『 雨の日は  ― (2) ―  』

 

 

 

 

    ことん ことん ことん ・・・

 

自転車の両脇で 彼と彼女はゆっくりと坂を下ってゆく。

相変らず弱い雨が 宙に舞っているが 二人とも傘はさしていない。

 

     ぴちょん。  自転車ごと水溜りを跨いでゆく。

 

「 ・・・ あ 自転車、大丈夫? 

「 平気 平気〜〜  これ、オール天候用 なんだ 

「 え  そんなの、あるの? 」

「 ふふふ ・・・ 博士の発明さ。 」

「 へえ なんでも作っちゃうのねえ 」

「 発明とか大好きみたいだよ? もう趣味の領域だよね

 あ  あの スプレー どう? 」

「 え・・・ ああ 本当に雨が弾いてゆくわね 

 ほら ・・・ コートの上をね 水玉が転がっているわ 」

彼女が裾を引っ張ると 水色のコートから

ころころと 水滴が落ちてゆく。

「 ほんとだ   あは キレイだなあ ・・・ 」

「 ね?  傘 差さずに雨の中を歩くって 不思議ねえ

 なんだかいつもと違う世界にいるみたい ・・・ 」

「 そうだね ・・・  あはは チビの頃って

 雨の日は かえって喜んで外にでて ゲデゲデになって

 寮母さんにめっちゃ怒られたっけ 」

「 うふふ  悪戯っこ・ジョー だったのね 」

「 ・・・ いや。 イイコぶってて 陰で悪さする・いやなヤツだったさ 」

「 あらあ そう?  そんな風には見えません? 」

「 きみがそう思うなら  ぼくってグレート並のアクターかも 

 イイコな坊やにみえる? 」

「 ?? ジョーがそんなこと言うの、初めて聞いたわ 」

「 イヤな気分になったら ・・・ごめん 

「 そういう意味じゃないけど・・・ 」

ちょっとだけ言葉を切ったけれど 彼女はすぐに明るい声で

話題を替えた。

「 ね? 雨の日はねえ やっぱりいつもとは違う世界なの。

 だって 雨のカーテンの向うはいつだってぼやけているわ?

 ・・・ こっそり妖精が遊んでいるのかも 」

「 オンナノコって〜〜  ものすごくメルヘンチック〜〜 」

「 もう〜〜〜  だってステキだわ?

 ほうら ・・・ 空から細かい宝石が落ちてくるの 」

 

    こくん。   ・・・ ほろほろ ほろり

 

ちょっと首を傾げると 金色の髪から雨粒がすべり落ちる。

 

       ・・・ うわ 〜〜〜

       な な なんて キレイなんだ〜〜〜 

 

ジョーはもう言葉も出ない。

視線は彼女に張り付いてしまい、渾身の努力をしても引き剥がすことが

できないのだ。

 

      !  あ あの時と 同じ だ

      あの時と ・・・

 

      ぼくの眼はどうしたって動かなかったんだ!

 

「 ・・・・ 」

「 ?  ・・・ どうか した? 」

口をつぐみ じっと見つめてくる彼に 彼女は少しばかり驚いた。

「 具合、悪いの? 戻りましょうか ・・・? 

「 ・・・ あ  あ  ご ごめん ・・・

 うん なんでも ・・・ か 買い物、行かなくちゃね 」

「 そうね ・・・ 雨の中のショッピングって ステキだわ〜〜

 ねえ この時期のお野菜って ・・・ 」

彼女の楽し気なおしゃべりは 彼の耳を通りすぎてゆくだけだった。

 

 

      だって!

      あの時も ― こうだったんだ

 

      ・・・ あの時。  あの島で。

 

 

 

それは ― あまりに あまりにも 衝撃的過ぎた。

 

     あなたも こちらに いらっしゃい

 

あのコトバ あの声 そして あの淡い笑み。

彼は 生まれて初めて 全身を熱い炎に貫かれるのを感じていた。

視覚も聴覚も 勝手に照準をその人に合わせてしまい

どんなに努力しても 引き戻すことはできなかった。

脳髄に入ってくるのは あの言葉 のみ。

 

        こちらに いらっしゃい

 

  ― 考えたり 迷ったりする余裕は なかった。

もう手足が勝手に動きだす。

 

    ズ  ズ  ズ ・・・ 砂地を踏みしめ 進んだ。

 

そして。  < 仲間 > になった。

なにがなんだか 全然わからなかったけど。

同じ赤い服のオトコ達が 次々に いろいろと話かけたが

全然アタマに入らない ・ 理解もできない。

ただ ただ  ひたすら 彼女を見ていた。

そのうち 否応なしに戦闘が始まった。

 

    ??? な  な  なに〜〜〜

    これ ・・・ 特撮??

 

    え!?  う ウソだろ〜〜〜

    ・・・ マジ ??

 

    ホンモノ じゃないか!

 

面喰う事実の連続に アップアップし ― 溺れるモノは藁をもつかむ

で 仲間たちの最後尾に必死でひっついて・・・

 

      なんとか  ここまで 辿りついたのだ。

 

 

      ・・・ 彼女の瞳 ・・・・

      あんまりキレイでさ  

      時々 見惚れちゃってさ 

 

      でも。 ・・・ 怖いんだ  

      ぼくの 心の中まで < 見て > るみたいで

 

      本当のぼく を 見透かしているのか って

 

「 ・・・ いつも優しい笑顔、向けてくれるんだよなあ

 大丈夫? って 顔を覗きこんで・・・

   でも   さ。  ぼくは きみに見えるぼく とは・・・ 」

 

      < そんな イイコ じゃないんだ! > 

 

それはずっとの彼の叫びだ。

純粋無垢な青少年 ―  じゃない!  彼は心の中で絶叫していた。

 

       イイコ のフリをして

      なんにも知らないんだ・・・って顔で 

 

      ・・・ 護ってたんだ。

      誰にも ぼくのこころの中を 

      知らない 知らせない

 

      だって ぼくは ―

   

       純朴な青少年 なんかじゃ  ない。

 

 

 ― あれは  やっぱりこんな雨の夕方だった。

 

ふらり ・・・と施設から黙って出てくるのはいつものこと。

こんな日は なんとなくコンビニで時間を潰す。

冷暖房完備 だし 雑誌コーナーは隅の方にあるので目立たたない。

立ち読みしまくるのはいつものこと ― 丁寧に読んできちんと棚に返すので

店員さんは 黙認してくれている。

 

 

「 − あらあ ・・・君  ここにいたの 

やたらに親し気な調子の声と一緒に ど〜〜〜! っと。

濃い香水の香が 襲ってきた。

「 ・・・ ? 

「 ・・・ 元気そうね 」

一目でわかる高価な服の オバサン が立っていた。

およそコンビニとは 縁のない人種だ と思った。

「 あら 忘れちゃった?  ねえ お腹 減ってない? 」

「 ・・・ あ ・・・ 」

思い出した・・・ 最近 この辺りでよく会うオバサンだ。

近所の住人とは思えないけれど・・・

なにかと彼に声をかけ チョコレートだの高級ポテチだのを袋丸ごと 

 ふ・・・っと押し付けてゆくのだ。

 

    ??  なんだ  あのオバハン ・・・?

 

別にそれ以上の接触はないし、万引き犯とも思えない。

最初は用心して押し付けられたスナックを そのままそこに置いて逃げた。

・・・ なんの騒動も起きなかった。

 

    ・・・ ただのモノ好きなオバハン か・・・?

 

すこし安心したけれど余計なことに巻き込まれたくないので

そのコンビニは しばらく敬遠していた。

しばらくして ―  彼自身も忘れ始めていたころ ・・・

 

連日雨が続いた。  それも激しい雨ではなく纏わりつき気がつけば

なけなしのデニムがしっとり濡れている ・・・ そんな雨だ。

「 ん〜〜〜〜〜〜   ・・・ 」

例によって 退屈で ― ヒマはあるが金もトモダチもいない ―

ふらふら ・・・ いつものあのコンビニにやってきた。

「 ・・・・ 」

なぜか 中に入って雑誌の立ち読みをする気にもならず

彼は 店の前でぼんやり・・・しゃがんでいた。

一本の煙草を ゆっくりゆっくり 吸い、時間を潰す。

目の前のアスファルトが 雨を受けだんだんと濃い色になるのを

ぼ〜〜っと 見つめていた。

 

   コツ ・・・。  高いヒールが目の前に立った。

 

「 ・・・ 遊ばない? 」

あの香水が鼻孔を突き ― 気が付けばふらり、と立ち上がっていた。

「 久し振りね。  ヒマなの  ? 」

「 ・・・・ 」

頷きも 首を振りもせず ただ彼は目を上げた。

「 ヒマ人同士 ね 」

「 ・・・・ 」

「 ねえ ちょっと。 遊びましょうよ 」

「 ・・・・ 

「 ほら 濡れてるわ?  温かいところで乾かさない? 」

「 ・・・・ 」

「 強要はしない  でもね ずっとアナタのこと、見てたのよ 」

「 ・・・・ 」

 

濃い化粧の奥からじっと見つめられ ― 彼はそのまま 付いていった。

 

どのくらいの時間が過ぎたのか・・・

我に返ったとき 彼は 高級なリネンを敷きつめた大きなベッドに いた。

素足にすべすべしたリネンの感触だけが はっきりと感じられる。

 

       ・・・  オレは ・・・

 

「 あら。 起きたの。  ―  じゃあ ね 」

「 ・・・・ 」

「 この目がね たまらない    ずっと待ってたわ  」

クシャ ・・・ 長い爪の指が 彼の前髪を掻き上げた。

 

    カサ。     コツ  コツ   コツ ・・・

 

気がついたら お札をジョーの胸の上に置いて。

そのひとは 先に出て行った ・・・ 振りかえりもせずに。

身体中に あの香水の香りが纏わりついている。

「 ・・・・ 」

裸の胸の上に 紙幣がのっかっている。  それだけ だ。

 

      ぼくは  ― 

 

       買われた ・・・ んだ

 

否応なしに 起きた事象がはっきりと彼の脳裏に焼き付けられ

  彼は 唇を噛み締め大急ぎで身繕いを始めた。

 

    雨 ・・・ 降ってるといい。

    土砂降りだと いい。

 

    表で全部脱いで  ― 洗いながしたい !!!

 

経験は あった。 

ヒマで金ナシで若ければ ― ヤルことは ひとつ。

同じような境遇のオンナノコも やまほどいたから相手には事欠かない。

それは オンナノコの方も同じだろう。

若いケモノ達のように求めあい絡まりあっていた。

 

だけど そんな青臭い遊び での経験は吹き飛んだ。

 

   ― まったく違う 濃厚で濃密で  そして屈辱的な。

 

振り払っても 振り払っても 身体中があのヒトを記憶してしまっている。

 

     消えて なくなれっ!!!

     身体中に 紙ヤスリかけて皮膚をこそげ落としたい

 

     ・・・ 消してくれ だれか。

     誰かあ 〜〜〜〜〜

 

 

彼は ずぶ濡れになり 門限時間もとうに過ぎてから

こっそりと施設に戻った。

あの紙幣は施設に戻る途中 地元の古い神社の賽銭箱にねじ込んできた。

教会の献金箱に 入れるのはどうしてもためらわれたから・・・

 

      ・・・ 買われたんだ ・・・ 

 

彼は 最大の屈辱の経験を ぎっちりとココロの奥に

無理矢理押し込んで封印した。

 

 ― 翌日、 門限破りについてとっくりと説教されたが

島村ジョー君は 神妙な顔で最後まで黙って聞いて素直に謝った。

「 ・・・ あ  ああ?  ま〜 ・・・ わかれば いいわ 」

寮母のオバチャンは拍子抜けした顔で 曖昧に頷いた。

それから その日から ―  彼は目立たない・ヨイ子 になった。

 

「 ジョーは ・・・ どうしたのかな。 急に優等生ですね

 オトナになった、ということでしょうか 」

神父様は ちょっと首を傾げてからいつもと同じに笑いかけてくれた。

 

      ・・・ ごめん。

      ぼくは  優等生 なんかじゃないデス

 

      こんな存在、消えてなくなっちまえば いいんだ!

 

心の中で 深みへと落ち込んでゆく中、

表面上 彼は淡い微笑をうかべ 人々の陰でひっそりと生きていた。

もともと好きではない、茶色の瞳を伏せて 前髪で隠し

誰からの視線も 受けないよう < ごく普通 > を装う。

集団の中の影となり 誰からも気づかれたくない。

 

      ― このまま ずっと生きるのか ・・・

      もういい よ!

 

      こんな人生 終わりにして欲しい!!

 

だけど このまま ・・・ 影のように都会の陰で生きてゆくしかないのだ、と

アタマの隅では わかっていた。

それが 自分に与えられた < 人生 > なのだ と 諦めてた。

だって 彼には現実を受け入れるしか なかったから。

 

       そして。  突然、彼の人生は激変した。

         

        いや 別の人生 が始まったのだった

 

 

 

 

 

      ゴ −−−−−−  ゴ −−−−−

 

飛行艇は安定した走行を続けている。

当面の敵、というか 脅威はなんとか排除した。

コクピットには 安堵の空気が流れ 仲間達は交代で

持ち場を離れ休憩に入っていた。

 

       ・・・ ぼく は ・・・?

 

彼は ずっとコンソール盤を睨んでいる。

いや ワケも解らないのだが とりあえず目の前に視線を向けているのだ。

 

    コツ ・・・  軽い足音が寄ってきた。

 

「 いっつも大人しいのね  009 」

仲間、というか <先輩> の女性は 少し不思議そうだった。

「 そ そうですか ・・・ えっと ・・・? 」

「 003 よ。 」

「 あ そ そうだ 003 さん 」

「 アナタ、そういうヒトなの?  

 それとも 日本人って 皆 そういう風なのかしら 

「 ・・・? 」

「 ほら 今の、それよ。  いつも いつも 黙あってひっそり。

 なんか こう・・・ 腹のたつこと とか 激怒することって ないの 」

「 え・・・ っと ・・・? 」

「 アナタ、 とても幸せに生きてきたの? だから微笑んでいられるの?

 ・・・ ねえ 今の自分を受け入れられるの ? 

「 ― すいません  ぼく 大人の手伝いしないと ・・・ 」

「 ― あ 」

話の途中で 009 は するり、とキャビンを離れ

厨房に籠ってしまった。

「 ・・・ 料理が好きなのかしら。  

 いつも微笑・・・だけど。 知ってるわ、わたし。

 目が全然笑ってないもの。  動かないぼ〜〜〜っとどこか

 ちがう所を見ている瞳。 

 温かい色なのに ・・・ 微笑のカタチをしているのに

 本当は全然笑ってなんか いない。

 なにか聞けば 穏やかに静かに 皆の意見に賛成です、って言うでしょ。

 

 ねえ ―  アナタは どんなヒトなの? 」

 

温かい色の瞳を 大地に近い色の髪の陰に隠して ―  

彼は いつも微笑んでいる。 そして だまって 皆の後ろに いるのだ。

 

「 全然 < 仕事 > ができなかったけど ・・・

 かなり驚いたけど ・・・ のんびりした環境で育ったのかしら。

 でも ちょっと教えれば すぐに反応して怖いくらい進歩してゆくのね。

  ・・・ それは悲しいこと ・・・ なのよね ・・・

 ヤツラの思い通りに 武器 になってゆく ってことかも  」

003は 重いため息を吐き、コクピットのサイドの窓を覗いた。

下は大海原 ・・・ そして周囲は青空。

飛行艇は その中を悠々と進んでゆく。

「 ・・・ ニッポンに行く って聞いたけど ・・・

 どんなトコなのかしら  アジアの国って初めてなのよね わたし。 」

博士の旧友が 彼らを受け入れてくれる、という。

「 旧友って ― いつの時代の友人なのかしら。

 まさか ・・・ BGとは 無関係 よね ・・・

 でも ・・・ どんなヒト?  どんな場所?

 トウキョウ の写真は 見たことがあるけど 」

モニターを操作し トウキョウ の映像を探しだす。

ついでに ショウナン も。

ギルモア博士は ニッポンのショウナン地方へ行く、と言っていたから。

「 ・・・ へえ〜〜〜  ま トウキョウは こんな感じかな〜  」

ひと ひと ひと ・・・ と 高層ビルにタワービル そして車。

それは容易に想像できる都市の風景だった。

 ― ただ 人々のアタマが全体的に 黒 か せいぜい茶色。

彼女には かなり異様に映った。

「 へ ・・・え ・・・?  金髪とか赤毛っていないの??

 ふうん ・・・ じゃ ショウナン は 」

 

   ぱあ〜〜〜〜 っと平坦な海を控えた海岸が広がる。

 

「 え ・・・ あら ?  今 風が 吹いて・・・?

 そんなワケ ないわよねえ ・・・ ああ でも ステキ・・・

 海って ドーバー海峡しか知らないし   

 まあ  こんなに明るい海が あるなんて ・・・ いいわね! 」

あの島では 海 は単なる実験場。 思い出したくもない。

あんなのとは全然別の海 なのだ。

 

    こんなトコなら ・・・ 暮らしてみたい 

 

「 ・・・・ 」

003は 休憩時間中 ぼんやりとモニターの中の景色を眺めていた。

 

「 ・・・・ 」

009は 厨房から ちらちら彼女の姿を窺っていた。

索敵とかパトロールなのか とも思ったが ― 違った。

彼女は繰り返し同じ画像を眺め 同じ地域の画像を探しだしていた。

窺い見える横顔は どう見ても穏やかな笑顔なのだ。

 

    どこ 見てるんだ?

 

    ・・・  湘南地方じゃん

    なんか興味 あるのかなあ・・・

 

    あ。 そういえば日本に行くって言ってたっけ・・・

    ミーティングって 苦手だな

    皆 滅茶苦茶に早口で喋ってて 

    なんかケンカしてるみたいだ ・・・

 

    最後に では目的地は日本 ってのだけわかったんだ

 

彼はずっと 全員ミーティングでは 面喰っているだけだった。

全員が 機関銃のようにばしばし発言し、やりあう。

それは 激しい口げんかみたいにも思えてしまう ― のだが

驚いたことに ちゃんと 結論 が出るのだ。

怒鳴り合いに近いけど 自分の言いたい意見をぶつけ合う。

・・・ そう 彼以外 全員が。

そして その < 結果 > に納得する。

・・・ そう 彼以外 全員が。

わだかまりなどは 誰も持ってはいない。 涼しい顔をしている。

 

「 では 決定だな。 今後の分担はモニターで確認してくれ。

 ああ 009? 」

「 は ・・・?  は  はい  えっと・・・? 」

銀髪のオトコが視線を向けてきた。

「 004だ。  意見は? 」

「 あ あ  あ〜〜〜   み 皆に賛成 です ・・・ 」

「 そうか?  なんでも発言してほしい。

 我々の合意でこれからの行動は決定するから 

「 ・・・・・ 」

 コクコク コク ・・・ 最早黙って頷くのみ だ。

 

      ・・・ なんか ・・・

      とんでもないトコ じゃね?

 

      彼女に一目ぼれしてついてきたけど

      な なんか ぼくって全然場違い だよね?

 

「 009は最初 オフ組だ。 しっかり休息しておけ 」

「 ・・・ あ  あの ・・・ 」

「 なんだ 」

「 あのう〜〜 ・・・ み 水 飲みたいんですけど 」

「 はああ?? 」

「 あの  水 ・・・ 」

「 本気で言ってるのか  飲み食いなら厨房だ 」

「 ちゅうぼう???  中学生がいるんですか?? 」

「 ??? なんのことだ?   キッチンにゆけ と言ったんだ 」

「 ・・・ あ  ああ  は はい 」

彼は転がるみたいに コクピットから飛び出していった。

「 ? どういうヤツなんだ?  ・・・ 最近の若いヤツは 

 まったくわからん 」

 

      ひえ〜〜〜〜 ・・・・

      おっかね〜〜〜〜〜

 

      004 って言ってけど

      なんか真ん中に立ってるヒトだよな〜

 

      ! あ あの手からタマが出るヒトだ!

 

      おっかね〜〜〜

 

本気で駆けて彼は厨房に転がりこんだ。

「 ・・・ 〜〜〜〜! 」

「 !  なにネ??  ああ 009はん どうしたネ 」

そこには 丸っこいドジョウ髭のおっさんが包丁を振るっていた。

「 あ  あ   あのぉ〜〜〜 えっと? 

「 はあん?  006やで。  なにネ。 腹へったか 」

「 ・・・ い いえ  あの ・・・ み  水 を 」

「 水??  水でええんか 

「 は  は    はい 」

「 ほい よ 」

   ぽん。   軽いコップが飛んできた。

「 ・・・ うわ? 」

「 それ 使うてや 」

「 は はい ・・・ え〜〜 蛇口は 」

「 飲料水はこっちや。 大切に使うてや。  

 ま もうすぐ新鮮な水、た〜〜んとある場所に降りるけどな 

「 ・・・ はあ 」

「 あんさんのお国やろが   水、たんとあるんやろ? 」

「 ・・・ はあ  まあ 」

「 な? いろいろ教えてほしいんや。 

 ワテな 店、やりたいんや。  ヨコハマがええと思うやが 」

「 み 店 ・・・? 」

「 中華料理の店やで。  日本には多いて聞いたで 」

「 あ  ああ うん   多いっす  ヨコハマはいっぱい店あるな〜 」

「 ふうん ・・・ なあ 009の兄ちゃん。

 ワテはな〜〜〜 新しい土地で一旗 上げてみせるで。

 うま〜〜い店開いてがっぽり儲けたる。 」

「  はあ ・・・ 」

「 な 兄ちゃん、 よかったら手伝うてや〜〜 」

「 あ あ あの  ぼく 料理とかできないんだけど 」

「 かまへん かまへん  兄ちゃんにはお給仕、頼みたいや 」

「 おきゅうじ??  

「 あは ウエイターさんや。  兄ちゃんなら人気モノになるで〜〜 」

「 ・・・ そ うかな 」

「 で なあ。  その前髪、ちっと上げてや? 

 御客はんに 顔、見せへんのはちょいとなあ〜〜  ええか? 」

「 あ ・・・  あの ・・・ はい。

 それから あの  ぼく ・・・ ジョー 島村ジョー です 」

なんと彼は 自分から進んで前髪を掻き上げて  に・・・っと笑ったのだ。

「 はあん ジョーはん か。 ワテは 張々湖。

 大人、いうてや 」

「 はい  た  たいじん。    あ なにか手伝います! 」

「 お。 さよか〜〜   ほんなら ジャガイモ、皮むき、どうや 」

「 出来ます!  炊事当番、得意だったんだ〜 」

「 とうばん?  ま ええ。 ほな 頼むで〜〜 」

 

    ごろごろごろん。    段ボールの中から転がりでた。

 

「 すげ・・・ 」

「 ほっほっほ〜〜  食糧調達はワテの任務やさかいな〜〜

 どっからでん めっけてきまっせぇ〜〜

 あ ジョーはん   あんさん包丁、使えるか 」

   どん。    めちゃくちゃ歯の大きい包丁が出てきた。

「 う  わ・・・ そ〜ゆ〜のは ちょっと・・・

 あ 大き目のナイフ とか ・・・ 」

「 はあん?  ほんなら このペティ・ナイフ どや? 

「 あ それで・・・ ここで剥いていいっすか? 」

「 たのんまっせ〜〜 」

「 はい! 」

 

    カシカシカシ −−−−  

 

ジャガイモの皮がするすると袋の中に落ちてゆく。

「 ほっほ〜〜 ええなあ〜 その調子や 頑張ってやあ〜 」

「 えへへ  はい 」

ジョーは このヒト達と < 仲間 > になってから

初めて ちゃんとした会話をした と感じた。

気持ちも籠った言葉を交わせた・・・と思った。

「 ふむふむ  ・・・ええ手つきやで〜〜  

 ほんで 剥けたらなあ 輪切りにしてや? こんくらい 」

「 はい!  あは 了解です シェフ 」

「 ほっほ〜  任せたで  ワテは肉を捌くよってな 」

「 わい  今晩 肉ですか 」

「 楽しみにしてや〜〜 あんさんの剥いてるイモも

 おいしゅう〜〜 仕上げるよってな 

 

      あ  は ・・・・

      なんか ここ   いいかも

 

彼は やっとゆっくり座っていられる場所を見つけた ・・・

 

「 なあ ジョーはん。   ヨコハマのあるショウナン、いうトコは

 どんなトコね?  住んではるヒト達はどないなもん、 好きね? 」

「 あ ・・・ う〜〜〜ん そうだなあ〜〜 」

 

   カシカシカシ ・・・    十人前のジャガイモの皮を剥いてゆく。

 

「 中華って だいたい皆好きかなあ シュウマイとかギョーザとか。

 あ ラーメン!!  嫌いなヒトなんているかなあ 

「 ふんふん ・・・? 」

手を動かしつつ 湘南の地域についていろいろ話が弾んだ。

ジョーは 久々に < おしゃべり > をした気分だった。

彼は かなり手際よくジャガイモの皮剥きをこなし

次には 茄子の切り分け を仰せつかった。

 

「 ・・・ 楽しそう〜〜  ねえ わたしも仲間にいれて 」

「 あ ・・・ えっと ・・・ 003さん 」

「 あいや〜〜〜 お嬢〜〜  うれしなあ〜〜 手伝うてやあ 」

「 ・・・わたし、調理は苦手なの ・・・ 」

「 あ あの。 この茄子に味付けしたから混ぜてくれますか? 」

ジョーはでっかいボウルを 彼女に渡した。

「 あら ・・・ ええ やってみるわね。   これはなあに 」

「 ほっほ〜〜 マーボーナス になりまっせえ 」

「 わあ(^^♪  やったあ〜〜〜  

「 ?? ま〜ぼ〜 ??? 」

「 あのね すごく美味しい肉料理なんだ〜〜 」

「 ふうん  ・・・ これを混ぜるのね? 」

「 そ。  丁寧に味をなじませてくださ〜〜い 」

「 はあい  ・・・ きゃ 」

「 あ こっち、 押さえてるから・・・ 」

「 メルシ〜〜 009 」

不思議に作業をしながらだと 003 とも普通に喋れるのだ。

 ― そんなこんなで 彼は厨房に居場所をやっとみつけ入り浸っていた。

 

 

飛行艇は ごく静かに着水した。

 

   ― 下船するぞ。

 

着いたトコロは かなり寂れた廃港にちかい場所だった。

彼は最後に飛行艇から 外にでた。

 

       ふ  う ・・・・

       ここ ・・・ 湘南地方?

 

 夜だった。  しずかに波が寄せている。

まだ浅い春の夜で しかしもう凍てつく風は吹いてはいない。

 

        さ −−−−−−−

 

       あ  ・・・  雨  だ 

 

 ひそやかに そして ひっそりと 雨粒が落ちてきていた。

 

         また  雨 ・・・・

 

Last updated : 07.05.2022.        back       /     index    /    next

 

*********   途中ですが

これはどうしたって 平ゼロ・ジョー ですねえ (*_*;

しかし 憂鬱な雨の日 の話なのに 

すっかり 猛暑 になってしまった・・ ( ゚Д゚)