に 穏やかな息を確認してほっと安堵した。

 

     待っているから。  どうぞ早く目を覚ませて・・・

 

祈る想いで寝顔をみつめ そっと額にキスを落とし ・・・ 静かに部屋をでた。

深夜の廊下は冷え切っていてぞくり、と寒気が走る。

「 ああ ・・・ わたし 寝汗を掻いていたのね・・・ 」

しかし そんな寝汗に塗れる夜も徐々に減ってきている。

 

「 ・・・ そうよね。  いま ・・・ 彼はわたしの側にいるのですもの ・・・ 」

煩いはずの波の音が とても懐かしい。 

彼女は 小さく吐息をもらすと、しずかにコーヒーに口をつけた。

  ― 誰かが肩に触れた。

「 ・・・ え? 

「 お前は ・・・ アイツの側にいろ。 」

振り向けば 銀髪があらぬ方をながめコーヒーを飲んでいる。

「 ・・・ ありがとう、アルベルト。  ええ そうね。 まだ眠っているだけなんだけど・・・ 」

「 それでも気になるのだろう? 」

「 ・・・ ええ。 」

「 海を見て気分転換になったら ・・・ アイツにも報告してやれ。 」

「 そうね。  わたし達の家が 再び建つこともね。 

 どっちが早いかしら ・・・  ジョーが回復するのと邸が建つのと ・・・ 」

「 ふん ・・・ それじゃ負けるわけにはゆかんな。 」

「 そうね? こちらは5名でしょ。 ジョーが焦っているかもね 〜 51なんてあんまりだ・・・って。 」

「 一騎当千の009がそんなこと、言うか!

 よ〜し・・・ 休憩が終ったら土台補強までイッキに進めるぞ! 

クシャリ、 と紙コップをひねると アルベルトは立ち上がった。

 

「 オラオラ 〜〜  お茶会はお終いだ。 」

 

それじゃ・・・と彼女は飲み食いの後始末をし、荷物を纏めた。  雲がすっかり払われている。

この空に再建の槌音が響くのも もうすぐなのだ。 

「 今度こそ  海と仲良くなれるといいな ・・・ 海が好きになれると いいな 」

彼女は微笑みを浮かべて 海原を眺めていた。

 

 

 

 

    ヒュウ −−−−− ・・・・!

 

「 きゃ・・・  もう〜〜 なんて風なの〜  」

「 ははは ・・・ しょうがないよ、この季節だもの。 」

「 でも〜〜  あ〜あ 髪がぐしゃぐしゃよ・・・  あ! ねえ寒くない、ジョー? 」

彼女は 隣の青年を振り返る。  

「 ねえ、やっぱもどりましょうか。  この風じゃ歩くの、大変でしょう? 」

「 いや。  かえってリハビリになる。  行こう。 」

「 そう? それなら・・・ きゃ〜〜ん もう〜〜〜 スカートが〜 」

またまた吹きぬけた小さな旋風に 彼女は悲鳴をあげた。

「 うふふ ・・・ いい眺めだな〜 」

「 ジョーォ! 」

「 あ こわ・・・ 」

ふふふ ・・・ ははは ・・・  海辺に笑い声が流れた。

 

 ― あの日、 ジョーは再び海に還ってきた。  瀕死の状態で ・・・

物体と化していた彼がなんとか自分自身の脚で動けるようになるまでに、それから半年ちかく掛かった。

「 ・・・ ふう 〜〜  」

「 大丈夫? すこし・・・休みましょうか? 」

「 いや ・・・ ゆっくりなら大丈夫さ。  行こう ・・・ 」

「 そう? それじゃ・・・・  のんびり、ね。 」

彼の横にぴたり、と寄り添い半ば彼の脚となり支えた。

「 ・・・ また ここを歩けるなんて ・・・ 」

「 え なあに? 」

「 ・・・ いや  なんでもないよ。  ああ ・・・ いい風だ・・・ 」

ジョーは空からずっと水平線に視線を飛ばした。

 

   海は いつもと同じ ・・・ ゆったりと鈍色の水面を揺らせている。

 

「 あら 寒くないの? 」

「 全然。  だって ・・・ きみがいるもの フラン。 」

「 ・・・ ジョー ・・・ 」

ゆっくり歩いてゆくうちに 岩場が多い海岸までやってきた。

さすがに ジョーの足取りは遅くなる。

「 ね。 岩があって丁度いいわ。 すこし休みましょうよ。 」

「 ・・・ そうだね。  きみも疲れただろう? ずっとぼくのペースに合わせてくれて・・・ 」

「 そんなことないわ。  いつもと同じに歩いているわ。 少しおしゃべりしましょうか。 

 ねえ そこの岩に座らない?  ほら ・・・ 」

「 ああ ・・・ ありがとう、 」

二人は 渚からすこし離れた岩に腰をかけた。

 

   波音だけが 足元にひびく   風だけが 二人の間をすり抜けてゆく

 

ジョーもフランソワーズも 水平線の彼方を眺めている。

「 ・・・ あ 光ったね。  魚 かなあ 」

「 そうねえ ・・・ ほら カモメがあんなにいるわ・・・ 」

「 うん・・・ 皆 生きているんだな ・・・ 」

ジョーの視線が 渚にもどってきた。

「 ・・・ ジョー ・・・  お帰りなさい 

    ― やっと帰ってきてくれたのね  わたしのもとに

「 ただいま  フランソワーズ 」

    ―  帰ってきたよ  きみをこの腕に抱くために 

ジョーの大きな手がゆったりとフランソワーズの肩を抱き寄せる。

 

「 一緒に ・・・ 一緒に歩いてくれるかい。  その ・・・一生 」

「 !  ・・・ Oui  」

 

浜辺で抱き合う二人に 海は優しい音楽を奏で続けていた。  そう ずっと ・・・

 

 

 

 

 

        §  あした  ― demain  ―

 

 

 

  ザザザザ −−−−−− ・・・・  ザザザザ ・・・・・ !

 

海はいつでも同じ顔をしているわけではない。

しかし その波音は永遠に絶えることなく続いてゆく ・・・

 よせては かえし かえしては よせ  ・・・ 人の世とは無関係に。

 

「 わああ〜〜〜〜いぃ〜〜〜  うみ  海〜〜〜 」

「 うみ〜〜  あはははは 〜〜〜 」

甲高い声が二つ 波の上に響いてゆく。

色違いの小さな頭が 笑い転げながら浜辺を駆け抜ける。

 

「 こら〜〜 二人とも〜〜  海に入っちゃだめだぞ〜〜 」

後から茶髪の青年が これも大声を上げて追いかけてゆく。

「 すぴか〜〜〜 すばる〜〜〜 こら 待てったら〜〜 」

彼は肩からクーラーボックスをかけ 反対の手にもぱんぱんの袋を提げている。

身軽な子供達との競争は どうも分が悪い。

「 はあ はあ はあ ・・・ お〜〜い  待ってくれ・・・ 」

  ごどん。  ついに彼は荷物を全部砂浜に置き 走るのをやめた。

「 はあ はあ はあ  ・・・ ったく も〜〜〜 チビども〜〜 」

クスクスクス ・・・  軽やかな笑い声がゆっくり追いついてきた。

「 ジョー  大丈夫? 」

「 ・・・ え ・・・  ああ フラン 〜〜  ・・・あは  ダメかも・・・ 」

「 ふふふふ・・・・ 無敵の009がどうしたの? 」

「 ・・・ はあ〜〜  無敵 じゃないよ・・・ もうトシなのかなあ・・・

 なんだてあんなに元気なんだよ〜〜 チビ達 〜〜 」

「 子供のエネルギーって無限よねえ・・・ ほら、なにか飲んだら? 」

フランソワーズはジョーが放り出したクーラーボックスを開けた。

「 あ  うん ・・・ ありがとう。 なでもいいや・・・ 」

「 そう?  じゃ ・・・ お水をどうぞ。 」

「 メルシ。   ・・・・・  ふう〜〜〜 生き返ったあ・・・ 

 あ! チビ達〜〜  大変だ、海に入ってるんじゃ? 」

「 大丈夫。  無断で海に入ったらオヤツ なし!って言ってあるから。

 ・・・ ああ 咽喉が渇いたみたい、戻ってくるわ。 」

ジョーの細君は 日傘の陰からちらり、と海岸線を見てすましている。

「 そっかア・・・   じゃ  ここで弁当あけるか。 」

「 そうね。  お腹もぺこぺこのはずよ。 朝から大騒ぎだったから。 」

「 よォし・・・  ああ あっちの岩場にしようか。 」

「 そうね。   ・・・ ほうら、 ご帰還のようよ? 」

 

「 おとうさ〜〜〜ん!! おかあさ〜〜ん!!  おなか すいたア〜〜〜 ! 」

「 僕ぅ〜〜〜  のど かわいたア〜〜 」

 

麦藁帽子をばさばささせて子供たちが戻ってきた。

すぴかは金色のお下げを尻尾みたいに後ろに流し駆けてくる。

その後ろを 茶色の髪をべったりおでこにはりつけて、ひいひいすばるが追っている。

「 台風接近、ね。 ジョー、そっちのバッグにお握り入りのタッパーがあるから・・・

 あとは〜  ウーロン茶とジュースを出してね。 」

「 へいへい・・・ あ、きみは何を飲むかい? 」

「 そうね・・・ わたしもお水でいいわ。 エヴィアンお願い。 」

「 了解〜〜  おっと〜〜 戻ってきたな、チビ共〜 」

 わあ〜〜〜・・・・ 歓声と一緒にまずはすぴかが両親の元に飛び込んできた。

「 いっちばん♪  おとうさんっ のど、乾いたア〜 おかあさ〜ん おなかすいた! 」

「 ほい ウーロン茶。 これがいいだろ? 」

「 うん♪ ありがと〜〜   ・・・・  おいし〜〜〜 」

すぴかはごくごくペットボトルを空にしている。 

「 お弁当はお握りよ。  好きなのを取って。 」

「 なにがあるの〜 

「 え〜とね、 オカカにツナマヨに明太子にシャケ。 あとはすばる用にあんこ。 」

「 アタシ、めんたいこ!!  」

「 はい、どうぞ。 」

「 ・・・ おい あんこ・・・って あの餡子か。 」

「 え? そうよ、すばるのリクエストなの。 まあ・・・おはぎみたいなものよ。 」

母は馴れている風だったが ジョーとすぴかは へえ? と肩を竦め顔を見あわせた。

「 ぼくも食べようかな。  シャケをたのむ。 」

「 はい どうぞ。  あ〜 すばる・・・ 」

「 ・・・ は〜 は〜 へ〜 へ〜 ・・・ お お水ぅ〜〜〜  」

すばるはへとへとになり ぼてん、と砂地に座り込んだ。

「 すばる、こっちいらっしゃい。 ほら ・・・ お水よ。 」

「 う うん ・・・・ ( ごくごくごく ) 」

コップに入れてもらい水を飲む息子を ジョーは少しばかり複雑な気分で眺める。

彼の脇には娘が ペットボトル片手に明太子のお握りに豪快にかぶりついている・・・

「 ジョー?  もっと召し上がる? 」

「 あ ・・・ うん ・・・ そうだな、オカカを貰おうか。 」

「 はい。 ・・・ すぴか すばる、 美味しい? 」

「「 うん!!! 」」

とりあえず子供たちはお握りに熱中している。

 

 

「 ― 海は  ・・・ いつだっておなじね 」

フランソワーズが ぽつりと呟いた。 彼女は岩に腰掛 ずっと水平線を追っている。

「 ・・・ うん?  ああ  ・・・ そうだなあ ・・・ 」

「 いつだって  ・・・ お兄ちゃんと遊んだ時も ・・・ あの島でも。

 クビクロと走った頃も ・・・  ジョーが 還ってきた時も ・・・ 」

「 ・・・ うん ・・・ 」

「 わたし ・・・ 海が好きじゃなかったわ ずっと ・・・ 」

「 フランソワーズ? 」

「 ・・・ だって・・・・ 」

「 おかあさん〜〜 ごちそうさま! ねえねえ海に入ってもいい〜〜 ? 」

「 うみ〜 おとうさん うみにいってもいい? 」

お握りを食べ終え、子供達が寄ってきた。

「 海か? う〜ん ・・・ そうだなあ。 じゃ そこの岩まで。  いいか? 」

ジョーは海面に半分顔を出している岩を指した。

「「 は〜〜〜い!! 」」

子供たちはじゃれあいながら じゃぶじゃぶ海に入ってゆく。

「 ・・・ ジョー。 大丈夫? あの岩の辺り、深いのじゃない? 」

「 大丈夫、 安心したまえ。  これから引き潮だから な。 」

「 あは そうなの。  ・・・ さすがね、ジョー。 」

「 ふふん ・・・ 海っぱたに住んで長いからな〜 」

ジョーは細君の隣に座り、 ともに海と子供たちをながめる。

 

   うわ〜〜〜い  うみ だあ〜〜〜いすき♪ 

 

浅瀬の波間で 色違いのアタマが二つ、きゃあきゃあはしゃいでいる。

「 ぼくは ・・・ 嫌いだった。 」

 ぽつり、とジョーが言った。

「 え なにが?  」

「 海 さ。  ・・・ イヤな思い出しかなかったから。 イヤな事の捨て場だったから・・・  」

「 そ ・・・ そうなの ・・? 」

初耳だった。  夫は海が好きなのだ、とおもっていた。

恋人同士になる前から 彼はよくひとりで海を眺めていることが多かったから・・・

「 少しも知らなかったわ・・・ ジョーは海が好きなんだっておもってたの。 」

「 あ?  そうか・・・ うん  でも 今は 好きさ。 」

「  ?  」

 

「  ― きみと会えたから。  あの 海辺で 」

セピアの瞳が 温かい笑みを湛えている。

「 ・・・ ジョー ・・・!  わたしもよ。 わたしも 海が好き。 」

碧い眼が 微笑みを返す。

 

   あ い し て る     あ い し て る  ・・・  あ い し て る ・・・

 

波が二人の足元で繰り返す。

 

     そうよ ね  海は  ―  いつだって ただ優しくたゆたうだけね 

 

「 きみと 一緒に。 」

「 ええ 一緒に。 」

差し出された大きな手を フランソワーズはしっかりと握った。

 

     ―  こうして 歩いてゆく。   この人と  ずっと一緒に。

         明日も  明日も  明日も ・・・

        

 

二人は 浜辺をゆっくりと歩き始めた。 

 

 

 

***************************    Fin.   *****************************

 

 

Last updated : 01,17,2012.                          index

 

 

 

*************    ひと言   ************

フランちゃんと海・・・・ いえいえ 要するに!

幼い頃のジャン兄とフランちゃんを書きたかったのです〜

・・・・ で これは平ゼロ設定、 ですね (^.^)